第2部 各論

第2章 違反被疑事件の審査及び処理

第1 違反被疑事件の審査及び処理の状況

1 排除措置命令等

独占禁止法は、事業者が私的独占又は不当な取引制限をすること、不公正な取引方法を用いること等を禁止している。公正取引委員会は、一般から提供された情報、自ら探知した事実等を検討し、これらの禁止規定に違反する事実があると思料するときは、独占禁止法違反被疑事件として必要な審査を行っている。

審査事件のうち必要なものについては独占禁止法の規定に基づく権限を行使して審査を行い(第47条)、違反する事実があると認められたときは、排除措置命令の名宛人となるべき者に対し、予定される排除措置命令の内容等を通知し(第49条第5項)、意見を述べ、及び証拠を提出する機会の付与を行い(第49条第3項)、その内容を踏まえて、排除措置命令を行っている。

また、法的措置を採るに足る証拠が得られなかった場合であっても、独占禁止法違反の疑いがあるときは、関係事業者等に対して警告を行い、是正措置を採るよう指導している(注)。

さらに、違反行為の存在を疑うに足る証拠は得られなかったが、独占禁止法違反につながるおそれのある行為がみられた場合には、未然防止を図る観点から注意を行っている。

なお、法的措置又は警告をしたときは、その旨公表している。また、注意及び打切りについては、競争政策上公表することが望ましいと考えられる事案であり、かつ、関係事業者から公表する旨の了解を得た場合又は違反被疑の対象となった事業者が公表を望む場合は、その旨公表している。

平成22年度における審査件数(不当廉売事案で迅速処理したもの〔第1-2表〕を除く。)は、前年度からの繰越しとなっていたもの22件、年度内に新規に着手したもの143件、合計165件であり、このうち本年度内に処理した件数は142件である。142件の内訳は、法的措置が12件、警告が3件、注意が95件及び違反事実が認められなかったため審査を打ち切ったものが32件となっている(第1-1表参照)。

(注) 公正取引委員会は、警告を行う場合にも、公正取引委員会の審査に関する規則に基づき、命令の際の事前手続に準じた手続を経ることとしている。

第1-1表 審査事件処理状況の推移(不当廉売事案で迅速処理(注1)を行ったものを除く。)

(注1) 申告のあった不当廉売事案に対し可能な限り迅速に処理する(原則2か月以内)という方針に基づいて行う処理をいう。

(注2) 排除措置命令を行っていない課徴金納付命令事件数である。

(注3) ( )内の数字は、平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金納付命令に係る審判開始決定を行った関係人数である。

(注4) 平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金の納付を命ずる審決に係る金額を含み、同法に基づき審判手続を開始した課徴金納付命令に係る金額は含まない。

第1-2表 不当廉売事案の迅速処理件数の推移

第1図 法的措置件数と対象事業者等の数の推移

平成22年度の処理件数を行為類型別にみると、価格カルテル14件、入札談合4件、その他のカルテル1件、不公正な取引方法119件、その他4件となっている(第2表参照)。法的措置を採った事件は12件であり、この内訳は、価格カルテル6件、入札談合4件、不公正な取引方法2件となっている(第2表及び第3表参照)。

第2表 平成22年度審査事件(行為類型別)一覧表

(注1) 複数の行為類型に係る事件は、主たる行為に即して分類している。

(注2) 価格カルテルとその他のカルテルが関係している事件は、価格カルテルに分類している。

(注3) 「その他のカルテル」とは、数量、販路、顧客移動禁止、設備制限等のカルテルである。

(注4) 事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにする行為(独占禁止法第8条第5号)は、不公正な取引方法に分類している。

(注5) 「その他」とは、事業者団体による構成事業者の機能活動の制限等である。

第3表 排除措置命令等の法的措置件数(行為類型別)の推移

(注1) 複数の行為類型に係る事件は、主たる行為に即して分類している。

(注2) 価格カルテルとその他のカルテルが関係している事件は、価格カルテルに分類している。

(注3) 「その他のカルテル」とは、数量、販路、顧客移動禁止、設備制限等のカルテルである。

(注4) 事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにする行為(独占禁止法第8条第5号)は、不公正な取引方法に分類している。

(注5) 「その他」とは、事業者団体による構成事業者の機能活動の制限等である。

2 課徴金納付命令等

(1) 課徴金納付命令の概要

独占禁止法は、カルテル・入札談合等の未然防止という行政目的を達成するために、行政庁たる公正取引委員会が違反事業者等に対して金銭的不利益である課徴金の納付を命ずることを規定している(第7条の2第1項、第2項及び第4項、第8条の3、第20条の2、第20条の3、第20条の4、第20条の5並びに第20条の6)。

課徴金の対象となる行為は、事業者又は事業者団体の行うカルテルのうち、商品若しくは役務の対価に係るもの又は商品若しくは役務について供給量若しくは購入量、市場占有率若しくは取引の相手方を実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの並びにいわゆる支配型私的独占で被支配事業者が供給する商品若しくは役務について、その対価に係るもの又は供給量、市場占有率若しくは取引の相手方を実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの、いわゆる排除型私的独占のうち供給に係るもの、独占禁止法で定められた不公正な取引方法である、共同の取引拒絶、差別対価、不当廉売及び再販売価格の拘束のうち、一定の要件を満たしたもの並びに優越的地位の濫用のうち継続して行われたものである。

平成22年度においては、延べ143社に対し総額362億8787万円の課徴金の納付を命じた(第4表及び第5表参照)。このうち、違反を繰り返した場合の割増算定率が適用された事業者は、5事件における9社であった。一方で、課徴金の納付を命ずる審決13件が出され、この結果、平成22年度において確定した課徴金納付命令の件数は156件、これに

より確定した課徴金の額は過去最高額の720億8706万円となった(第6表参照)。

(2) 課徴金減免制度の運用状況

平成22年度における課徴金減免制度に基づく事業者からの報告等の件数は131件であった(課徴金減免制度導入〔平成18年1月〕以降の件数は延べ480件)。

なお、平成22年度においては、7事件延べ10名の課徴金減免申請事業者につて、当該事業者からの申出により、これらの事業者の名称、免除の事実、減額の率等を公表した(注)。

(注) 公正取引委員会は、課徴金減免制度の適用を受けた事業者から公表の申出がある場合には、課徴金納付命令を行った際等に、公正取引委員会のウェブサイト(http://www.jftc.go.jp/dk/genmen/kouhyou.html)に、当該事業者の名称、所在地、代表者名及び免除の事実又は減額の率等を公表することとしている。

第2図 課徴金額等の推移

(注) 課徴金額については、100万円以下切捨て。

3 申告

平成22年度においては、独占禁止法の規定に違反する事実があると思われ、公正取引委員会に報告(申告)された件数は10,769件となっている(第3図参照)。この報告が書面で具体的な事実を摘示して行われた場合には、措置結果を通知することとされており(第3項)、平成22年度においては、7,171件の通知を行った。

また、公正取引委員会は、独占禁止法違反被疑行為の端緒情報をより広く収集するため、平成14年4月からインターネットを利用した申告が可能となる電子申告システムを公正取引委員会のウェブサイト上に設置しているところ、平成22年度においては、同システムを利用した申告が782件あった。

第3図 申告件数の推移

第4表 平成22年度法的措置一覧表

(注1) 一般指定とは、不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)を指す。

(注2) 課徴金納付命令対象事業者数の合計である。

第5表 平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金納付命令

(注1) 前記のほか、平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく審決によって、13事業者に対し357億9919万円の課徴金の納付を命じている(第3章第23 課徴金の納付を命ずる審決等参照)。

(注2) 平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく審判手続の開始により失効した課徴金納付命令を含む。

第6表 課徴金制度の運用状況(注1)

(注1) 平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金の納付を命ずる審決を含み、同法に基づく審判手続の開始により失効した課徴金納付命令を除く。

(注2) 平成15年9月12日、協業組合カンセイに係る審決取消請求事件について、審決認定(平成10年3月11日、課徴金額1934万円)の課徴金額のうち967万円を超える部分を取り消す判決が出された(同判決は確定した。)。

(注3) 平成16年2月20日、土屋企業(株)に係る審決取消請求事件について、審決認定(平成15年6月13日、課徴金額586万円)の課徴金額のうち302万円を超える部分を取り消す判決が出された(同判決は確定した。)。

第2 法的措置

平成22年度においては、12件について法的措置を採った。平成22年度に法的措置を採った12件の違反法条をみると、独占禁止法第3条後段(不当な取引制限の禁止)違反10件及び同法第19条(不公正な取引方法の禁止)違反2件となっている。

法的措置を採った前記12件の概要は、次のとおりである。

1 独占禁止法第3条後段違反事件

(1) 川崎市が発注する下水管きょ工事の入札参加業者に対する件(平成22年(措)第9号)

ア 関係人

(注1) 表中の「○」は、その事業者が排除措置命令の名宛人であることを示している。

(注2) 表中の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の名宛人とならない違反事業者であることを示している。

(注3) 関トウ(株)は、平成20年5月20日以降、川崎市から下水管きょ工事について競争入札の参加資格要件を満たす者としての登録を抹消されている。また、同社は、平成21年1月28日に神奈川県知事から建設業法の規定に基づく許可を取り消され、以後、建設業を営んでいない。

イ 違反行為の概要

24社は、遅くとも平成20年3月12日以降(注4)、川崎市が一般競争入札の方法により発注する特定下水管きょ工事(注5)(以下「川崎市発注の特定下水管きょ工事」という。)について、受注価格の低落防止を図るため

(ア) 受注を希望する者又は特定建設工事共同企業体(以下「受注希望者」という。)は、自己以外の入札参加の申込みを行った者に対して受注を希望する旨表明し

a 受注希望者が1名のときは、その者を受注すべき者又は特定建設工事共同企業

体(以下「受注予定者」という。)とする

b 受注希望者が複数名のときは、工事の履行場所、過去に受注した工事との継続性等の事情を勘案して、受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する

(イ) 受注すべき価格は、受注予定者(受注予定者が特定建設工事共同企業体である場合にあってはその代表者)が定め、受注予定者以外の者は、受注予定者が定めた価格を上回る価格で入札する、入札を辞退するなどにより、受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する

旨の合意の下に、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、川崎市発注の特定下水管きょ工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注4) 関トウ(株)にあっては平成20年5月19日までの間、岡村建興(株)にあっては遅くとも同月23日以降の行為である。

(注5) 川崎市内に本店を置き、かつ、川崎市から下水管きょ工事についてAの等級に格付されている者又はこれらの者を代表者とする特定建設工事共同企業体のみを入札参加者とする下水管きょ工事をいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 23社は、それぞれ、前記イの行為を取りやめている旨を確認すること及び今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、川崎市発注の特定下水管きょ工事について、受注予定者を決定せず、各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨を、取締役会等において決議しなければならない。

(イ) 23社は、それぞれ、前記(ア)に基づいて採った措置を、自社を除く22社及び川崎市に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 23社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、川崎市発注の特定下水管きょ工事について、受注予定者を決定してはならない。

エ 課徴金納付命令の概要

(ア) 20社は、平成22年7月12日までに、それぞれ前記アの「課徴金額」欄記載の額(総額1億3072万円)を支払わなければならない。

(イ) 調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令(当該課徴金納付命令が確定している場合に限る。)を受けたことがある事業者については、独占禁止法第7条の2第7項の規定に基づき、5割加算した算定率を適用している。

(2) 青森市が発注する土木一式工事の入札参加業者らに対する件(平成22年(措)第10号)

ア 関係人

(注1) 表中の「○」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象であることを示している。

(注2) 表中の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反行為者であることを示している。

(注3) 表中の「※1」を付した事業者は、平成22年3月25日に解散の決議を行ったことにより事業活動の全部を取りやめている。

(注4) 表中の「※2」を付した事業者は、平成18年4月1日以降、青森市から土木一式工事についてBの等級に格付されたことにより、青森市発注の特定土木一式工事の入札に参加していないため、同日以降、違反行為を行っていない。

(注5) 表中の「※3」を付した事業者は、それぞれ、青森地方裁判所において破産手続開始の決定を受けたことにより事業活動の全部を取りやめている。

イ 違反行為の概要

34社は、遅くとも平成17年4月1日以降(注6)、共同して、青森市発注の特定土木一式工事(注7)について、受注予定者(受注すべき者又は特定建設工事共同企業体をいう。以下同じ。)を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、青森市発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注6) (株)共生建設にあっては遅くとも平成18年1月10日以降、成俊工業(株)及び和田工業(株)にあっては遅くとも同年5月9日以降、(株)ナガイ及び(株)坂正にあっては遅くとも平成20年5月7日以降の行為である。

(注7) 青森市が、指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事であって、旧青森市(平成17年4月1日に青森県南津軽郡浪岡町と合併する前の青森市をいう。)の区域に本店を置き、青森市から土木一式工事についてAの等級に格付されている者のみ又はこれらの者のみを構成員とする

特定建設工事共同企業体のみを当該入札の参加者として指名するものをいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 27社は、それぞれ、前記イの行為を取りやめている旨を確認すること及び今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、青森市が競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事について、受注予定者を決定せず、各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨を、取締役会等において決議しなければならない。

(イ) 27社は、それぞれ、前記(ア)に基づいて採った措置を、自社を除く26社及び青森市に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 27社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、青森市が競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事について、受注予定者を決定してはならない。

エ 課徴金納付命令の概要

28社は、平成22年7月23日までに、それぞれ前記アの「課徴金額」欄記載の額(総額2億9789万円)を支払わなければならない。

オ 青森市長に対する改善措置要求等について
(ア) 入札談合等関与行為の概要

前記イの違反行為に関し、青森市特別理事(自治体経営監)の職にあった者(注8)は、青森市発注の特定土木一式工事について、特定の事業者の役員から受注予定者の決定を円滑に行うために3つのグループに分けた指名業者の組合せ案を提示され、以後これに従って入札参加業者を指名するように要請されたことから、入札参加業者間で受注に関する調整が行われていることを認識しながら、入札参加業者間で協調できるようにするため、同市自治体経営局総務部契約課に対して指名業者の組合せを同要請に沿った3グループにするよう指示し、平成18年4月以降、平成21年4月23日付けで同市を退職するまでの間、おおむね、同課をしてこの3グループでの指名業者の組合せを維持させていた。

(注8) 平成20年10月1日以降にあっては青森市副市長の職にあった。この者は、平成18年4月1日から平成21年4月23日までの間、同市自治体経営局長事務取扱を命じられ、同市が指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事に係る入札及び契約に関する事務等をつかさどる総務部契約課が属する自治体経営局の職務を統括していた。

(イ) 関係法条及び改善措置要求等

青森市の職員による前記(ア)の行為は、入札談合等関与行為防止法第2条第5項第4号(入札談合の幇助)に該当し、同法に規定する入札談合等関与行為と認められる。

よって、公正取引委員会は、青森市長に対し、入札談合等関与行為防止法第3条第2項の規定に基づき、今後、前記(ア)の行為と同様の行為が生じないよう、青森市発注の特定土木一式工事について、当該入札談合等関与行為が排除されたことを確保するために必要な改善措置を速やかに講ずるよう求めた。また、青森市長に対し、この求めに応じて同条第4項の規定に基づき行った調査の結果及び講じた改善措置の内容について、同条第6項の規定に基づき公表するとともに公正取引委員会に通知するよう求めた。

さらに、会計検査院に対し、入札談合等関与行為の排除及び防止に万全を期す観点から、青森市長に対して改善措置を講ずるよう求めた旨の通知を行った。

(3) 光ファイバケーブル製品の製造業者に対する件(平成22年(措)第11号~第14号)

ア 関係人

(注1) 表中の「○」は、その事業者が排除措置命令の対象であることを示している。

(注2) 表中の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反行為者であることを示している。

(注3) 表中の「/」は、その事業者が違反行為者ではないことを示している。

(注4) 東日本電信電話(株)(以下「NTT 東日本」という。)、西日本電信電話(株)(以下「NTT 西日本」という。)及び東京都港区に本店を置く全国情報通信資材(株)(以下「全国情報通信資材」という。)をいう。

(注5) (株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ(以下「NTTドコモ」という。)をいう。

(注6) コーニングインターナショナル(株)は、NTT東日本及びNTT西日本に光ファイバケーブル製品を販売する者であったが、平成18年4月1日、(株)アドバンスト・ケーブル・システムズ(以下「ACS」という。)に対し、光ファイバケーブル製品の販売に係る事業を譲渡し、以後、光ファイバケーブル製品をNTT東日本及びNTT西日本に販売していない。

(注7) 昭和電線ホールディングス(株)は、光ファイバケーブル製品の製造業を営んでいた昭和電線電纜(株)が平成18年4月1日付けで現商号に変更したものであり、同月3日、昭和電線ケーブルシステム(株)に対し、新設分割により光ファイバケーブル製品の製造業を承継させ、以後、同事業を営んでいない。

(注8) 日立電線(株)は、平成18年4月1日、ACSに対し、光ファイバケーブル製品の販売に係る事業を譲渡するなどし、以後、光ファイバケーブル製品をNTT東日本及びNTT西日本に販売していない。

第7表

イ 違反行為の概要

本件においては、次の各違反行為が認められた。

(ア) NTT東日本等の事業者が発注する光ファイバケーブル製品

a 光ファイバケーブル製品(第7表の番号1記載の製品)

住友電気工業(株)、古河電気工業(株)(以下「古河電気工業」という。)及び(株)フジクラの3社(以下「3社」という。)並びに昭和電線ケーブルシステム(株)、(株)アドバンスト・ケーブル・システムズ(以下「ACS」という。)、コーニングインターナショナル(株)、昭和電線ホールディングス(株)及び日立電線(株)(以下「日立電線」という。)の8社は、遅くとも平成17年2月9日以降(注9)、第7表の番号1記載の光ファイバケーブル製品について、販売価格の低落防止(3社にあってはこれに加え販売金額の均等化)を図るため、共同して、見積り合わせごとに、覚悟値(注10)及び見積り順位(注11)を決定し、決定した覚悟値及び見積り順位に応じた、見積り合わせの参加者それぞれが提示すべき見積価格を決定するようにすることにより、公共の利益に反して、第7表の番号1記載の光ファイバケーブル製品の販売分野における競争を実質的に制限していた。

(注9) 昭和電線ケーブルシステム(株)にあっては平成18年4月3日以降、ACSにあっては同月1日以降、コーニングインターナショナル(株)にあっては同年3月31日までの間、昭和電線ホールディングス(株)にあっては遅くとも同年1月11日以降同年4月2日までの間、日立電線にあっては同年3月31日までの間の行為である。

(注10) 見積り合わせにおけるNTT3社(日本電信電話(株)、NTT東日本及びNTT西日本の3社をいう。以下同じ。)との価格交渉において目標とする現行の発注単価からの低減率の限度値又は目標とする下限価格をいう(以下このaにおいて同じ。)。

(注11) 見積り合わせの参加者それぞれの提示する見積価格の低さの順位をいう。

b FASコネクタ(第7表の番号2記載の製品)3社並びに住友スリーエム(株)、ACS及び日立電線の6社は、遅くとも平成18年2月8日以降(注12)、第7表の番号2記載のFASコネクタについて、販売価格の低落防止を図るため、共同して、覚悟値(注13)及び見積り順位を決定し、決定した覚悟値及び見積り順位に応じた、見積り合わせの参加者それぞれが提示すべき見積価格を決定するようにすることにより、公共の利益に反して、第7表の番号2記載のFASコネクタの販売分野における競争を実質的に制限していた。

(注12) ACSにあっては平成18年4月1日以降、日立電線にあっては同年3月31日までの間の行為である。

(注13) 見積り合わせにおけるNTT3社との価格交渉において目標とする現行の発注単価からの低減率の限度値をいう(以下このb及び後記cにおいて同じ。)。

c 熱収縮スリーブ(第7表の番号3記載の製品

3社は、遅くとも平成17年2月9日以降、第7表の番号3記載の熱収縮スリーブについて、販売価格の低落防止を図るため、共同して、覚悟値及び見積り順位を決定し、決定した覚悟値及び見積り順位に応じた、見積り合わせの参加者それぞれが提示すべき見積価格を決定するようにすることにより、公共の利益に反して、第7表の番号3記載の熱収縮スリーブの販売分野における競争を実質的に制限していた。

(イ) NTTドコモが発注する光ファイバケーブル製品(第7表の番号4記載の製品)

3社は、遅くとも平成18年1月31日以降、第7表の番号4記載の光ファイバケーブル製品について、販売価格の低落防止及び販売金額の均等化を図るため、共同して、見積価格及び見積り順位を決定するようにすることにより、公共の利益に反して、第7表の番号4記載の光ファイバケーブル製品の販売分野における競争を実質的に制限していた。

ウ 排除措置命令の概要

前記イの違反行為ごとに、次のとおり排除措置命令を行った。

(ア) 排除措置命令の対象事業者(以下「名宛人」という。)は、それぞれ、前記イの行為を取りやめている旨を確認すること及び今後、前記イの行為と同様の行為を行わず、各社がそれぞれ自主的に販売活動を行う旨を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) 名宛人は、それぞれ、前記(ア)に基づいて採った措置を、自社を除く名宛人及びNTT東日本等に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、前記イの行為と同様の行為を行ってはならない。

(エ) 名宛人は、今後、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 自社の商品の販売に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定及び自社の従業員に対する周知徹底(古河電気工業にあっては独占禁止法の遵守についての行動指針の自社の従業員に対する周知徹底)

b 前記イの行為の対象としていた各製品の販売に関する独占禁止法の遵守についての、当該各製品の営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

(ア) 課徴金納付命令の対象事業者は、平成22年8月23日までに、それぞれ前記アの「合計」欄記載の額(総額160億9943万円)を支払わなければならない。

(イ) 調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令(当該課徴金納付命令が確定している場合に限る。)を受けたことがある事業者については、独占禁止法第7条の2第

7項の規定に基づき、5割加算した算定率を適用している。

(4) シャッターの製造業者らに対する件(全国における価格カルテル関係)(平成22年(措)第15号)

ア 関係人

イ 違反行為の概要

三和シヤッター工業(株)、文化シヤッター(株)及び東洋シヤッター(株)の3社(以下「3社」という。)は、特定シャッター(注)の原材料である鋼材の価格が平成20年4月以降上昇する見込みであったことから、同年3月5日頃、同年4月1日見積分から、特定シャッターの需要者向け販売価格について、現行価格より10パーセントを目途に引き上げることを合意することにより、公共の利益に反して、我が国における特定シャッターの販売分野における競争を実質的に制限していた。

(注) 「特定シャッター」とは、軽量シャッター及び重量シャッター(いずれもグリルシャッターを含み、これらのシャッターの取付工事等の役務が併せて発注される場合には当該役務を含む。)をいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 3社は、それぞれ、前記イの合意が消滅している旨を確認すること及び今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定シャッターの需要者向け販売価格を決定せず、各社がそれぞれ自主的に決める旨を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) 3社は、それぞれ、前記(ア)に基づいて採った措置を、自社を除く2社に通知するとともに、自社の取引先である特定シャッターの需要者及び商社に周知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 3社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定シャッターの需要者向け販売価格を決定してはならない。

(エ) 3社は、今後、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 自社の従業員に対する、自社の商品の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の周知徹底(東洋シヤッター(株)にあっては作成及び周知徹底)

b 特定シャッターの販売活動に関する独占禁止法の遵守についての、特定シャッターの営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

3社は、平成22年9月10日までに、それぞれ前記アの表の「課徴金額」欄記載の額(総額48億2331万円)を支払わなければならない。

(5) シャッターの製造業者らに対する件(近畿地区における受注調整関係)(平成22年(措)第16号)

ア 関係人

(注1) 三和シヤッター工業(株)は、平成19年10月1日に吸収分割により三和ホールディングス(株)からシャッター等(注3)の製造業を承継し、同日付けで商号を三和シヤッター(株)から現商号に変更したものである。

(注2) 三和ホールディングス(株)は、シャッター等の製造業を営んでいた者であるが、平成19年10月1日に吸収分割により三和シヤッター工業(株)に同事業を承継させ、同日付けで商号を三和シヤッター工業(株)から現商号に変更したものであり、以後、同事業を営んでいない。

(注3) 「シャッター等」とは、重量シャッター、軽量シャッター、オーバーヘッドドア、シートシャッターその他のシャッター及び危害防止装置等のシャッターの関連製品(ドア等の物品又は取付工事等の役務が併せて発注される場合には当該物品又は当該役務を含む。)をいう。

(注4) 表中の「○」は、その事業者が排除措置命令の名宛人であることを示している。

(注5) 表中の「-」は、その事業者が排除措置命令の名宛人とならない違反行為者であることを示している。

イ 違反行為の概要

三和シヤッター工業(株)、文化シヤッター(株)及び東洋シヤッター(株)の3社(以下「3社」という。)並びに三和ホールディングス(株)の4社(以下「4社」という。)は、遅くとも平成19年5月16日以降(三和ホールディングス(株)にあっては同年9月30日までの間、三和シヤッター工業(株)にあっては同年10月1日以降)、近畿地区における特定シャッター等(注6)について、受注価格の低落防止を図るため(ア) 各社の支店長級の者による会合を開催するなどして、建設業者から見積りの依頼があった旨又は見積りの依頼が見込まれている旨を相互に連絡する

(イ) 見積りの依頼の状況、4社の建設業者に対する営業活動の実績等を勘案し、話合いにより受注予定者を決定する

(ウ) a 受注予定者は、建設業者に提示する自らの見積価格を定め、受注予定者以外の者は、受注予定者よりも高い見積価格を定め、又は、建設業者に対する営業活動を自粛すること等により、受注予定者が建設業者に対して提示した見積価格で受注できるように協力する

b 既に受注予定者を決定している近畿地区における特定シャッター等について、建設業者が分割発注(注7)を行い、受注予定者以外の者も当該近畿地区における特定シャッター等の一部を受注することとなった場合、4社のうち受注予定者以外の者は、これについて、受注予定者が建設業者に対して提示していた見積価格と同じ水準の価格で受注する旨の合意の下に、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにするとともに、受注予定者以外の者も受注することとなった場合には受注予定者が建設業者に対して提示していた見積価格と同じ水準の価格で受注するようにしていた。

(注6) 「近畿地区における特定シャッター等」とは、建設業者が発注する、近畿地区における建築物その他の工作物に取り付けられるシャッター等であって、4社のいずれかにおいて積算価格の額(ドア等の物品及び当該物品に係る取付工事等の役務の積算価格の額を除く。)が5000万円以上となるものをいう。

(注7) 「分割発注」とは、建設業者が、建設工事の工期が限られているなどの事情により、見積りを依頼した近畿地区における特定シャッター等について、その内訳に応じて分割した上で複数のシャッター業者に発注することをいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 3社は、それぞれ、前記イの行為を取りやめている旨を確認すること及び今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、建設業者が発注する、近畿地区における建築物その他の工作物に取り付けられるシャッター等について、受注予定者を決定せず、各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) 3社は、それぞれ、前記(ア)に基づいて採った措置を、自社を除く2社並びに近畿地区における特定シャッター等についての自社の取引先である建設業者及び商社に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 3社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、建設業者が発注する、近畿地区における建築物その他の工作物に取り付けられるシャッター等について、受注予定者を決定してはならない。

(エ) 3社は、今後、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 自社の従業員に対する、自社の商品の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の周知徹底(東洋シヤッター(株)にあっては作成及び周知徹底)

b シャッター等の受注に関する独占禁止法の遵守についての、近畿地区におけるシャッター等の営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

4社は、平成22年9月10日までに、それぞれ前記アの「課徴金額」欄記載の額(総額6億9833万円)を支払わなければならない。

(6) 鹿児島県が発注する海上工事の入札等の参加業者に対する件(平成22年(措)第18号)

ア 関係人

(注1) 表中の「○」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象となる違反行為者であることを示している。

(注2) 表中の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反行為者であることを示している。

(注3) 表中の「●」は、その事業者が、違反行為者以外で、排除措置命令の対象となる者であることを示している。

(注4) 表中の「/」は、その事業者が課徴金納付命令の対象とならない者であることを示している。

(注5) 表中の「※1」を付した事業者は、平成21年11月1日付けで商号を吉留建設産業(株)から現商号に変更した上で、同月2日、新設分割により設立した表中の「※3」を付した事業者に建設業に関する事業の全部を承継させ、以後、建設業を営んでおらず、同日以降、違反行為を行っていない。

(注6) 表中の「※2」を付した事業者は、平成20年8月12日付けで保有していた作業船を売却し、海上工事に係る一般競争入札の資格要件を満たさなくなったこと等により、平成21年4月1日以降、鹿児島県発注の特定海上工事の入札及び見積り合わせに参加していないため、同日以降、違反行為を行っていない。

イ 違反行為の概要

違反行為者31社は、遅くとも平成18年4月1日以降、鹿児島県が一般競争入札若しくは指名競争入札(いずれも総合評価方式によるものを含む。)又は見積り合わせによる随意契約の方法により発注する海上工事(以下「鹿児島県発注の特定海上工事」という。)について、受注価格の低落防止等を図るため

(ア)a 受注すべき者又は特定建設工事共同企業体(以下「受注予定者」という。)を決定する

b 受注すべき価格は、受注予定者(受注予定者が特定建設工事共同企業体である場合にあってはその代表者)が定め、受注予定者以外の者は、受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する旨の合意の下に

(イ)a 当該工事の施工場所となる港湾、漁港、海岸等(以下「港湾等」という。)に係る継続受注者(注7)が当該工事の入札又は見積り合わせに参加する場合においては、原則として、当該継続受注者が1社のときは、その者又はその者を代表者とする特定建設工事共同企業体を受注予定者とし、当該継続受注者が複数社のときは、当該継続受注者間の話合いにより受注予定者を決定する

b 当該工事の施工場所となる港湾等に係る継続受注者が存在しない場合又は当該継続受注者が入札若しくは見積り合わせに参加することができない場合においては、受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1社のときは、その者又はその者を代表者とする特定建設工事共同企業体を受注予定者とし、受注希望者が複数社のときは、当該工事の施工場所となる港湾等における過去の海上工事の受注実績、当該港湾等と受注希望者の営業所との距離等の事情を勘案し、受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定するなどにより、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、鹿児島県発注の特定海上工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注7) 「継続受注者」とは、施工場所となる港湾等に係る海上工事を過去から継続的に受注している者をいう。鹿児島県においては、海上工事の施工場所となる港湾等の多くについて、継続受注者が1社又は複数社存在しており、違反行為者31社の大部分は、いずれかの港湾等に係る継続受注者となっ

ていた。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 排除措置命令の対象事業者31社(以下「名宛人31社」という。)は、それぞれ、次の事項(承継事業者にあっては次のbの事項)を、取締役会等において決議しなければならない。

a 前記イの行為を取りやめている旨を確認すること

b 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、鹿児島県発注の特定海上工事について、受注予定者を決定せず、各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨

(イ) 名宛人31社は、それぞれ、前記(ア)に基づいて採った措置を、自社を除く30社及び鹿児島県に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人31社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、鹿児島県発注の特定海上工事について、受注予定者を決定してはならない。

エ 課徴金納付命令の概要

27社は、平成23年2月10日までに、それぞれ前記アの「課徴金額」欄記載の額(総額14億4054万円)を支払わなければならない。

(7) 建設・電販向け電線の製造業者及び販売業者に対する件(平成22年(措)第19号)

ア 関係人

(注1) 表中の「○」は、その事業者が排除措置命令の名宛人であることを示している。

(注2) 表中の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の名宛人とならない違反事業者であることを示している。

(注3) 昭和電線販売(株)は、建設・電販向け電線の販売業を営んでいた者であるが、平成18年3月31日付けで解散の決議を行い、平成19年1月5日付けで特別清算終結の決定が確定したものである。

イ 違反行為の概要

矢崎総業(株)(以下「矢崎総業」という。)及び(株)フジクラ・ダイヤケーブル(以下「フジクラ・ダイヤケーブル」という。)の2社(以下「2社」という。)並びに住電日立ケーブル(株)(以下「住電日立ケーブル」という。)、古河エレコム(株)(以下「古河エレコム」という。)、昭和電線ケーブルシステム(株)(以下「昭和電線ケーブルシステム」という。)及び昭和電線販売(株)の6社は、遅くとも平成17年4月1日までに(注4)、建設・電販向け電線(注5)について、販売価格(注7)の引上げ又は維持を図るため

(ア) 共通の基準価格表(注8)を用いる

(イ) 共通の銅ベース(注9)を用いる

(ウ) 共通の値引き率を用いる

こととし、これにより販売価格を決定していく旨を合意することにより、公共の利益に反して、我が国における建設・電販向け電線の販売分野における競争を実質的に制限していた。

(注4) 昭和電線ケーブルシステムにあっては、平成18年4月3日に合意に参加した。

(注5) 電気工事業者又は販売業者に対して販売される3品種(注6)(電気工事業者及び販売業者以外の者から見積り依頼を受けた販売業者に対して販売される3品種を除く。)をいう。

(注6) 電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号。以下「省令」という。)

第1条第6号に規定する電線(省令第2条第1項第3号に規定する特別高圧の電気の伝送に使用されるものを除く。)のうち、CV(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルをいう。以下同じ。)、CVV(制御用ビニル絶縁ビニルシースケーブルをいう。以下同じ。)及びIV(ビニル絶縁電線をいう。以下同じ。)並びにこれらの派生品(CV、CVV及びIVについて用途・目的等に応じてその素材を変更し、又は加工を施すなどしたものをいう。ただし、分岐付きケーブルを除く。以下同じ。)をいう。

(注7) 販売価格については、原則として、基準表(注10)に銅ベース(注9)を適用することにより、基準表を構成する表のうち使用する表を特定し、当該表記載の価格に販売先ごとに値引き率を適用することにより決定されていた。

(注8) 基準表及び基準表と併せて用いることにより販売価格を決定するための表の総称。

(注9) 電気銅(注11)1トン当たりの価格であって、基準表を構成する表を特定するためのものをいう。

(注10) 電気銅(注11)1トン当たりの価格ごとに建設・電販向け電線の種類、太さ、電圧及び心数別の価格が記載された表により構成される表をいう。

(注11) 電解精製等により銅成分99.99パーセント以上に精製した銅製品をいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 2社は、それぞれ

a 前記イの合意が消滅している旨を確認すること

b 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、建設・電販向け電線の販売価格を決定せず、各社がそれぞれ自主的に決める旨

c 今後、相互に、又は他の事業者と、建設・電販向け電線の販売価格の改定に関して情報交換を行わない旨を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) 2社は、それぞれ、前記(ア)に基づいて採った措置を、相互に、並びに住電日立ケーブル、古河エレコム及び昭和電線ケーブルシステムに通知するとともに、自社の取引先である電気工事業者及び建設・電販向け電線の販売業者等に周知し、かつ、自社の従業員等に周知徹底しなければならない。

(ウ) 2社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、建設・電販向け電線の販売価格を決定してはならない。

(エ) 2社は、今後、それぞれ、相互に、又は他の事業者と、建設・電販向け電線の販売価格の改定に関して情報交換を行ってはならない。

(オ) 2社は、今後、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 自社の従業員等に対する、自社の商品の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の周知徹底

b 建設・電販向け電線の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての、建設・電販向け電線の営業担当者等に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

矢崎総業、住電日立ケーブル、フジクラ・ダイヤケーブル及び古河エレコムは、平成23年2月21日までに、それぞれ前記アの「課徴金額」欄記載の額(総額108億3817万円)を支払わなければならない。

2 独占禁止法第19条違反事件

(1) ロイヤルホームセンター(株)に対する件(平成22年(措)第17号)

ア 関係人

イ 違反行為の概要

(ア) ロイヤルホームセンター(株)(以下「ロイヤルホームセンター」という。)は、遅くとも平成18年11月23日以降、店舗の閉店又は全面改装(注1)に伴い自社の店舗で販売しないこととした商品及び棚替え(注2)又は商品改廃(注3)に伴い定番商品(注4)から外れた商品について、これらの商品の納入業者(注5)であってその取引上の地位が自社に対して劣っているものに対し、当該納入業者の責めに帰すべき事由がないなどにもかかわらず、これらの商品を返品していた。

(イ) ロイヤルホームセンターは、遅くとも平成18年11月23日以降、店舗の開店若しくは閉店、全面改装又は棚替えに際し、これらを実施する店舗に商品を納入する納入業者であってその取引上の地位が自社に対して劣っているものに対し、当該納入業者以外の者が納入した商品を含む当該店舗の商品について、売場への搬入、陳列、撤去、売場からの搬出等の作業を行わせるため、あらかじめ当該納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく、かつ、派遣のために通常必要な費用を自社が負担することなく、当該納入業者の従業員等を派遣させていた。

(ウ) 本件について、公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ、ロイヤルホームセンターは、平成21年12月21日以降、前記(ア)及び(イ)の行為を取りやめている。

(注1) 「全面改装」とは、ロイヤルホームセンターが、自社の既存の店舗について、社長、営業本部長等の店舗運営責任者又は取締役会の決定により、売場の移動、商品部門別の売場面積の拡縮、設備の改修等の改装を行うことをいう。

(注2) 「棚替え」とは、ロイヤルホームセンターが、商品部門ごとに、自社の全部又は一部の店舗を対象に、売場における商品配置を見直し、各店舗における定番商品(注4)の構成及びその陳列場所の変更を行うことをいう。

(注3) 「商品改廃」とは、ロイヤルホームセンターが、製造業者による新商品の発売又は既存の商品の製造中止、自社のプライベートブランドの商品の導入等に伴い、定番商品(注4)の入替えを行うこと(棚替えに伴うものを除く。)をいう。

(注4) 「定番商品」とは、ロイヤルホームセンターが、自社の店舗において一定期間継続して販売することとしている商品をいう。

(注5) 「納入業者」とは、ロイヤルホームセンターが販売する商品をロイヤルホームセンターに納入する事業者のうち、ロイヤルホームセンターと継続的な取引関係にあるものをいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) ロイヤルホームセンターは、前記イ(ア)及び(イ)の行為を取りやめている旨を確認すること及び今後当該行為と同様の行為を行わない旨を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) ロイヤルホームセンターは、前記(ア)に基づいて採った措置を、納入業者に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) ロイヤルホームセンターは、今後、前記イ(ア)及び(イ)の行為と同様の行為を行ってはならない。

(エ) ロイヤルホームセンターは、今後、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成

b 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての、役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査

(2) ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)に対する件(平成22年(措)第20号)

ア 関係人

イ 違反行為の概要

(ア) ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)(以下「ジョンソン・エンド・ジョンソン」という。)は、取引先小売業者との取引に当たり、ワンデーアキュビュー90枚パック(注1)の販売及びワンデーアキュビューモイスト90枚パック(注2)の販売に関し、それぞれ、当該製品の販売開始以降、当該取引先小売業者に対し、広告(注3)において販売価格の表示を行わないようにさせていた。

(イ) ジョンソン・エンド・ジョンソンは、DDプランと称する販売促進策(注4)の対象事業者として同社が選定した取引先小売業者との取引に当たり、ワンデーアキュビューモイスト30枚パック(注5)の販売に関し、遅くとも平成21年12月以降、当該取引先小売業者に対し、ダイレクトメールを除く広告において販売価格の表示を行わないようにさせていた。

(注1) 「ワンデー アキュビュー」の商標で販売する一日使い捨てタイプの視力補正用コンタクトレンズを1箱90枚入りで包装したものをいう。

(注2) 「ワンデー アキュビュー モイスト」の商標で販売する一日使い捨てタイプの視力補正用コンタクトレンズ(以下「ワンデーアキュビューモイスト」という。)を1箱90枚入りで包装したものをいう。

(注3) インターネット上に開設されたウェブサイトのトップページ以外のページ及び店頭における広告を除く。

(注4) ワンデーアキュビューモイストの納入価格の引下げ及びリベートの支払を行うことを内容とするものをいう。

(注5) ワンデーアキュビューモイストを1箱30枚入りで包装したものをいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) ジョンソン・エンド・ジョンソンは、前記イの行為を行っていない旨を確認すること及び今後当該行為と同様の行為を行わない旨を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) ジョンソン・エンド・ジョンソンは、前記(ア)に基づいて採った措置を、自社の一日使い捨てタイプの視力補正用コンタクトレンズの小売業者に通知するとともに、一般消費者に周知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) ジョンソン・エンド・ジョンソンは、今後、自社の一日使い捨てタイプの視力補正用コンタクトレンズの販売に関し、前記イの行為と同様の行為を行ってはならない。

(エ) ジョンソン・エンド・ジョンソンは、今後、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 自社の一日使い捨てタイプの視力補正用コンタクトレンズの販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成

b 自社の一日使い捨てタイプの視力補正用コンタクトレンズの販売活動に関する独占禁止法の遵守についての、自社の一日使い捨てタイプの視力補正用コンタクトレンズの営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

第3 警告

平成22年度において警告を行ったものの概要は、次のとおりである。

第8表 平成22年度警告事件一覧表

(注) 一般指定とは、不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)を指す。

第4 告発

私的独占、カルテルなどの重大な独占禁止法違反行為については、排除措置命令等の行政上の措置のほか罰則が設けられているところ、これらについては公正取引委員会による告発を待って論ずることとされている(独占禁止法第96条、第74条第1項及び第2項)。

公正取引委員会は、平成17年10月、平成17年独占禁止法改正法の趣旨を踏まえ、「独占禁止法違反に対する刑事告発及び犯則事件の調査に関する公正取引委員会の方針」を公表し、独占禁止法違反行為に対する抑止力強化の観点から、積極的に刑事処罰を求めて告発を行っていくこと等を明らかにしている。

平成22年度において、検事総長に告発した事件はなかった。