第2部 各論

第2章 違反被疑事件の審査及び処理

第1 違反被疑事件の審査及び処理の状況

1 排除措置命令等

独占禁止法は、事業者が私的独占又は不当な取引制限をすること、不公正な取引方法を用いること等を禁止している。公正取引委員会は、一般から提供された情報、自ら探知した事実等を検討し、これらの禁止規定に違反する事実があると思料するときは、独占禁止法違反被疑事件として必要な審査を行っている。

審査事件のうち必要なものについては独占禁止法の規定に基づく権限を行使して審査を行い(第47条)、違反する事実があると認められたときは、排除措置命令の名宛人となるべき者に対し、予定される排除措置命令の内容等を通知し(第49条第5項)、意見を述べ、及び証拠を提出する機会の付与を行い(第49条第3項)、その内容を踏まえて、排除措置命令を行っている。

また、法的措置を採るに足る証拠が得られなかった場合であっても、独占禁止法違反の疑いがあるときは、関係事業者等に対して警告を行い、是正措置を採るよう指導している(注)。

さらに、違反行為の存在を疑うに足る証拠は得られなかったが、独占禁止法違反につながるおそれのある行為がみられた場合には、未然防止を図る観点から注意を行っている。

なお、法的措置又は警告をしたときは、その旨公表している。また、注意及び打切りについては、競争政策上公表することが望ましいと考えられる事案であり、かつ、関係事業者から公表する旨の了解を得た場合又は違反被疑の対象となった事業者が公表を望む場合は、その旨公表している。

平成23年度における審査件数(不当廉売事案で迅速処理したもの〔第1-2表〕を除く。)は、前年度からの繰越しとなっていたもの23件、年度内に新規に着手したもの157件、合計180件であり、このうち本年度内に処理した件数は171件である。171件の内訳は、法的措置が22件、警告が2件、注意が138件及び違反事実が認められなかったため審査を打ち切ったものが9件となっている(第1-1表参照)。

(注) 公正取引委員会は、警告を行う場合にも、公正取引委員会の審査に関する規則に基づき、命令の際の事前手続に準じた手続を経ることとしている。

第1-1表 審査事件処理状況の推移(不当廉売事案で迅速処理(注1)を行ったものを除く。)

(注1) 申告のあった不当廉売事案に対し可能な限り迅速に処理する(原則2か月以内)という方針に基づいて行う処理をいう。

(注2) 排除措置命令を行っていない課徴金納付命令事件数である。

(注3)  ( )内の数字は、平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金納付命令に係る審判開始決定を行った関係人数である。

(注4) 平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金の納付を命ずる審決に係る金額を含み、同法に基づき審判手続を開始した課徴金納付命令に係る金額は含まない。

第1-2表 不当廉売事案の迅速処理件数の推移

第1図 法的措置件数と対象事業者等の数の推移

平成23年度の処理件数を行為類型別にみると、価格カルテル9件、入札談合12件、その他のカルテル2件、不公正な取引方法135件、その他13件となっている(第2表参照)。法的措置を採った事件は22件であり、この内訳は、価格カルテル5件、入札談合12件、不公正な取引方法5件となっている(第2表及び第3表参照)。

第2表 平成23年度審査事件(行為類型別)一覧表

(注1) 複数の行為類型に係る事件は、主たる行為に即して分類している。

(注2) 価格カルテルとその他のカルテルが関係している事件は、価格カルテルに分類している。

(注3) 「その他のカルテル」とは、数量、販路、顧客移動禁止、設備制限等のカルテルである。

(注4) 事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにする行為(独占禁止法第8条第5号)は、不公正な取引方法に分類している。

(注5) 「その他」とは、事業者団体による構成事業者の機能活動の制限等である。

第3表 排除措置命令等の法的措置件数(行為類型別)の推移

(注1) 複数の行為類型に係る事件は、主たる行為に即して分類している。

(注2) 価格カルテルとその他のカルテルが関係している事件は、価格カルテルに分類している。

(注3) 「その他のカルテル」とは、数量、販路、顧客移動禁止、設備制限等のカルテルである。

(注4) 事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにする行為(独占禁止法第8条第5号)は、不公正な取引方法に分類している。

(注5) 「その他」とは、事業者団体による構成事業者の機能活動の制限等である。

2 課徴金納付命令等

(1) 課徴金納付命令の概要

独占禁止法は、カルテル・入札談合等の未然防止という行政目的を達成するために、行政庁たる公正取引委員会が違反事業者等に対して金銭的不利益である課徴金の納付を命ずることを規定している(第7条の2第1項、第2項及び第4項、第8条の3、第20条の2、第20条の3、第20条の4、第20条の5並びに第20条の6)。

課徴金の対象となる行為は、事業者又は事業者団体の行うカルテルのうち、商品若しくは役務の対価に係るもの又は商品若しくは役務について供給量若しくは購入量、市場占有率若しくは取引の相手方を実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの並びにいわゆる支配型私的独占で被支配事業者が供給する商品若しくは役務について、その対価に係るもの又は供給量、市場占有率若しくは取引の相手方を実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの、いわゆる排除型私的独占のうち供給に係るもの、独占禁止法で定められた不公正な取引方法である、共同の取引拒絶、差別対価、不当廉売及び再販売価格の拘束のうち、一定の要件を満たしたもの並びに優越的地位の濫用のうち継続して行われたものである。

平成23年度においては、延べ277名に対し総額442億5784万円の課徴金の納付を命じた(第4表、第5表及び第6表参照)。このうち、違反を繰り返した場合の割増算定率が適用された事業者は、5事件における延べ5名であった。

(2) 課徴金減免制度の運用状況

平成23年度における課徴金減免制度に基づく事業者からの報告等の件数は143件であった(課徴金減免制度導入〔平成18年1月〕以降の件数は延べ623件)。

なお、平成23年度においては、9事件延べ27名の課徴金減免申請事業者について、当該事業者からの申出により、これらの事業者の名称、免除の事実又は減額の率等を公表した(注)。

(注) 公正取引委員会は、課徴金減免制度の適用を受けた事業者から公表の申出がある場合には、課徴金納
付命令を行った際等に、公正取引委員会のウェブサイト(http://www.jftc.go.jp/dk/genmen/kouhyou.html)に、当該事業者の名称、所在地、代表者名及び免除の事実又は減額の率等を公表することとしている。

第2図 課徴金額等の推移

(注) 課徴金額については、100万円以下切捨て。

3 申告

平成23年度においては、独占禁止法の規定に違反する事実があると思われ、公正取引委員会に報告(申告)された件数は8,759件となっている(第3図参照)。この報告が書面で具体的な事実を摘示して行われた場合には、措置結果を通知することとされており(第45条第3項)、平成23年度においては、8,388件の通知を行った。

また、公正取引委員会は、独占禁止法違反被疑行為の端緒情報をより広く収集するため、平成14年4月からインターネットを利用した申告が可能となる電子申告システムを公正取引委員会のウェブサイト上に設置しているところ、平成23年度においては、同システムを利用した申告が950件あった。

第3図 申告件数の推移

第4表 平成23年度法的措置一覧表

(注1) 一般指定とは、不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)を指す。

(注2) 課徴金納付命令対象事業者数の合計である。

第5表 平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金納付命令

(注1) 平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく審判手続の開始により失効した課徴金納付命令を含む。

第6表 課徴金制度の運用状況(注1)

(注1) 平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金の納付を命ずる審決を含み、同法に基づく審判手続の開始により失効した課徴金納付命令を除く。

(注2) 平成15年9月12日、協業組合カンセイに係る審決取消請求事件について、審決認定(平成10年3月11日、課徴金額1934万円)の課徴金額のうち967万円を超える部分を取り消す判決が出された(同判決は確定した。)。

(注3) 平成16年2月20日、土屋企業(株)に係る審決取消請求事件について、審決認定(平成15年6月13日、課徴金額586万円)の課徴金額のうち302万円を超える部分を取り消す判決が出された(同判決は確定した。)。

第2 法的措置

平成23年度においては、22件について法的措置を採った。平成23年度に法的措置を採った22件の違反法条をみると、独占禁止法第3条後段(不当な取引制限の禁止)違反17件及び同法第19条(不公正な取引方法の禁止)違反5件となっている。

法的措置を採った前記22件の概要は、次のとおりである。

1 独占禁止法第3条後段違反事件

(1) 山梨県が峡東地域を施工場所として発注する土木一式工事の入札参加業者に対する件
   (平成23年(措)第1号・第2号)

ア 関係人
 (ア) 塩山地区特定土木一式工事(注1)に係る違反行為者

(注1) 「塩山地区特定土木一式工事」とは、山梨県発注の特定土木一式工事(山梨県が、一般競争入札又は指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事であって、①A等級業者のみ、②B等級業者のみ、③A等級業者及びB等級業者のみ又は④特定建設工事共同企業体のみを入札の参加者とするものをいう。)のうち、それぞれ、塩山地区(山梨県山梨市及び甲州市の区域)を施工場所とするものをいう。

なお、「A等級業者」又は「B等級業者」とは、それぞれ、山梨県から土木一式工事についてAの等級に格付されている事業者又はBの等級に格付されている事業者をいう。

(注2) 表中の「排除措置命令」及び「課徴金納付命令」欄記載の「○」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象となる違反行為者であることを、同欄記載の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反行為者であることを示している。

(注3) 表中の「※1」を付した事業者は、平成18年12月14日、商号を㈲峡東建設から現商号に変更している。

(注4) 表中の「※2」を付した事業者は、平成20年1月1日、商号を田辺建設(株)から現商号に変更している。

(注5) 表中の「※3」を付した事業者は、平成21年9月28日、山梨県から土木一式工事に係る競争入札の参加資格要件を満たす者としての登録を抹消されており、事実上事業活動の全部を取りやめている。

(注6) 表中の「※4」を付した事業者は、それぞれ、株主総会の決議により解散し、事業活動の全部を取りやめている。

(注7) 表中の「※5」を付した事業者は、平成23年1月17日、山梨県知事から建設業法の規定に基づく許可を取り消され、以後、建設業を営んでおらず、事実上事業活動の全部を取りやめている。

(注8) 表中の「※6」を付した事業者は、それぞれ、破産手続開始の決定により解散し、事業活動の全部を取りやめている。

(イ) 石和地区特定土木一式工事(注9)に係る違反行為者

(注9) 「石和地区特定土木一式工事」とは、山梨県発注の特定土木一式工事(山梨県が、一般競争入札又は指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事であって、①A等級業者のみ、②B等級業者のみ、③A等級業者及びB等級業者のみ又は④特定建設工事共同企業体のみを入札の参加者とするものをいう。)のうち、それぞれ、石和地区(山梨県笛吹市(平成18年4月1日から同年7月31日までの間にあっては、同県笛吹市及び東八代郡川村)の区域)を施工場所とするものをいう。

(注10) 表中の「排除措置命令」及び「課徴金納付命令」欄記載の「○」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象となる違反行為者であることを、同欄記載の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反行為者であることを示している。

(注11) 表中の「※1」を付した事業者は、それぞれ、破産手続開始の決定により解散し、事業活動の全部を取りやめている。

(注12) 表中の「※2」を付した事業者は、それぞれ、株主総会の決議により解散し、事業活動の全部を取りやめている。

(注13) 表中の「※3」を付した事業者は、それぞれ、平成19年4月1日、山梨県から土木一式工事に係る競争入札の参加資格要件を満たす者としての登録を抹消されており、事実上事業活動の全部を取りやめている。このうち、番号21の事業者は、同年2月19日、商号を初海工業(株)から現商号に変更している。

イ 違反行為の概要

前記ア(ア)の表記載の30社は塩山地区特定土木一式工事について、前記ア(イ)の表記載の21社は石和地区特定土木一式工事について、それぞれ、遅くとも平成18年4月1日以降(注14)、受注価格の低落防止を図るため
 (ア)受注すべき者又は特定建設工事共同企業体(以下において「受注予定者」という。)を決定する
 (イ)受注すべき価格は、受注予定者が定め、受注予定者以外の者は、受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する

旨の合意の下に、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、各工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注14) 前記アの表記載の番号15の事業者にあっては遅くとも平成19年5月15日以降、前記アの表記載の番号9の事業者にあっては遅くとも同年6月19日以降、番号10の事業者にあっては遅くとも平成20年10月2日以降、番号13の事業者にあっては遅くとも平成21年7月30日以降の行為である。

ウ 排除措置命令の概要

前記イの塩山地区特定土木一式工事及び石和地区特定土木一式工事に係る違反行為ごとに、次のとおり排除措置命令を行った。

(ア) 排除措置命令の対象事業者(以下において「名宛人」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会等において決議しなければならない。

a 前記イの行為を行っていない旨を確認すること

b 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、各工事について、受注予定者を決定せず、各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨

c 今後、各工事について、自社又は自社を構成員とする特定建設工事共同企業体が入札に参加する旨を、山梨県建設業協会塩山支部若しくは石和支部、(株)山梨県土地改良協会峡東支部又は塩山地区治山林道協会(以下(1)において「支部等」
という。)に連絡しない旨

(イ) 名宛人は、それぞれ、前記に基づいて採った措置を、自社を除く名宛人及び山梨県に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、各工事について、受注予定者を決定してはならない。

(エ) 名宛人は、今後、それぞれ、各工事について、自社又は自社を構成員とする特定建設工事共同企業体が入札に参加する旨を、支部等に連絡してはならない。

エ 課徴金納付命令の概要

課徴金納付命令の対象事業者は、平成23年7月19日までに、それぞれ前記ア(ア)の表又は前記ア(イ)の表の「課徴金額」欄記載の額(総額7億5682万円)を支払わなければならない。

(2) エアセパレートガスの製造業者及び販売業者に対する件(平成23年(措)第3号)

ア 関係人

イ 違反行為の概要

 大陽日酸(株)、日本エア・リキード(株)、エア・ウォーター(株)及び岩谷産業(株)(以下「岩谷産業」という。)の4社(以下(2)において「4社」という。)は、遅くとも平成20年1月23日までに、特定エアセパレートガス(注)の販売価格について、同年4月1日出荷分から、現行価格より10パーセントを目安に引き上げることを合意することにより、公共の利益に反して、我が国における特定エアセパレートガスの販売分野における競争を実質的に制限していた。

(注) 「エアセパレートガス」とは、空気から製造される酸素、窒素及びアルゴンをいうところ、「特定エアセパレートガス」とは、エアセパレートガスのうち、タンクローリーによる輸送によって供給するもの(医療に用いられるものとして販売するものを除く。)をいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 4社は、それぞれ

a 前記イの合意が消滅している旨を確認すること

b 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定エアセパレートガスの販売価格を決定せず、各社がそれぞれ自主的に決める旨

c 今後、相互に、又は他の事業者と、特定エアセパレートガスの販売価格の改定に関して情報交換を行わない旨

を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) 4社は、それぞれ、前記(ア)に基づいて採った措置を、自社を除く3社に通知するとともに、自社の取引先である特定エアセパレートガスの製造業者及び販売業者(当該3社を除く。)並びに需要者に周知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 4社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定エアセパレートガスの販売価格を決定してはならない。

(エ) 4社は、今後、それぞれ、相互に、又は他の事業者と、特定エアセパレートガスの販売価格の改定に関して情報交換を行ってはならない。

(オ) 4社は、今後、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 自社の従業員に対する、自社の商品の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の周知徹底(岩谷産業にあっては改定及び周知徹底)

b 特定エアセパレートガスの販売活動に関する独占禁止法の遵守についての、特定エアセパレートガスの営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

(ア) 4社は、平成23年8月29日までに、それぞれ前記アの表の「課徴金額」欄記載の額(総額141億485万円)を支払わなければならない。

(イ) 調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令(当該課徴金納付命令が確定している場合に限る。)を受けたことがある事業者については、独占禁止法第7条の2第7項の規定に基づき、5割加算した算定率を適用している。

(3) LP ガス容器の製造業者らに対する件(平成23年(措)第6号)

ア 関係人

(注1) 表中の「排除措置命令」及び「課徴金納付命令」欄記載の「○」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の名宛人であることを、同欄記載の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の名宛人とならない違反行為者であることを示している。

(注2) 神鋼JFE 機器(株)(以下「神鋼JFE 機器」という。)は、LP ガス容器の製造業を営んでいた者であるが、平成22年4月1日に、神鋼機器工業(株)(以下「神鋼機器工業」という。)に吸収合併されたことにより消滅した。

イ 違反行為の概要

 中國工業(株)、(株)関東高圧容器製作所、富士工器(株)及び萩尾高圧容器(株)の4社(以下において「4社」という。)並びに神鋼JFE 機器及び神鋼機器工業の6社(以下において「6社」という。)は、遅くとも平成18年7月中旬までに(注3)

(ア) 鋼材等の購入価格の変動に対応して、特定LP ガス容器(注4)の需要者向け販売価格の改定を共同して行う

(イ) 前記の需要者向け販売価格の改定に係る実施時期、改定額等の具体的な実施の方針(以下において「実施方針」という。)については、日本溶接容器工業会 (以下において「工業会」という。)の業務委員会の会合の場を利用して話合いにより決定する

旨を合意することにより、公共の利益に反して、我が国における特定LPガス容器の
販売分野における競争を実質的に制限していた。

(注3) 神鋼機器工業は、平成22年4月1日に神鋼JFE 機器を吸収合併したところ、同日、神鋼JFE機器に替わって合意に参加した。

(注4) 「特定LP ガス容器」とは、LP ガスを充するための鋼製の溶接容器(容器保安規則(昭和41年通商産業省令第50号)第2条第2号に規定する溶接容器をいう。)であって、充質量(注5)が50キログラム以下のもの(フォークリフト等の自動車の燃料装置用のものを除く。)をいう。

(注5) 容器保安規則第22条に規定する方法により計算した、容器に充することができるLP ガスの質量の上限値(LP ガス中のプロパンの含有率を100パーセントとして計算したもの)の整数部分をいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 4社は、それぞれ

a 前記イの合意が消滅している旨を確認すること

b 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定LP ガス容器の需要者向け販売価格を決定せず、各社がそれぞれ自主的に決める旨

c 今後、相互に、又は他の事業者と、特定LP ガス容器の原材料である鋼材等の購入価格の変動状況又は特定LP ガス容器の需要者向け販売価格の改定に関して情報交換を行わない旨を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) 4社は、それぞれ、前記(ア)に基づいて採った措置を、自社を除く3社等に通知するとともに、特定LPガス容器の需要者及び自社の特定LP ガス容器の取引先である商社に周知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 4社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定LP ガス容器の需要者向け販売価格を決定してはならない。

(エ) 4社は、今後、それぞれ、相互に、又は他の事業者と、特定LP ガス容器の原材料である鋼材等の購入価格の変動状況又は特定LP ガス容器の需要者向け販売価格の改定に関して情報交換を行ってはならない。

エ 課徴金納付命令の概要

4社は、平成23年9月26日までに、それぞれ前記アの表の「課徴金額」欄記載の額(総額14億9022万円)を支払わなければならない。

オ 工業会への要請について

6社が、工業会の業務委員会等の会合の場を利用して、前記イの合意、当該合意に基づき特定LP ガス容器の需要者向け販売価格の改定を行うための実施方針の決定等をしていた事実及び業務委員会の会合の場に出席した工業会の専務理事が、会合の場で決定された当該販売価格の改定内容を工業会の理事会に報告していた事実が認められたため、公正取引委員会は、工業会に対し、今後、工業会の会合の場で、前記イの合意等と同様の行為が行われないよう、再発防止のための措置を講じるよう要請した。

(4) VVF ケーブルの製造業者及び販売業者に対する件(平成23年(措)第7号)

ア 関係人

(注1) 表中の「排除措置命令」及び「課徴金納付命令」欄記載の「○」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象となる違反行為者であることを、同欄記載の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反行為者であることを示している。

イ 違反行為の概要

前記アの表記載の11社(以下(4)において「11社」という。)は、遅くとも平成18年6月1日までに、特定VVFケーブル(注2・3)について、11社の販売価格(注4)の引上げ又は維持を図るため

(ア) 一般品(注5)の販売価格については

a 電材店(注6)に対する販売価格は、銅建値(注7)等を勘案して話合いにより線心数が2本で導体径が1.6ミリメートルのもの(以下において「イチロクニシン」という。)の販売価格を定め、これ以外の品目の販売価格は、イチロクニシンの販売価格に連動させることにより決定する

b 専業店(注8)に対する販売価格は、前記aで定まる電材店に対する販売価格に連動させることにより決定する

(イ) 特殊品(注9)の販売価格については、前記で定まる一般品の販売価格に、その加工に要する費用を上乗せすることにより決定することとし、品目別に11社の販売価格(注4)を決定していく旨を合意することにより、公共の利益に反して、我が国における特定VVF ケーブルの販売分野における競争を実質的に制限していた。

(注2) 「VVF ケーブル」とは、600ボルトビニル絶縁ビニルシースケーブル平形のうち、次に掲げる品目をいう。VVF ケーブルは、主にビル、家屋等の建物に設置されるブレーカーから建物内部のコンセント等までの屋内配線として使用されるものである。

    1 線心数が2本で導体径が1.6ミリメートルのもの
     2 線心数が2本で導体径が2.0ミリメートルのもの
     3 線心数が2本で導体径が2.6ミリメートルのもの
     4 線心数が3本で導体径が1.6ミリメートルのもの
     5 線心数が3本で導体径が2.0ミリメートルのもの
     6 線心数が3本で導体径が2.6ミリメートルのもの
     7 線心数が4本で導体径が1.6ミリメートルのもの
     8 線心数が4本で導体径が2.0ミリメートルのもの

(注3) 「特定VVF ケーブル」とは、販売業者(電材店(注6)又は専業店(注8)をいう。)に対して販売されるVVF ケーブルをいう。

(注4) において「販売価格」とは、矢崎総業(株)が矢崎総業北海道販売(株)、矢崎総業四国販売(株)及び(有)沖縄矢崎販売の3社(以下(4)において「矢崎総業子会社3社」という。)を通じて販売する場合にあっては矢崎総業子会社3社の販売価格、富士電線工業(株)にあっては富士電線販賣(株)の販売価格、カワイ電線(株)にあってはカワイ電線商事(株)の販売価格をいう。

(注5) (4)において「一般品」とは、VVF ケーブルのうち、シース(被覆材)が灰色無地のものをいう。

(注6) (4)において「電材店」とは、電気資材を総合的に取り扱う販売業者をいう。

(注7) (4)において「銅建値」とは、日鉱金属(株)(平成22年7月1日以降はJX 日鉱日石金属(株))が公表している電気銅(電解精製等により銅成分99.99パーセント以上に精製した銅製品をいう。)1トン当たりの価格をいう。

(注8) (4)において「専業店」とは、電線を専門的に取り扱う販売業者をいう。

(注9) (4)において「特殊品」とは、VVF ケーブルのうち、一般品以外のものをいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 排除措置命令の対象事業者(以下において「名宛人」という。)は、それぞれ

a 前記イの合意が消滅している旨を確認すること

b 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定VVF ケーブルの販売価格を決定せず、各社がそれぞれ自主的に決める旨

c 今後、相互に、又は他の事業者と、特定VVF ケーブルの販売価格の改定に関して情報交換を行わない旨

d 違反行為期間中に各社が使用していた、特定VVF ケーブルのうち一般品の販売価格が銅建値ごとに品目別に記載された表(注10)(以下において「価格表」という。)を破棄する旨

を、取締役会等において決議しなければならない。

(イ) 名宛人は、それぞれ、前記に基づいて採った措置を、自社を除く名宛人等に通知するとともに、自社の取引先である特定VVF ケーブルの販売業者等に周知し、かつ、自社の従業員等に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定VVF ケーブルの販売価格を決定してはならない。

(エ) 名宛人は、今後、それぞれ、相互に、又は他の事業者と、特定VVF ケーブルの販売価格の改定に関して情報交換を行ってはならない。

(オ) 名宛人は、価格表を破棄しなければならない

(注10) 11社は、前記イの合意に基づき、価格表を作成又は改定するなどして、特定VVF ケーブルの販売価格をおおむね引き上げ又は維持していた。

エ 課徴金納付命令の概要

課徴金納付命令の対象事業者は、平成23年10月24日までに、それぞれ前記アの表の「課徴金額」欄記載の額(総額62億2286万円)を支払わなければならない。

(5) 茨城県が発注する土木一式工事及び舗装工事の入札参加業者らに対する件(平成23(措)第8号~第10号)

ア 関係人
(ア) 境土地改良事務所発注の特定土木一式工事(注1)に係る違反行為者

(注1) 「境土地改良事務所発注の特定土木一式工事」とは、茨城県が境土地改良事務所(注2)において一般競争入札又は指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事であって、①土木S等級業者及び土木A等級業者のみ、②土木A等級業者のみ、③土木A等級業者及び土木B等級業者のみ又は ④土木B等級業者のみを入札参加者とするものをいう(注3)。

(注2) 「境土地改良事務所」とは、茨城県県西農林事務所境土地改良事務所(平成21年3月31日以前にあっては茨城県境土地改良事務所)をいう。

(注3) において「土木S等級業者」、「土木A等級業者」又は「土木B等級業者」とは、それぞれ、茨城県から土木一式工事についてSの等級に決定された事業者、Aの等級に決定された事業者又はBの等級に決定された事業者をいう。

(注4) 表中の「排除措置命令」及び「課徴金納付命令」欄記載の「○」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象となる違反行為者であることを、同欄記載の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反行為者であることを示している。。

(注5) 表中の「※1」を付した事業者は、平成20年12月5日、新設分割した表中の「※2」を付した事業者に建設業に関する業務の全部を承継させ、以後、建設業を営んでおらず、同日以降、違反行為を行っていない。

(注6) 表中の「※3」を付した事業者は、平成23年4月15日、総会の決議により解散し、事業活動の全部 を取りやめている。

(注7) 表中の「※4」を付した事業者は、それぞれ、破産手続開始の決定により解散し、事業活動の全部を取りやめている。

(注8) 表中の「※5」を付した事業者は、平成21年10月31日、株主総会の決議により解散し、事業活動の全部を取りやめている。

(イ) 境工事事務所発注の特定舗装工事(注9)に係る違反行為者

(注9) 「境工事事務所発注の特定舗装工事」とは、茨城県が境工事事務所(注10)において指名競争入札の方法により発注する工事であって、①舗装工事として発注する工事であって舗装A等級業者のみを入札の参加者とするもの又は②土木一式工事として「路面再生工事」、「街路舗装工事」、「道路舗装工事」若しくは「道路舗装新設工事」のいずれかの工事名で発注する工事であって舗装A等級業者かつ土木A等級業者であるもののみを入札の参加者とするものをいう(注11)。

(注10) 「境工事事務所」とは、茨城県境工事事務所(同日以前にあっては茨城県境土木事務所)をいう。

(注11) において「舗装A等級業者」とは、茨城県から舗装工事についてAの等級に認定された事業者をいう。

(注12) 表中の「※」を付した事業者は、平成23年4月15日、総会の決議により解散し、事業活動の全部を取りやめている。

(注13) 表中の「排除措置命令」及び「課徴金納付命令」欄記載の「○」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象となる違反行為者であることを、同欄記載の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反行為者であることを示している。

(ウ)  境工事事務所発注の特定土木一式工事(注14)に係る違反行為者

(注14) 「境工事事務所発注の特定土木一式工事」とは、茨城県が境工事事務所において一般競争入札又は指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事(「路面再生工事」、「街路舗装工事」、「道路舗装工事」又は「道路舗装新設工事」の工事名で発注するものを除く。)であって、①土木S等級業者及び土木A等級事業者のみ又は②土木A等級業者のみ(いずれも茨城県の区域に本店又は主たる事務所を置く者に限る。)を入札の参加者とするものをいう。

(注15) 表中の「排除措置命令」及び「課徴金納付命令」欄記載の「○」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象となる違反行為者であることを、同欄記載の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反行為者であることを示している。

(注16) 表中の「※1」を付した事業者は、平成20年12月5日、新設分割した表中の「※2」を付した事業者に建設業に関する業務の全部を承継させ、以後、建設業を営んでおらず、同日以降、違反行為を行っていない。

(注17) 表中の「※3」を付した事業者は、平成23年4月15日、総会の決議により解散し、事業活動の全部を取りやめている。

(注18) 表中の「※4」を付した事業者は、平成23年1月20日、破産手続開始の決定により解散し、事業活動の全部を取りやめている。

(注19) 表中の「※5」を付した事業者は、平成21年10月31日、株主総会の決議により解散し、事業活動の全部を取りやめている。

イ 違反行為の概要
(ア) 境土地改良事務所発注の特定土木一式工事

前記アの表記載の66名は、遅くとも平成19年6月1日以降(注20)、共同して、境土地改良事務所発注の特定土木一式工事について、境土地改良事務所の職員が各工事の落札を予定する者(以下において「落札予定者」という。)として決定した者であって、茨城県建設業協会境支部(以下において「境支部」という。)の支部長等から受注すべき旨の伝達を受けた者を受注すべき者(以下において「受注予定者」という。)と決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、境土地改良事務所発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(イ) 境工事事務所発注の特定舗装工事

 前記アの表記載の20名は、遅くとも平成19年6月1日以降(注21)、共同して、境工事事務所発注の特定舗装工事について、受注機会の均等化を図るため、原則としてあらかじめ定められた順番により受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、境工事事務所発注の特定舗装工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(ウ) 境工事事務所発注の特定土木一式工事

前記アの表記載の39名は、遅くとも平成19年6月1日以降(注22)、共同して、境工事事務所発注の特定土木一式工事について、受注価格の低落防止を図るため、受注を希望する者の間の話合いなどにより受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、境工事事務所発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注20) 前記アの表記載の番号15、40及び53の事業者にあっては遅くとも平成19年9月27日以降、番号56の事業者にあっては遅くとも同年11月14日以降、番号44の事業者にあっては遅くとも平成20年9月26日以降、番号49の事業者にあっては遅くとも平成21年7月24日以降、番号54の事業者にあっては遅くとも同年9月1日以降、番号45の事業者にあっては遅くとも同月16日以降の行為である。

(注21) 前記アの表記載の番号14の事業者にあっては遅くとも平成19年8月23日以降、番号17及び18の事業者にあっては遅くとも平成21年6月22日以降、番号16の事業者にあっては遅くとも同月23日以降の行為である。

(注22) 前記アの表記載の番号11及び24の事業者にあっては遅くとも平成19年8月2日以降、番号26の事業者にあっては遅くとも同月22日以降、番号33の事業者にあっては遅くとも平成21年3月25日以降、番号31の事業者にあっては遅くとも同年8月20日以降、番号22の事業者にあっては遅くとも同年9月16日以降、番号14、23及び30の事業者にあっては遅くとも同月17日以降、番号29の事業者にあっては遅くとも同月25日以降の行為である。

ウ 排除措置命令の概要

前記イの違反行為ごとに、次のとおり排除措置命令を行った。

(ア) 排除措置命令の対象事業者(以下においては「名宛人」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会等において決議しなければならない。

a 前記イの行為を取りやめている旨を確認すること

b 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、前記イの工事について、受注予定者を決定せず、各自がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨

c 今後、前記イの工事について、自らが入札に参加しようとする旨を、境支部に連絡しない旨 名宛人は、それぞれ、前記に基づいて採った措置を、自らを除く名宛人及び茨城県に通知し、かつ、自らの従業員等に周知徹底しなければならない。

(イ) 名宛人は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、前記イの工事について、受注予定者を決定してはならない。

(ウ) 名宛人は、今後、それぞれ、前記イの工事について、自らが入札に参加しようとする旨を、境支部に連絡してはならない。

エ 課徴金納付命令の概要

課徴金納付命令の対象事業者は、平成23年11月7日までに、それぞれ前記ア(ア)の表、 ア(イ)の表又はア(ウ)の表の「課徴金額」欄記載の額(総額2億9227万円)を支払わなければならない。

オ 茨城県知事に対する改善措置要求等について

(ア) 入札談合等関与行為の概要

a 前記イの行為に関し、境土地改良事務所の工務課長(注23)は、遅くとも平成19年4月以降、境土地改良事務所発注の特定土木一式工事の全てについて、同事務所の所長の承認の下、各工事の落札予定者を決定し、当該工事の入札前に、落札予定者についての意向を、境支部の支部長に伝達していた(注24)。

b 前記イの行為に関し、境工事事務所の所長は、特定の事業者からの要望を受け、境工事事務所発注の特定舗装工事のうち遅くとも平成19年6月1日以降に入札が行われたものについて、当該工事の入札参加業者があらかじめ定められた順番のとおり受注できるようにするため、発注工事及び指名業者の選定に係る業務を担当する同事務所の道路管理課長及び道路整備課長(注25)に指示して、当該順番を考慮した発注工事及び指名業者の選定を行わせていた。

(注23) 平成21年3月31日以前にあっては工務第一課長。

(注24) 境支部の支部長は、自ら又は境支部の役員を通じて、当該工事の落札予定者として決定された者に対して、当該工事を受注すべき旨を伝達していた。

(注25) 平成21年3月31日以前にあっては道路維持課長及び道路河川整備第一課長。

(イ)  関係法条及び改善措置要求等

茨城県の職員による前記aの行為は、入札談合等関与行為防止法第2条第5項第1号(事業者に入札談合を行わせること)及び第2号(受注者に関する意向の教示)に該当し、また、前記bの行為は、同項第4号(入札談合の幇助)に該当し、いずれも、同法に規定する入札談合等関与行為と認められる。

よって、公正取引委員会は、茨城県知事に対し、入札談合等関与行為防止法第3条第2項の規定に基づき、今後、前記の行為と同様の行為が生じないよう、境土地改良事務所発注の特定土木一式工事及び境工事事務所発注の特定舗装工事について、当該入札談合等関与行為が排除されたことを確保するために必要な改善措置を速やかに講ずるよう求めた。また、茨城県知事に対し、この求めに応じて同条第4項の規定に基づき行った調査の結果及び講じた改善措置の内容について、同条第6項の規定に基づき公表するとともに公正取引委員会に通知するよう求めた。

さらに、会計検査院に対し、入札談合等関与行為の排除及び防止に万全を期す観点から、茨城県知事に対して改善措置を講ずるよう求めた旨の通知を行った。

カ 茨城県に対する要請について

本件審査の過程において、前記オの入札談合等関与行為以外に、茨城県が茨城県県西農林事務所において競争入札の方法により発注する建設工事について、同事務所の土地改良部門の職員が、落札予定者を決定し、当該入札の前に、落札予定者についての意向を、茨城県建設業協会筑西支部及び常総支部の各支部に所属する特定の事業者に伝達していた疑いが認められた。当該行為は、競争入札の方法により発注する建設工事について同県の職員が落札予定者として決定した事業者に当該建設工事を受注させる行為が存在したことを疑わせるものであり、入札談合等関与行為防止法上の問題を生じさせるおそれがあるものと認められる。

よって、公正取引委員会は、茨城県に対し、同県の建設工事の発注業務に関わる職員に、独占禁止法及び入札談合等関与行為防止法の趣旨及び内容を周知徹底するとともに、同県の建設工事の発注業務の実態について調査し、入札談合等関与行為防止法上の問題を生じさせるおそれがある行為が認められた場合には、同県の職員が当該行為と同様の行為を行うことがないようにするために必要な措置を講ずるよう要請した。

 

(6)石川県が発注する土木一式工事及び石川県輪島市が発注する土木一式工事の入札参加業者に対する件(平成23年(措)第11号・第12号)

ア 関係人
(ア)  石川県発注の特定土木一式工事(注1)に係る違反行為者

(注1) 「石川県発注の特定土木一式工事」とは、石川県が、石川県奥能登土木総合事務所又は石川県奥能登農林総合事務所において、制限付一般競争入札又は指名競争入札(いずれも総合評価方式によるものを含む。)の方法により土木一式工事として発注する工事(石川県による工事の設計上、作業船を使用して施工することとされるものを除く。)であって、①石川県A等級業者のみ、②石川県A等級業者及び石川県B等級業者のみ又は③石川県B等級業者のみ(いずれも石川県輪島市(以下「輪島市」という。)、珠洲市又は鳳珠郡穴水町若しくは能登町の区域に本店又は主たる事務所を置く者に限る。)を入札の参加者とするものをいう。

 なお、「石川県A等級業者」又は「石川県B等級業者」とは、それぞれ、石川県から土木一式工事についてAの等級に格付されている事業者又はBの等級に格付されている事業者をいう。

(注2) 表中の「排除措置命令」及び「課徴金納付命令」欄記載の「○」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象となる違反行為者であることを、同欄記載の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反行為者であることを示している。

(注3) 表中の「※1」を付した事業者は、それぞれ、石川県から土木一式工事に係る競争入札の参加資格要件を満たす者としての登録を抹消されており、事実上事業活動の全部を取りやめている。

(注4) 表中の「※2」を付した事業者は、それぞれ、株主総会の決議により解散し、事業活動の全部を取りやめている。このうち、番号75の事業者は、平成21年12月1日、商号を(株)高田組から現商号に変更している。

(注5) 表中の「※3」を付した事業者は、それぞれ、破産手続開始の決定により解散し、事業活動の全部を取りやめている。

(イ) 輪島市発注の特定土木一式工事(注6)に係る違反行為者

(注6) 「輪島市発注の特定土木一式工事」とは、輪島市が、制限付一般競争入札又は指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事(輪島市による工事の設計上、作業船を使用して施工することとされるもの及び推進工法を用いて施工することとされるものを除く。)であって、①輪島市A等級業者のみ、②輪島市A等級業者及び輪島市B等級業者のみ又は③輪島市B等級業者のみ(いずれも輪島市の区域に本店又は主たる事務所を置く者に限る。)を入札の参加者とするものをいう。

なお、「輪島市A等級業者」又は「輪島市B等級業者」とは、それぞれ、輪島市から土木一式工事についてAの等級に格付されている事業者又はBの等級に格付されている事業者をいう。

(注7) 表中の「排除措置命令」及び「課徴金納付命令」欄記載の「○」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象となる違反行為者であることを、同欄記載の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反行為者であることを示している。

イ 違反行為の概要
(ア) 石川県発注の特定土木一式工事

前記ア(ア)の表記載の79名は、遅くとも平成19年6月1日以降(注8)、共同して、石川県発注の特定土木一式工事について、受注価格の低落防止等を図るため

a(a) 受注すべき者(以下(6)において「受注予定者」という。)を決定する

 (b) 受注すべき価格は、受注予定者が定め、受注予定者以外の者は、受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する旨の合意の下に

b(a) 受注を希望する者(以下(6)において「受注希望者」という。)が1名のときは、その者を受注予定者とする

 (b) 受注希望者が複数名のときは、当該工事の施工場所、過去に受注した工事との継続性等を勘案して、受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する

などにより、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、石川県発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(イ) 輪島市発注の特定土木一式工事

前記ア(イ)の表記載の27名は、遅くとも平成19年4月2日以降(注9)、共同して、輪島市発注の特定土木一式工事について、受注価格の低落防止等を図るため

a(a) 受注予定者を決定する

 (b) 受注すべき価格は、受注予定者が定め、受注予定者以外の者は、受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する

旨の合意の下に

b(a) 受注希望者が1名のときは、その者を受注予定者とする

 (b) 受注希望者が複数名のときは、当該工事の施工場所、過去に受注した工事との継続性等を勘案して、受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する

などにより、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、輪島市発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注8) 前記(ア)の表記載の番号64及び68の事業者にあっては遅くとも平成20年7月1日以降、番号42の事業者にあっては遅くとも同月4日以降、番号60の事業者にあっては遅くとも同月7日以降、番号50の事業者にあっては遅くとも平成21年6月29日以降、番号65の事業者にあっては遅くとも平成22年6月21日以降、番号62の事業者にあっては遅くとも同年7月6日以降の行為である。

(注9) 前記アの表記載の番号24の事業者にあっては遅くとも平成20年10月8日以降、番号20の事業者にあっては遅くとも平成21年6月12日以降、番号25の事業者にあっては遅くとも同月17日以降の行為である。

ウ 排除措置命令の概要

 前記イの違反行為ごとに、次のとおり排除措置命令を行った。

(ア) 排除措置命令の対象事業者(以下において「名宛人」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議等しなければならない。

a 前記イの行為を取りやめている旨を確認すること

b 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、前記イの工事について、受注予定者を決定せず、各自がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨

(イ) 前記イに係る名宛人は、それぞれ、前記に基づいて採った措置を、自らを除く前記イに係る名宛人及び石川県又は輪島市に通知し、かつ、自らの従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、前記イの工事について、受注予定者を決定してはならない。

エ 課徴金納付命令の概要

課徴金納付命令の対象事業者は、平成24年1月10日までに、それぞれ前記ア(ア)の表又は前記ア(イ)の表の「課徴金額」欄記載の額(総額6億7005万円)を支払わなければならない。

 

(7) LP ガス供給機器の製造業者に対する件(平成23年(措)第14号)

ア 関係人

(注1) 表中の「排除措置命令」及び「課徴金納付命令」欄記載の「○」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の名宛人であること、同欄記載の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の名宛人とならない違反行為者であることを示している。

イ 違反行為の概要

(ア) (株)桂精機製作所、伊藤工機(株)及び富士工器(株)(以下において「3社」という。)並びに矢崎総業(株)の4社(以下において「4社」という。)は、特定LP ガス供給機器(注2)の主要な原材料であるアルミニウム等の非鉄金属の価格が高騰していたこと等から、平成18年5月23日頃、特定LP ガス供給機器について、同年6月ないし7月出荷分から、4社の販売価格(注3)を現行の販売価格より10パーセント程度引き上げることを合意した。

(イ) 4社は、平成19年から平成20年にかけて、特定LP ガス供給機器の原材料であるアルミニウム等の非鉄金属の価格が高止まりしている中、特定LP ガス供給機器の梱包材料等に使用する石油関連製品の購入価格が高騰してきたこと等から、平成20年2月26日頃、特定LP ガス供給機器について、同年4月頃出荷分から、4社の販売価格を現行の販売価格より10パーセント程度引き上げることを合意した。

(ウ) 4社は、前記及びにより、公共の利益に反して、我が国における特定LP ガス供給機器の販売分野における競争を実質的に制限していた。

(注2) 「特定LP ガス供給機器」とは、液化石油ガス(自動車の燃料用のものを除く。以下において「LP ガス」という。)の供給に用いられる機器のうち、①単段式調整器、②特定の二段式調整器、③特定の自動切替式調整器、④高圧ホース、⑤低圧ホース、⑥集合装置及び⑦ねじガス栓(これら7つの機器を2以上組み合わせたものを含む。)をいう(①から⑦までの各機器の詳細については第7表参照。)。

(注3) において「販売価格」とは、矢崎総業(株)にあっては、矢崎総業北海道販売(株)、矢崎総業四国販売(株)及び㈲沖縄矢崎販売の3社を通じて特定LP ガス供給機器を販売する場合には、当該3社の販売価格をいう。

第7表 特定LPガス供給機器の詳細

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 3社は、それぞれ

a 前記イ及びの合意が消滅している旨を確認すること

b 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定LP ガス供給機器の販売価格を決定せず、各社がそれぞれ自主的に決める旨

c 今後、相互に、又は他の事業者と、特定LP ガス供給機器の販売価格の改定に関して情報交換を行わない旨

を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) 3社は、それぞれ、前記に基づいて採った措置を、自社を除く2社に通知するとともに、自社の特定LP ガス供給機器の取引先に周知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 3社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定LP ガス供給機器の販売価格を決定してはならない。

(エ) 3社は、今後、それぞれ、相互に、又は他の事業者と、特定LP ガス供給機器の販売価格の改定に関して情報交換を行ってはならない。

エ 課徴金納付命令の概要

3社は、平成24年3月21日までに、それぞれ前記アの表の「課徴金額」欄記載の額(総額8億7521万円)を支払わなければならない。

(8) 新潟市等に所在するタクシー事業者に対する件(平成23年(措)第15号)

ア 関係人

(注1) 表中の「排除措置命令」及び「課徴金納付命令」欄記載の「○」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象となる違反行為者であることを、同欄記載の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反行為者であることを示している。

イ 違反行為の概要

前記アの表記載の26社(以下(8)において「26社」という。)は、新潟交通圏(注2)におけるタクシー事業について、新自動認可運賃(注3)において、改定前の自動認可運賃における小型車、中型車、大型車及び特定大型車それぞれの上限運賃は据え置かれたまま、下限運賃が引き上げられたことを受けて、遅くとも平成22年2月20日までに、小型車、中型車、大型車及び特定大型車のタクシー運賃のうち、距離制運賃、時間制運賃、時間距離併用制運賃及び待料金(注4)(以下(8)において「特定タクシー運賃」という。)を

(ア) 小型車については、第8表の小型車の新自動認可運賃における「下限運賃」欄記載のタクシー運賃とし、かつ、初乗距離短縮運賃(注5)を設定しないこととする

(イ) 中型車については、第9表の中型車の新自動認可運賃における「下限運賃」欄記載のタクシー運賃とする

(ウ) 大型車については、第10表の大型車の新自動認可運賃における「上限運賃」欄記載のタクシー運賃とする

(エ) 特定大型車については、第11表の特定大型車の新自動認可運賃における「上限運賃」欄記載のタクシー運賃とする

旨を合意することにより、公共の利益に反して、新潟交通圏におけるタクシー事業の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注2) 「新潟交通圏」とは、国土交通省北陸信越運輸局長の公示(平成14年7月1日付け公示第12号)において定められている、平成17年3月21日に他の市町村と合併する前の新潟市、同日に新潟市に編入された新潟県豊栄市及び新潟県中蒲原郡亀田町並びに新潟県北蒲原郡聖籠町の区域をいう。

(注3) 「自動認可運賃」とは、国土交通省自動車交通局長の通達(平成13年10月26日付け国自旅第101号)により、国土交通省地方運輸局長等が、一定の範囲内において設定し、原価計算書類の提出の必要がないと認める場合として公示することとされているタクシー運賃をいい、「新自動認可運賃」とは、平成21年10月1日付けで改定された新潟交通圏に係る自動認可運賃をいう。

(注4) 「距離制運賃」とは、旅客の乗車地点から降車地点までの運送距離に応じた運賃をいい、「時間制運賃」とは、旅客が乗車場所として指定した場所に到着した時から旅客の運送を終了するまでの実拘束時間に応じた運賃をいい、「時間距離併用制運賃」とは、距離制運賃を適用する場合であって、一定速度以下の走行速度になった場合の運送に要した時間を距離に換算し、当該距離制運賃に加算する運賃をいい、「待料金」とは、旅客の都合により、車両を待機させた場合にその時間に応じて適用する料金をいう。

(注5) 「初乗距離短縮運賃」とは、国土交通省自動車交通局長の通達(平成13年10月26日付け国自旅第100号)により、国土交通省地方運輸局長等が定めるものによることとされている、短縮した初乗距離に対応した距離制運賃をいう。

 

第8表 小型車の新自動認可運賃

第9表 小型車の新自動認可運賃

第10表 小型車の新自動認可運賃

第11表 小型車の新自動認可運賃

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 排除措置命令の対象事業者(以下において「名宛人」という。)は、それぞれ、次の事項を取締役会において決議しなければならない。

a 前記イの合意が消滅している旨を確認すること

b 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、新潟交通圏における特定タクシー運賃を決定せず、各社がそれぞれ自主的に決める旨

(イ) 名宛人は、前記に基づいて採った措置を、自社を除く24社に通知するとともに、新潟交通圏の一般消費者に周知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、新潟交通圏における特定タクシー運賃を決定してはならない。

エ 課徴金納付命令の概要

 課徴金納付命令の対象事業者は、平成24年3月22日までに、それぞれ前記アの表の「課徴金額」欄記載の額(総額2億3175万円)を支払わなければならない。

 

(9) 自動車メーカーが発注する自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の見積り合わせの参加業者らに対する件(平成24年(措)第1号~第5号)

ア 関係人

(注1) において「トヨタ自動車等」とは、トヨタ自動車(株)、トヨタ車体(株)及び関東自動車工業(株)の3社を併せていう。

(注2) において「ホンダ」とは、本田技研工業(株)をいう。

(注3) において「日産自動車等」とは、日産自動車(株)及び日産車体(株)の2社を併せていう。

(注4) 表中の「排除措置命令」及び「課徴金納付命令」欄記載の「○」は、その事業者が排除措置命令の名宛人であることを、同欄記載の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の名宛人とならない違反行為者であることを、同欄記載の「/」は、その事業者が違反行為者ではないことを示している。

イ 違反行為の概要

本件においては、次の各違反行為が認められた。

(ア) トヨタ自動車等が発注する自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品(注5)に係る違反行為

 矢崎総業(株)、住友電気工業(株)及び古河電気工業(株)の3社(以下において「3社」という。)は、遅くとも平成14年9月頃以降、共同して、トヨタ自動車等が発注する第12表の番号1記載の製品であって、トヨタ自動車がコンペを実施して受注者を選定するもの(以下「トヨタ自動車等発注の特定自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品」という。)について、量産価格の低落防止を図るため、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、トヨタ自動車等発注の特定自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(イ) ダイハツ工業が発注する自動車用ワイヤーハーネスに係る違反行為

 3社は、遅くとも平成12年12月頃以降、共同して、ダイハツ工業(株)(以下において「ダイハツ工業」という。)が発注する第12表の番号2記載の製品であって、ダイハツ工業がコンペを実施して受注者を選定するもの(以下「ダイハツ工業発注の特定自動車用ワイヤーハーネス」という。)について、量産価格の低落防止を図るため、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、ダイハツ工業発注の特定自動車用ワイヤーハーネスの取引分野における競争を実質的に制限していた。

(ウ) ホンダが発注する自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品に係る違反行為

 3社は、遅くとも平成15年9月頃以降、共同して、ホンダが発注する第12表の番号3記載の製品であって、ホンダがコンペを実施して受注者を選定するもの(以下「ホンダ発注の特定自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品」という。)について、量産価格の低落防止を図るため、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、ホンダ発注の特定自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(エ) 日産自動車等が発注する自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品に係る違反行為

 矢崎総業及び住友電気工業は、遅くとも平成14年5月頃以降、共同して、日産自動車等が発注する第12表の番号3記載の製品であって、受託会社(日産自動車がコンペの実施を委託した会社をいう。)がコンペを実施して日産自動車が受注者を選定するもの(日産自動車等が、「Vプラットフォーム」(平成21年6月頃以前にあっては「Aプラットフォーム」)、「Bプラットフォーム」、「Cプラットフォーム」、「Dプラットフォーム」又は「FR-L プラットフォーム」と称するプラットフォーム(自動車の車台部分をいう。)を用いて製造する自動車に搭載されるものに限る。以下「日産自動車等発注の特定自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品」という。)について、量産価格の低落防止を図るため、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、日産自動車等発注の特定自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(オ)富士重工業が発注する自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品に係る違反行為

(株)フジクラ(以下「フジクラ」という。)、矢崎総業及び古河電気工業は、遅くとも平成12年7月頃以降、共同して、富士重工業(株)(以下「富士重工業」という。)が発注する第12表の番号4記載の製品であって、富士重工業がコンペを実施して受注者を選定するもの(以下「富士重工業発注の特定自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品」という。)について、量産価格の低落防止を図るため、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、富士重工業発注の特定自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注5) 自動車用ワイヤーハーネスは、オーディオ、エアバッグ等の自動車内の各装置類を作動させるために電気及び信号の伝送を担う電気回路に用いられるものであり、自動車の神経・血管に例えられるものである。また、自動車用ワイヤーハーネスの関連製品は、自動車用ワイヤーハーネスに一定量を超える過剰な電流が流れた場合に電流を遮断して自動車を保護する機能等を有する配線器具である。

第12表 自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品(注6)

(注6) 番号2記載の製品にあっては、関連製品を含まない。

ウ 排除措置命令の概要

前記イの違反行為ごとに、以下のとおり排除措置命令を行った。

(ア) 排除措置命令の対象事業者(以下(9)において「名宛人」という。)は、前記イの行為を取りやめている旨を確認すること及び今後、前記イの行為と同様の行為を行わず、自主的に受注活動を行う旨を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) 名宛人は、前記(ア)に基づいて採った措置を、自社を除く違反行為者及び自動車メーカー(注7)(フジクラにあっては富士重工業)に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人は、今後、他の事業者と共同して、前記イの行為と同様の行為を行ってはならない。

(エ) 名宛人は、今後、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 自社の従業員に対する、自社の商品の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の周知徹底

b 前記イの行為の対象としていた各製品の受注に関する独占禁止法の遵守についての、当該各製品の営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

(注7) トヨタ自動車等、ダイハツ工業、ホンダ、日産自動車等及び富士重工業の8社をいう。

エ 課徴金納付命令の概要

(ア) 課徴金納付命令の対象事業者は、平成24年4月20日までに、それぞれ前記アの表の「課徴金額」欄記載の額(総額128億9167万円)を支払わなければならない。

(イ)  調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令(当該課徴金納付命令が確定している場合に限る。)を受けたことがある事業者については、独占禁止法第7条の2第7項の規定に基づき、5割加算した算定率を適用している。

2 独占禁止法第19条違反事件

(1) (株)ディー・エヌ・エーに対する件(平成23年(措)第4号)

ア 関係人

イ 違反行為の概要

 (株)ディー・エヌ・エー(以下において「ディー・エヌ・エー」という。)は、特定ソーシャルゲーム提供事業者(注1)に対し、GREE(注5)を通じてソーシャルゲームを提供した場合に当該特定ソーシャルゲーム提供事業者がモバゲータウン(注6)を通じて提供するソーシャルゲームのリンクをモバゲータウンのウェブサイトに掲載しないようにすることにより、GREE を通じてソーシャルゲームを提供しないようにさせていた。

(注1) ソーシャルゲーム提供事業者(注2)のうちディー・エヌ・エーがソーシャルゲームの提供において有力な事業者であると判断して選定した者をいう。

(注2) ソーシャルゲーム(注3)を提供する事業者(ディー・エヌ・エー及びグリー(株)を除く。)をいう。

(注3) 携帯電話向けソーシャルネットワーキングサービス(注4)を通じてその登録ユーザーに提供されるゲームであって、登録ユーザー間の交流のための通信機能を利用することが可能なものをいう。

(注4) 登録ユーザー(会員として登録した者をいう。)間の交流のための通信機能を備え、ゲーム等のアプリケーションソフトにおいても、当該機能を利用することが可能な携帯電話向けウェブサイトを提供するサービスをいう。

(注5) グリー(株)の運営する携帯電話向けソーシャルネットワーキングサービスをいう。

(注6) ディー・エヌ・エーの運営する携帯電話向けソーシャルネットワーキングサービスをいう。
     なお、ディー・エヌ・エーは現在、当該サービスを「Mobage」と称している。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) ディー・エヌ・エーは、前記イの行為を行っていない旨を確認すること及び今後当該行為と同様の行為を行わない旨を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) ディー・エヌ・エーは、前記に基づいて採った措置を、モバゲータウンを通じてソーシャルゲームを提供している事業者及びグリー(株)に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) ディー・エヌ・エーは、今後、ソーシャルゲーム提供事業者に対し、他の事業者の運営する携帯電話向けソーシャルネットワーキングサービスを通じてソーシャルゲームを提供した場合には当該ソーシャルゲーム提供事業者がモバゲータウンを通じて提供するソーシャルゲームのリンクをモバゲータウンのウェブサイトに掲載しないようにすることにより、他の事業者の運営する携帯電話向けソーシャルネットワーキングサービスを通じてソーシャルゲームを提供しないようにさせる行為を行ってはならない。

(エ) ディー・エヌ・エーは、今後、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 自社の運営する携帯電話向けソーシャルネットワーキングサービスに係るソーシャルゲーム提供事業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定

b 自社の運営する携帯電話向けソーシャルネットワーキングサービスに係るソーシャルゲーム提供事業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての、役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査

(2) (株)山陽マルナカに対する件(平成23年(措)第5号)

ア 関係人

イ 違反行為の概要

(株)山陽マルナカ(以下において「山陽マルナカ」という。)は、遅くとも平成19年1月以降、取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者(注2)(以下において「特定納入業者」という。)に対して、次の行為を行っていた。

(ア) 新規開店(注3)、全面改装(注4)、棚替え(注5)等に際し、これらを実施する店舗に商品を納入する特定納入業者に対し、当該特定納入業者が納入する商品以外の商品を含む当該店舗の商品について、当該特定納入業者の従業員等が有する技術又は能力を要しない商品の移動、陳列、補充、接客等の作業を行わせるため、あらかじめ当該特定納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく、かつ、派遣のために通常必要な費用を自社が負担することなく、当該特定納入業者の従業員等を派遣させていた。

(イ) 新規開店又は自社が主催する「こども将棋大会」若しくは「レディーステニス大会」と称する催事等の実施に際し、特定納入業者に対し、当該特定納入業者の納入する商品の販売促進効果等の利益がない又は当該利益を超える負担となるにもかかわらず、金銭を提供させていた。

(ウ) 自社の食品課が取り扱っている商品(以下「食品課商品」という。)のうち、自社が独自に定めた「見切り基準」と称する販売期限を経過したものについて、当該食品課商品を納入した特定納入業者に対し、当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がないなどにもかかわらず、当該食品課商品を返品していた。

(エ) a 食品課商品のうち、季節商品の販売時期の終了等に伴う商品の入替えを理由として割引販売を行うこととしたものについて、当該食品課商品を納入した特定納入業者に対し、当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、当該食品課商品の仕入価格に50パーセントを乗じて得た額に相当する額を、当該特定納入業者に支払うべき代金の額から減じていた。

b 食品課商品又は自社の日配品課が取り扱っている商品(以下「日配品課商品」という。)のうち、全面改装に伴う在庫整理を理由として割引販売を行うこととしたものについて、当該食品課商品又は当該日配品課商品を納入した特定納入業者に対し、当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、当該割引販売において割引した額に相当する額等を、当該特定納入業者に支払うべき代金の額から減じていた。

(オ) クリスマスケーキ等のクリスマス関連商品(以下「クリスマス関連商品」という。)の販売に際し、仕入担当者(注6)から、特定納入業者に対し、懇親会において申込用紙を配付し最低購入数量を示した上でその場で注文するよう指示する又は特定納入業者ごとに購入数量を示す方法により、クリスマス関連商品を購入させていた。

(注2) (2)において「納入業者」とは、山陽マルナカが自ら販売する商品を、山陽マルナカに直接販売して納入する事業者のうち、山陽マルナカと継続的な取引関係にあるものをいう。

(注3) において「新規開店」とは、山陽マルナカが、新たに店舗を設置して、当該店舗の営業を開始することをいう。

(注4) において「全面改装」とは、山陽マルナカが、自社の既存の店舗について、一旦営業を取りやめた上で売場の移動、売場面積の拡縮、設備の改修その他の改装を行うことをいう。

(注5) において「棚替え」とは、山陽マルナカが、自社の既存の店舗について、商品の陳列場所の変更、商品の入替えその他の改装を行うこと(全面改装に伴うものを除く。)をいう。

(注6) において「仕入担当者」とは、納入業者との間で商談等の仕入業務を行い、当該納入業者との取引に直接影響を及ぼし得る山陽マルナカの従業員をいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 山陽マルナカは、前記イの行為を取りやめている旨を確認すること及び今後当該行為と同様の行為を行わない旨を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) 山陽マルナカは、前記に基づいて採った措置を、納入業者に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 山陽マルナカは、今後、前記イの行為と同様の行為を行ってはならない。

(エ) 山陽マルナカは、今後、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の改定

b 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての、役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査

エ 排除措置命令の概要

山陽マルナカは、平成23年9月26日までに、2億2216万円を支払わなければならない。

(3) 日本トイザらス(株)に対する件(平成23年(措)第13号)

(注1) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成21年法律第51号)の施行日である平成22年1月1日前においては平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の不公正な取引方法の第14項。

ア 関係人

イ 違反行為の概要

日本トイザらス(株)(以下(3)において「日本トイザらス」という。)は、遅くとも平成21年1月6日以降、取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者(注2)(以下(3)において「特定納入業者」という。)に対して、次の行為を行っていた。

(ア) 売上不振商品等(注3)を納入した特定納入業者に対し、当該売上不振商品等について当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がないなどにもかかわらず、当該売上不振商品等を返品していた。

(イ) 自社が割引販売を行うこととした売上不振商品等を納入した特定納入業者に対し、当該売上不振商品等について当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、当該割引販売における自社の割引予定額に相当する額の一部又は全部を、当該特定納入業者に支払うべき代金の額から減じていた。

(注2) において「納入業者」とは、日本トイザらスが自ら販売する商品を、日本トイザらスに直接販売して納入する事業者をいう。

(注3) 「売上不振商品等」とは、売行きが悪く在庫となった商品、販売期間中に売れ残ったことにより在庫となった季節品等をいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 日本トイザらスは、前記イの行為を取りやめている旨を確認すること及び今後当該行為と同様の行為を行わない旨を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) 日本トイザらスは、前記(ア)に基づいて採った措置を、納入業者に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 日本トイザらスは、今後、前記イの行為と同様の行為を行ってはならない。

(エ) 日本トイザらスは、今後、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成

b 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての、役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

日本トイザらスは、平成24年3月14日までに、3億6908万円を支払わなければならない。

 

(4) (株)エディオンに対する件(平成24年(措)第6号)

(注1) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成21年法律第51号)の施行日である平成22年1月1日前においては平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の不公正な取引方法の第14項。

ア 関係人

イ 違反行為の概要

 (株)エディオン(以下において「エディオン」という。)は、遅くとも平成20年9月6日以降、自社と継続的な取引関係にある納入業者(注2)のうち取引上の地位が自社に対して劣っている者(以下において「特定納入業者」という。)に対し、搬出(注3)若しくは搬入(注4)又は店作り(注5)であって当該特定納入業者の従業員等が有する販売に関する技術又は能力を要しないものを行わせるため、あらかじめ当該特定納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく、かつ、派遣のために通常必要な費用を自社が負担することなく、当該特定納入業者の従業員等を派遣させていた。

(注2) (4)において「納入業者」とは、「デオデオ」、「エイデン」、「ミドリ」、「イシマル」等と称する店舗(以下(4)において「エディオンの店舗」という。)で販売する商品を、エディオンに直接販売して納入する事業者をいう。

(注3) (4)において「搬出」とは、改装開店を実施するエディオンの店舗において、当該店舗内にある商品を梱包材で梱包し、又は折り畳み式のコンテナに収納して、売場から当該店舗の倉庫等のエディオンが指定する場所まで当該商品を運搬する改装開店前の作業をいう。

(注4) (4)において「搬入」とは、新規開店又は改装開店を実施するエディオンの店舗において、当該店舗の搬入口若しくは倉庫からエディオンが指定する売場まで、又は当該店舗の搬入口からエディオンが指定する当該店舗の倉庫まで商品を運搬する新規開店前又は改装開店前の作業をいう。

(注5) (4)において「店作り」とは、新規開店又は改装開店を実施するエディオンの店舗において、当該店舗の売場まで搬入された商品を開梱し、エディオンが指定する位置に当該商品の展示及び陳列を行い、エディオンが決定した装飾内容で販促物等による当該売場又は当該商品の装飾を行う新規開店前又は改装開店前の作業をいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) エディオンは、前記イの行為を取りやめている旨を確認すること及び今後当該行為と同様の行為を行わない旨を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) エディオンは、前記に基づいて採った措置を、納入業者に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) エディオンは、今後、前記イの行為と同様の行為を行ってはならない。

(エ) エディオンは、今後、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の改定

b 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての、役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

エディオンは、平成24年5月17日までに、40億4796万円を支払わなければならない。

 

(5) アディダスジャパン(株)に対する件(平成24年(措)第7号)

ア 関係人

イ 違反行為の概要

 アディダスジャパン(株)(以下(5)において「アディダスジャパン」という。)は、イージートーン(注1)の販売に関し、遅くとも平成22年3月下旬以降、自ら又は取引先卸売業者を通じて、小売業者に

(ア) イージートーンのうち平成22年10月以前に発売したモデルを、アディダスジャパンの定めた値引き限度価格(注2)以上の価格で

(イ) イージートーンのうち平成22年11月以降に発売したモデルを、アディダスジャパンの定めた本体価格(注2)どおりの価格でそれぞれ販売するようにさせていた。

(注1) イージートーンは、アディダスジャパンが平成21年2月に発売を開始したトーニングシューズ(靴底の形状や靴内部の素材で歩行時の体勢を不安定な状態にするなど、通常より筋肉に負荷が掛かる仕組みとなっており、これを履いて歩くことにより、下半身の引締め効果等が期待できるとされるシューズをいう。)である。

 なお、イージートーンは、アディダスジャパンの取扱ブランドの一つである「Reebok」ブランドの商品である。

(注2) (5)において「本体価格」とは、本体価格等と称する価格をいい、「値引き限度価格」とは、本体価格の10パーセント引きの価格をいう。

 アディダスジャパンは、イージートーンについて、発売するモデルごとに、小売業者の一般消費者に対する販売価格として自らが希望する価格を本体価格等として定めており、自ら又は取引先卸売業者を通じて、小売業者に対し、当該価格を記載したカタログを配布するなどして周知していた。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) アディダスジャパンは、前記イの行為を行っていない旨を確認すること及び今後イージートーンの販売に関し当該行為と同様の行為を行わない旨を、取締役会において決議しなければならない。

(イ) アディダスジャパンは、前記に基づいて採った措置を、取引先卸売業者及び取引先小売業者に通知するとともに、一般消費者に周知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) アディダスジャパンは、今後、イージートーンの販売に関し、前記イの行為と同様の行為を行ってはならない。

(エ) アディダスジャパンは、今後、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 卸売業者及び小売業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の改定

b 卸売業者及び小売業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての、イージートーンの営業業務に従事する従業員に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

第3 警告

平成23年度において警告を行ったものの概要は、次のとおりである。

第13表 平成23年度警告事件一覧表

第4 告発

私的独占、カルテルなどの重大な独占禁止法違反行為については、排除措置命令等の行政上の措置のほか罰則が設けられているところ、これらについては公正取引委員会による告発を待って論ずることとされている(独占禁止法第96条、第74条第1項及び第2項)。

公正取引委員会は、平成17年10月、平成17年独占禁止法改正法の趣旨を踏まえ、「独占禁止法違反に対する刑事告発及び犯則事件の調査に関する公正取引委員会の方針」を公表し、独占禁止法違反行為に対する抑止力強化の観点から、積極的に刑事処罰を求めて告発を行っていくこと等を明らかにしている。

平成23年度において、検事総長に告発した事件はなかった。