専門家の方々とのオンライン会議「名古屋税理士会 -下請事業者にとって身近な存在の方々とのWeb会議-」
令和2年11月26日
取引を行う上で,強い立場の者と弱い立場の者という関係が生じることは避けられません。しかし,強い立場の者が,その地位を濫用することは,独占禁止法(優越的地位の濫用)や下請法の観点から許されるものではありません。
下請法違反の背景
下請法に関連して,公正取引委員会が行った指導件数は年々増加しています。例えば,平成27年度は5,980件でしたが,令和元年度には8,016件まで増加しています。なぜ,こうした問題は発生するのでしょうか。例えば,次のようなことが考えられます。
- 親事業者の担当者が下請法を知らない。
- 親事業者のコンプライアンス意識が不十分。
- 下請事業者も下請法を知らない。
- 下請事業者は,親事業者から無理難題を求められたら従うしかない。
- 下請事業者は,どこに相談したらよいか分からない。
公正取引委員会の取組
こうした状況の中で,公正取引委員会は下請取引の適正化を図るため,次のようなことに取り組んでいます。
- 大規模な書面調査※を実施し,違反情報を収集。指導等を実施。
※親事業者6万名。下請事業者30万名。(令和元年度) - 電話,来所による相談対応。(親事業者,下請事業者とも。随時)
- 受講者のレベルに応じた各種講習会を開催。(親事業者,下請事業者とも)
- 各種団体の研修会に講師を派遣。(親事業者,下請事業者とも)
- 出張相談所を開設。(一日公正取引委員会,公正取引委員会よろず相談室)
被害の未然防止,救済のための課題
一方,下請事業者の中には,実際には,自身が被害を受けていることに気付いていない,誰に相談してよいか分からない,相談することをためらっているといった方々が少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
このため,下請事業者にとって身近な存在の方々に,下請事業者のこのような苦境に気付いていただき,助言等していただくことができれば,これは大変効果的ではないかと考えています。例えば,「下請法違反による被害に遭っているかもしれませんね。一度,公正取引委員会に相談してみてはどうですか。」。
もちろん,公正取引委員会に相談することを不安に思われる下請事業者の方々もいらっしゃると思います。下請法に関し,次のようなことをこれまで以上にお伝えすることが重要ではないかと考えています。
- 公正取引委員会への相談は無料。
- 匿名による相談も可能。
- 相談の有無,相談内容の秘密は厳守。
- 相談者の了解なしに調査を開始することは,原則としてありません。ただし,当該当事者以外に,別途,調査の開始を希望する下請事業者がいる場合や,関係する下請事業者が受ける不利益全体の程度が大きい場合等については,この限りではありません。
名古屋税理士会とのWeb会議
これまで述べてきたような問題意識を持って,下請事業者にとって身近な存在である名古屋税理士会の方々とWeb会議システムを利用して意見交換をさせていただきました。税理士の方々が中小企業・下請事業者に寄り添っておられること,また,その存在の大きさを改めて認識いたしました。デジタル化への取組についても数々の御示唆を賜りました。
会議の中で,税理士業務と下請法との関係性や接点について御関心を寄せていただきました。その際,下請法への理解を深めようとする場合,どのような資料があるのかといった御質問をいただきました。
改めて,公正取引委員会(東京本局)がウェブサイトで提供している広報資料をチェックしたところ,9種類のパンフレット,冊子,動画がありました。利用者の方々に対して,探している情報に容易に辿りつけるようきめ細かくサポートさせていただくことも,地方事務所ならではの役割ではないかと気付かされました。そして,中部事務所のウェブサイトで,タイトル・リンク先,特徴(概要),全ページ数・サイズ(時間)を一覧にまとめたものを作成しました。皆様にも広く活用していただくことができましたら幸いです。
各種パンフレット
https://www.jftc.go.jp/regional_office/chubu/shitauke_pamphmovie.html#shitaukepamph
動画
https://www.jftc.go.jp/regional_office/chubu/shitauke_pamphmovie.html#shitaukemovie