第2部 各論

第2章 違反被疑事件の審査及び処理

第1 違反被疑事件の審査及び処理の状況

1 排除措置命令等

独占禁止法は,事業者が私的独占又は不当な取引制限をすること,不公正な取引方法を用いること等を禁止している。公正取引委員会は,一般から提供された情報,自ら探知した事実,違反行為をした事業者からの課徴金減免申請等を検討し,これらの禁止規定に違反する事実があると思料するときは,独占禁止法違反被疑事件として必要な審査を行っている。

審査事件のうち必要なものについては独占禁止法の規定に基づく権限を行使して審査を行い(第47条),違反する事実があると認められたときは,排除措置命令の名宛人となるべき者に対し,予定される排除措置命令の内容等を通知し(第49条第5項),意見を述べ,及び証拠を提出する機会の付与を行い(第49条第3項),提出された意見や証拠を踏まえて,排除措置命令を行っている。

また,排除措置命令を行うに足る証拠が得られなかった場合であっても,違反の疑いがあるときは,関係事業者等に対して警告を行い,是正措置を採るよう指導している(注)。

さらに,違反行為の存在を疑うに足る証拠は得られなかったが,違反につながるおそれのある行為がみられた場合には,未然防止を図る観点から注意を行っている。

なお,法的措置又は警告をしたときは,その旨公表している。また,注意及び打切りについては,競争政策上公表することが望ましいと考えられる事案であり,かつ,関係事業者から公表する旨の了解を得た場合又は違反被疑対象となった事業者が公表を望む場合は,公表している。

平成25年度における審査件数(不当廉売事案で迅速処理したもの〔第1-2表〕を除く。)は,前年度からの繰越しとなっていたもの13件及び年度内に新規に着手したもの137件の合計150件であり,このうち年度内に処理した件数は140件であった。140件の内訳は,排除措置命令が18件,警告が1件,注意が114件及び違反事実が認められなかったため審査を打ち切ったものが7件となっている(第1-1表参照)。

(注) 公正取引委員会は,警告を行う場合にも,公正取引委員会の審査に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第5号)に基づき,排除措置命令の際の事前手続に準じた手続を経ることとしている。

第1-1表 審査事件処理状況の推移(不当廉売事案で迅速処理(注1)を行ったものを除く。)

(注1) 申告のあった不当廉売事案に対し可能な限り迅速に処理する(原則2か月以内)という方針に基づいて行う処理をいう。

(注2) 排除措置命令を行っていない課徴金納付命令事件数である。

(注3) ( )内の数字は,平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金納付命令に係る審判開始決定を行った関係人数である。

(注4) 平成17年独占禁止法改正法(独占禁止法の一部を改正する法律〔平成17年法律第35号〕をいう。以下同じ。)による改正前の独占禁止法に基づく課徴金の納付を命ずる審決に係る金額を含み,同法に基づき審判手続が開始されたことにより失効した課徴金納付命令に係る金額は含まない。

第1-2表 不当廉売事案の迅速処理件数の推移

第1図 法的措置件数と対象事業者等の数の推移

平成25年度における処理件数を行為類型別にみると,価格カルテル14件,入札談合(官公需)2件,受注調整(民需)7件,不公正な取引方法111件,その他6件となっている(第2表参照)。法的措置を採った事件は18件であり,この内訳は,価格カルテル8件,入札談合(官公需)2件,受注調整(民需)7件となっている(第2表及び第3表参照)。

第2表 平成25年度審査事件(行為類型別)一覧表

(注1) 複数の行為類型に係る事件は,主たる行為に即して分類している。

(注2) 価格カルテルとその他のカルテルが関係している事件は,価格カルテルに分類している。

(注3) 事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにする行為(独占禁止法第8条第5号)は,不公正な取引方法に分類している。

(注4) 「その他」とは,事業者団体による構成事業者の機能活動の制限等である。

第3表 排除措置命令等の法的措置件数(行為類型別)の推移

(注1) 複数の行為類型に係る事件は,主たる行為に即して分類している。

(注2) 事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにする行為(独占禁止法第8条第5号)は,不公正な取引方法に分類している。

2 課徴金納付命令等

(1) 課徴金納付命令の概要

独占禁止法は,カルテル・入札談合等の未然防止という行政目的を達成するために,行政庁たる公正取引委員会が違反事業者等に対して金銭的不利益である課徴金の納付を命ずることを規定している(第7条の2第1項,第2項及び第4項,第8条の3,第20条の2,第20条の3,第20条の4,第20条の5並びに第20条の6)。

課徴金の対象となる行為は,①事業者又は事業者団体の行うカルテルのうち,商品若しくは役務の対価に係るもの又は商品若しくは役務について供給量若しくは購入量,市場占有率若しくは取引の相手方を実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの,②いわゆる支配型私的独占で被支配事業者が供給する商品若しくは役務について,その対価に係るもの又は供給量,市場占有率若しくは取引の相手方を実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの,③いわゆる排除型私的独占のうち供給に係るもの,④独占禁止法で定められた不公正な取引方法である,共同の取引拒絶,差別対価,不当廉売及び再販売価格の拘束のうち,一定の要件を満たしたもの並びに優越的地位の濫用のうち継続して行われたものである。

平成25年度においては,延べ176名に対し総額301億7410万円の課徴金納付命令を行った(第4表参照)。このうち,違反を繰り返した場合の割増算定率が適用された事業者は4事件における延べ9名であり,違反行為において主導的な役割を果たした場合の割増算定率が適用された事業者は3事件における延べ6名であった。これらのうち,2事件(注)における各1名については,違反を繰り返した事業者及び主導的役割を果たした事業者の両方に該当し,10パーセントの課徴金算定率に代えて20パーセントの割増算定率が適用された。また,早期に違反行為をやめた場合の軽減算定率が適用された事業者は2事件における延べ16名であった。

このほか,平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく審判手続を経て,延べ5名の事業者に対し総額6873万円の課徴金の納付を命ずる審決を行った。

この結果,平成25年度において納付を命じた課徴金額は,延べ181名の事業者に対して,総額302億4283万円であった(第5表参照)。

(注) 東京電力本店等発注の架空送電工事に係る受注調整事件及び関西電力発注の架空送電工事に係る受注調整事件において適用。

(2) 課徴金減免制度の運用状況

平成25年度における課徴金減免制度に基づく事業者からの報告等の件数は50件であった(課徴金減免制度導入〔平成18年1月〕以降の件数は775件)。

なお,平成25年度においては,12事件延べ33名の課徴金減免申請事業者について,当該事業者からの申出により,これらの事業者の名称,免除の事実又は減額の率等を公表した(注)。

(注) 公正取引委員会は,課徴金減免制度の適用を受けた事業者から公表の申出がある場合には,課徴金納付命令を行った際等に,当委員会のウェブサイト(http://www.jftc.go.jp/dk/seido/genmen/kouhyou/index.html)に,当該事業者の名称,所在地,代表者名及び免除の事実又は減額の率等を公表することとしている。

第2図 課徴金額等の推移

(注) 平成17年独占禁止法改正法(独占禁止法の一部を改正する法律〔平成17年法律第35号〕をいう。以下同じ。)による改正前の独占禁止法に基づく課徴金の納付を命ずる審決を含み,同法に基づく審判手続の開始により失効した課徴金納付命令を除く。

3 申告

平成25年度においては,独占禁止法の規定に違反する事実があると思われ,公正取引委員会に報告(申告)された件数は7,243件であった(第3図参照)。この報告が書面で具体的な事実を摘示して行われた場合には,措置結果を通知することとされており(第45条第3項),平成25年度においては,7,959件の通知を行った。

また,公正取引委員会は,独占禁止法違反被疑行為の端緒情報をより広く収集するため,平成14年4月からインターネットを利用した申告が可能となる電子申告システムを当委員会のウェブサイト上に設置しているところ,平成25年度においては,同システムを利用した申告が742件あった。

第3図 申告件数の推移

4 発注者及び関係官庁等への申入れ等

公正取引委員会は,独占禁止法違反行為についての調査の過程において,競争政策上必要な措置を講じるべきと判断した事項について,発注者及び関係官庁等に申入れや要請を行っている。平成25年度においては,以下のとおり,申入れや要請を行った。

(1) 事業者団体への要請

日本スターチ・糖化工業会に対する要請(平成25年6月13日)(事件詳細については後記第21(1)参照)

(2) 発注者への申入れ

ア 東京電力㈱に対する申入れ(平成25年12月20日)(事件詳細については後記第21(3)参照)

イ 関西電力㈱に対する申入れ(平成26年1月31日)(事件詳細については後記第21(4)参照)

ウ 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「鉄道・運輸機構」という。)に対する申入れ(平成26年3月19日)(事件詳細については後記第4参照)

(3) 関係官庁への申入れ

国土交通省に対する要請(平成26年3月18日)(事件の詳細については後記第21(6)参照)

第4表 平成25年度法的措置一覧表

(注1) 前記のほか,平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく審決によって,延べ5名の事業者に対し総額6873万円の課徴金の納付を命じた(第3章第2 平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく審決参照)。

(注2) 課徴金納付命令対象事業者数の合計(延べ数)である。

第5表 課徴金制度の運用状況(注1)

(注1) 平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金の納付を命ずる審決を含み,同法に基づく審判手続の開始により失効した課徴金納付命令を除く。

(注2) 平成15年9月12日,協業組合カンセイに係る審決取消請求事件について,審決認定(平成10年3月11日,課徴金額1934万円)の課徴金額のうち967万円を超える部分を取り消す判決が出された(同判決は確定した。)。

(注3) 平成16年2月20日,土屋企業㈱に係る審決取消請求事件について,審決認定(平成15年6月13日,課徴金額586万円)の課徴金額のうち302万円を超える部分を取り消す判決が出された(同判決は確定した。)。

第2 法的措置

平成25年度においては,18件について法的措置を採った。平成25年度に法的措置を採った18件の違反法条をみると,独占禁止法第3条後段(不当な取引制限の禁止)違反16件,同法第8条第1号(事業者団体による競争の実質的制限等の禁止)違反1件及び同法第19条(不公正な取引方法の禁止)違反1件となっている。

法的措置を採った前記18件の概要は次のとおりである。

1 独占禁止法第3条後段違反事件

(1) 異性化糖(注1)及び水あめ・ぶどう糖(注2)の製造業者らに対する件(平成25年(措)第7号・第8号)

(注1) 「異性化糖」とは,とうもろこしから生成されたでん粉をアミラーゼ等の酵素又は酸により加水分解して得られたグルコース1分子の糖を,グルコースイソメラーゼ又はアルカリにより異性化して得られた果糖を含むものをいい,清涼飲料水等の製造に用いられるものである。

(注2) 「水あめ・ぶどう糖」とは,とうもろこしから生成されたでん粉をアミラーゼ等の酵素又は酸により加水分解して得られたもののうち,異性化糖を除くものをいい,酒類,菓子類等の製造に用いられるものである。

ア 関係人

(注3) 「特定異性化糖」とは,異性化糖のうち,ルール決め(砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律(昭和40年法律第109号)第15条第1項に定められた「売戻しの価格」等の指標を用いた計算式を定め,当該計算式で用いられた指標の変動に応じて価格を定める価格決定方式をいう。以下同じ。)及び固定価格(年間,暦年等の特定の期間を通して同一の価格を定める価格決定方式をいう。以下同じ。)を除く価格決定方式により価格を定める条件で取引する需要者向けに販売されるものをいう。

(注4) 「特定水あめ・ぶどう糖」とは,水あめ・ぶどう糖のうち,ルール決め及び固定価格を除く価格決定方式により価格を定める条件で取引する需要者向けに販売されるものをいう。

(注5) 表中の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象事業者であることを示している。

(注6) 表中の「-」は,その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反事業者であることを示している。

イ 違反行為の概要

(ア) 前記アの表記載の10社(以下「10社」という。)は,平成22年10月28日以降3回にわたり開催された日本スターチ・糖化工業会(以下「工業会」という。)の会合の場を利用して情報交換を繰り返し行うなどし,遅くとも同年12月28日までに,①特定異性化糖及び②特定水あめ・ぶどう糖の販売価格について,平成23年1月以降,現行価格より1キログラム当たり10円引き上げることを合意した。

(イ) さらに,10社は,平成23年1月から同年6月までの間に開催された工業会の会合の場を利用して情報交換を繰り返し行うなどし,遅くとも同年6月29日までに,①特定異性化糖及び②特定水あめ・ぶどう糖の販売価格について,前記(ア)で合意した引上げ額を1キログラム当たり15円ないし20円とすることを合意した。

(ウ) 10社は,前記(ア)及び(イ)の合意により,公共の利益に反して,我が国における①特定異性化糖の販売分野及び②特定水あめ・ぶどう糖の販売分野における競争を実質的に制限していた。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 排除措置命令の対象事業者(以下「名宛人」という。)は,それぞれ,

a 前記イ(ア)及び(イ)の各合意が消滅していることを確認すること

b 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,①特定異性化糖又は②特定水あめ・ぶどう糖の販売価格を決定せず,各社がそれぞれ自主的に決めること

c 今後,相互に,又は他の事業者と,①特定異性化糖又は②特定水あめ・ぶどう糖の販売価格の改定に関して情報交換を行わないこと

を,取締役会において決議しなければならない。

(イ) 名宛人は,それぞれ,前記(ア)に基づいて採った措置を,自社を除く9社にそれぞれ通知するとともに,自社の①特定異性化糖又は②特定水あめ・ぶどう糖の需要者及び取引先である商社等に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,①特定異性化糖又は②特定水あめ・ぶどう糖の販売価格を決定してはならない。

(エ) 名宛人は,今後,それぞれ,相互に,又は他の事業者と,①特定異性化糖又は②特定水あめ・ぶどう糖の販売価格の改定に関して情報交換を行ってはならない。

(オ) 名宛人は,それぞれ,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 自社の従業員に対する,自社の商品の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定

b ①特定異性化糖又は②特定水あめ・ぶどう糖について,それぞれの営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

課徴金納付命令の対象事業者は,平成25年9月17日までに,それぞれ前記アの表の「課徴金合計額」欄記載の額(総額25億7245万円)を支払わなければならない。

オ 工業会への要請について

前記イ(ア)及び(イ)の合意及び情報交換は,工業会の会合の場を利用して行われており,同会合に出席していた工業会の専務理事は,同会合の場において,①特定異性化糖及び②特定水あめ・ぶどう糖の販売価格に関する情報交換が行われていたことを認識していたにもかかわらず,これを取りやめさせるための措置を何ら講じなかったことから,公正取引委員会は,工業会に対し,今後,同会合の場で,前記イと同様の行為が行われないよう,再発防止のための措置を講じるよう要請した。

(2) 段ボール用でん粉(注1)の製造販売業者に対する件(平成25年(措)第10号)

(注1) 「段ボール用でん粉」とは,コーンスターチ又は化工でん粉(コーンスターチ又はコーンスターチの製造工程における中間品を物理的又は化学的方法により変性させたでん粉及びコーンスターチに当該でん粉等を配合したものをいう。)であって,段ボールの製造工程においてライナ(段ボールの表面の紙をいう。)と中しん(ライナに接着した波状の紙をいう。)との接着に用いられるものとして販売されるものをいう。

ア 関係人

(注2) 表中の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象事業者であることを示している。

(注3) 表中の「-」は,その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反事業者であることを示している。

イ 違反行為の概要

(ア) 前記アの表記載の8社(以下「8社」という。)のうち加藤化学㈱(以下「加藤化学」という。)を除く7社は,平成22年夏頃以降,段ボール用でん粉の原料であるとうもろこしのシカゴ相場(注4)が上昇したこと等に伴い,遅くとも同年11月5日までに,段ボール用でん粉について,今後,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,需要者渡し価格の引上げを共同して行っていく旨合意した。

(イ) 加藤化学は,平成22年11月8日頃,前記(ア)の合意に参加した。

(ウ) 8社は,前記(ア)の合意により,公共の利益に反して,我が国における段ボール用でん粉の販売分野における競争を実質的に制限していた。

(注4) 「シカゴ相場」とは,シカゴ商品取引所における先物価格をいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 排除措置命令の対象事業者(以下「名宛人」という。)は,それぞれ,

a 前記イ(ア)の合意が消滅していることを確認すること

b 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,段ボール用でん粉の需要者渡し価格を決定せず,各社がそれぞれ自主的に決めること

c 今後,相互に,又は他の事業者と,段ボール用でん粉の需要者渡し価格の改定に関して情報交換を行わないこと

を,取締役会において決議しなければならない。

(イ) 名宛人は,それぞれ,前記(ア)に基づいて採った措置を,自社を除く5社,日本食品化工㈱及び日本コーンスターチ㈱に通知するとともに,自社の段ボール用でん粉の需要者及び自社の段ボール用でん粉の取引先である商社に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,段ボール用でん粉の需要者渡し価格を決定してはならない。

(エ) 名宛人は,今後,それぞれ,相互に,又は他の事業者と,段ボール用でん粉の需要者渡し価格の改定に関して情報交換を行ってはならない。

エ 課徴金納付命令の概要

課徴金納付命令の対象事業者は,平成25年10月15日までに,それぞれ前記アの表の「課徴金額」欄記載の額(総額2億5542万円)を支払わなければならない。

(3) 東京電力㈱(注1)が発注する架空送電工事(注2)の工事業者及び地中送電ケーブル工事(注3)の工事業者に対する件(平成25年(措)第11号~第15号)

(注1) 以下,(3)において「東京電力㈱」のことを「東京電力」と省略する。

(注2) 「架空送電工事」とは,架空の送電設備の建設工事(架空の送電設備に係る附帯設備の工事を含み,当該建設工事以外の工事が併せて発注されるものを含む。)をいう。

(注3) 「地中送電ケーブル工事」とは,66,000ボルトの電気の伝送に使用される地中の送電設備の電線の新設,引替え及び除却の工事をいう。

ア 関係人
(ア) 東京電力本店等発注の特定架空送電工事(注4)に係る違反事業者

(注4) 「東京電力本店等発注の特定架空送電工事」とは,東京電力が,本店又は支店において,7名(表の番号1ないし4,6及び8記載の6社並びに表の番号5及び7記載の2社に表記載の8社以外の1社を加えた3社で構成されるTEC経常共同企業体の7名をいう。)のみを対象に,予報(注6)(価格低減率(注7)の提示による競争によって予報先を選定するものに限る。)又は競争見積(注8)の方法により発注する架空送電工事(東京電力において当該工事の実施について引き当てられた予算額が100万円以下の工事を除き,KDDI㈱と共同で発注する工事を含む。)をいう。

(注5) 表中の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象となる者であることを示している。

(注6) 「予報」とは,東京電力が,契約に先立ち特定の事業者に対して,工事概要等を示し,将来,当該工事を発注する予定である旨の意思をあらかじめ通知することをいう。

(注7) 「価格低減率」とは,東京電力が定める査定価格から減額が可能な程度を百分率で示すものをいう。

(注8) 「競争見積」とは,東京電力が,複数の事業者を選定して実施する見積り合わせをいう。

(イ) 東京電力東ブロック発注の特定架空送電工事(注9)に係る違反事業者

(注9) 「東京電力東ブロック発注の特定架空送電工事」とは,東京電力が,茨城支店,埼玉支店,千葉支店又は東京支店において,表記載の11社のみを対象に,予報(価格低減率の提示による競争によって予報先を選定するものに限る。)又は競争見積の方法により発注する架空送電工事(東京電力において当該工事の実施について引き当てられた予算額が100万円以下の工事を除く。)をいう。

(注10) 表中の「排除措置命令」欄の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象となる者であることを示し,同欄記載の「-」は,その事業者が排除措置命の対象とならない者であることを示している。

(注11) 表中の「課徴金額」欄の「-」は,その事業者が課徴金納付命令の対象とならない者であることを示している。

(注12) 表中の「※1」を付した事業者は,平成25年7月1日に,違反行為者である日立電線㈱を吸収合併したことから,独占禁止法第7条の2第24項の規定により,日立電線㈱がした違反行為について,表中の「※1」を付した事業者がした違反行為とみなされ,課徴金納付命令の対象となった者である。

(注13) 表中の「※2」を付した事業者は,遅くとも平成24年3月12日以降,違反行為に参加している。

(注14) 表中の「※3」を付した事業者は,遅くとも平成24年5月28日以降,違反行為に参加している。

(注15) 表中の「※4」を付した事業者は,遅くとも平成24年3月28日以降,違反行為に参加している。

(ウ) 東京電力西ブロック発注の特定架空送電工事(注16)に係る違反事業者

(注16) 「東京電力西ブロック発注の特定架空送電工事」とは,東京電力が,多摩支店,神奈川支店,山梨支店又は沼津支店において,表記載の8社のみを対象に,予報(価格低減率の提示による競争によって予報先を選定するものに限る。)又は競争見積の方法により発注する架空送電工事(東京電力において当該工事の実施について引き当てられた予算額が100万円以下の工事を除き,KDDI㈱と共同で発注する工事を含む。)をいう。

(注17) 表中の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象となる者であることを示している。

(エ) 東京電力北ブロック発注の特定架空送電工事(注18)に係る違反事業者

(注18) 「東京電力北ブロック発注の特定架空送電工事」とは,東京電力が,栃木支店,群馬支店又は猪苗代電力所において,表記載の10社のみを対象に,予報(価格低減率の提示による競争によって予報先を選定するものに限る。),競争見積又はリバースオークション(注23)の方法により発注する架空送電工事(東京電力において当該工事の実施について引き当てられた予算額が100万円以下の工事を除き,KDDI㈱と共同で発注する工事を含む。)をいう。

(注19) 表中の「排除措置命令」欄の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象となる者であることを示している。

(注20) 表中の「課徴金額」欄の「-」は,その事業者が課徴金納付命令の対象とならない者であることを示している。

(注21) 表中の「※」を付した事業者は,遅くとも平成24年3月14日以降,違反行為に参加している。

(注22) 表中の「※」を付した事業者は,平成25年4月2日,商号を有限会社共生から現商号に変更している。

(注23) 「リバースオークション」とは,東京電力が,複数の事業者を選定して,定められた時間内に競り下げ方式により価格を提示させる「リバースオークション方式」と称する競争入札をいう。

(オ) 東京電力発注の特定地中送電ケーブル工事(注24)に係る違反事業者

(注24) 「東京電力発注の特定地中送電ケーブル工事」とは,東京電力が予報(価格低減率の提示による競争によって予報先を選定するものに限る。)又は競争見積の方法により発注する地中送電ケーブル工事をいう。

(注25) 表中の「排除措置命令」欄の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象となる者であることを示し,同欄記載の「-」は,その事業者が排除措置命令の対象とならない者であることを示している。

(注26) 表中の「課徴金額」欄の「-」は,その事業者が課徴金納付命令の対象とならない者であることを示している。

(注27) 表中の「※」を付した事業者は,遅くとも平成24年5月8日以降,違反行為に参加している。

イ 違反行為の概要

東京電力は,かねてから,架空送電工事及び地中送電ケーブル工事を発注するに当たり,予報の方法によりこれらの工事を発注する場合にあっては,競争によらずに予報先を選定するなどしていたところ,東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故による賠償金の支払等のため,経営合理化を実施し,徹底したコスト削減を実現することが求められたことから,遅くとも平成24年1月までに,予報の方法にあっては,工事の施工を希望する工事業者に価格低減率を提示させ,競争により,最も高い価格低減率を提示した者を予報先に選定することとするなど,これらの工事の発注方法を変更することとした。

上記のとおり,東京電力が架空送電工事及び地中送電ケーブル工事の発注方法を変更したことを契機として,次の(ア)ないし(オ)の違反行為が行われていたことが認められた。

(ア) 東京電力本店等発注の特定架空送電工事

前記ア(ア)の表記載の8社は,遅くとも平成24年1月31日以降,共同して,東京電力本店等発注の特定架空送電工事について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,東京電力本店等発注の特定架空送電工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(イ) 東京電力東ブロック発注の特定架空送電工事

前記ア(イ)の表記載の11社は,遅くとも平成24年2月2日以降(注28),共同して,東京電力東ブロック発注の特定架空送電工事について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,東京電力東ブロック発注の特定架空送電工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(ウ) 東京電力西ブロック発注の特定架空送電工事

前記ア(ウ)の表記載の8社は,遅くとも平成24年2月1日以降,共同して,東京電力西ブロック発注の特定架空送電工事について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,東京電力西ブロック発注の特定架空送電工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(エ) 東京電力北ブロック発注の特定架空送電工事

前記ア(エ)の表記載の10社は,遅くとも平成24年2月6日以降(注28),共同して,東京電力北ブロック発注の特定架空送電工事について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,東京電力北ブロック発注の特定架空送電工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(オ) 東京電力発注の特定地中送電ケーブル工事

前記ア(オ)の表記載の6社は,遅くとも平成24年2月3日以降(注28),共同して,東京電力発注の特定地中送電ケーブル工事について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,東京電力発注の特定地中送電ケーブル工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注28) 一部の違反事業者にあっては,前記アの(イ),(エ)及び(オ)の表の注記のとおり,同日後に違反行為に参加している。

ウ 排除措置命令の概要

前記イの違反行為ごとに,次のとおり排除措置命令を行った(注29)。

(ア) 排除措置命令の対象事業者(以下「名宛人」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会等において決議しなければならない。

a 前記イの行為を取りやめていることを確認すること

b 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,東京電力が発注する架空送電工事又は地中送電ケーブル工事について,受注予定者を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を行うこと

(イ) 名宛人は,それぞれ,前記(ア)に基づいて採った措置を,自社を除く名宛人及び東京電力に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,東京電力が発注する架空送電工事又は地中送電ケーブル工事について,受注予定者を決定してはならない。

(注29) 前記イ(ア)及び(オ)に係る名宛人に対しては,上記(ア)ないし(ウ)に加え,それぞれ,次の事項を行うために必要な措置を講じることについて命じた。

① 自社の工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定及び自社の従業員に対する周知徹底(前記ア(ア)の表の番号3ないし7記載の5社及び前記ア(オ)の表の番号2ないし5記載の4社にあっては独占禁止法の遵守についての行動指針の自社の従業員に対する周知徹底)

② 東京電力が発注する架空送電工事又は地中送電ケーブル工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての,当該工事の営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

(ア) 課徴金納付命令の対象事業者は,平成26年3月24日までに,それぞれ前記アの(ア)ないし(オ)の表の「課徴金額」欄記載の額(総額7億4662万円)を支払わなければならない。

(イ) 調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者については,独占禁止法第7条の2第7項第1号の規定に基づき,5割加算した算定率を適用している(当該課徴金納付命令が確定している場合に限る。)。

(ウ) ㈱TLC(注30)は,前記イ(ア)の違反行為において,受注予定者以外の事業者が提示する価格低減率を指定するなどしており,前記イ(ア)の違反行為を容易にすべき重要なものを行っていたことが認められたため,独占禁止法第7条の2第8項第3号に該当する者であり,同項の規定に基づき,5割加算した算定率を適用している。

(エ) ㈱関電工(注30)は

a 調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けたことがあり,当該課徴金納付命令が確定していることから,独占禁止法第7条の2第7項第1号に該当する者であること

b 前記イ(オ)の違反行為をすることを企て,かつ,他の事業者に対し当該違反行為をすることを唆すことにより,当該違反行為をさせたことが認められたため,独占禁止法第7条の2第8項第1号に該当する者であること

から,独占禁止法第7条の2第9項の規定に基づき,10割加算した算定率を適用している。

(注30) ㈱TLC及び㈱関電工は,東京電力のグループ会社である。

オ 東京電力に対する申入れについて
(ア) 本件審査の過程において認められた事実

a 東京電力は,架空送電工事及び地中送電ケーブル工事を発注するに当たり,特定の者だけを工事の参加募集の対象としていた。また,東京電力が,これらの工事の発注に当たり,見積り合わせの参加者を一堂に集めた現場説明会を開催する場合には,当該説明会終了後に引き続いて,当該参加者間において受注予定者を決定する話合いが行われることがあった。

なお,受注予定者を決定する話合いに参加していた者の中には,東京電力の退職者が7名いた。

b 東京電力の架空送電工事及び地中送電ケーブル工事の発注業務等の一部の担当者は,前記イの違反行為を認識していたにもかかわらず,これを看過した上,工事業者に対し,当該違反行為が発覚することがないように注意喚起を行っていた。また,架空送電工事の見積り合わせの実施に当たり,特定の工事業者に対して事前に発注の意向を伝えていた。

(イ) 申入れの概要

前記(ア)の事実は,前記イの違反行為を誘発し,助長していたものと認められることから,公正取引委員会は,東京電力に対し,①発注制度の競争性を改善してその効果を検証するとともに,前記イと同様の行為が再び行われることがないよう適切な措置を講じること,②東京電力のグループ会社である㈱TLC及び㈱関電工において,前記エ(ウ)及び(エ)の事実が認められたことを踏まえ,これら2社を含めた東京電力のグループ会社において,今後,独占禁止法に違反する行為が行われないよう適切な措置を講じることを申し入れた。

(4) 関西電力㈱(注1)が発注する架空送電工事(注2)の工事業者及び地中送電工事(注3)の工事業者に対する件(平成26年(措)第1号・第2号)

(注1) 以下,(4)において「関西電力㈱」のことを「関西電力」と省略する。

(注2) 「架空送電工事」とは,架空の送電線路の建設工事及び架空の配電線路のうち変電所又は送電線路と大口需要家の需要設備との間の配電線路等の建設工事並びにこれらの建設工事に関連する役務であって,関西電力が「架空送電工事」に分類して発注するものをいう。

(注3) 「地中送電工事」とは,地中の送電線路の建設工事及び地中の配電線路のうち変電所又は送電線路と大口需要家の需要設備との間の配電線路の建設工事並びにこれらの建設工事に関連する役務であって,関西電力が「地中送電工事」に分類して発注するものをいう。

ア 関係人
(ア) 関西電力発注の特定架空送電工事(注4)に係る違反事業者

(注4) 「関西電力発注の特定架空送電工事」とは,関西電力が,本店,大阪北支店,大阪南支店,京都支店,神戸支店,滋賀支店,奈良支店,和歌山支店,姫路支店及び電力システム技術センターにおいて,「指名競争見積」,「指名競争入札」又は「価格提案」と称する各見積り合わせの方法により発注する架空送電工事であって,「架空送電工事」の区分に係る認定級(注8)を有する現場監督者が工事期間中当該工事の現場に常駐することとされるものをいう。

(注5) 表中の「排除措置命令」欄記載の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象となる者であることを示し,同欄記載の「-」は,その事業者が排除措置命令の対象とならない者であることを示している。

(注6) 表中の「課徴金額」欄の「-」は,その事業者が課徴金納付命令の対象とならない者であることを示している。

(注7) 表中の「※」を付した事業者は,平成25年1月24日,商号を㈱第一電工から現商号に変更している。

(注8) 「認定級」とは,関西電力が,同社の請負工事に従事する現場監督者に対して,従事できる工事の範囲を定めるため,原則として年1回,工事の種類ごとに,工事従事実績,安全対策の実施状況等を評価して付与する資格をいう。

(イ) 関西電力発注の特定地中送電工事(注9)に係る違反事業者

(注9) 「関西電力発注の特定地中送電工事」とは,関西電力が,本店,大阪北支店,大阪南支店,京都支店,神戸支店,滋賀支店,奈良支店,和歌山支店,姫路支店,東海支社,北陸支社及び電力システム技術センターにおいて,「指名競争見積」,「指名競争入札」又は「価格提案」と称する各見積り合わせの方法により発注する地中送電工事であって,「地中送電工事」の区分に係る認定級を有する現場監督者が工事期間中当該工事の現場に常駐することとされるものをいう。

(注10) 表中の「排除措置命令」欄記載の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象となる者であることを示し,同欄記載の「-」は,その事業者が排除措置命令の対象とならない者であることを示している。

(注11) 表中の「課徴金額」欄の「-」は,その事業者が課徴金納付命令の対象とならない者であることを示している。

(注12) 表中の「※」を付した事業者は,平成24年6月1日,兵庫奥栄建設㈱に対し,関西電力が発注する地中送電工事に関する事業を譲渡した。

イ 違反行為の概要
(ア) 関西電力発注の特定架空送電工事

前記ア(ア)の表記載の66社は,遅くとも平成21年4月16日以降,共同して,関西電力発注の特定架空送電工事について,受注価格の低落防止及び受注機会の均等化を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,関西電力発注の特定架空送電工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(イ) 関西電力発注の特定地中送電工事

前記ア(イ)の表記載の22社は,遅くとも平成21年4月21日以降,共同して,関西電力発注の特定地中送電工事について,受注価格の低落防止及び受注機会の均等化を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,関西電力発注の特定地中送電工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

ウ 排除措置命令の概要

前記イの違反行為ごとに,次のとおり排除措置命令を行った。

(ア) 排除措置命令の対象事業者(以下「名宛人」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会等において決議しなければならない。

a 前記イの行為を取りやめていることを確認すること

b 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,関西電力が発注する架空送電工事又は地中送電工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行うこと

(イ) 名宛人は,それぞれ,前記(ア)に基づいて採った措置を,自社を除く名宛人,関西電力等に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,関西電力が発注する架空送電工事又は地中送電工事について,受注予定者を決定してはならない。

エ 課徴金納付命令の概要

(ア) 課徴金納付命令の対象事業者は,平成26年5月1日までに,それぞれ前記アの(ア)又は(イ)の表の「課徴金額」欄記載の額(総額23億7048万円)を支払わなければならない。

(イ) 調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者については,独占禁止法第7条の2第7項第1号に該当する者であることから,同項の規定に基づき,5割加算した算定率を適用している(当該課徴金納付命令が確定している場合に限る。)。

(ウ) ㈱かんでんエンジニアリング(以下「かんでんエンジニアリング」という。)(注13),㈱きんでん(以下「きんでん」という。)(注13)及び住友電設㈱は,栗原工業㈱と共同して,前記イ(ア)の違反行為において,受注調整を行わない旨を表明した他の事業者に対し,当該違反行為をやめないことを依頼するなどしており,当該違反行為を容易にすべき重要なものを行っていたことが認められたため,独占禁止法第7条の2第8項第3号に該当する者であることから,前記イ(ア)の違反行為に係る課徴金納付命令においては,同項の規定に基づき,5割加算した算定率を適用している。

(エ) 栗原工業㈱は

a 調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けたことがあり,当該課徴金納付命令が確定していることから,独占禁止法第7条の2第7項第1号に該当する者であること

b かんでんエンジニアリング,きんでん及び住友電設㈱と共同して,前記イ(ア)の違反行為において,受注調整を行わない旨を表明した他の事業者に対し,当該違反行為をやめないことを依頼するなどしており,当該違反行為を容易にすべき重要なものを行っていたことが認められたため,独占禁止法第7条の2第8項第3号に該当する者であること

から,前記イ(ア)の違反行為に係る課徴金納付命令においては,独占禁止法第7条の2第9項の規定に基づき,10割加算した算定率を適用している。

(注13) かんでんエンジニアリング及びきんでんは,関西電力のグループ会社である。

オ 関西電力に対する申入れについて
(ア) 本件審査の過程において認められた事実

a 関西電力は,架空送電工事及び地中送電工事を発注するに当たり,指名競争見積等の参加者を一堂に集めて現場説明会を行っていたところ,指名競争見積等に参加した工事業者の営業担当者は,現場説明会終了後に引き続いて,指名競争見積等の参加者間において受注予定者を決定する話合いや当該話合いの開催に当たっての日程調整等の話合いをしていた。

b 関西電力の設計担当者のうち,当該現場説明会の場等において,前記aの営業担当者の求めに応じ,契約締結の目安となる価格を算出する基となる「予算価格」と称する設計金額又はそのおおむねの金額(以下「予算価格等」という。)を,非公表情報であるにもかかわらず教示していた者が多数みられた。

c 関西電力の設計担当者の中には,前記aの営業担当者に対し,予算価格が記載された発注予定工事件名の一覧表を,非公表情報であるにもかかわらず提供していた者がいた。

d 関西電力の購買担当者の中には,地中送電工事の発注に係る指名競争見積等の参加者の選定に当たり,各工事件名における参加者の組合せについて事前に特定の工事業者に相談していた者がいた。

e 指名競争見積等の参加者は,関西電力の設計担当者から教示された予算価格等を,受注予定者が提示する見積価格を定める際の参考にするなどしていた。

f 受注予定者を決定する話合いを行っていた者の中には関西電力の退職者が29名おり,このうち少なくとも14名は,関西電力の設計担当者から予算価格等の教示を受けていた。

(イ) 申入れの概要

前記(ア)bないしdの事実は,前記イの違反行為を誘発し,又は助長したものと認められることから,公正取引委員会は,関西電力に対し,①前記(ア)bないしdと同様の行為が再び行われることがないよう適切な措置を講じるとともに,発注制度の競争性を改善してその効果を検証すること,②関西電力のグループ会社であるかんでんエンジニアリング及びきんでんにおいて,前記エ(ウ)の事実が認められたことを踏まえ,これら2社を含めた関西電力のグループ会社において,今後,独占禁止法に違反する行為が行われないよう適切な措置を講じることを申し入れた。

(5) 千葉県が発注する土木一式工事及び舗装工事の入札参加業者に対する件(平成26年(措)第3号・第4号)

ア 関係人
(ア) 千葉県発注の特定土木一式工事(注1)に係る違反事業者

(注1) 「千葉県発注の特定土木一式工事」とは,千葉県が,千葉県山武土木事務所(平成23年3月31日以前にあっては千葉県山武地域整備センター。以下同じ。),千葉県山武農業事務所(平成23年3月31日以前にあっては千葉県山武農林振興センター)又は千葉県銚子漁港事務所において,指名競争入札の方法により,山武地域(千葉県東金市,山武市,大網白里市(平成24年12月31日以前にあっては山武郡大網白里町),山武郡九十九里町及び横芝光町のうち平成18年3月27日の合併が行われる前における旧山武郡横芝町の区域。以下同じ。)を施工場所とし,土木一式工事として発注する工事であって,①千葉県から土木一式工事についてAの等級に格付されている事業者のみを入札の参加者とするもの,②千葉県から土木一式工事についてAの等級に格付されている事業者及びBの等級に格付されている事業者のみを入札の参加者とするもの又は③千葉県から土木一式工事についてBの等級に格付されている事業者のみを入札の参加者とするもののいずれかに該当するもののうち,(a)同県による工事の設計上,作業船又は潜水士を使用して施工することとされる工事及び(b)同県による工事の設計上,プレストレストコンクリート製橋桁を用いる橋梁上部工事を除くものをいう。

(注2) 表中の「排除措置命令」欄記載の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象となる者であることを示し,同欄記載の「-」は,その事業者が排除措置命令の対象とならない者であることを示している。

(注3) 表中の「課徴金額」欄の「-」は,その事業者が課徴金納付命令の対象とならない者であることを示している。

(注4) 表中の「※1」を付した事業者は,それぞれ,株主総会の決議により解散し,事業活動の全部を取りやめている。

(注5) 表中の「※2」を付した事業者は,それぞれ,破産手続開始の決定により解散し,事業活動の全部を取りやめている。

(イ) 千葉県発注の特定舗装工事(注6)に係る違反事業者

(注6) 「千葉県発注の特定舗装工事」とは,千葉県が,千葉県山武土木事務所において,指名競争入札の方法により,山武地域を施工場所とし,舗装工事として発注する工事であって,①千葉県から舗装工事についてAの等級に格付されている事業者のみを入札の参加者とするもの,②千葉県から舗装工事についてAの等級に格付されている事業者及びBの等級に格付されている事業者のみを入札の参加者とするもの又は③千葉県から舗装工事についてBの等級に格付されている事業者のみを入札の参加者とするもののいずれかに該当するもののうち,(a)路面性能を高めるための舗装を試験的に行う工事であって「試験舗装」として発注する工事及び(b)テニスコート面の更新工事を除くものをいう。

(注7) 表中の「排除措置命令」欄記載の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象となる者であることを示し,同欄記載の「-」は,その事業者が排除措置命令の対象とならない者であることを示している。

(注8) 表中の「課徴金額」欄の「-」は,その事業者が課徴金納付命令の対象とならない者であることを示している。

(注9) 表中の「※1」を付した事業者は,それぞれ,株主総会の決議により解散し,事業活動の全部を取りやめている。

(注10) 表中の「※2」を付した事業者は,それぞれ,破産手続開始の決定により解散し,事業活動の全部を取りやめている。

イ 違反行為の概要
(ア) 千葉県発注の特定土木一式工事

前記ア(ア)の表記載の32社は,遅くとも平成21年4月17日以降(注11),共同して,千葉県発注の特定土木一式工事について,受注価格の低落防止等を図るため

a(a) 受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する

(b) 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する

旨の合意の下に

b 当該工事の入札の参加に係る指名を受けた者は,指名を受けた旨を社団法人千葉県建設業協会山武支部(平成24年4月1日以降にあっては一般社団法人千葉県建設業協会山武支部。以下同じ。)に連絡し,当該工事の受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)は,原則として,入札開始日の4日前(土日祝日を除く。)に,千葉県東金市堀上所在の山武建設業会館内の会議室において開催される会合に参加し

(a) 受注希望者が1社のときは,その者を受注予定者とする

(b) 受注希望者が複数社のときは,当該工事の施工場所,過去に受注した工事との継続性等を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する

などにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,千葉県発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(イ) 千葉県発注の特定舗装工事

前記ア(イ)の表記載の29社は,遅くとも平成21年6月12日以降(注12),共同して,千葉県発注の特定舗装工事について,受注価格の低落防止等を図るため

a(a) 受注予定者を決定する

(b) 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する

旨の合意の下に

b 当該工事の入札の参加に係る指名を受けた者は,指名を受けた旨を社団法人千葉県建設業協会山武支部に連絡し,当該工事の受注希望者は,原則として,入札開始日の4日前(土日祝日を除く。)に,前記の山武建設業会館内の会議室において開催される会合に参加し

(a) 受注希望者が1社のときは,その者を受注予定者とする

(b) 受注希望者が複数社のときは,当該工事の施工場所,過去に受注した工事との継続性等を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する

などにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,千葉県発注の特定舗装工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注11) 前記ア(ア)の表記載の番号18の事業者にあっては遅くとも平成21年5月12日以降,番号21及び番号27の事業者にあっては遅くとも平成22年7月6日以降,番号24の事業者にあっては遅くとも平成22年9月3日以降,番号20,番号22,番号26及び番号28の事業者にあっては遅くとも平成24年7月11日以降,それぞれ違反行為に参加している。

(注12) 前記ア(イ)の表記載の番号25の事業者にあっては遅くとも平成23年7月1日以降,番号23の事業者にあっては遅くとも平成24年3月2日以降,番号20の事業者にあっては遅くとも平成24年5月15日以降,それぞれ違反行為に参加している。

ウ 排除措置命令の概要

前記イの違反行為ごとに,次のとおり排除措置命令を行った。

(ア) 排除措置命令の対象事業者(以下「名宛人」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会等において決議しなければならない。

a 前記イの行為を取りやめていることを確認すること

b 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,前記イの工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行うこと

c 今後,前記イの工事について,自社が入札の参加に係る指名を受けた旨を,一般社団法人千葉県建設業協会山武支部に連絡しないこと

(イ) 名宛人は,それぞれ,前記(ア)に基づいて採った措置を,自社を除く名宛人及び千葉県に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,前記(イ)の工事について,受注予定者を決定してはならない。

(エ) 名宛人は,今後,それぞれ,前記イの工事について,自社が入札の参加に係る指名を受けた旨を,一般社団法人千葉県建設業協会山武支部に連絡してはならない。

エ 課徴金納付命令の概要

課徴金納付命令の対象事業者は,平成26年5月7日までに,それぞれ前記アの(ア)又は(イ)の表の「課徴金額」欄記載の額(総額2億2352万円)を支払わなければならない。

(6) 自動車運送業務(注1)を行う船舶運航事業者(注2)に対する件(平成26年(措)第6号~第9号)

(注1) 「自動車運送業務」とは,自動車専用船(貨物である自動車を海上運送するための船舶であって,専門の運転手が当該自動車を運転して積み降ろすRoll on/Roll off方式を採用した,「PCC(Pure Car Carrier)」,「PCTC(Pure Car and Truck Carrier)」等と呼ばれるもの)を用いて行う自動車の海上運送業務をいう。

(注2) 「船舶運航事業者」とは,海上運送法第2条第2項に規定する,海上において船舶により人又は物の運送をする事業で港湾運送事業以外の事業を営む者をいう。

ア 関係人

(注3) 表中の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象事業者であることを示している。

(注4) 表中の「-」は,その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反事業者であることを示している。

(注5) 表中の「/」は,その事業者が当該航路についての違反事業者でないことを示している。

(注6) 以下,「ワレニウス・ウィルヘルムセン・ロジスティックス・エーエス」のことを「ワレニウス」と省略する。

イ 違反行為の概要

(ア) 下表の「違反事業者」欄記載の事業者(以下「違反事業者」という。)は,遅くとも平成20年1月中旬頃以降,下表の「航路」欄記載の航路における特定自動車運送業務(注7)について,既存の取引の維持及び運賃の低落防止を図るため,安値により他社の取引を相互に奪わず,荷主ごとに,運賃を引き上げ又は維持する旨の合意の下に

a 荷主ごとに,当該荷主と取引のある複数社間で,運賃交渉に際し,現行運賃からの引上げ率等若しくは現行運賃の維持又は当該荷主に提示する見積運賃を決定する

b 荷主ごとに,当該荷主と取引のない者は,当該荷主と取引のある者よりも高値の見積運賃を提示すること等によって,取引のある者が引き続き当該荷主と取引できるように協力する

などしていた。

(イ) 違反事業者は,前記(ア)の合意により,公共の利益に反して,それぞれの航路における特定自動車運送業務の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注7) 「特定自動車運送業務」とは,自動車運送業務のうち,我が国に所在する荷主(荷送人である自動車メーカー又は商社であって,運賃を支払う者)を需要者とし,新車の自動車を我が国の港で荷積みし,外国の港に荷揚げするもの(特定の荷主が,専ら又は優先的に,自らが出資する特定の船舶運航事業者と行う取引に係る当該業務を除く。)をいう。

(注8) 「北米航路」とは,我が国の港とアメリカ合衆国(プエルトリコを含む。),カナダ及びメキシコの港との間の航路をいう。

(注9) 「欧州航路」とは,我が国の港と欧州各国(ロシアにあってはバルト海沿岸)並びに欧州を除く地中海沿岸及び黒海沿岸の港との間の航路をいう。

(注10) 「中近東航路」とは,我が国の港とスリランカ,インド西部,パキスタン,イラン,イラク,クウェート,サウジアラビア,アラブ首長国連邦,バーレーン,カタール,オマーン,イエメン,ヨルダン,ジブチ及びスーダンの港との間の航路をいう。

(注11) 「大洋州航路」とは,我が国の港とオーストラリア(ダーウィン港及びフリーマントル港を除く。),ニュージーランド及びパプアニューギニアの港との間の航路をいう。

ウ 排除措置命令の概要

前記イの表の「航路」欄記載のそれぞれの航路における違反行為ごとに,次のとおり排除措置命令を行った。

(ア) 排除措置命令の対象事業者(以下「名宛人」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会等において決議しなければならない。

a 前記イ(ア)の合意が消滅していることを確認すること

b 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,それぞれの航路における特定自動車運送業務について,取引の相手方を制限する行為及び荷主ごとに運賃を引き上げ又は維持する行為を行わず,各社がそれぞれ自主的に取引の相手方及び運賃を決めること

c 今後,相互に,又は他の事業者と,それぞれの航路における特定自動車運送業務について,個々の荷主に対する運賃又は運賃を構成する「ベースレート」と称する基本運賃若しくは各種料金に係る情報交換を行わないこと

(イ) 名宛人は,それぞれ,前記(ア)に基づいて採った措置を,自社を除く名宛人及びそれぞれの航路における特定自動車運送業務の荷主に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,それぞれの航路における特定自動車運送業務について,取引の相手方を制限する行為及び荷主ごとに運賃を引き上げ又は維持する行為を行ってはならない。

(エ) 名宛人は,今後,それぞれ,相互に,又は他の事業者と,それぞれの航路における特定自動車運送業務について,個々の荷主に対する運賃又は運賃を構成する「ベースレート」と称する基本運賃若しくは各種料金に係る情報交換を行ってはならない。

(オ) 名宛人は,それぞれ,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 自社の従業員に対する,それぞれの航路における特定自動車運送業務に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の周知徹底

b それぞれの航路における特定自動車運送業務に関する独占禁止法の遵守についての,当該業務に関わる役員及び営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

課徴金納付命令の対象事業者は,平成26年6月19日までに,それぞれ前記アの表の「課徴金合計額」欄記載の額(総額227億1848万円)を支払わなければならない。

オ 国土交通省に対する要請について
(ア) 独占禁止法適用除外制度の概要等

独占禁止法は,市場における公正かつ自由な競争を促進することにより,一般消費者の利益を確保するとともに国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とし,これを達成するために,不当な取引制限(カルテル)を禁止しているが,他の政策目的を達成する観点から特定の分野における一定の行為に独占禁止法の禁止規定の適用を除外するという適用除外制度が設けられている。

海上運送法(昭和24年法律第187号)第28条は独占禁止法の適用除外を規定しているところ,船舶運航事業者が,本邦の港と本邦以外の地域の港との間の航路において,他の船舶運航事業者と締結する運賃等の協定等には独占禁止法は適用されない。この協定等は,あらかじめ国土交通大臣に届け出なければならず(同法第29条の2第1項),国土交通大臣は,届出を受理した旨を公正取引委員会に通知することとされている(同法第29条の4第1項)。また,適用除外制度の濫用を防止する観点等から,一定の要件を定め(同法第29条第2項各号),同要件に適合しない協定等については,国土交通大臣は変更を命じ又は禁止しなければならず(同法第29条の2第2項),さらに,公正取引委員会は,国土交通省に対し,これら処分をすべきことを請求することができる(同法第29条の4第2項)。

本件対象の北米航路の一部,中近東航路及び大洋州航路においては,それぞれ,船舶運航事業者が他の船舶運航事業者とする運賃又は配船を内容とする協定が届出されているが,本件審査の結果,本件違反事業者は,届出を行っている適用除外カルテルとは異なる本件違反行為を行っていたものであり,このような行為は独占禁止法の適用除外の対象にはならないことから,独占禁止法の適用を行ったものである。

(イ) 要請の概要

本件審査の結果,特定自動車運送業務に係る取引においては,荷主の需要に応じ,運賃を,荷主ごとに,当該荷主と船舶運航事業者との相対の交渉により取り決めており,適用除外カルテルで定められた全ての荷主に対して一律に適用されるベースレート又は各種料金表から成る運賃表(タリフ)は全く又はほとんど使われていなかった等の事実が認められ,現在届出されている適用除外カルテルが海上運送法第29条第2項各号において規定する独占禁止法の適用除外の要件に適合しないおそれがあることから,公正取引委員会は,国土交通省に対し,新車の自動車に関係するものは廃止する等,要件適合性を見直し,必要な措置を速やかに講ずるよう要請した。

2 独占禁止法第8条違反事件
一般社団法人吉川松伏医師会に対する件(平成26年(措)第5号)

(1) 関係人

(注1) 以下,「一般社団法人吉川松伏医師会」のことを「吉川松伏医師会」と省略する。

(注2) 埼玉県吉川市及び同県北葛飾郡松伏町の区域を指す。

(2) 違反行為の概要

ア 吉川松伏医師会は,会員が設定するインフルエンザ任意予防接種(注3)の料金について,

(ア) 平成23年10月14日に開催した理事会において,次のとおり決定し,同月17日にこれを会員に周知した。

a 13歳未満の者を対象とする1回目の料金(注4)を3,700円,2回目の料金(注5)を2,650円とすること

b 13歳以上の者を対象とする1回目の料金を4,450円とすること

(イ) 平成24年9月14日に開催した理事会において,前記(ア)の決定に替えて次のとおり決定し,同月18日にこれを会員に周知した。

a 13歳未満の者を対象とする1回目の料金(注4)を3,700円以上,2回目の料金(注5)を2,600円以上とすること

b 13歳以上の者を対象とする1回目の料金(注4)を4,450円以上,2回目の料金(注5)を2,900円以上とすること

イ 会員は,前記アの決定及び周知に基づき,おおむね,吉川松伏医師会が決定したとおりインフルエンザ任意予防接種の料金を設定し,当該予防接種を実施していた。

ウ 吉川松伏医師会は,前記アの決定及び周知により,吉川松伏地区におけるインフルエンザ任意予防接種の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注3) 「インフルエンザ任意予防接種」とは,インフルエンザの予防接種のうち予防接種法(昭和23年法律第68号)に基づく定期及び臨時の予防接種を除くものをいう。

(注4) 1回目を異なる医療機関で接種した場合の2回目の料金を含む。

(注5) 1回目を同じ医療機関で接種した場合の料金をいう。

(3) 排除措置命令の概要

ア 吉川松伏医師会は,次の事項を,理事会において決議しなければならない。

(ア) 前記(2)ア(イ)の決定が破棄されていることを確認すること

(イ) 今後,会員が設定するインフルエンザ任意予防接種の料金を決定せず,会員がそれぞれ自主的に決めること

イ 吉川松伏医師会は,前記アに基づいて採った措置を会員に通知し,かつ,吉川松伏地区に所在する医療機関を利用する者に周知しなければならない。

ウ 吉川松伏医師会は,今後,会員が設定するインフルエンザ任意予防接種の料金を決定してはならない。

3 独占禁止法第19条違反事件
㈱ラルズに対する件(平成25年(措)第9号)

(注1) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成21年法律第51号)の施行日である平成22年1月1日前においては平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の不公正な取引方法の第14項。

(1) 関係人

(注2) 以下,「㈱ラルズ」のことを「ラルズ」と省略する。

(2) 違反行為の概要

ラルズは,遅くとも平成21年4月20日以降,自社と継続的な取引関係にある納入業者(注3)のうち取引上の地位が自社に対して劣っている者(以下「特定納入業者」という。)に対して,次の行為を行っていた。

ア 新規開店又は改装開店(注4)に際し,特定納入業者のうち53名に対し,これらを実施する店舗において,当該特定納入業者が納入する商品以外の商品を含む当該店舗の商品の陳列,補充,撤去等の作業を行わせるため,あらかじめ当該特定納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく,派遣のために通常必要な費用のほとんど全てを負担せずに,当該特定納入業者の従業員等を派遣させていた。

イ(ア) 新規開店又は改装開店の際に実施するオープンセールに際し,特定納入業者のうち54名に対し,当該セールの「協賛金」の名目で,あらかじめ算出根拠,使途等について明確に説明することなく,当該特定納入業者が得る販売促進効果等の利益を勘案せずに,一方的に決定した額の金銭又は仕入部門ごとに設定した算出方法により算出した額の金銭を提供させていた。

(イ) 「創業祭」と称するセールに際し,特定納入業者のうち86名に対し,当該セールのためには一部しか充当しないにもかかわらず,当該セールの「協賛金」の名目で,あらかじめ算出根拠,使途等について明確に説明することなく,当該特定納入業者が得る販売促進効果等の利益を勘案せずに,当該特定納入業者からの6か月間の仕入金額に0.45パーセントの料率を乗じて算出した額等の金銭を,さらに,平成23年においては,当該特定納入業者の大部分に対し,創業50周年であることを理由に,前記料率を一方的に0.50パーセントとして算出した額等の金銭を提供させていた。

ウ 「紳士服特別販売会」と称するセールにおけるスーツ及びその関連商品(以下「スーツ等」という。)の販売に際し,仕入担当者(注5)から,特定納入業者のうち18名に対し,特定納入業者ごとに購入すべき数量を示して購入を要請する又は購入していない特定納入業者等に対しては重ねて購入を要請することなどにより,スーツ等を購入させていた。

(注3) 「納入業者」とは,ラルズが自ら販売する商品を,ラルズに直接販売して納入する事業者をいう。

(注4) 「新規開店」とは,ラルズが,新たに店舗を設置して,当該店舗の営業を開始することをいい,「改装開店」とは,ラルズが,自社の既存の店舗について,一時的に営業を取りやめて,売場の移動,売場面積の拡縮,設備の改修その他の改装を実施した上で,当該店舗の営業を再開することをいう。

(注5) 「仕入担当者」とは,ラルズの店舗で販売する商品及びその販売方針の決定並びに納入業者との間で商品の仕入れに係る商談等の業務を行うラルズの従業員をいう。

(3) 排除措置命令の概要

ア ラルズは,前記(2)の行為を取りやめていることを確認すること及び今後当該行為と同様の行為を行わないことを,取締役会において決議しなければならない。

イ ラルズは,前記アに基づいて採った措置を,納入業者に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。

ウ ラルズは,今後,前記(2)の行為と同様の行為を行ってはならない。

エ ラルズは,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の改定

b 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての,役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査

(4) 課徴金納付命令の概要

ラルズは,平成25年10月4日までに,12億8713万円を支払わなければならない。

第3 警告

平成25年度において警告を行ったものの概要は,次のとおりである。

第6表 平成25年度警告事件一覧表

第4 告発

私的独占,カルテルなどの重大な独占禁止法違反行為については,排除措置命令等の行政上の措置のほか罰則が設けられているところ,これらについては公正取引委員会による告発を待って論ずることとされている(独占禁止法第96条及び第74条第1項)。

公正取引委員会は,平成17年10月,平成17年独占禁止法改正法の趣旨を踏まえ,「独占禁止法違反に対する刑事告発及び犯則事件の調査に関する公正取引委員会の方針」を公表し,独占禁止法違反行為に対する抑止力強化の観点から,積極的に刑事処罰を求めて告発を行っていくこと等を明らかにしている。

平成25年度においては,鉄道・運輸機構が発注する北陸新幹線融雪・消雪基地機械設備工事の入札談合事件について,以下のとおり,検事総長に告発した。

鉄道・運輸機構が発注する北陸新幹線融雪・消雪基地機械設備工事の入札談合事件に係る告発等(平成26年3月4日告発・平成26年3月19日改善措置要求,申入れ)

(1) 告発について

ア 被告発人

(ア) 被告発会社(下表記載の8社)

(イ) 前記の被告発会社8社の冷暖房等に関する設備工事の請負等の業務に従事していた者8名(以下「被告発人8名」という。)

イ 告発の根拠
(ア) 事実

被告発会社8社は,いずれも冷暖房等に関する設備工事の請負等の事業を営む事業者であり,被告発人8名は,それぞれの所属する被告発会社の従業者として,前記工事の請負等に関する業務に従事していたものであるが,被告発人8名は,被告発会社8社と同様の事業を営む他の事業者(他の事業者と被告発会社8社を併せて以下「被告発会社等」という。)の従業者らと共に,それぞれその所属する被告発会社等の他の従業者と共謀の上,被告発会社等の業務に関し,平成23年9月中旬頃から平成24年11月頃までの間,東京都内の飲食店等において,面談等の方法により,平成23年10月以降に鉄道・運輸機構が条件付一般競争入札の方法により順次発注する北陸新幹線融雪・消雪基地機械設備工事について,受注予定事業者を決定するとともに当該受注予定事業者が受注できるような価格で入札を行うことなどを合意した上,同合意に従って,上記工事についてそれぞれ受注予定事業者を決定するなどし,もって被告発会社等が共同して,上記工事の受注に関し,相互にその事業活動を拘束し,遂行することにより,公共の利益に反して,上記工事の受注に係る取引分野における競争を実質的に制限したものである。

(イ) 罰条

独占禁止法第89条第1項第1号,第95条第1項第1号及び第3条並びに刑法第60条

(2) 改善措置要求等について

ア 入札談合等関与行為の概要

鉄道・運輸機構の鉄道建設本部東京支社の設備部長,設備部機械第三課長及び同部機械第二課副参事は,本件融雪・消雪基地機械設備工事のうち複数の物件について,これらの入札に参加していた事業者のうち特定の事業者の従業者に対し,各物件における入札前までに,未公表の予定価格に関する情報を教示していた。

イ 関係法条及び改善措置要求等

鉄道・運輸機構の職員による前記アの行為は,入札談合等関与行為防止法第2条第5項第3号(発注に係る秘密情報の漏えい)の規定に該当し,同項に規定する入札談合等関与行為と認められる。

よって,公正取引委員会は,鉄道・運輸機構理事長に対し,入札談合等関与行為防止法第3条第2項の規定に基づき,今後,前記アと同様の行為が行われないよう,前記アの行為が排除されたことを確保するために必要な改善措置を速やかに講ずるよう求めた。また,同理事長に対し,この求めに応じて同条第4項の規定に基づき行った調査の結果及び講じた改善措置の内容について,同条第6項の規定に基づき公表するとともに当委員会に通知するよう求めた。

さらに,会計検査院に対し,入札談合等関与行為の排除及び防止に万全を期す観点から,鉄道・運輸機構理事長に対して改善措置を講ずるよう求めた旨の通知を行った。

(3) 鉄道・運輸機構に対する申入れについて

ア 本件の調査の過程において,前記(2)アの入札談合等関与行為以外にも,鉄道・運輸機構の役員及び職員が,次の行為を行っていたことが認められた。

(ア) 本件融雪・消雪基地機械設備工事以外の鉄道・運輸機構発注の一部の物件についても,特定の入札参加事業者の従業者に対し,入札前までに,未公表の予定価格に関する情報を教示していた。

(イ) 鉄道・運輸機構の発注する整備新幹線等に係る工事に関し,入札参加事業者を共同企業体(以下「JV」という。)に限定した総合評価落札方式によって実施される入札において,当該入札に参加する各JVの構成員の中で代表者に次ぐ構成員に位置付けられている事業者に鉄道・運輸機構から再就職した者が在籍していない場合には,当該JVに対し,評価点の最高点は付けないなどの運用を行うよう指示していた。

(ウ) 公正取引委員会が鉄道・運輸機構の本社を平成25年11月に捜索した際,鉄道・運輸機構の退職者の再就職に関する書類・電子メール等を隠蔽・隠滅する行為を行った。

イ このため,公正取引委員会は,鉄道・運輸機構に対し,独占禁止法及び入札談合等関与行為防止法のそれぞれの趣旨及び内容を鉄道・運輸機構の役員及び職員に周知徹底することを含め鉄道・運輸機構における法令遵守体制を確立するとともに,鉄道・運輸機構における入札の実態について点検し,必要な場合には改善を行うなどの所要の措置を講ずるよう申し入れた。