第2部 各論
景品表示法は,平成21年9月,消費者の利益の擁護及び増進,商品及び役務の消費者による自主的かつ合理的な選択の確保並びに消費生活に密接に関連する物資の品質の表示に関する事務を一体的に行うことを目的として消費者庁が設置されたことに伴い,公正取引委員会から消費者庁に移管された。消費者庁への移管に伴い,景品表示法の目的は,「商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護すること」とされた。
景品表示法は,消費者庁移管後に既に2度の法改正が行われているが,平成26年6月6日に成立した不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律(平成26年法律第71号)本則第4条において,「政府は、この法律の施行後一年以内に、課徴金に係る制度の整備について検討を加え、必要な措置を講ずるものとする」こととされた。その結果,平成26年10月24日,景品表示法への課徴金制度導入を内容とする不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律案が第187回臨時国会に提出され,同年11月19日に成立し(平成26年法律第118号。以下「平成26年11月景品表示法改正法」という。),平成28年4月1日に施行された。
平成26年11月景品表示法改正法は,違反行為を防止するため,不当表示を行った事業者に経済的不利益を課す課徴金制度を導入するとともに,併せて一般消費者の被害回復を促進する観点から,所定の手続に沿って消費者に自主返金を行った場合に,返金相当額を課徴金額から減額する,又は返金相当額が課徴金額を上回るときは課徴金の納付を命じないことを内容とするものである。
景品表示法は,不当な顧客の誘引を防止するため,景品類の提供について,必要と認められる場合に,内閣府告示(注1)により,景品類の最高額,総額,種類,提供の方法等について制限又は禁止し(景品表示法第4条(注2)),また,商品又は役務の品質,規格その他の内容又は価格その他の取引条件について一般消費者に誤認される不当な表示を禁止している(景品表示法第5条)。これらの規定に違反する行為に対し,消費者庁長官及び都道府県知事は措置命令を行い,これを是正させることができる(景品表示法第7条第1項)。
消費者庁は,景品表示法第26条第1項の規定に基づき事業者が講ずべき措置に関して,その適切かつ有効な実施を図るため必要があると認めるときは,当該事業者に対し,その措置について必要な指導及び助言をすることができる(景品表示法第27条)。また,消費者庁は,事業者が正当な理由がなくて景品表示法第26条第1項の規定に基づき事業者が講ずべき措置を講じていないと認めるときは,当該事業者に対し,景品類の提供又は表示の管理上必要な措置を講ずべき旨の勧告をすることができるとともに(景品表示法第28条第1項),勧告を行った場合において当該事業者がその勧告に従わないときは,その旨を公表することができる(同条第2項)。
さらに,事業者が,景品表示法第5条の規定に違反する行為(同条第3号に該当する表示に係るものを除く。以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは,消費者庁は,当該事業者に対し,当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の売上額に3パーセントを乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならないこととなったが,当該事業者が相当の注意を怠った者でないと認められるとき,又はその額が150万円未満であるときは,その納付を命ずることができないこととなった(景品表示法第8条第1項)(注3)。
公正取引委員会は,消費者庁長官から景品表示法違反事件に係る調査権限の委任を受け,景品表示法の規定に違反する行為について必要な調査等を行っている。
(注1) 消費者庁及び消費者委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律による改正前の景品表示法に基づく従来の公正取引委員会告示は,経過措置により引き続き効力を有する。
(注2) 平成26年11月景品表示法改正法が施行された後の景品表示法の条文番号を記載(以下同じ。)。
(注3) 平成26年11月景品表示法改正法の施行日である平成28年4月1日以後に行われた課徴金対象行為について適用される。
景品表示法第31条の規定に基づき,事業者又は事業者団体は,景品類又は表示に関する事項について,公正取引委員会及び消費者庁長官の認定を受けて,不当な顧客の誘引を防止し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択と,事業者間の公正な競争を確保するため,協定の締結又は規約の設定をすることができる。当委員会は,協定又は規約(以下これらを総称して「公正競争規約」という。)の認定に当たり,事業者間の公正な競争の確保等の観点から審査を行っている。
消費者庁は,景品表示法違反事件について,違反行為者に対して措置命令を行うほか,違反のおそれのある行為等がみられた場合には関係事業者に対して指導を行っている。
平成27年度において,消費者庁が措置命令を行った13件のうち,公正取引委員会及び消費者庁による調査の結果を踏まえたものは6件であり,消費者庁が指導を行った178件のうち,公正取引委員会及び消費者庁による調査の結果を踏まえたものは57件である(第1表及び第2表参照)。
また,平成27年度において,景品表示法第26条第1項の規定に基づき事業者が講ずべき措置に関して,消費者庁が行った勧告は0件であり,消費者庁が指導を行った84件のうち,公正取引委員会及び消費者庁による調査の結果を踏まえたものは21件である。
第1表 平成27年度において公正取引委員会が調査に関わった景品表示法違反被疑事件の処理状況
(注)( )内は消費者庁の行った措置件数の総数
第2表 平成27年度に消費者庁により措置命令が行われた事例のうち公正取引委員会が調査に関わったもの
平成28年3月末現在,104件(景品関係37件,表示関係67件)の公正競争規約が認定されている(附属資料6参照)。これらの公正競争規約に参加する事業者又は事業者団体により,公正競争規約の運用団体として公正取引協議会等が組織されているところ,公正取引協議会等は,公正競争規約の運用上必要な事項について,公正競争規約の定めるところにより,施行規則,運用基準等を設定している。公正取引委員会は,公正取引協議会等がこれらの施行規則等の設定・変更を行うに際しても,事業者間の公正な競争の確保等の観点から審査を行い,問題があれば指導を行っている。
平成27年度においては,鶏卵の表示に関する公正競争規約の一部変更の認定(平成27年6月25日認定。平成27年公正取引委員会・消費者庁告示第3号),ペットフードの表示に関する公正競争規約の一部変更の認定(平成27年7月14日認定。平成27年公正取引委員会・消費者庁告示第4号),ペットフード業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約の一部変更の認定(平成27年7月14日認定。平成27年公正取引委員会・消費者庁告示第4号),化粧品の表示に関する公正競争規約の一部変更の認定(平成27年7月21日認定。平成27年公正取引委員会・消費者庁告示第5号)等を行った。