第2部 各論

第4章 訴 訟

第1 審決取消請求訴訟

1 概説

平成21年度当初において係属中の審決取消請求訴訟は15件であったところ、平成21年度中に新たに8件の審決取消請求訴訟が提起された。これら平成21年度の係属事件23件のうち、最高裁判所が上告棄却及び上告不受理決定をしたことにより終了したものが3件、最高裁判所が上告不受理決定をしたことにより終了したものが1件、原告が訴えを取り下げたことにより終了したものが1件あった。この結果、平成21年度末時点において係属中の審決取消請求訴訟は18件となった。

なお、このほか、平成21年度中に東京高等裁判所が原告の請求を棄却する判決を下した後、原審原告が上告及び上告受理申立てを行ったものが12件、東京高等裁判所が原審原告の上告受理申立てを却下する決定をしたものが1件(原審原告らのうち1名に係るものであるため、係属件数に影響しない。)、東京高等裁判所が審決取消請求訴訟の対象となった審決のうち、原告らに対する課徴金の納付を命ずる部分を取り消す判決を下した後、平成22年度に公正取引委員会が上告受理申立てを行ったものが1件ある。

表 平成21年度に係属していた審決取消請求訴訟

2 東京高等裁判所における判決

(1) 昭和シェル石油(株)ほか2名による審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第7号ないし第9号)(前記表一連番号4)

ア 主な争点及び判決の概要
(ア) 指名競争入札における業者による受注調整行為への発注者の関与により競争性が喪失する場合について

原告らは、発注機関である防衛庁調達実施本部(以下「調達実施本部」という。)が、競争制限行為を容認したにとどまらず、これを指示、主導していた場合は、業者による受注制限行為は違法となるものではない旨等主張した。これに対し、国の各省庁が競争入札の方法を選んだ以上、これにより競争市場が形成されるとともに、これを阻害する行為を行うことは、発注者である国においても許されず、仮に、発注者である国がそのような行為等を行ったとしても、業者においてこれに応じる義務はないのであって、これによって法による保護の対象となる一定の取引分野における競争が消滅するものではない旨判示している。

(イ) 本件手続の流れが調達実施本部の指示、主導によるものでないことについての実質的証拠の存否について

原告らは、調達実施本部において決定した油種ごとに一律の最低商議価格である指値の価格によることとし、当初入札不調、商議不調を当然の前提にして新たな入札の第1回目において、当初入札において最後に残った受注予定会社が最低商議価格で落札するという仕組みが採られており、調達実施本部がこの仕組みの実施を指示、主導していたものであることは明らかであるのに、これを認めない審決の認定判断は、合理性を欠く旨主張した。これに対し、本件石油製品の調達手続における不自然な流れは、本件石油製品の売買契約の相手方となる原告ら業者が少なくともこれに応じることによって実現され、実効性を持つものであるところ、原告ら業者においては、前年度の実績並みの受注割合を確保し、価格競争による落札価格の下落を防止することができる等の自らのメリットないし便宜のために、過去長年の間にわたってこれを形成し、定着させてきたものである旨判示し、他の事実等を総合考慮しても、調達実施本部ないしその担当官において、明示的にはもとより、黙示的にも、これを指示し、主導したことを認めるに由ないものというべきである旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は、原告らのうち、昭和シェル石油(株)及びコスモ石油(株)の上告及び上告受理申立てにより、平成21年度末現在、最高裁判所に係属中である。また、新日本石油(株)については、東京高等裁判所における判決が上訴期間の経過をもって確定した。

(2) 東日本電信電話(株)による審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第13号)(前記表一連番号5)

ア 主な争点及び判決の概要
(ア) 他の事業者の事業活動を排除するとの要件について

原告は、ニューファミリータイプはベーシックタイプとは異なり、分岐方式を前提としたサービスであるから、他事業者が芯線直結方式で参入してニューファミリータイプに対抗できるか否かを問題にしていること自体、比較の対象とならないものを比較するものであり、本件審決の判断は誤りである旨主張した。これに対し、本件審決の適法に認定した事実によれば、原告は、分岐方式によるサービスの提供を前提として接続料金の認可を受けるとともにユーザー料金の届出をしながら、実際には芯線直結方式でニューファミリータイプのサービスを提供していたことから、他事業者が戸建て住宅向けFTTHサービス事業に参入できるか否かの判断は、市場の実態に即し、芯線直結方式によりサービスを提供する場合を比較して検討すべきであり、原告の主張は採用することができない旨判示している。

また、審決が適法に認定した事実に基づいて検討し、新規事業者が原告に支払わなければならない接続料金を具体的に示した上、芯線直結方式による接続によって事業を展開するには、接続料金とユーザー料金とに逆ざやが生じて、大幅な赤字を負担せざるを得なくなるのであって、結局のところ、新規事業者が原告に対抗して経済的合理性のある事業の継続を見込むことはできない状況が生じていたと認められるとし、原告の本件行為により、新規事業者は、芯線直結方式で原告の加入者光ファイバ設備に接続してFTTHサービス事業に参入することは、事実上著しく困難になったものと認めるのが相当である旨判示している。

(イ) 一定の取引分野における競争を実質的に制限するという要件について

原告は、本件における「一定の取引分野」は、戸建て住宅向けFTTHサービス市場ではなく、ADSLサービスやCATVインターネットサービス等を含むブロードバンドサービス市場ととらえられるべきとし、そのブロードバンドサービス市場において、激しい競争が行われていることからすれば、競争の実質的制限が存在しないことは明らかである旨主張した。これに対し、より広い市場において競争が行われていると認められる場合においても、同時に、その市場内において細分化された市場を一定の取引分野として画定することは可能であると解されるとし、ブロードバンドサービス市場の中でも、FTTHサービス事業の分野について独立の市場を観念することができるものというべきである旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は、原告の上告及び上告受理申立てにより、平成21年度末現在、最高裁判所に係属中である。

(3) (株)トクヤマほか3名による審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第35号ないし第38号)(前記表一連番号6)

ア 主な争点及び判決の概要
(ア) 実質的証拠の有無についての判断方法

原告らは、本件審決は、ポリプロピレン製造販売業者7社が平成12年3月6日の部長会において、同年4月以降ポリプロピレンの需要者向け販売価格を1キログラム当たり10円を目途に引き上げるという合意(以下「本件合意」という。)の成立を根拠としているものであるところ、本件審決が、本件審決案を引用しつつ、なお書きを付加したことは、被告が、本件審決案が掲げる証拠によっては本件合意の成立を必ずしも認定することができないと考えたからこそ、3月17日までに意思の連絡に当たる合意があると認められると説示して事実認定を補強しようとしたものであり、実質的証拠がないことを自認するものである旨主張した。これに対し、原告らがポリプロピレンの値上げ行為に関する情報交換をした事実と、その後に同一又はこれに準ずる値上げ行為があった事実から、特段の事情のない限り、その間のいずれかの時点において、何らかの方法によって、値上げについての意思の連絡があったものという推認を働かせることによって、同法違反があったものという判断をするという手法は、本件においては、証拠によって3月6日の部長会における本件合意の成立が認められることを補強するものとして用いられることになり、本件なお書きは、正にそのような見地から付言されたものであるとしている。そして、本件訴訟において、本件合意の成否は、本件審決が本件審決案を引用している説示部分における認定判断に、実質的証拠があると認められるかどうかを中心にして判断すべきであるとし、本件なお書きによる付言が違法、不当であるとか、実質的証拠がないことを自認するものであるという原告らの主張は、失当であり、それ自体について検討する要をみないと判示している。

(イ) 実質的証拠の有無について

原告らは、本件合意の成立について、実質的証拠がないとして詳細に主張した。争点は、①本件審決の認定と相反する事実が認められ、これによれば本件合意が成立したとは認められないというべきか、②本件審決が事実認定に用いた積極証拠である供述調書等に信用性があるか、③消極証拠の存在により、実質的証拠があるとはいえないことになるかどうかなどという点である。これに対し、①本件審決の認定と相反する事実があるとはいえない、②供述調書等の積極証拠の信用性を肯定し、本件合意の成立を認めた本件審決の認定判断は合理的である、③消極証拠によっても、本件合意の成立を肯定した本件審決の認定の合理性は左右されないと判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は、原告らのうち、(株)トクヤマによる上告及び上告受理申立てにより、平成21年度末現在、最高裁判所に係属中である。その他の3名については、東京高等裁判所における判決が上訴期間の経過をもって確定した。

(4) (株)港町管理ほか2名による審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第14号)(前記表一連番号10)

ア 主な争点及び判決の概要

原告らは、本件審決の認定事実は実質的証拠に基づいていない旨主張し、排除措置命令及び課徴金納付命令の対象とされた一物件(以下「本件物件」という。)において、他の入札参加者が自由競争になることを想定したのは、入札日の約2週間前であり、十分に本件物件の落札を目指す準備はできたのだが、これを行わなかったのは、事業遂行上の諸般の事情に基づく自由な判断からである旨主張した。これに対し、本件審決が認定した事実に照らすと、本件物件の入札時には、それまでの受注調整行為の影響の及んだ状態が続いており、他の入札参加者の認識においても、2者に絞り込まれた中での競争で完全な自由競争ではないというものであったというべきであり、本件審決は、その判断の基礎とした、入札時において受注調整の結果がそのまま続いていたという事実について、これを立証する実質的な証拠がない場合に当たるとはいえない旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は、原告らによる上告及び上告受理申立てにより、平成21年度末現在、最高裁判所に係属中である。

(5) 西松建設(株)ほか5名による審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第16号、第22号、第28号及び第34号)(前記表一連番号11)

ア 主な争点及び判決の概要
(ア) ゼネコン等と違反行為者を隔てる認定の差異について

原告らは、原告らを含む33社とその他のゼネコン46社及び徳倉建設(株)のすべての者が本件基本合意の当事者であることが認められないなら、原告らを含む33社のみの間に本件基本合意が存在することを立証する実質的証拠は存在しないこととなる旨主張した。これに対し、本件審決は、①その他のゼネコン46社については、受注予定者とされた違反行為者からの協力依頼に応じて受注予定者の受注に協力しているのは一部の者のみであって、本件対象期間中における㈶東京都新都市建設公社(以下「公社」という。)発注の特定土木工事に関し、本件基本合意に基づいて落札・受注したと認められる物件はなく、「自社が受注意欲や関連性を有するときは他の違反行為者が協力すべきこと」についての相互の認識・認容があったと認めるに足りる証拠はなく、本件基本合意の当事者であるとまでは認められない旨、②徳倉建設(株)については、本件対象期間中に同社が落札・受注した物件につき他の違反行為者は入札に参加していないから、同社が本件基本合意に基づいて同物件の受注予定者に決定され、他の違反行為者の協力を得て同物件を受注したとは認められないのであって、同社について、自社が受注意欲や関連性を有するときは他の違反行為者が協力すべきことについての相互の認識・認容があったと認めるに足りる証拠はなく、本件基本合意の当事者であるとまでは認められない旨それぞれ認定しているところ、また、本件審決の理由説示は合理的でその論理に誤りはなく、本件審決がその他のゼネコン46社及び徳倉建設(株)は本件基本合意の当事者であるとまでは認められないとしたことによって、本件基本合意の存在を立証する実質的証拠が認められる33社についてその存在を立証する実質的証拠を欠くことになるとはいえない旨判示している。

(イ) アウトサイダーである地元業者が入札に参加する事実について

原告らは、アウトサイダーである地元業者が入札に参加する事実をとらえ、競争の実質的制限はなかった等主張した。これに対し、受注調整により、実質的評価としては、地元業者より企業規模が大きいなど価格競争力に優れたゼネコン同士の競争は一切失われ、受注予定者となったゼネコン1社と価格競争力の劣る地元業者1社ないし3社との競争と評価すべき状況を作出しているのであるから、このような状況を作出したこと自体をもって競争を実質的に制限しているのであり、アウトサイダーである地元業者が入札に参加しているからといって競争の実質的制限が生じていないことにはならない旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は、原告らのうち、(株)クボタ建設ほか2名による上告及び上告受理申立てにより、平成21年度末現在、最高裁判所に係属中である。また、その他の3名については、東京高等裁判所における判決が上訴期間の経過をもって確定した。

(6) (株)加賀田組ほか3名による審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第17号、第23号、第29号及び第31号)(前記表一連番号11)

ア 主な争点及び判決の概要
(ア) 本件基本合意の存否について

原告らは、本件基本合意について、その存在を証する文書が存在しないこと、合意の参加者が特定しておらず、参加者とそうでない者とを区別する根拠が不明であること等から、当事者に対して合意の拘束力があったとはいえず、合意のルールが事業者に周知されていた事実も存在しないこと等を主張して、本件基本合意がなされたことはない旨主張した。これに対し、本件基本合意が契約のように法的な拘束力を持つ合意としてあったとはいえないが、審決の本件基本合意に関する事実の認定の根拠となった各証拠によると、このような慣行は、受注調整や入札に際しての協力につき、本件審決案が認定するような内容のものとして存在していたことは明らかであり、受注調整のルールとして有効に機能し、受注予定者がこのルールに従って33社に属する他の事業者及び協力会社の協力を得て、希望の物件を落札していたことが認められる旨判示している。したがって、独占禁止法の不当な取引制限の有無を判断するに際して、このようなゼネコン間の受注調整及び公社発注の物件の入札に際して有効に機能している慣行を33社の基本的な合意であったと認めることはなんら不当なものではない旨判示している。

(イ) 33社とその他のゼネコン46社との差異について

原告らは、33社とその他のゼネコン46社との行為態様には差がないから、その他のゼネコン46社が本件基本合意の当事者でないのであれば、33社も本件基本合意の当事者とはいえないと主張した。これに対し、本件審決は、33社について本件基本合意を認めるに足りる実質的証拠は存在し、①その他のゼネコン46社については本件対象期間中に本件基本合意に基づいて落札・受注したと認められる物件がないことから、自社が受注意欲や関連性を有するときは33社に属する他の事業者が協力することについての認識、認容を認めるに足りる証拠がなく、②徳倉建設(株)が受注した物件については、33社に属する他の事業者が入札に参加していないためにその協力を得て同物件を受注したとは認められず、自社が受注意欲や関連性を有するときは33社に属する他の事業者が協力することについての認識、認容を認めるに足りる証拠がないとしたものにすぎず、本件審決が、その他のゼネコン46社及び徳倉建設(株)を本件基本合意の当事者と認めなかったことは、原告らを含む33社が本件基本合意の当事者ではないことの根拠となるものではない旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は、原告らのうち、三井住友建設(株)ほか1名による上告及び上告受理申立てにより、平成21年度末現在、最高裁判所に係属中である。その他の2名については、東京高等裁判所における判決が上訴期間の経過をもって確定した。

(7) (株)松村組ほか3名による審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第18号、第24号、第30号及び第37号)(前記表一連番号11)

ア 主な争点及び判決の概要
(ア) 本件基本合意の当事者について

原告らは、本件基本合意の当事者が33社であるとする証拠はなく、33社とその他のゼネコン47社との行為態様には何らの差がないから、当事者と協力者に区別することは不合理である旨主張した。これに対し、33社とその他のゼネコン47社とは、審判廷に現れた証拠及び事実に基づいて認定される本件対象期間中における行為態様等が異なるのであるから、本件基本合意の当事者であるか否かについて、33社とその他のゼネコン47社とで異なる判断になったとしても、不合理、不相当であるということはできない旨判示している。

(イ) 市場支配について

原告らは、33社が本件基本合意により市場を支配したとは評価できないことは明らかであり、本件基本合意が市場支配をもたらす合意であることは立証されていない等主張した。これに対し、競争が実質的に制限されたというためには、市場を支配することができる状態をもたらすことを要するが、完全な市場支配がされていなければならないものではなく、33社は、本件基本合意により、完全な市場支配をしたとはいえないとしても、ある程度自由に、各社が受注することを希望する物件について、希望する価格で受注することができていたと認められるのであり、公社発注の特定土木工事の市場を支配することができる状態がもたらされ、競争の実質的制限があったということができる旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は、原告ら((株)松村組を除く。)による上告及び上告受理申立てにより、平成21年度末現在、最高裁判所に係属中である。(株)松村組にあっては、上告受理申立てを行ったが、東京高等裁判所における上告受理申立却下決定により、同裁判所における判決が確定した。

(8) (株)植木組ほか6名による審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第21号、第27号、第33号及び第39号)(前記表一連番号11)

ア 主な争点及び判決の概要
(ア) 本件基本合意の存否について

原告らは、本件審決は、本件基本合意の当事者は33社であり、その他ゼネコン46社は協力者であるとしているが、33社と46社の行為態様には差がなく、46社が当事者でないのであれば、原告らを含む33社も本件基本合意の当事者と認めることはできない旨主張した。これに対し、原告らを含む33社が基本合意の当事者であることについては実質的証拠があり、本件審決が46社について本件基本合意の当事者と認めなかったからといって、33社についても本件基本合意の当事者であることにつき実質的証拠がないということはできない旨判示している。

(イ) 実質的競争制限について

原告らは、本件取引分野においては、競争者としてその他ゼネコン46社のほか、地元業者多数が存在するから本件基本合意により競争の実質的制限は成立していない旨主張した。これに対し、①33社の落札受注量は相当程度大きいということができ、②その他ゼネコン46社は本件基本合意の当事者とまで認めることができないが、時と場合によっては、本件基本合意の当事者である33社に協力する存在となることもあったといえ、③本件基本合意の具体的実施方法をみると、その他のゼネコンや地元業者が存在することを考慮すると市場を完全に支配できるものとはいえないが、競争を相当程度制限することが可能なものといえ、これらによれば、33社による本件基本合意は競争を減少させ、特定の事業者又は事業者集団がその意思で、ある程度自由に価格等を左右することによって市場を支配することができる状態をもたらしたということができるから、本件においては、不当な取引制限があったと認めることができる旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は、原告らのうち、(株)植木組による上告及び上告受理申立てにより、平成21年度末現在、最高裁判所に係属中である。その他の6名については、東京高等裁判所における判決が上訴期間の経過をもって確定した。

(9) (株)新井組ほか3名による審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第25号、第26号、第32号及び第38号)(前記表一連番号11)

ア 主な争点及び判決の概要

原告らは、本件審決は、①本件基本合意は事業者の相互拘束等に該当するということができず、②本件基本合意そのものが存在せず、③競争が実質的に制限されているということはできない等として、その認定をするに当たり立証する実質的な証拠を欠いているものであり、取り消されるべきである旨主張した。これに対し、以下のとおり判示している。

(ア) 「一定の取引分野」において「競争」を「実質的に制限する」ことについて

本件において「一定の取引分野」において「競争」を「実質的に制限」するとは、公社が発注する多摩地区の下水道工事のうちのAランクの工事に関し、入札参加者となることや自社で決定した金額で入札することに関して、Aランクの建設業者が自由で自主的な営業活動を行うことを停止あるいは排除すること(ただし、指名競争入札という手続上の制約から、公社が選定指名しなかったという意味での営業活動の停止や排除は除く。)によって、特定の建設業者が、ある程度自由に公社の発注するAランク工事の受注者あるいは受注価格を左右することができる状態に至っているものをいうと解される旨判示している。そして、被告が認定した事実をもって「競争」を「実質的に制限」したと断ずるには論理の飛躍があることは否めず、更に建設業者が自由で自主的な営業活動を行うことを停止あるいは排除されたというような、その結果競争が実質的に減少したと評価できるだけの事実も認定されなければならないというべきところ、そのような事実までを認定するに足りる証拠はないというべきである旨判示している。

(イ) 被告が主張する「一定の取引分野」及び「競争を実質的に制限すること」について

被告は、公社が「本件対象期間中、Aランクの格付けの単独施工工事並びにAA、AB及びACランクの格付けの共同施工工事の土木工事で、入札参加者の少なくとも一部の者につき34社及びその他のゼネコンのうち複数の者を指名し、又はこれらのいずれかの者をJVのメインとする複数のJVを指名して指名競争入札の方法により発注する工事」の取引を本件における「一定の取引分野」であると主張するが、被告が主張する「一定の取引分野」の内包と外延は明らかではなく、前記(ア)で検討した本件における「一定の取引分野」から更に、本件対象期間中であること、ゼネコンが2社以上入札参加者となっていることなどの事情による限定を行わなければならないことにいかなる合理的事情があるのかについて説明するところがなく、本件において取調べ済みの証拠によっても、被告の採るような限定を行わなければならない事情のあることを伺うことはできないため、被告の認定する本件における「一定の取引分野」には実質的な証拠の裏付けがない旨判示している。また、競争の実質的制限の概念を被告の主張のように観念することができるとしても、そのような事実が具体的に認定できるか否かは個別の物件受注に当たって考察するほかなく、本件の各物件においては、受注者とそれ以外の建設業者の間で、物件の受注をめぐる自由で自主的な営業活動が停止あるいは排除されたとの事実を認定あるいは推認するに足りる証拠はない旨判示している。

上記の判断等を踏まえ、「『一定の取引分野』における『競争』が実質的に制限」されたとの事実を認定するに足りる実質的証拠があるとはいえず、したがってそのような不当な取引制限の結果、原告らが各物件を受注したとの事実を認定するに足りる実質的証拠もないというほかなく、本件審決中原告らに課徴金の納付を命ずる部分は、その基礎となった事実を立証する実質的な証拠がないものであるから、取消しを免れない旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

公正取引委員会は、平成22年4月2日、上告受理申立てを行った。

(10) エイベックス・マーケティング(株)ほか3名による審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第19号、第20号、第35号、第36号)(前記表一連番号12)

ア 主な争点及び判決の概要
(ア) 5社が共同して原盤権の利用許諾を拒絶していたか否かについて

原告らは、原盤権の利用許諾を拒絶することは、著作権法上、原盤権者に認められた正当な権利行使である旨等主張した。これに対し、本件審決は、原盤権の利用許諾の拒絶行為を5社が意思の連絡の下に「共同して」行ったことが独占禁止法に違反する違法な行為であると判断しているのであり、本件に表れた一切の事情を考慮すれば、5社が意思の連絡の下に共同してレーベルモバイル(株)以外の着うた提供業者に対して利用許諾を拒絶する行為を行っていたことは優に認められるというべきであって、当該行為を5社が個別に行っていた場合にはそれが著作権法の観点から適法であって経済的合理性を有する行為であると評価できるとしても、そのことは、本件において5社が意思の連絡の下に共同して利用許諾を拒絶していたとの事実認定やそれが独占禁止法に違反する違法な行為であるとの評価を左右するものではない旨判示している。また、5社は、それぞれ、他の着うた提供業者が価格競争の原因となるような形態で参入することを排除するためには他の着うた提供業者への原盤権の利用許諾を拒絶することが有効であることを相互に認識し、その認識に従った行動を採ることを相互に黙示的に認容して、互いに歩調を揃える意思であった、すなわち、5社には原盤権の利用許諾を拒絶することについて意思の連絡があったと認めることができる旨判示している。

(イ) 排除措置の必要性の有無について

原告らは、仮に本件違反行為として問題とされている5社間の利用許諾の拒絶についての「意思の連絡」が過去に存在していたとしても、そのようなものは現時点では完全に終了ないし消滅している旨等主張した。これに対し、5社のいずれかが利用許諾の拒絶に係る意思の連絡から離脱したというためには、離脱者が離脱の意思を他の参加者に対して明示的に伝達することまでは要しないものの、離脱者が自らの内心において離脱を決意したにとどまるだけでは足りず、少なくとも離脱者の行動等から他の参加者において離脱者の離脱の事実を窺い知ることができる十分な事情の存することが必要であるところ、本件勧告を応諾して排除措置を履行した1社については、利用許諾の拒絶に係る意思の連絡から離脱していることが認められるというべきであるが、同社とその余の原告ら4社を同視することはできないというべきである旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は、原告らのうち、(株)ソニー・ミュージックエンタテインメントほか2社による上告及び上告受理申立てにより、平成21年度末現在、最高裁判所に係属中である。また、ビクターエンタテインメント(株)については、東京高等裁判所における判決が上訴期間の経過をもって確定した。

(11) (株)宮地鐵工所による審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第43号)(前記表一連番号13)

ア 主な争点及び判決の概要

原告は、課徴金の納付を命ずる審決の対象となった本件各工事の各契約書に示された各契約当事者の意思表示は、工事内容及び請負代金額の点については無効なものである旨主張した。これに対し、本件各工事の各契約書は、いずれも、発注者である日本道路公団及び請負人である原告を正当に代理し、又は代表する権限を有するものとみられる者の記名押印がされているものであって、その作成経緯及び形式に照らせば、各契約当事者が正式な契約書として作成したものであるべきであり、これにより、各契約当事者間において、契約の成立があったと認めるべきことは明らかである旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は、原告による上告及び上告受理申立てにより、平成21年度末現在、最高裁判所に係属中である。

(12) 桜井鉄工(株)による審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第45号)(前記表一連番号14)

ア 主な争点及び判決の概要

原告は、勧告審決が確定した場合でも、課徴金納付命令審判事件において、勧告審決の主文に係る違反行為の存在を争える旨主張した。これに対し、独占禁止法は、排除措置を命ずる審決と課徴金納付命令の前提となった違反行為の存否について、被告の認定が異なるような事態は想定していないものと解され、勧告審決を経た後の課徴金審判手続においては、勧告審決の主文を争うことはできないと解するのが相当である旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

原告は、平成22年4月1日、上告及び上告受理申立てを行った。

(13) (株)野里組による審決取消請求事件(平成21年(行ケ)第3号)(前記表一連番号15)

ア 主な争点及び判決の概要
(ア) 排除措置命令が確定した場合の課徴金納付命令に係る違反行為の不存在の主張について

原告は、原処分が引用する平成18年(措)第2号排除措置命令書の別紙に記載された「沖縄県発注の特定建築工事」の対象工事の定義が誤っているため対象工事が特定されていない等の理由により、審決における事実認定は、実質的証拠に基づかず根拠が薄弱であり、明らかな誤りである等主張した。これに対し、原告は、原処分についてのみ審判請求を行い、本件排除措置命令については審判請求を行わなかったものであるから、本件排除措置命令は確定しており、原処分が引用する本件排除措置命令書の別紙の対象工事が特定されていないこと等を理由として、本件違反行為の存否自体を争って、本件審決の取消しを求めることはそもそもできない旨判示している。

(イ) 課徴金納付命令の要件として特定JVの構成者たる原告自身が受注調整を行うことが必要かについて

原告は、本件審決が、課徴金の賦課には受注調整行為への具体的関与は不要であると判断するにつき何ら理論的根拠を示しておらず、理由不備の違法がある旨主張した。これに対し、特定JVの代表者が、談合の基本合意に基づき受注調整を行い、その結果、当該特定JVが物件を落札、受注した場合において、基本合意の参加者である当該特定JVの従たる構成員が自ら受注調整を行ったか否かにかかわらず、当該従たる構成員にも課徴金が課せられるべきであることは、独占禁止法の解釈上明らかというべきであり、本件審決がその理論的根拠を明示していないからといって、理由不備の違法があるということはできない旨判示している。また、これを本件についてみるに、原告は本件基本合意の当事者であり、本件物件は本件基本合意の対象である「沖縄県発注の特定建築工事」に該当するものであって、原告が従たる構成員となっている本件特定JVが、本件基本合意に基づいて受注調整を行い、同物件を落札したものである以上、本件基本合意の当事者である原告が、本件特定JVの代表者以外の従たる構成員としてであれ、違反行為そのものである本件基本合意に基づく受注調整によって受注予定者となり、本件物件を受注したものである以上、当該物件について具体的な競争制限効果が発生しているということができ、これが課徴金の対象となることは明らかというべきである旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は、原告の上告受理申立てにより、平成21年度末現在、最高裁判所に係属中である。

3 最高裁判所における決定

(1) JFEエンジニアリング(株)ほか4名による審決取消請求事件(平成21年(行ツ)第8号ないし第10号、平成21年(行ヒ)第8号ないし第10号)(前記表一連番号2)

ア 決定の概要

最高裁判所は、①本件上告理由は、民事訴訟法第312条第1項又は第2項に規定する事由に該当せず、②本件は、同法第318条第1項により受理すべきものとは認められないとして、上告棄却及び上告不受理の決定を行った。

イ 訴訟手続の経過

原審判決は、本件決定により確定した。

(2) (株)ベイクルーズによる審決取消請求事件(平成20年(行ツ)第255号、平成20年(行ヒ)第294号)(前記表一連番号3)

ア 決定の概要

最高裁判所は、①本件上告理由は、民事訴訟法第312条第1項又は第2項に規定する事由に該当せず、②本件は、同法第318条第1項により受理すべきものとは認められないとして、上告棄却及び上告不受理の決定を行った。

イ 訴訟手続の経過

原審判決は、本件決定により確定した。

(3) (有)賀数建設による審決取消請求事件(平成20年(行ヒ)第472号)(前記表一連番号8)

ア 決定の概要

最高裁判所は、本件は、民事訴訟法第318条第1項により受理すべきものとは認められないとして、上告不受理の決定を行った。

イ 訴訟手続の経過

原審判決は、本件決定により確定した。

(4) 新明和工業(株)による審決取消請求事件(平成21年(行ツ)第76号、平成21年(行ヒ)第89号)(前記表一連番号9)

ア 決定の概要

最高裁判所は、①本件上告理由は、民事訴訟法第312条第1項又は第2項に規定する事由に該当せず、②本件は、同法第318条第1項により受理すべきものとは認められないとして、上告棄却及び上告不受理の決定を行った。

イ 訴訟手続の経過

原審判決は、本件決定により確定した。

第2 その他の公正取引委員会が当事者である訴訟

1 概要

平成21年度当初において係属していた訴訟のうち、審決取消請求訴訟以外のもので公正取引委員会が当事者であるものは、課徴金納付命令に係る損害賠償等請求事件及び排除命令に係る慰謝料請求事件の2件であったところ、同年度中に新たに政策調整義務付け請求事件1件が提起された。これら平成21年度の係属事件のうち、排除命令に係る慰謝料請求事件については、平成21年度中に千葉地方裁判所松戸支部において原告の請求を棄却する判決を下し、一審原告が控訴を行い、東京高等裁判所が控訴を棄却する判決を下した。その後、一審原告は上告を提起した。また、政策調整義務付け請求事件については、東京地方裁判所が原告の訴えを一部却下しその余の請求を棄却する判決を下し、平成21年度末時点で上訴期間中となっている。この結果、平成21年度末時点において係属中の審決取消請求訴訟以外の訴訟のうち、公正取引委員会が当事者であるものは3件となった。

2 平成21年度中に係属中であったその他の公正取引委員会が当事者である訴訟

(1) 課徴金納付命令に係る損害賠償請求事件

ア 事件の表示

東京地方裁判所 平成20年(行ウ)第612号

損害賠償等請求事件

原告 三井化学(株)

被告 国

提訴年月日 平成20年10月17日

イ 事案の概要

本件は、被告が原告(吸収合併前の(株)グランドポリマー)に対して行った平成15年3月31日付け課徴金納付命令(平成15年(納)第259号、以下「本件課徴金納付命令」という。)において、原告に関する本件カルテルの実行期間の終期を、平成12年9月21日と認定したにもかかわらず、その後、被告が本件カルテルの参加者である訴外2社に対して行った平成19年6月19日付け課徴金の納付を命ずる審判審決(平成15年(判)第22号及び第23号)において、本件カルテルの実行期間の終期を違反行為者全員につき平成12年5月29日と認定したことは、違法無効である等として、本件課徴金納付命令により支払済みの課徴金から過払となっている課徴金の差額について、国家賠償法第1条に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求等を行うものである。

ウ 訴訟手続の経過

本件は、平成21年度末現在、東京地方裁判所に係属中である。

(2) 排除命令に係る慰謝料請求事件

ア 事件の表示

東京高等裁判所平成21年(ネ)第6478号

慰謝料請求控訴事件

控訴人(一審原告) X

被控訴人(一審被告) 国

提訴年月日 平成21年3月18日

判決年月日 平成21年11月24日(請求棄却、千葉地方裁判所松戸支部)

控訴年月日 平成21年12月4日(一審原告)

判決年月日 平成22年2月24日(控訴棄却、東京高等裁判所)

上訴年月日 平成22年3月11日(上告、一審原告、原審控訴人)

イ 事案の概要

本件は、公正取引委員会が不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)に基づき平成18年12月14日に事業者に対して行った排除命令がその内容において誤っていると主張する原告が、この誤った排除命令により、又は、同排除命令後の当委員会等の対応により損害を被ったなどとして、国家賠償法第1条第1項に基づく損害賠償として1000万円の支払を求める事案である。

第一審である千葉地方裁判所松戸支部は、本件各排除命令における本件商品について、市場における取引の対象となる商品として一般的な名称を用いて定義付けをしたものであり、景品表示法の趣旨に適ったものというべきであるとし、また、本件各排除命令は本件違反業者からの不服申立てがなく、適法に確定したものであり、公正取引委員会の職員が原告の求めにもかかわらず、その訂正等に応じなかったことに何らの違法もないことは明らかである旨等判示して、原告の請求を棄却した。

これに対し、一審原告が控訴を提起したところ、第二審である東京高等裁判所は、控訴人の請求は理由がないものと判断し、本件控訴を棄却した。

ウ 訴訟手続の経過

原審控訴人は上告を提起し、平成21年度末現在、本件は係属中である。

(3) 政策調整義務付け請求事件

ア 事件の表示

東京地方裁判所 平成21年(行ウ)第153号

政策調整義務付け請求事件

原告 X

被告 国

提訴年月日 平成21年4月1日

判決年月日 平成22年3月30日(訴え却下及び請求棄却、東京地方裁判所)

イ 事案の概要

本件は、原告が、公正取引委員会に対し、資源エネルギー庁が原子力発電のコストを実際より著しく低いものと見せかけ、再生可能エネルギー事業者に比して電気事業者を不当に有利に扱う法律を立案するなど、自由な競争を無視している等として、当該政策を是正するための資源エネルギー庁に対する政策調整を行うよう求めたにもかかわらず、当委員会が資源エネルギー庁に対して上記の政策調整を行っていないのは違法であるとして、①当委員会が「資源エネルギー庁に対し、政策調整を行わなければならない」との判決を求める(請求第1項)とともに、②被告に対し、国家賠償法第1条第1項に基づき、当委員会が上記の政策調整を行わなかったことにより、原告が精神的苦痛を被ったとして、慰謝料30万円の損害賠償を求める(請求第2項)事案である。

第一審である東京地方裁判所は、①本件訴えのうち、請求第1項の訴えは、行政処分に該当しない行為を処分の義務付けの訴えの対象として提起されたものであって、不適法であるというべきであるから、却下を免れない、②原告による報告を受けた公正取引委員会が、政策調整を行わなかったとしても、これをもって、原告との関係で、職務上の法的義務の違反に問擬される余地はなく、国家賠償法上の違法と評価される余地はないというべきであり、原告の主張は理由がない旨等判示して、請求第1項の訴えを却下し、請求第2項の請求を棄却した。

ウ 訴訟手続の経過

平成21年度末現在、前記判決について控訴期間中である。

第3 独占禁止法第24条に基づく差止請求訴訟

平成21年度当初において係属中の独占禁止法第24条に基づく差止請求訴訟は8件であったが、同年度中に1件の訴えが提起された。これらの平成21年度の係属事件9件のうち、和解により終了したものが2件あった。また、東京地方裁判所が原告の請求を棄却する判決を下したものが1件、名古屋地方裁判所が原告の請求を一部認容する判決を下したものが1件あった(これらについてはいずれも控訴されたため、係属中である。)。この結果、平成21年度末時点において係属中の訴訟は7件となった。

第4 独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求訴訟

平成21年度当初において係属していた独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求訴訟は32件であったところ、同年度中に5件の訴えが提起された。これら平成21年度の係属事件37件のうち、原告が訴えを取り下げたものが17件、和解が1件あった。この結果、平成21年度末時点において係属中の訴訟は19件である。

1 インテル(株)によるCPUに係る私的独占事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成17年(ワ)第4号

損害賠償請求事件

原告 日本エイ・エム・ディ(株)

被告 インテル(株)

提訴年月日 平成17年6月30日

訴え取下げ年月日 平成21年11月18日

(2) 事案の概要

公正取引委員会は、インテル(株)(以下「インテル」という。)によるCPU(パーソナルコンピュータに搭載するx86系セントラル・プロセッシング・ユニットをいう。)に係る私的独占事件について、平成17年4月13日、インテルに対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後、日本エイ・エム・ディ(株)は、インテルに対して、独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

本件については、東京高等裁判所から、平成17年7月6日、独占禁止法第84条第1項の規定に基づき、同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ、公正取引委員会は、平成18年5月15日、意見書を提出した。

本件は、訴えの取下げにより終了した。

2 ニプロ(株)によるアンプル生地管に係る私的独占事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成19年(ワ)第10号

損害賠償請求事件

原告 (株)ナイガイ及び内外硝子工業(株)

被告 ニプロ(株)

提訴年月日 平成19年11月26日

(2) 事案の概要

公正取引委員会は、ニプロ(株)によるアンプル生地管に係る私的独占事件について、平成18年6月5日、ニプロ(株)に対し審判審決を行った。当該審決確定後、(株)ナイガイ及び内外硝子工業(株)は、ニプロ(株)に対して、独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

本件については、東京高等裁判所から、平成19年11月27日、独占禁止法第84条第1項の規定に基づき、同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ、公正取引委員会は、平成20年8月14日、意見書を提出した。

平成21年度末現在、東京高等裁判所に係属中である。

3 日本道路公団が発注する情報表示設備工事の入札談合事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成20年(ワ)第2号

損害賠償請求事件

原告 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構

被告 星和電機(株)ほか2名

提訴年月日 平成20年9月19日

(2) 事案の概要

公正取引委員会は、日本道路公団が発注する情報表示設備工事の入札談合について、平成17年4月27日、星和電機(株)ほか2名に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構は、当該審決が認定した入札談合により日本道路公団が被った損害に係る賠償請求権を同機構が日本道路公団から承継したとして、星和電機(株)ほか2名に対し、独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

本件については、東京高等裁判所から、平成20年10月15日、独占禁止法第84条第1項の規定に基づき、同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ、公正取引委員会は、平成21年5月8日、意見書を提出した。

平成21年度末現在、東京高等裁判所に係属中である。

4 日本道路公団が発注する鋼橋上部工工事の入札談合事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成20年(ワ)第6号、第7号、第10号、第13号、第21号、第22号、第26号、第27号、第35号ないし第37号、第39号

損害賠償請求事件

原告 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構又は中日本高速道路(株)(注)

被告 (株)神戸製鋼所ほか19名(注)

(注)原告、被告は事件ごとに異なる。

提訴年月日 平成20年12月19日

(2) 事案の概要

公正取引委員会は、日本道路公団が発注する鋼橋上部工工事の入札談合について、平成17年11月18日、同工事の入札参加業者ら45名に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構、東日本高速道路(株)又は中日本高速道路(株)は、当該審決が認定した入札談合により日本道路公団が被った損害に係る賠償請求権をそれぞれが日本道路公団から承継したとして、三井造船(株)ほか29名に対し、独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟35件をそれぞれ東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

本件については、東京高等裁判所から、平成21年1月15日から29日、独占禁止法第84条第1項の規定に基づき、同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ、公正取引委員会は、平成21年6月22日、意見書を提出した。

平成21年度中に計16件の訴えの取下げ及び1件の和解があり、平成21年度末現在、(株)神戸製鋼所ほか19名に対する12件が東京高等裁判所に係属中である。

5 (株)セブン-イレブン・ジャパンによる優越的地位の濫用事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成21年(ワ)第5号、第6号

損害賠償請求事件

原告

平成21年(ワ)第5号 Xほか5名

平成21年(ワ)第6号 Y

被告 (株)セブン-イレブン・ジャパン

提訴年月日 平成21年9月29日

(2) 事案の概要

公正取引委員会は、(株)セブン-イレブン・ジャパンが、独占禁止法第19条(不公正な取引方法第14項〔優越的地位の濫用〕第4号に該当)の規定に違反する行為を行っているとして、平成21年6月22日、(株)セブン-イレブン・ジャパン対し当該行為の排除等を命ずる排除措置命令を行った。当該命令確定後、平成21年(ワ)第5号事件及び平成21年(ワ)第6号事件の原告らは、(株)セブン-イレブン・ジャパンに対して、独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟をそれぞれ東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

本件については、東京高等裁判所から、平成21年10月26日及び27日、独占禁止法第84条第1項の規定に基づき、同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ、公正取引委員会は、平成21年12月16日、意見書を提出した。

平成21年度末現在、東京高等裁判所に係属中である。

6 地方公共団体が発注するごみ処理施設建設工事の入札談合事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成22年(ワ)第2号、第3号

損害賠償請求事件

原告

平成22年(ワ)第2号 加須市、騎西町衛生施設組合

平成22年(ワ)第3号 八千代市

被告

平成22年(ワ)第2号 (株)タクマ

平成22年(ワ)第3号 川崎重工業(株)

提訴年月日

平成22年(ワ)第2号 平成22年3月11日

平成22年(ワ)第3号 平成22年3月29日

(2) 事案の概要

公正取引委員会は、地方公共団体が発注するごみ処理施設建設工事の入札談合について、平成18年6月27日、日立造船(株)ほか4名に対し当該行為の排除等を命ずる審判審決を行った。当該審決確定後、加須市、騎西町衛生施設組合及び八千代市(以下「各原告」という。)は、それぞれ、(株)タクマ、川崎重工業(株)に対し、独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

本件のうち、平成22年(ワ)第2号事件について、東京高等裁判所から、平成22年3月18日、独占禁止法第84条第1項の規定に基づき、同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされている

平成21年度末現在、東京高等裁判所に係属中である。

7 独立行政法人水資源機構が発注する水門設備工事の入札談合事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成22年(ワ)第4号

損害賠償請求事件

原告 独立行政法人水資源機構

被告 (株)IHIほか5名

提訴年月日 平成22年3月31日

(2) 事案の概要

公正取引委員会は、独立行政法人水資源機構が発注する水門設備工事の入札談合について、平成19年3月8日、(株)IHIほか5名に対し当該行為の排除等を命ずる排除措置命令を行った。当該命令確定後、独立行政法人水資源機構は、(株)IHIほか5名に対し、独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

平成21年度末現在、東京高等裁判所に係属中である。