第2部 各論

第5章 競争環境の整備

第1 独占禁止法適用除外の見直し

1 独占禁止法適用除外の概要

独占禁止法は、市場における公正かつ自由な競争を促進することにより、一般消費者の利益を確保するとともに国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とし、これを達成するために、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法等を禁止している。他方、他の政策目的を達成する観点から、特定の分野における一定の行為に独占禁止法の禁止規定等の適用を除外するという適用除外が設けられている。

適用除外は、その根拠規定が独占禁止法自体に定められているものと独占禁止法以外の個別の法律に定められているものとに分けることができる。

(1) 独占禁止法に基づく適用除外

独占禁止法は、知的財産権の行使行為(同法第21条)、一定の組合の行為(同法第22条)及び再販売価格維持契約(同法第23条)を、それぞれ同法の規定の適用除外としている。

(2) 個別法に基づく適用除外

独占禁止法以外の個別の法律において、特定の事業者又は事業者団体の行為について独占禁止法の適用除外を定めているものとしては、平成23年度末現在、保険業法等14の法律がある。

2 適用除外の見直し

(1) これまでの見直しについて

適用除外の多くは、昭和20年代から昭和30年代にかけて、産業の育成・強化、国際競争力強化のための企業経営の安定、合理化等を達成するため、各産業分野において創設されてきたが、個々の事業者において効率化への努力が十分に行われず、事業活動における創意工夫の発揮が阻害されるおそれがあるなどの問題があることから、その見直しが行われてきた。

平成9年7月20日、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律」(平成9年法律第96号)が施行され、個別法に基づく適用除外のうち20法律35制度について廃止等の措置が採られた。次いで、平成11年7月23日、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律」(平成11年法律第80号)が施行され、不況カルテル制度及び合理化カルテル制度の廃止、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外等に関する法律の廃止等の措置が採られた。さらに、平成12年6月19日、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律」(平成12年法律第76号)が施行され、自然独占に固有の行為に関する適用除外の規定が削除された。

これらの措置により、平成7年度末において30法律89制度存在した適用除外は、平成23年度末現在、15法律21制度まで縮減された。

(2) 「規制・制度改革に係る対処方針」における適用除外制度の見直し

 「規制・制度改革に係る追加方針」(平成23年7月22日閣議決定)において、「国際航空協定に関する独占禁止法適用除外制度の見直し」の項目が盛り込まれ、「国土交通省は、諸外国の国際航空に関する独占禁止法適用除外制度に係る状況等を分析・検証し、我が国の同制度の在り方について、公正取引委員会と協議しつつ、引き続き検討を行う。<平成24年度検討>」とされた。

3 適用除外カルテル

(1) 概要

価格、数量、販路等のカルテルは、公正かつ自由な競争を妨げるものとして、独占禁止法上禁止されているが、その一方で、他の政策目的を達成するなどの観点から、個々の適用除外ごとに設けられた一定の要件・手続の下で、特定のカルテルが例外的に許容される場合がある。このような適用除外カルテルが認められるのは、当該事業の特殊性のため(保険業法に基づく保険カルテル)、地域住民の生活に必要な旅客輸送(いわゆる生活路線)を確保するため(道路運送法等に基づく運輸カルテル)など、様々な理由による。

個別法に基づく適用除外カルテルについては、一般に、公正取引委員会の同意を得、又は当委員会へ協議若しくは通知を行って、主務大臣が認可を行うこととなっている。

また、適用除外カルテルの認可に当たっては、一般に、当該適用除外カルテルの目的を達成するために必要であること等の積極的要件のほか、当該カルテルが弊害をもたらしたりすることのないよう、カルテルの目的を達成するために必要な限度を超えないこと、不当に差別的でないこと等の消極的要件を充足することがそれぞれの法律により必要とされている。

さらに、このような適用除外カルテルについては、不公正な取引方法に該当する行為が用いられた場合等には独占禁止法の適用除外とはならないとする、いわゆるただし書規定が設けられている。

公正取引委員会が認可し、又は当委員会の同意を得、若しくは当委員会に協議若しくは通知を行って主務大臣が認可等を行ったカルテルの件数は、昭和40年度末の1、079件(中小企業団体の組織に関する法律に基づくカルテルのように、同一業種について都道府県等の地区別に結成されている組合ごとにカルテルが締結されている場合等に、同一業種についてのカルテルを1件として算定すると、件数は415件)をピークに減少傾向にあり、また、適用除外制度そのものが大幅に縮減されたこともあり、平成23年度末現在、28件となっている。

(2) 個別法に基づく適用除外カルテルの動向

平成23年度において、個別法に基づき主務大臣から公正取引委員会に対し同意を求められ、又は協議若しくは通知のあった適用除外カルテルの処理状況は第1表のとおりであり、このうち現在実施されている個別法に基づく適用除外カルテルの動向は、次のとおりである。

第1表 平成23年度における適用除外カルテルの処理状況

ア 保険業法に基づくカルテル

保険業法に基づき損害保険会社は

① 航空保険事業、原子力保険事業、自動車損害賠償保障法に基づく自動車損害賠償責任保険事業若しくは地震保険契約に関する法律に基づく地震保険事業についての共同行為

又は

② ①以外の保険で共同再保険を必要とするものについての一定の共同行為を行う場合には、金融庁長官の認可を受けなければならない。金融庁長官は、認可をする際には、公正取引委員会の同意を得ることとされている。

平成23年度において、金融庁長官から同意を求められたものは4件であった(変更認可に係るもの)。また、平成23年度末における同法に基づくカルテルは9件である。

イ 損害保険料率算出団体に関する法律に基づくカルテル

損害保険料率算出団体は、自動車損害賠償責任保険及び地震保険について基準料率を算出した場合には、金融庁長官に届け出なければならない。金融庁長官は、届出を受理したときは、公正取引委員会に通知することとされている。

平成23年度において、金融庁長官から通知を受けたものはなかった。また、平成23年度末における同法に基づくカルテルは2件である。

ウ 著作権法に基づく商業用レコードの二次使用料等に関する取決め

著作隣接権者(実演家又はレコード製作者)が有する商業用レコードの二次使用料等の請求権については、毎年、その請求額を文化庁長官が指定する団体(指定団体)と放送事業者等又はその団体間において協議して定めることとされており、指定団体は当該協議において定められた額を文化庁長官に届け出なければならない。文化庁長官は、届出を受理したときは、公正取引委員会に通知することとされている。

平成23年度において、文化庁長官から通知を受けたものは8件であった。

エ 道路運送法に基づくカルテル

輸送需要の減少により事業の継続が困難と見込まれる路線において地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するため、又は旅客の利便を増進する適切な運行時刻を設定するため、一般乗合旅客自動車運送事業者は、同一路線において事業を経営する他の一般乗合旅客自動車運送事業者と、共同経営に関する協定を締結することができる。この協定の締結、変更に当たっては、国土交通大臣の認可を受けなければならない。国土交通大臣は、認可をする際には、公正取引委員会に協議することとされている。

平成23年度において、国土交通大臣から協議を受けたものは3件であった(変更認可に係るもの)。また、平成23年度末における同法に基づくカルテルは3件である。

オ 航空法に基づくカルテル
(ア) 国内航空カルテル

航空輸送需要の減少により事業の継続が困難と見込まれる本邦内の各地間の路線において地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するため、当該路線において2以上の航空運送事業者が事業を経営している場合に、本邦航空運送事業者は、他の航空運送事業者と、共同経営に関する協定を締結することができる。この協定の締結・変更に当たっては、国土交通大臣の認可を受けなければならない。国土交通大臣は、認可をする際には、公正取引委員会に協議することとされている。

平成23年度において、国土交通大臣から協議を受けたものはなかった。また、平成23年度末における同法に基づくカルテルはない。

(イ) 国際航空カルテル

本邦内の地点と本邦外の地点との間の路線又は本邦外の各地間の路線において公衆の利便を増進するため、本邦航空運送事業者は、他の航空運送事業者と、連絡運輸に関する契約、運賃協定その他の運輸に関する協定を締結することができる。この協定の締結・変更に当たっては、国土交通大臣の認可を受けなければならない。国土交通大臣は、認可をしたときは、公正取引委員会に通知することとされている。

平成23年度において、国土交通大臣から通知を受けたものは34件であった。

カ 海上運送法に基づくカルテル
(ア) 内航海運カルテル

本邦の各港間の航路に関して、定期航路事業者は、地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するため、旅客の利便を増進する適切な運航日程・運航時刻を設定するため、又は貨物の運送の利用者の利便を増進する適切な運航日程を設定するため、共同経営に関する協定を締結することができる。この協定の締結・変更に当たっては、国土交通大臣の認可を受けなければならない。国土交通大臣は、認可をする際には、公正取引委員会に協議することとされている。

平成23年度において、国土交通大臣から協議を受けたものは1件であった(変更認可に係るもの)。また、平成23年度末における同法に基づくカルテルは5件である。

(イ) 外航海運カルテル

本邦の港と本邦以外の地域の港との間の航路に関して、船舶運航事業者は、他の船舶運航事業者と、運賃及び料金その他の運送条件、航路、配船並びに積取りに関する事項を内容とする協定を締結することができる。この協定の締結・変更に当たっては、あらかじめ国土交通大臣に届け出なければならない。国土交通大臣は、届出を受理したときは、公正取引委員会に通知することとされている。

平成23年度において、国土交通大臣から通知を受けたものは451件であった。

キ 内航海運組合法に基づくカルテル

内航海運組合法に基づき内航海運組合が調整事業を行う場合には、調整規程又は団体協約を設定し、国土交通大臣の認可を受けなければならない。国土交通大臣は、認可をする際には、公正取引委員会に協議することとされている。

平成23年度において、国土交通大臣から協議を受けたものはなかった。また、平成23年度末における同法に基づくカルテルは1件である。

4 協同組合の届出状況

独占禁止法第22条は、「小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること」(同条第1号)等同条各号に掲げる要件を備え、かつ、法律の規定に基づいて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行為について、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合を除き、同法を適用しない旨を定めている(一定の組合の行為に対する独占禁止法適用除外制度)。

中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号。以下「中協法」という。)に基づいて設立された事業協同組合及び信用協同組合(以下「協同組合」という。)は、その組合員たる事業者が、①資本の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については5000万円、卸売業を主たる事業とする事業者については1億円)を超えない法人たる事業者又は②常時使用する従業員の数が300人(小売業を主たる事業とする事業者については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については100人)を超えない事業者に該当するものである場合、独占禁止法の適用に際しては、同法第22条第1号の要件を備える組合とみなされる(中協法第7条第1項)。

一方、協同組合が前記①又は②以外の事業者を組合員に含む場合には、公正取引委員会は、その協同組合が独占禁止法第22条各号の要件を備えているかどうかを判断する権限を有しており(中協法第7条第2項)、これらの協同組合に対し、当該組合員が加入している旨を当委員会に届け出る義務を課している(中協法第7条第3項)。

この中協法第7条第3項の規定に基づく届出件数は、平成23年度において、141件であった(附属資料3-9表参照)。

第2表 協同組合届出件数の推移

5 著作物再販適用除外の取扱いについて

商品の供給者がその商品の取引先である事業者に対して再販売する価格を指示し、これを遵守させることは、原則として、独占禁止法第2条第9項第4号(再販売価格の拘束)に該当し、同法第19条に違反するものであるが、同法第23条第4項の規定に基づき、書籍、新聞等の著作物については、例外的に同法の適用が除外されている。

公正取引委員会は、著作物についてのこのような適用除外の取扱いについて、国民各層から意見を求めるなどして検討を進め、平成13年3月、結論を得るに至った(第3表)。

公正取引委員会は、著作物再販適用除外制度が消費者利益を不当に害することがないよう、著作物の流通・取引慣行の実態を調査し、関係業界における弊害是正の取組の進捗を検証するとともに、関係業界における運用の弾力化の取組等、著作物の流通についての意見交換を行うため、当委員会、関係事業者、消費者、学識経験者等を構成員とする著作物再販協議会を設け、平成13年12月から平成20年6月までの間に8回の会合を開催した。平成22年度からは、著作物再販協議会に代わって、関係業界に対する著作物再販ヒアリングを実施し、関係業界における運用の弾力化等の取組の実態を把握するとともにその取組を促している。

第3表 著作物再販制度の取扱いについて(概要)(平成13年3月23日)

第2 競争評価に関する取組

1 競争評価の実施に関する動向

「 平成19年10月以後、各府省が規制の新設又は改廃を行おうとする際、原則として、規制の事前評価の実施が義務付けられ、その際、規制による競争状況への影響分析(以下「競争評価」という。)を行うこととされており、平成22年4月から試行的に実施されている。競争評価については、各府省は、規制等に関して、競争状況への影響・分析に関するチェックリスト(以下「競争評価チェックリスト」という。)の記入を行い、評価書と共に総務省に提出し、総務省は競争評価チェックリストを公正取引委員会へ送付することとされている。

平成23年度において、公正取引委員会が総務省から受領した競争評価チェックリストは82件であった。

2 競争評価の普及・定着に係る公正取引委員会の取組

公正取引委員会は、前記1の動向を踏まえ、競争評価を行う上で必要な情報を提供するため、平成23年6月、総務省が開催した政策評価各府省担当官会議において、的確に競争評価チェックリストに回答するための留意点について説明を行った。

第3 ガイドライン等の策定・公表

公正取引委員会は、事業者及び事業者団体による独占禁止法違反行為の未然防止とその適切な活動に役立てるため、事業者及び事業者団体の活動の中でどのような行為が実際に独占禁止法違反となるのかを具体的に示した「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月)、「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」(平成5年4月)、「公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(平成6年7月)、「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(平成7年10月)、「農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針」(平成19年4月)、「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(平成19年9月)、「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」(平成21年10月)、「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」(平成21年12月)、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(平成22年11月)等を策定・公表している。

また、個々の具体的な活動について事業者等からの相談に応じるとともに、独占禁止法違反行為の未然防止に役立てるため、事業者等から寄せられた相談のうち、他の事業者等の参考になると思われるものを相談事例集として取りまとめ、公表している(平成22年度に寄せられた相談について、平成23年6月22日公表。)。

第4 入札談合の防止への取組

1 概説

公正取引委員会は、以前から積極的に入札談合の摘発に努めているほか、平成6年7月に「公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」を公表し、入札に係るどのような行為が独占禁止法上問題となるかについて具体例を挙げながら明らかにすることによって、入札談合の防止の徹底を図っている。

また、入札談合の防止を徹底するためには、発注者側の取組が極めて重要であるとの観点から、独占禁止法違反の可能性のある行為に関し、発注官庁等から公正取引委員会に対し情報が円滑に提供されるよう、各発注官庁等において、公共入札に関する公正取引委員会との連絡担当官として会計課長等が指名されている。

公正取引委員会は、連絡担当官との連絡・協力体制を一層緊密なものとするため、平成5年度以降、「公共入札に関する公正取引委員会との連絡担当官会議」を開催している。平成23年度においては、国の本省庁等の連絡担当官会議を11月24日に開催するとともに、国の地方支分部局等の連絡担当官会議を全国9か所で開催した。

また、公正取引委員会は、平成6年度以降、中央官庁、地方公共団体等が実施する調達担当者等に対する研修会への講師の派遣及び資料の提供等の協力を行うとともに、地方公共団体等の調達担当者等に対する研修会を開催している。平成23年度においては、国、地方公共団体及び特定法人に対して158件の講師の派遣を行うとともに、研修会を全国で20回開催した。

2 官製談合防止に向けた発注機関の取組に関する実態調査

公正取引委員会は、入札談合等関与行為防止法の適用事例が後を絶たない現状を踏まえ、入札談合等関与行為防止法が適用される行為を未然に防止するための取組の現状及び課題を明らかにし、発注機関におけるそのような取組の実効性を高めることを目的として、入札談合等関与行為防止法の適用対象となる発注機関に対し、アンケート調査とヒアリング調査を実施し、平成23年9月28日、「官製談合防止に向けた発注機関の取組に関する実態調査報告書~発注機関におけるコンプライアンス活動~」として取りまとめ、公表した。

調査結果を踏まえ、入札談合等関与行為等の未然防止に向けて各発注機関において取組を行っていくことが望まれる主な方策は、次のとおりである。

(1) 発注機関・職員における法令遵守意識の向上

幹部も含めた発注機関の各職員は、入札談合等関与行為等は職務の適正な執行という自らの本来的責務に反するものであることを自覚し、法令遵守意識の向上に努めることが求められる。発注機関自身も、組織として、コンプライアンスを向上させ、職員による入札談合等関与行為等の防止に努めることが求められる。

ア 研修の拡充

入札談合等関与行為等の発生を防ぐためには、幹部を始めとする各職員に対して、遵守すべき内容を実際に周知・啓発する機会を確保することが重要である。

・ 組織の規模や発注額の多寡、本省庁・出先機関の別にかかわらない積極的な研修の実施

・ 幹部・管理職や発注担当職員に対する研修強化

・ 研修の適時の実施

イ コンプライアンス・マニュアルの整備

組織として法令遵守体制を強固なものとし、入札談合等関与行為等を防止するためには、法令・条例をより具体化したコンプライアンス・マニュアルを整備していくことが重要である。

ウ 組織としての意思の明確化

地元業者の育成、入札業務を滞らせないことや品質確保を優先し、入札談合等関与行為等を行うこともやむを得ない、許されるといった考え方をすることのないよう、幹部・管理職が入札談合等関与行為等は許容しないとの組織としての意思を各職員に明確に示すことが重要である。また、入札談合等関与行為等が懲戒処分の対象となることを明らかにすることも、組織としての意思を明確化することに資する。

(2) 入札談合等関与行為等を防止する体制面の整備

入札談合等関与行為等を未然に防止するためには、組織・体制面において、入札談合等関与行為等の発生リスクを低減させる機能を組み込んでおくことが重要である。

ア 法令遵守を推進する体制の整備

出先機関を含め法令遵守を推進するための取組を実効的に行うためには、その実施について一定の権限と責任の下に主体的・一元的に推進していくことが重要である。

イ 入札談合等関与行為等の未然防止・発見のためのチェック体制の整備

・ 入札手続・条件の事前チェック体制の整備

・ 入札結果の事後検証により問題行為を発見する仕組みの構築

・ 第三者機関による事後検証の強化

・ 公益通報窓口の設置

ウ 秘密情報の管理徹底

入札等に係る秘密情報の管理の徹底は、情報漏えいのリスクを低減するとともに、万一漏えいした場合の事実確認にも資するものであり、秘密情報の保管方法やアクセス制限について規程を定めるなどの取組が必要である。

(3) 入札談合等関与行為等を防止するための施策

ア 外部からの働きかけに対する対策

法令に違反するような行為を求める働きかけを外部から受けた場合にその内容を文書化して上司等に報告するなどの取組を推進する。

イ 人事上の配慮

中小規模の地方公共団体では難しい面もあると思われるが、担当者が定期的に入れ替わる環境では入札談合等関与行為等の隠匿・存続は困難となるものであり、一層の取組を推進する。

ウ 入札参加事業者に再就職したOB への対応

OB の働きかけによって入札談合等関与行為等が引き起こされないように配慮する。

第5 独占的状態調査

独占禁止法第8条の4は、独占的状態に対する措置について定めている。公正取引委員会は、独占禁止法第2条第7項に規定する独占的状態の定義規定のうち、事業分野に関する考え方についてガイドラインを公表しており、その別表には、独占的状態の国内総供給価額要件及び事業分野占拠率要件(国内総供給価額が1000億円超で、かつ、上位1社の事業分野占拠率が50%超又は上位2社の事業分野占拠率の合計が75%超)に該当すると認められる事業分野並びに今後の経済事情の変化によってはこれらの要件に該当することとなると認められる事業分野を掲載している(第4表)。

別表については、生産・出荷集中度の調査結果等に応じ逐次改定してきている(直近では、平成22年9月30日に改定)。その中でも特に集中度の高い業種については、生産、販売、価格、製造原価、技術革新等の動向、分野別利益率等について、独占禁止法第2条第7項第2号(新規参入の困難性)及び第3号(価格の下方硬直性、かつ、過大な利益率又は販売管理費の支出)の各要件に即し、企業の動向の監視に努めている。

第4表 別表掲載事業分野(31事業分野)

(注1) 本表は、公正取引委員会が行った調査に基づき、独占的状態の国内総供給価額要件及び事業分野占拠 率要件に該当すると認められる事業分野並びに今後の経済事情の変化によってはこれらの要件に該当することとなると認められる事業分野(平成20年の国内総供給価額が950億円を超え、かつ、上位1社の事業分野占拠率が45%を超え又は上位2社の事業分野占拠率の合計が70%を超えると認められるもの)を掲げたものである。

(注2) 本表の商品順は工業統計表に、役務順は日本標準産業分類による。

第6 金融機関と企業との取引慣行に関する調査

1 調査の趣旨等

(1) 調査の趣旨

自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、取引の相手方に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為(優越的地位の濫用)は、自己と競争者間及び相手方とその競争者間の公正な競争を阻害するおそれがあるものであり、独占禁止法において、不公正な取引方法の一つとして禁止されている。この優越的地位の濫用規制について、公正取引委員会は、これまでの取組に加えて、最近では、平成21年独占禁止法改正法において、優越的地位の濫用が新たに課徴金納付命令の対象となったことを踏まえ、同年11月に「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を策定・公表し、優越的地位の濫用規制の考え方を明確化してきたところである。

金融分野については、従前から公正取引委員会として注視してきたところであり、金融機関(注1)から融資を受けている事業者(注2)(以下「借り手企業」という。)を対象に、金融機関が借り手企業に対する取引上の優越的地位を利用して金融商品を販売するなどの不公正な取引の実態を調査し、平成13年7月4日、「金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書―融資先企業に対する不公正取引の観点からのアンケート調査結果―」(以下「13年調査」という。)を公表した。

その後も、都市銀行による借り手企業に対する優越的地位の濫用については、独占禁止法違反の排除勧告(注3)が行われるなど、依然として金融機関による借り手企業に対する濫用行為が行われているのではないかとの懸念があったことから、フォローアップ調査を行い、平成18年6月21日、「金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書」(以下「18年調査」という。)を公表した。

18年調査から4年以上経過し、その間、平成20年秋のリーマンショックや平成22年夏以降の急速な円高の進行といった経済情勢が変化する中で、金融機関と借り手企業との取引慣行に変化が生じていないかどうか、どのような実態にあるかを検証するため、再度フォローアップ調査を実施し、平成23年6月15日、調査結果を公表した。

(注1) 金融機関とは、銀行・信用金庫・信用組合・農林中央金庫等を指し、政府系金融機関(日本銀行、(株)日本政策金融公庫、(株)商工組合中央金庫、(株)日本政策投資銀行等)、ノンバンク(預金業務を行わず、貸金業法第3条の登録を受けて与信業務を行っている事業者)、証券会社、保険会社及び信託会社を除く。

(注2) 決算報告書において短期借入の実績がある事業者。

(注3) 平成17年12月26日勧告審決・平成17年(勧)第20号。

(2) 調査の対象・方法

金融機関634社及び借り手企業2、000社に対してアンケート調査を、また、借り手企業9社、金融機関2機関、事業者団体(借り手企業、金融機関)5団体に対してヒアリング調査を実施した。

2 金融機関との取引状況等

(1) 融資取引先金融機関数及び種類

ア 融資取引先金融機関数

借り手企業アンケート調査によると、融資取引先数は平均で4.9機関(5.5機関)(注1)と18年調査に比べて若干減少(注2)している。また、融資取引先金融機関が一つであるとする借り手企業の割合は17.5%(13.9%)であり、18年調査に比べて増加している。

なお、企業規模別でみると、融資取引先金融機関が一つである借り手企業に占める中小企業の割合は93.6%であった。

(注1) 23年調査結果の回答割合を記した箇所において、それぞれ括弧書きで記載している数値は18年調査のものである。

(注2) 18年調査と23年調査の間に、主に地方銀行、信用金庫、信用組合において統合が進んでおり、その絶対数が減少していることが、融資取引先金融機関数の減少に一定の影響を及ぼしていると考えられる。

イ 融資取引先金融機関の種類

 融資取引先金融機関の内訳をみると、地方銀行からの融資の割合が54.5%と最も高く、次いで、都市銀行が25.3%であった。

(2) メインバンクとの取引状況

 18年調査において、借入残高の割合が最も高い金融機関(以下「メインバンク」という。)からの要請に対して断りにくく感じるという回答が少なくなかったところ、23年調査においては、メインバンクからの融資が占める割合は、若干増加の傾向がみられる。

ア メインバンクとする金融機関

メインバンクを金融機関別にみると、都市銀行であるとする借り手企業が16.1%、地方銀行が66.3%、その他が17.7%であった。

イ メインバンクからの融資が占める割合

(ア) 金融機関から受けている全融資額のうち、メインバンクからの融資が占める割合を質問したところ、「40%超~60%」という回答が26.3%(24.6%)と最も割合が高く、次いで、「80%超」という回答が26.0%(21.8%)であった(第5表参照)。

第5表 メインバンクからの融資が占める割合

(注3) 有効回答数=18年調査:978,23年調査:1、030(借り手企業アンケート調査)

 

(イ) 企業規模別にみると、大企業では「20%超~40%」という回答が47.6%と最も割合が高く、中堅企業でも「20%超~40%」という回答が38.8%と最も割合が高く、中小企業では「80%超」という回答が34.4%と最も割合が高かった(第6表参照)。

第6表 メインバンクからの融資が占める割合(企業規模別)

(注4) 有効回答数=大企業:246、中堅企業:67、中小企業:694(借り手企業アンケート調査)

 

ウ メインバンクとの取引年数

18年調査において、金融機関との取引年数が長ければ当該金融機関からの要請に対して断りにくく感じるという回答が少なくなかった。そこで、23年調査においてもメインバンクとの取引年数を調査したところ、取引年数が「10年以上」という回答が72.5%(76.6%)と最も割合が高かった(第7表参照)

第7表 メインバンクとの取引年数

(注5) 有効回答数=18年調査:978、23年調査:1,036(借り手企業アンケート調査)

 

(3) 融資先金融機関の変更状況

18年調査において、金融機関からの要請に対し、意思に反して要請に応じた理由として、次回の融資が困難になると思ったためという回答や、融資を打ち切られた場合、今と同程度の条件で取引をしてくれる金融機関が他に見つからないと思ったためとする回答が多かった。そこで、23年調査においても、融資取引先金融機関の変更状況を質問したところ、次のとおりであった(第8表参照)。

ア 借り手企業アンケート調査において、「平成18年以降における融資を受けている金融機関の変更の有無」

(注6)を質問したところ、「変わっていない」という回答が71.8%(66.5%)であり、「変わった」という回答が31.6%(39.9%)であった。

(注6) 18年調査は平成13年以降、23年調査は平成18年以降の変更状況を質問している。

イ また、「変わっていない」と回答した企業に対し、「変更を検討したことがあるか」を質問したところ、変更することを「検討した」という回答が12.7%(28.8%)であった。

ウ さらに、「検討したが変更できなかった」と回答した企業に対し、その理由を質問したところ、「他の金融機関と取引を開始しようとしても、拒絶されるおそれがあるため」という回答が48.6%(47.7%)と最も割合が高く、次いで、「既存の金融機関との関係があるため」という回答が32.4%(31.8%)であった。

なお、「その他」という回答の割合が24.3%(4.5%)を占めているが、その中には「数年後に再度借入れをお願いしても渋られる状況が見えたため」、「担保のための物件を用意できないため」などの回答があった。

第8表 取引先金融機関の変更状況(複数回答)

(注7) 有効回答数=18年調査:1,005、23年調査:1,111(借り手企業アンケート調査)

 

3 融資を背景とした金融機関による要請等の実態

(1) 金融機関における独占禁止法関係のコンプライアンスの取組の進捗によって、金融機関から各種要請をされたことがあるという回答の割合は「預金を創設・増額することの要請」を除き相当程度減少した(第9表参照)。

第9表 要請されたことがあるとする借り手企業の割合

(注1) 有効回答数は要請の内容ごとに異なる(23年調査では1,086~1,110)。

 

(1) 金融機関からの各種要請について、要請されたことがあるとする借り手企業のうち、要請に対し自らの意思に反して応じたとする借り手企業の割合は、「他の金融機関から借入れをしないことの要請」及び「関連会社等の競争者と取引をしないことの要請」を除き、やや減少しているものの、いまだ低いとはいえない水準にある(第10表参照)。

第10表 要請されたことがあると回答のあった借り手企業のうち、要請に対し自らの意思に反して応じたとする借り手企業の割合

(注2) 要請に関する各設問において「要請されたことがある」という回答を分母とし、自らの「意思に反して応じた」という回答を分子として割合を算出したものである。

(注3) 有効回答数は要請の内容ごとに異なる(23年調査では3~250)。

(注4) 「関連会社等の競争者と取引をしないことの要請」の有効回答数は3社のみであり、うち2社が該当する。

(3) 本調査に回答のあった借り手企業全体のうち、金融機関から要請を受け、要請に対し自らの意思に反して応じたとする借り手企業の割合は、前記のとおり要請自体が減少したこともあり、「関連会社等の競争者と取引をしないことの要請」を除き、相当程度減少した(第11表参照)。

 

第11表 回答のあった借り手企業のうち、要請に対し自らの意思に反して応じたとする借り手企業の割合

(注5) 本調査に対する回答者全体を分母とし、自らの「意思に反して応じた」という回答を分子として割合を算出したものである。これは、要請されたかどうかにかかわらず、回答者全体のうち、どのくらいの借り手企業が「意思に反して応じた」のかという割合を示しているものである。

(注6) 有効回答数は要請の内容ごとに異なる(23年調査では1,086~1,110)。

(4) 各種要請に対して自らの意思に反して応じたと回答した借り手企業の52.1%が要請に応じた理由として「次回の融資が困難になる」ことを挙げており、18年調査と同じく、今後の融資への懸念が最も大きな理由となっていた。また、金融機関からの各種要請を「断りにくく感じる」という回答の割合は27.2%であり、18年調査の30.3%と比べて大きな減少はみられなかった。

(5) 金融機関と借り手企業との間の取引において、融資取引先が「変わっていない」と回答した借り手企業の割合は71.8%であり、このうち87.3%もの企業が「変更を検討したことがない」と回答し、5.4%が「検討したが変更できなかった」ということであった。

さらに、「検討したが変更できなかった」という回答のうち、半分近くが「他の金融機関と取引を開始しようとしても拒絶されるおそれがあるため変更できなかった」と回答している。これらのことから、借り手企業による融資取引先の変更が容易な状況にあるとはいえず、依然として独占禁止法上の問題が生じないよう注意を要する状況であるといえる。

4 法令遵守等に対する金融機関等の取組状況

 「金融機関の業態区分の緩和及び業務範囲の拡大に伴う不公正な取引方法について」(平成16年12月公表)(以下「金融ガイドライン」という。)及び18年調査報告書に関し、認知度及び取組状況を質問したところ、次の結果が得られた。

(1) 金融ガイドライン

金融ガイドラインについて、「公表していることを知らなかった」と回答した金融機関は21.1%(25.4%)であった。これを金融機関別にみると、都市銀行では5行中0行(5行中0行)が、地方銀行では94行中6行、6.4%(91行中2行、2.2%)が、信託銀行では7行中1行、14.3%(8行中0行)が、信用金庫では263金庫中47金庫、17.9%(265金庫中72金庫、27.2%)が、信用組合では135組合中53組合、39.3%(139組合中50組合、36.0%)が、その他機関では54機関中11機関、20.4%(55機関中19機関、34.5%)が金融ガイドラインを公表していることを知らないとの回答であった。

また、「公表していることは知っている」という回答のうち「公表又は内容を知っているが、周知・取組を行っていない(何もしていない)」という回答が22.4%(47.6%)であった。

さらに、金融ガイドラインが公表されたことを知り、社内で「周知及び取組を行った」という回答と「周知は行った」という回答を合わせると77.6%(52.4%)であった(第1図参照)。

第1図 金融機関の金融ガイドラインの認知度及び取組状況

(2) 18年調査報告書

 18年調査報告書について、「公表していることを知らなかった」と回答した金融機関は14.7%(28.2%)であった。これを金融機関別にみると、都市銀行では5行中0行(4行中0行)が、地方銀行では95行中4行、4.2%(90行中3行、3.3%)が、信託銀行では7行中1行、14.3%(9行中1行、11.1%)が、信用金庫では269金庫中30金庫、11.2%(266金庫中72金庫、27.1%)が、信用組合では136組合中40組合、29.4%(136組合中62組合、45.6%)が、その他機関では54機関中8機関、14.8%(55機関中20機関、36.4%)が18年調査報告書を公表していることを知らないとの回答であった。

また、「公表していることは知っている」という回答のうち、「公表していることは知っているが、周知・取組を行っていない(何もしていない)」という回答は9.5%(40.5%)であった。

さらに、18年調査報告書が公表されたことを知り、社内で「周知及び取組を行った」という回答と「周知は行った」という回答を合わせると90.5%(59.4%)であった(第2図参照)。

第2図 金融機関の18年調査報告書の認知度及び取組状況

 

5 金融機関が留意すべき事項

(1) 今回の調査において、独占禁止法上直ちに問題となる要請が行われた事例は見受けられなかったが、次回の融資への影響を懸念するなどの理由により自らの意思に反して要請に応じたという回答は、減少しているとはいえ一定割合みられた。また、前記3のとおり、「要請されたことがあると回答のあった借り手企業のうち、要請に対し自らの意思に反して応じたとする借り手企業の割合」は総じて減少したとはいえ、いまだ低いとはいえない水準にある。これらのことから、借り手企業は、金融機関の意向をおもんぱかって要請に応じることが少なくないことがうかがえる。このため、金融機関は、借り手企業が要請を断りづらい立場にあることを十分考慮し、各種要請を行うに当たっては、例えば、①要請に応じなくとも、今後の融資に何らかの影響を与えるものではない旨明確に説明する、②要請は融資が決定するまでの間は避けるなど、今後の融資等に関し不利な取扱いをされると受け取られないような形で慎重に行う必要がある。特に、借り手企業から各種要請に応じる意思がないとの表明があった、又はその表明がなくとも明らかに要請に応じる意思がないと認められるにもかかわらず重ねて要請を行うなどの行為は、不公正な取引方法に当たるおそれがあるため、そのような行為をしないよう注意する必要がある。

(2) 18年調査報告書において、金融機関が借り手企業に対して行う各種要請に関し、「独占禁止法上の考え方」を示したところである。今回の調査によって、この考え方について変更すべき点はなく、金融機関においては再度これを確認し、引き続き法令遵守の取組に努める必要がある。

6 公正取引委員会の今後の対応

公正取引委員会は、これまで、金融機関と借り手企業との間の取引における取引慣行の現状及び問題点について明らかにし、これらに関する競争政策上の考え方を示してきた。今回のフォローアップ調査の結果によれば、経済情勢の変化にもかかわらず、全体としては改善の方向にあると考えられる。

公正取引委員会としては、金融市場等における公正かつ自由な競争が維持・促進されるよう、今後も、各金融機関において、コンプライアンスに関する一層の取組が行われること、また、本調査結果及び18年調査報告書において公正取引委員会が示した「独占禁止法上の考え方」の周知徹底及び取引慣行の不断の見直し・点検が行われることを期待する。

公正取引委員会は、金融機関と借り手企業との取引における取引慣行全般について引き続き注視し、公正かつ自由な競争が阻害されているような事案に接した場合には独占禁止法に基づき厳正に対処していく。