第2部 各論

第10章 国際関係業務

第1 独占禁止協力協定

 近年、複数国の競争法に抵触する事案、複数の国の競争当局が同時に審査を行う必要のある事案等が増加するなど、執行活動の国際化及び競争当局間の協力・連携の強化の必要性が高まっている。公正取引委員会は、二国間独占禁止協力協定、経済連携協定等に基づき、関係国の競争当局に対し執行活動等に関する通報を行うなど、外国の競争当局との間で緊密な協力を行っている。

1 日米独占禁止協力協定

日本国政府は、米国政府との間で、平成11年10月7日に「反競争的行為に係る協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」に署名し、同協定は同日に発効した。同協定は、両政府の競争当局間における執行活動に係る通報、協力、調整、執行活動の要請、重要な利益の考慮等を規定している。

2 日欧州共同体独占禁止協力協定

日本国政府は、欧州共同体との間で、平成15年7月10日に「反競争的行為に係る協力に関する日本国政府と欧州共同体との間の協定」に署名し、同協定は同年8月9日に発効した。同協定は、前記日米独占禁止協力協定とほぼ同様の内容となっている。

3 日加独占禁止協力協定

日本国政府は、カナダ政府との間で、平成17年9月6日に「反競争的行為に係る協力に関する日本国政府とカナダ政府との間の協定」に署名し、同協定は同年10月6日に発効した。同協定は、前記日米独占禁止協力協定とほぼ同様の内容となっている。

第2 競争当局間協議

公正取引委員会は、我が国と経済的交流が特に活発な国・地域の競争当局との間で競争政策に関する協議を定期的に行っている。平成23年度における協議の開催状況は、次のとおりである。

第1表 平成23年度における競争当局間協議

第3 経済連携協定への取組

近年における経済のグローバル化の進展と並行して、地域貿易の強化のため、現在、多くの国が、経済連携協定や自由貿易協定の締結又は締結のための交渉を行っている。競争政策の観点からは、経済連携協定が市場における競争を一層促進するものとなることが重要であり、公正取引委員会は、このような観点から我が国の経済連携協定締結に関する取組に参画している。我が国がこれまでに締結した経済連携協定のうち、次のものには、競争に関する規定が設けられ、両国が反競争的行為に対する規制の分野において協力することが盛り込まれている。

第2表 我が国がこれまでに締結した経済連携協定のうち競争に関する規定が設けられているもの

(注1) 平成19年3月に両国間で見直しのための改正議定書が署名され、競争に関する章については、シンガポール側における競争法導入及び競争当局設立に伴い修正が行われた。

(注2) 平成20年4月に日本及び全ASEAN構成国の署名が完了した。

(注3) 日本とシンガポール、ラオス、ベトナム及びミャンマーとの間では平成20年12月に、ブルネイとの間では平成21年1月に、マレーシアとの間では同年2月に、タイとの間では同年6月に、カンボジアとの間では同年12月に、フィリピンとの間では平成22年7月に発効した。インドネシアとの間では未発効である。

第4 その他の二国間協議への対応

 公正取引委員会が平成23年度において対応したその他の二国間協議としては、日米間の協議がある。日米両国政府は、平成13年6月に新たな経済関係の枠組みである「成長のための日米経済パートナーシップ」を立ち上げた。同パートナーシップの下、同年から平成20年までの間は、「規制改革及び競争政策イニシアティブ」において、平成21年以降は「日米経済調和対話」において、公正取引委員会は、競争政策に関する事項を担当している。

平成23年度においては、同対話における事務レベル会合等が開催され、独占禁止法執行の有効性、手続の公正性等について協議が行われた。

なお、同対話に係る協議記録は、日米両国政府により取りまとめられ、平成24年1月に公表された。

第5 多国間関係

1 国際競争ネットワーク(ICN : International Competition Network)

(1) ICNの概要

ICN は、競争法執行における手続面及び実体面の収れんを促進することを目的として平成13年10月に発足した各国競争当局を中心としたネットワークであり、平成24年3月31日現在、108か国・地域から123の競争当局が参加している。このほか、国際機関、研究者、弁護士等の非政府アドバイザー(Non-Governmental Advisors,NGA)もICN に参加している。

ICN は、主要な19の競争当局の代表者で構成される運営委員会(Steering Group)により、その全体活動が管理されている。公正取引委員会委員長は、設立以来、運営委員会のメンバーとなっており、平成24年3月31日現在、運営委員会の副議長を務めている。このほか、公正取引委員会は、ICN 成果物の唱導及び実施(Advocacy andImplementation)を担当しており、他のICN に加盟する競争当局と協力し、AIN サポートプログラム(AISUP,平成20年8月に当委員会の主導により設立されたICN 成果物を用いて経験の浅い競争当局の法改正等を支援するためのプログラム)の運用を行っている。また、当委員会は、ベトナム競争当局に対する同プログラムの実施主体となっている。

ICN は、運営委員会の下に、テーマごとに①カルテル作業部会、②企業結合作業部会、③単独行為作業部会、④アドボカシー作業部会及び⑤競争当局有効性作業部会の5つの作業部会並びにICN の組織及び運営等に関する作業部会を設置している。これらの作業部会においては、電話会議、質問票の活用、各国競争当局からの書面提出等を通じて、それぞれの課題に対する検討が行われているほか、それぞれのテーマごとにワークショップが開催されている。公正取引委員会は、これらの活動に積極的に取り組んでおり、平成23年度の第10回年次総会以降はカルテル作業部会の共同議長を務めている。また、ICN は、これらの作業部会の成果の報告、次年度のワークプランの策定等のため、年次総会を開催しており、平成23年度の第10回年次総会は、平成23年5月18日から同月20日にかけてオランダ・ハーグにおいて開催された。公正取引委員会からは委員長ほか5名の事務総局職員がモデレーター、パネリスト等として参加した。

さらに、作業部会間の横断的な会合として、執行協力に関するラウンドテーブルが、平成23年3月29日に米国・ワシントンD.C.において開催され、公正取引委員会からは犯則審査部長ほかがパネリスト等として参加した。

平成23年度における主な会議の開催状況は、次のとおりである。

第3表 平成23年度におけるICNの主な会議の開催状況

(2) 企業結合審査に係る国際協力枠組みの構築

企業活動の国際化等グローバル化の進展に伴い、複数の国の競争当局が同時に審査を行う必要があるような国際的な企業結合が増加していることから、個別の企業結合事案についての情報交換を含む競争当局間の実質的な協力が、より体系的に行われる必要がある。こうした問題意識から、公正取引委員会は、ICN において、企業結合審査に係る国際協力枠組みの構築を提唱し、これを「ICN における企業結合審査の協力のための枠組み」として取りまとめた。平成24年4月20日、ブラジル・リオデジャネイロで開催された第11回年次総会の場において、当該協力枠組みの構築が承認された。 当該協力枠組みは、ICN に加盟する競争当局間における企業結合審査に関する効率的かつ効果的な執行協力の促進を目的としており、① ICN に加盟する競争当局における連絡窓口となる担当官の連絡先リストの作成、②関連する競争当局への接触及び情報交換の方法等を内容とするものである。

 公正取引委員会としては、今後、企業結合作業部会において、連絡先リストの取りまとめを担当するなどして当該協力枠組みの利用促進に協力することとしている。

(3) 各作業部会の活動状況

平成23年度における各作業部会の活動状況は、次のとおりである。

ア カルテル作業部会

カルテル作業部会は、反カルテル執行における国内的及び国際的な諸問題に対処することを目的として設置された作業部会である。同作業部会には、ハードコア・カルテルの定義等基本的な概念について検討を行う一般的枠組みサブグループ(SG 1)及び個別の審査手法に関する情報交換等を通じてカルテルに対する法執行の効率性を高めることを目的とした審査手法サブグループ(SG 2)が設置されている。

第10回年次総会以降、SG 1においては、入札談合について、ICN に加盟する競争当局に対する電話セミナーを6回実施するなど、カルテル審査の実務者による議論が行われた。平成24年3月8日に開催された電話セミナーにおいては、公正取引委員会事務総局の職員がプレゼンテーションを行った。また、SG 2においては、反カルテル執行マニュアルのうちカルテルの問題に対する認識向上、アウトリーチ活動及びコンプライアンスの章並びに情報共有メカニズムチャートの作成作業が行われ、第11回年次総会にそれぞれ提出された。さらに、SG 2は、ICN に加盟する競争当局のカルテル審査の実務者がカルテル審査に関する実務上の問題を議論するため、年1回、カルテルワークショップを開催している。平成23年度の同ワークショップは、平成23年10月11日から同月13日にかけてベルギー・ブリュージュにおいて開催され、「カルテルとの闘いの有効性を高める」をテーマとして議論が行われた。公正取引委員会からも事務総局の職員3名がモデレーターやスピーカーとして参加した。次回の同ワークショップは、平成24年10月2日から同月4日にかけてパナマ・パナマシティにおいて開催される予定である。

イ 企業結合作業部会

企業結合作業部会は、企業結合審査の効率性を高めるとともに、その手続面及び実体面の収れんを促進し、国際的企業結合の審査に費やされる時間や費用を減らすことを目的として設置された作業部会である。

第10回年次総会以降、同作業部会においては、企業結合審査における経済分析に関する電話セミナーが5回開催された。

ウ 単独行為作業部会

単独行為作業部会は、事業者による反競争的単独行為に対する規制の在り方等について議論することを目的として設置された作業部会である。

第10回年次総会以降、同作業部会においては、様々な単独行為の形態を分析する手法を取りまとめている単独行為ワークブックの「単独行為規制の目的及び原則」及び「略奪的価格設定」の章の作成作業が行われ、第11回年次総会に提出された。また、同作業部会は、「単独行為事例における価格と費用の経済学的利用」、「エネルギー分野における支配的地位の濫用」をテーマとしたウェブセミナーを開催した。

エ アドボカシー作業部会

アドボカシー作業部会は、競争唱導活動の有効性を向上させることを目的として設置された作業部会である。

第10回年次総会以降、同作業部会においては、競争唱導の有効性を強化するための実務手法を取りまとめている競争唱導ツールキット第2部の作成や市場調査に関する優れた慣行(Good Practice)についてのハンドブックの更新、利害関係者への競争の利益の説明をテーマとした電話セミナー及びこれらテーマに係る質問票に基づく中間報告書の作成作業が行われ、各成果物は、第11回年次総会に提出された。

オ 競争当局有効性作業部会

競争当局有効性作業部会は、競争政策の有効性に関する諸問題とその有効性を達成するために最もふさわしい競争当局の組織設計を検討することを目的として設立された、競争政策の実施に関する作業部会が、平成21年5月に改組されたものである。

第10回年次総会以降、同作業部会においては、競争政策の有効性を達成するためにふさわしい競争当局の組織設計の在り方を取りまとめている競争当局有効性ハンドブックのうち、「効果的なプロジェクトの遂行」及び「効果的な知識管理」の章の作成が継続して行われたほか、新たに「人材管理」の章の作成作業が行われ、第11回年次総会に提出された。また、同作業部会は、平成24年3月27日、競争当局の有効性に関するハイレベル・ラウンドテーブルを米国・ワシントンD. C. において開催した。同ラウンドテーブルにおいては、「効果的な法執行のためのメカニズム」及び「意思決定における信頼構築」についての議論が行われ、公正取引委員会事務総局審査局長が参加した。

2 経済協力開発機構(OECD)・競争委員会(COMP : Competition Committee)

(1) 競争委員会は、OECDに設けられている各種委員会の一つであり、昭和36年12月に設立された制限的商慣行専門家委員会が昭和62年に競争法・政策委員会に改組され、平成13年12月から現在の名称に変更されたものである。我が国は、昭和39年のOECD加盟以来、その活動に参加してきており、公正取引委員会は、同年10月の会合以降、これに参加してきている。競争委員会は、本会合のほか、その下に各種の作業部会及び競争に関するグローバルフォーラムを設け、随時会合を行っている。本会合においては、各加盟国の競争政策に関する年次報告が行われているほか、各作業部会の報告書の検討、各加盟国に対する規制改革国別審査等、その時々の重要課題について討議が行われている。平成23年度における会議の開催状況は、次のとおりであり、当委員会は、全ての会合に出席した。

第4表 平成23年度における競争委員会の開催状況

(注) 前記会議の開催場所は,全てフランス・パリである。

(2)平成23年6月の第112回本会合においては、①競争法に係るコンプライアンスの推進及び②企業結合の決定が与える影響の評価に関するラウンドテーブル討議が開催された。同年10月の第113回本会合においては、デジタルエコノミーに係るヒアリングが行われた。平成24年2月の第114回本会合においては、第113回会合に引き続いてデジタルエコノミーに係るヒアリングが行われた。

競争委員会に属する各作業部会及び競争に関するグローバルフォーラムの平成23年度における主要な活動は、次のとおりである。

ア 第2作業部会では、平成23年6月の会合において、港湾における競争政策上の論点に関するラウンドテーブル討議が、同年10月の会合において、不当高価格設定に関するラウンドテーブル討議が、平成24年2月の会合において、医療サービスにおける競争に関するラウンドテーブル討議が、それぞれ行われた。

イ 第3作業部会では、平成23年6月の会合においては、合併事例における問題解消措置に関するラウンドテーブル討議が、同年10月の会合においては、競争当局と裁判所の関係に関する制度的な側面及び手続的な側面並びに手続の公正性及び透明性の進展に係る最新の議論に関するラウンドテーブル討議が、平成24年2月の会合においては、反競争的効果を伴う一方向的情報交換に関するラウンドテーブル討議が、それぞれ行われた。

ウ 競争に関するグローバルフォーラムでは、平成24年2月の会合において、①一次産品と価格高騰及び②カルテル審査における国際協力に関するラウンドテーブル討議が行われた。

3 東アジア競争法・政策カンファレンス及び東アジア競争政策トップ会合

公正取引委員会は、東アジア地域において競争法・政策の効果的な執行・導入に向けた共通の認識を醸成すること等を目的として、東アジア競争法・政策カンファレンス及び東アジア競争政策トップ会合の開催に主導的な役割を果たしている。

東アジア競争法・政策カンファレンスは、競争当局及び競争関連当局に加え、学界、産業界からの出席者を交えて、競争法・政策に係るプレゼンテーション・質疑応答等を行い、東アジア地域における競争法・政策の普及・広報に寄与することを主要な目的とするものである。

東アジア競争政策トップ会合は、東アジア地域における競争当局及び競争関連当局のトップが一堂に会し、その時々の課題や政策動向等について率直な意見・情報交換を行うことにより、東アジア地域における競争当局及び競争関連当局間の協力関係を強化することを目的とするものである。同会合においては、競争法・政策の執行の課題、効果的・効率的な技術支援のための協力・調整等のテーマについて議論が行われている。

平成23年度においては、第7回東アジア競争政策トップ会合及び第6回東アジア競争法・政策カンファレンスが平成23年9月にシンガポールにおいて開催された。

4 アジア太平洋経済協力(APEC)

(1) 競争政策・競争法グループ(CPLG)

APEC においては、APEC 域内における競争政策についての理解を深め、貿易及び投資の自由化及び円滑化に貢献することを目的として、貿易投資委員会の下部組織として競争政策・規制緩和グループ(CPDG)が平成8年に設置された。同グループは、平成19年に貿易投資委員会の下部組織から経済委員会の下部組織に移行し、平成20年には、競争政策・競争法グループ(CPLG)に改称した。公正取引委員会は、平成17年からCPLG(改称前においてはCPDG)の議長業務を行うなど、APEC における競争政策に関する取組に対して積極的に貢献を行っている。

平成23年度においては、公正取引委員会は、平成23年9月に米国・サンフランシスコにおいて、平成24年2月ロシア・モスクワにおいて開催された経済委員会会合に出席し、CPLG 議長としてAPEC 域内の競争政策の取組について報告を行った。また、平成24年2月の同会合前に開催されたCPLG 会合において議長を務めるとともに、我が国の競争法の執行について報告を行った。さらに、当委員会は、APEC の技術支援に関する枠組みを活用して、平成23年10月にマレーシア・ペナンにおいて、競争政策の促進やAPEC参加エコノミー内の構造改革への貢献等を目的とする「競争政策に関するトレーニングコース」と題する研修を実施した。同研修はカルテル及び入札談合をテーマとして開催され、APEC 参加エコノミー等から約90名が参加した。

(2) 個別行動計画(IAP)及び共同行動計画(CAP)の改定

APEC においては、平成6年に合意されたボゴール目標(先進エコノミーは2010年までに、途上エコノミーは2020年までに、自由で開かれた貿易と投資を実現すること)を実現するための具体的道筋を示す大阪行動指針(平成7年採択)に基づき、APEC 参加エコノミーそれぞれの自主的かつ個別的な行動を取りまとめた「個別行動計画」(IAP)及 びAPEC 参加エコノミーが共同して取り組むべき分野別の行動を取りまとめた「共同行動計画」(CAP)が策定されている。我が国の「個別行動計画」の競争章においては、競争法の厳正な執行や技術支援の実施等が掲げられており、競争政策分野における「共同行動計画」としては、情報交換及び対話の促進、競争法・政策に対する理解の増進、技術支援の実施等が掲げられている。

平成23年度においては、公正取引委員会は、我が国の「個別行動計画」における競争章の改定(我が国の競争法・政策に関する情報の更新)に関与したほか、CPLG の議長エコノミーとして競争政策分野における共同行動計画の改定に貢献を行った。

5 国連貿易開発会議(UNCTAD)

昭和55年、UNCTAD主催による制限的商慣行国連会議において、「制限的商慣行規制のための多国間の合意による一連の衡平な原則と規則」(以下「原則と規則」という。)が採択された。さらに、原則と規則は、同年の第35回国連総会において、国連加盟国に対する勧告として採択された。原則と規則は、国際貿易、特に発展途上国の国際貿易と経済発展に悪影響を及ぼす制限的商慣行を特定して規制することにより、国際貿易と経済発展に資することを目的としている。その後、このような制限的商慣行についての調査研究、情報収集等を行うために、昭和56年、「制限的商慣行政府間専門家会合」が設置され、平成8年のUNCTAD第9回総会において「競争法・政策専門家会合」と名称変更された後、平成9年12月の国連総会の決議により、「競争法・政策に関する政府間専門家会合」と名称が再変更された。また、同会合のほか、原則と規則の全ての側面についてレビューを行う国連レビュー会合が5年に1回開催されている。

平成23年度においては、同年7月19日から同月21日にかけてスイス・ジュネーブにおいて第11回競争法・政策に関する政府間専門家会合が開催され、公正取引委員会事務総局の職員が同会合に出席した。同会合においては、セルビア競争法・政策に対する審査が行われたほか、効率的な競争当局の設立、競争政策分野における能力強化の有効性、競争政策とその他の政策との統一化の重要性、競争当局間の執行協力等について議論された。

第6 海外の競争当局等に対する技術支援

近年、東アジア等の発展途上国において、競争法・政策の重要性が認識されてきていることに伴い、既存の競争法を強化する動きや、新たに競争法を導入しようとする動きが活発化しており、これらの国に対する技術支援の必要性が高まってきている。公正取引委員会は、主として独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じて、競争法・政策分野における技術支援活動を実施してきている。

公正取引委員会による発展途上国に対する具体的な技術支援の概要は次のとおりである。

1 ベトナムに対する技術支援

ベトナムに対して、公正取引委員会は、競争法の執行能力の強化を目的として、JICA の協力の下、平成20年9月から平成22年6月にかけて、また、同年7月から、それぞれ、当委員会の事務総局職員1名をJICA 長期専門家としてベトナム競争当局に派遣し、現地における技術支援を実施している。また、当委員会は、平成23年5月16日から同年6月1日にかけて及び同年11月7日から同月22日にかけて、それぞれ、ベトナム競争当局の職員5名を我が国に招へいし、競争法・政策研修を実施した。

2 インドネシアに対する技術支援

インドネシアに対して、公正取引委員会は、競争法の執行能力の強化を目的として、JICA の協力の下、平成21年10月から、当委員会の事務総局職員1名をJICA 長期専門家としてインドネシア競争当局に派遣し、現地における技術支援を実施している。

また、公正取引委員会は、平成24年3月5日から同月23日にかけて、インドネシア競争当局の職員11名を我が国に招へいし、競争法・政策研修を実施した。

3 フィリピンに対する技術支援

フィリピンに対して、公正取引委員会は、平成22年11月24日から25日にかけてタガイタイにおいて、また、平成23年3月2日から4日にかけてセブにおいて、それぞれ開催された現地セミナーに、職員を派遣した。

4 マレーシアに対する技術支援

マレーシアに対して、公正取引委員会は、JICA の協力の下、平成24年1月16日から同月20日にかけて、同国競争当局の職員4名を我が国に招へいし、競争法・政策研修を実施した。

5 その他発展途上国に対する技術支援

公正取引委員会は、JICA の協力の下、平成6年度から、競争法を導入しようとする国や既存の競争法の運用強化を図ろうとする国の競争当局等の職員を我が国に招へいし、競争法・政策に関する研修を実施している。平成23年度においては、発展途上国4か国から7名の参加を得て、同年9月29日から同年10月26日にかけて実施した。

6 その他の技術支援

公正取引委員会は、発展途上国に対する技術支援として、OECD等の国際機関や外国政府等が東アジア地域において実施する競争法・政策に関するセミナーに職員や学識経験者を積極的に派遣している。

第7 海外調査

公正取引委員会の競争政策の企画・運営に資するため、諸外国の競争政策の動向、競争法制及びその運用状況についての情報収集や調査研究を行っている。平成23年度においては、米国、EU、その他主要なOECD 加盟諸国やアジア各国を中心として、競争当局の政策動向、競争法関係の立法活動等について調査を行い、その内容の分析とウェブサイト等による紹介に努めた。

第8 海外への情報発信

公正取引委員会の国際的なプレゼンスを向上させ、我が国の競争政策の状況を広く海外に周知するため、新聞発表文や所管法令・ガイドライン等を英訳し、英文ウェブサイトに掲載しているほか、当委員会の活動等を紹介する英文パンフレットの作成・配布を行っている。平成23年度においては、英訳する報道発表資料の対象を拡大するなど、英語版報道発表資料の一層の充実及び速報化に努めた。

このほか、外国の競争当局・弁護士会等の主催するセミナー等に積極的に事務総局職員を派遣したり、海外のメディアに寄稿を行うなどの活動をしている。平成23年度においては、平成23年4月に韓国・ソウルにおいて開催されたIBA(国際法曹協会)・KBA(韓国法曹協会)共催カンファレンス、同年9月に中国・北京において開催されたBRICs 国際競争カンファレンス、平成24年1月にインド・ニューデリーにおいて開催されたOECD・インド競争委員会共催ワークショップ、同年2月にカナダ・バンクーバーにおいて開催されたABA(米国法曹協会)・IBA 共催国際カルテルワークショップに、公正取引委員会委員がスピーカー等として参加し、我が国の競争政策の状況等について紹介等を行った。また、平成24年3月には米国・ワシントンD. C. において開催されたABA 反トラスト法部会春季会合におけるセッションに、公正取引委員会事務総局審査局長がスピーカーとして参加し、我が国独占禁止法における審査手続について紹介を行った。