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資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方

資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方

平成13年10月24日
公正取引委員会事務局
改正:平成22年1月1日

はじめに

1 法律上、業務独占が認められている事務系の専門職業のうち、公認会計士、行政書士、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士及び弁理士の8資格については、資格者を会員とする団体の設立が義務付けられ、資格者には当該団体への入会が義務付けられている(本考え方においては、このような性格を持つ8資格の団体を「資格者団体」という。)。また、資格者団体は、法律上、会員の品位保持、会員の研修等について会則を定めることとされており、会員には、会則の遵守が義務付けられている。
 資格者団体については、平成13年3月30日に閣議決定された「規制改革推進3か年計画」において、当該業務サービスに係る競争の活性化等の観点から、制度の在り方等の見直しを行うこととされ、各省庁・各団体において見直しが進められているところであるが、前記のとおり法律に基づき自主規制を行うこととされている資格者団体の活動と独占禁止法との関係が分かりにくくなっているとの指摘がなされており、また、資格者団体の活動が独占禁止法に違反するおそれがあるとして公正取引委員会が警告した事例もある。
 このため、公正取引委員会は、資格者団体による自主規制の見直しやその見直し後の適正な活動に資するため、資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方を取りまとめ公表することとした。

2 公正取引委員会は、平成7年に、事業者団体の活動についての独占禁止法上の考え方を示した「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」を公表しており、資格者団体の活動についても基本的に同指針が適用される。本考え方は、資格者団体が行う活動、特にその中でも会員間の競争に与える影響が大きいと考えられる報酬、広告及び顧客に関する活動について、同指針の考え方を踏まえて独占禁止法上の考え方を整理したものである。また、各行為類型ごとに、独占禁止法上問題となる又は問題とならない行為等について、過去の審査事件・相談事例等を基にした想定例を「参考例」として記載するとともに、最近の資格者団体からの主要な相談の概要について取りまとめ最後に記載している。
 なお、本考え方において挙げている行為類型及び事例は、あくまでも類型化された例示であり、ここに示されていないものも含め、資格者団体の具体的な行為が違反となるかどうかは、それぞれの資格者の業務内容、市場の状況等を踏まえ、個々の事案ごとに独占禁止法の規定に基づき判断されるものである。

3 前記のとおり、資格者団体に関しては、規制改革推進3か年計画等に基づき、制度の見直し等が進められているところであるので、本考え方については、制度の見直し状況等を踏まえ、今後、必要に応じ見直しを行っていくこととする。
 なお、本考え方は、資格者団体の活動についての一般的な考え方を示したものであるため、個別具体的な活動が独占禁止法上問題となるかどうかについては、資格者団体にとって判断が容易でないことも考えられ、その場合には、公正取引委員会において個別に相談に応じることとしている。

第1 資格者団体と独占禁止法

 独占禁止法は、事業者団体による競争制限行為を禁止している(第8条)。
 資格者については、国民の権利の確保、取引の適正化等のために設けられた公的資格制度に基づくものであるが、報酬を得て役務を反復・継続して提供するなど業として経済活動を行っている場合には、独占禁止法にいう事業者に該当する。資格者団体は、資格者の品位を保持し、その業務の改善進歩を図るための事務を行うことを目的として設立されているものであるが、事業者たる資格者を会員として、業務に関する研修、業務の改善等のための調査研究等、会員の共通の利益を増進するための活動を行っている。このような活動を行っている資格者団体は、独占禁止法における事業者団体に該当し、独占禁止法の適用を受ける。
 特に、資格者団体については、強制入会制度が採られており、資格者は団体へ入会しなければ業務を行うことができないことから、資格者団体において競争制限的な活動が行われた場合には競争に与える影響が一層大きなものとなる。このため、資格者団体が行う活動については、会員の機能又は活動を不当に制限したり、需要者の利益を不当に害するものとならないよう十分注意する必要がある。

第2 資格者団体の主要な活動についての独占禁止法上の考え方

1 報酬に関する活動について

 事業者が供給する商品又は役務の価格は、事業者の競争手段として最も重要なものであり、事業者団体が構成事業者の供給する商品又は役務の価格を制限することは、独占禁止法上問題となる。
 資格者団体が会員の収受する報酬について制限することについても、通常の事業者団体と同様に、独占禁止法上問題となる。一方、資格者団体については、会則に個々の資格者の収受する報酬に関する基準を記載することが法定されている場合があり、同規定に基づいて資格者団体が定める報酬額が、あくまで個々の資格者が報酬額を定める際の基準として用いられる限りにおいては、独占禁止法上問題となるものではないと考えられる。しかし、このような場合であっても、資格者団体が法律に基づいて定める報酬額を確定額として運用したり、法律上会則に定める対象とならない業務に係る報酬についてまで基準を設定することは、独占禁止法上問題となる。

(1) 独占禁止法上問題となる場合

 資格者団体が、

[1] 会則に報酬に関する基準を記載することが法定されている場合において、

  •  定めた報酬額について値引きを禁止し、又は、値引きを報酬額の一定割合の範囲内と定めて報酬を収受させること
  •  報酬基準の設定が法定されている資格者の業務以外の業務に係る報酬についてまで基準を設定すること

[2] 会則に資格者の収受する報酬に関する基準を記載することが法定されていない場合において、標準額、目標額等、会員の収受する報酬について共通の目安となるような基準を設定すること

 により、市場における競争を実質的に制限することは、独占禁止法第8条第1号の規定に違反する。また、市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても、原則として独占禁止法第8条第4号の規定に違反する。
 例えば、次のような事例は、独占禁止法上問題となる。

〈参考例1〉

 A資格者団体は、会員から、不当に低い報酬で業務を受託している会員がいるという苦情が寄せられたことから、法律に基づき会則において定めている報酬額表に定められた額について、

[1] 報酬額表に定められた額と異なる報酬額を受領してはならない旨記載した会則の解説書を作成して会員に配布し

[2] 会員に対する業務の研修会において当該解説書の内容の周知徹底を行い

[3] 会員に対して販売していた、会員が依頼者に交付する領収書の様式の報酬額の欄に、報酬額表に定められた額を記載する

 などして、会員に報酬額表に定められた額で業務を受託するよう指導した。

〈参考例2〉

 B資格者団体は、法律に基づき、会則において、報酬基準の設定が法定されている資格者の業務について報酬額表を定めているところ、会員から、報酬基準の設定が法定されていない事務に関しても報酬額表を定めてほしいという要望が寄せられたことを受け、これらの事務に対する報酬の基準を示す報酬額表を別途作成し、会員に配布した。

(2) 独占禁止法上問題とならない場合

 資格者団体が、会員の収受する報酬について情報活動等を行うことがある。このような情報活動等を通じて会員間に報酬の制限に係る暗黙の了解若しくは共通の意思が形成され、又はこのような情報活動等が手段・方法となって競争制限行為が行われていれば、独占禁止法上問題となるが、次のような活動を行うことは、原則として独占禁止法上問題とはならない。

[1] 需要者、会員等に対して過去の報酬に関する情報を提供するため、会員から報酬に係る過去の事実に関する概括的な情報を任意に収集して、客観的に統計処理し、報酬の高低の分布や動向を正しく示し、かつ、個々の会員の報酬を明示することなく、概括的に、需要者を含めて提供すること(会員間に報酬についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。また、価格制限行為の監視のための情報活動に該当するものを除く。)。

〈参考例〉

 A資格者団体は、依頼者の選択に資するため、報酬に関する統計資料を作成し公表することとした。具体的には、会員に対して、任意に、典型的な業務の類型ごとに会員が過去に収受した報酬額についての無記名のアンケート調査を実施し、集計したデータを基に当該業務の類型別に最高額、平均額及び最低額を記載した表を作成してインターネット等において公表した。

[2] 原価計算や積算について標準的な費用項目等を掲げた一般的な方法を作成し、これに基づいて原価計算や積算の方法に関する一般的な指導等を行うこと(会員間に報酬や積算金額についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。)。

〈参考例〉

 A資格者団体は、依頼者から報酬の根拠が分かりにくいという苦情が寄せられたため、会員の収受する報酬の算定方法について、(1)時間単価により報酬額を算定する方法、(2)作成する書類の枚数単価により報酬額を算定する方法、(3)一定の基本報酬に成功報酬を加えて報酬を算定する方法、(4)投下資本により報酬を算定する方法等、複数の算定方法を例示するとともに、報酬を算定する際の基礎となる原価に関して、具体的な単価等を示さずに、固定経費、直接人件費、間接人件費、広告宣伝費等の一般的な費用項目を例示したガイドブックを作成し、会員に配布するとともに、各単位会やその支部等において需要者に無償で配布した。

2 広告に関する活動について

 事業者が行う広告は、需要者の需要を喚起する重要な競争手段の一つであり、事業者団体が構成事業者の行う広告について、需要者の正しい選択に資する情報の提供に制限を加えるような自主規制等を行うことは、独占禁止法上問題となるおそれがある。
 資格者団体については、法律上「会員の品位の保持に関する規定」が会則記載事項として掲げられており、これを主な根拠として、資格者団体は、会則等において、広告に関する自主規制を行っている。資格者団体の行う広告に関する規制が法律上一定の根拠を有するとしても、会員の事業活動を過度に制限するような場合には独占禁止法上問題となるおそれがあり、その内容は、需要者の正しい選択を容易にするために合理的に必要とされる範囲内のものであって、会員間で不当に差別的でないものとすべきである。
 なお、資格者団体が広告等に関する自主規制等を行うに当たっては、必要に応じ、会員からの意見聴取の十分な機会が設定されるとともに、当該役務の需要者や知見のある第三者との間で意見交換や意見聴取が十分に行われることが望ましい。

(1) 独占禁止法上問題となるおそれがある場合

 資格者団体が、会員の行う広告について、媒体、回数、場所、内容等を制限することにより、需要者の正しい選択に資する情報の提供に制限を加えることは、独占禁止法第8条第4号の規定に違反するおそれがある。また、このような行為により、市場における競争を実質的に制限することは、独占禁止法第8条第1号の規定に違反する。
 例えば、次のような事例は、独占禁止法上問題となるおそれがある。

〈参考例1〉

 A資格者団体は、会員から、広告が広く行われると資格者のイメージが悪くなるという懸念が寄せられたことから、広告に関する規則において次のとおり定めた。

[1] 業務の広告をする際用いることのできる媒体は、名刺、看板、挨拶状、電話帳及び事務所報のみとする。

[2] 看板の設置は事務所の敷地内に限り、大きさは1・2平方メートル以内とし、挨拶状の配布は年賀及び事務所の開設時のみとし、電話帳での広告の大きさは8分の1ページ以内とし、事務所報の発行回数は年4回以内とし、配布先は依頼者、元依頼者、友人及び親戚のみに限る。

〈参考例2〉

 B資格者団体は、会員から、本来資格者は依頼を受けて業務を行うという受動的な立場であるべきであるとの意見が多く出されたことを受けて、会則において、会員は自己の業務に関して広告してはならないと定め、例外的に広告できる事項を広告に関する規則において定めることとした。
 そして、同規則において、広告できる事項を住所、氏名、連絡先及び取り扱う業務のみに限定した。

〈参考例3〉

 C資格者団体は、会員から、報酬が低いことを掲げて顧客を誘致することは資格者の品位を損なうという意見が寄せられたことから、広告に関する規則において、報酬額に関する広告を一律に禁止した。

(2) 独占禁止法上問題とならない場合

 資格者団体の行う広告に関する規制が、次のように虚偽若しくは誇大な広告を排除し、又は需要者にとって最低限必要な広告されるべき事項を定める等、需要者の正しい選択を容易にすると認められるものである場合は、原則として独占禁止法上問題とはならない。ただし、虚偽又は誇大な広告を排除するなどの名目であっても、その運用において、会員の広告内容や方法を広範に規制するものとならないよう注意する必要がある。

〈参考例1〉

 A資格者団体は、会則において、会員が業務に関し広告を行うことは原則自由と定めるとともに、広告に関する規則において、需要者の利益を不当に害するものとして以下の事項を禁止することとした。

  •  事実に合致しない広告を行うこと。
  •  誤導又は誤認のおそれのある広告を行うこと。
  •  法令又は資格者団体の会則に違反する広告を行うこと。
  •  過去の依頼者を表示した広告を行うこと(依頼者の同意がある場合を除く。)。

〈参考例2〉

 B資格者団体は、需要者から、資格者に業務を依頼する際にどの程度料金が掛かるか分からないと不安であるという意見が寄せられたことを踏まえ、広告に関する規則において、会員は、自己の収受する報酬額を事務所に掲示することとした。

3 顧客に関する活動について

 事業者団体が構成事業者による顧客の獲得行為を制限することは、競争の本質的な機能を損なうものであり、独占禁止法上問題となる。
 資格者団体が、会則等において顧客の誘致等に関して制限している場合があるが、このような行為は、通常の事業者団体と同様に、独占禁止法上問題となる。

(1) 独占禁止法上問題となる場合

 資格者団体が、(1)他の会員の顧客との取引を禁止すること、(2)事業活動を行う地域等を制限すること、(3)会員間で業務を配分することなどにより、市場における競争を実質的に制限することは、独占禁止法第8条第1号の規定に違反する。また、市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても、原則として独占禁止法第8条第4号の規定に違反する。
 例えば、次のような事例は、独占禁止法上問題となる。

〈参考例1〉

 A資格者団体は、会員間で顧客の取合いが起こるのを防止するため、倫理に関する規則において、会員が面識のない者に対する誘致行為を行うことを一律に禁止するとともに、会員が業務の委嘱を受けようとする場合に当該委嘱者と取引している前任の資格者がいるときは、必ず前任者の了解を得なければならないとした。

〈参考例2〉

 B資格者団体は、X県に所在する資格者により設立されているところ、隣接するY県、Z県等の資格者団体との関係を良好に保つため、倫理に関する規則において、会員は県外の需要者には誘致行為を行わないこととし、県外の需要者から業務の依頼を受けた場合は、受託することを自粛し、当該需要者の所在する県の団体の会員を紹介しなければならないとした。

〈参考例3〉

 C資格者団体は、会員から、事務所の数が増えることは顧客の取合いにつながるとの懸念が多く寄せられたため、法令上事務所の開設に関する制限がないにもかかわらず、団体の総会において、会員が事務所を複数設置するには団体の許可を要することとした。

〈参考例4〉

 D資格者団体は、会員から、規模の大きな案件について、特定の会員のみが多く受託しているとの苦情が寄せられたため、団体の総会において、一定規模以上の業務については、自らが業務の受託の窓口となり、会員の過去の受託実績等を勘案して割り振ることとし、会員が個別に受託することを禁止した。

(2) 独占禁止法上問題とならない場合

 資格者団体の行う顧客に関する規制が、他の会員をひぼう・中傷すること、正常な商慣習に照らして不当な金品等の提供や供応を行うこと等の不公正な競争手段による顧客の誘致を禁止するなど公正な競争秩序を維持するためのものである場合は、原則として独占禁止法上問題とはならない。ただし、不公正な競争手段による顧客の誘致を禁止するなどの名目であっても、その運用において、会員による顧客獲得のための活動を広範に制限するものとならないよう注意する必要がある。

資格者団体からの主要な相談事例

事例1 報酬に関する活動

(相談の要旨)

1 A資格者団体は、会則において会員の収受する報酬に関する基準を定めるという規定が法律から削除されたことを受け、会則に定められた報酬額表を削除することとした。しかし、報酬額表を削除すると依頼者との間で報酬に関するトラブルが多発することが予想されることから、報酬額の算定方法の解説書を作成して会員に配布することとした。

2 解説書の内容は、おおむね以下のとおりであるが、独占禁止法上問題ないか。

(1) 報酬を算定するための代表的な考え方として、(1)固定額制、(2)従量額制(時間従量額制、作成書類従量額制)、(3)成功報酬額制、(4)実費勘案額制、(5)経験・難易度考慮制((1)~(4)で定めた額を資格者の経験・業務の難易度に応じて増減させるもの)及び(6)事件価値相関額制(事件の対象の金銭的価値など事件価値に相関させるもの)を挙げ、単価等を示さずに、各考え方に基づいた報酬の具体的な算出方法を解説する。

(2) また、参考資料として、各考え方ごとに、単価等を示さずに報酬の算定モデルを添付する。

独占禁止法上の考え方)

1 当該解説書は、会員の収受する報酬に関し、標準的な項目を掲げた一般的な方法で複数のモデルを作成し、これに基づいて報酬額の算定方法に関する一般的な指導等を行うことを目的とするものであり、会員間に報酬についての共通の目安を与えるものではないと認められ、独占禁止法上問題とはならない。

2 なお、参考資料の算定モデルについては、単価等は示されていなくても、例えば、付加価値が求められる業務について「二〇~四〇%手数料を増額」という例示をしたり、作成書類従量額制を採る場合に「百枚超は単価を二〇~三〇%増額」等の作成枚数に応じた単価の増額割合を例示する場合には、統一的なマークアップ基準を示すことにより報酬額についての共通の目安を与えることとなるので、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第八条第一号)。

事例2 広告に関する活動

(相談の要旨)

1 B資格者団体は、会員の品位を保持することが重要な役割の一つとされていることから、会員の品位を保持し、依頼者を保護するために、新たに広告に関する自主基準を作成して、問題となる広告、宣伝を規制することとした。

2 自主基準では、以下の内容の広告を行うことを禁止しているが、独占禁止法上問題ないか。

(1) 事実に合致しない広告を行うこと。

(2) 誤導又は誤認のおそれのある広告を行うこと。

(3) 誇大な広告を行うこと。

(4) 法律又は会則に違反する広告を行うこと。

(5) 依頼人を表示した広告を行うこと(ただし、依頼人からの文書による同意がある場合を除く。)。

(6) 受託中の案件又は過去に取り扱い若しくは関与した案件を表示した広告を行うこと(ただし、依頼人からの文書による同意がある場合を除く。)。

独占禁止法上の考え方)

1 資格者団体が会員の表示・広告について、媒体、回数、内容等を制限することにより、需要者の正しい商品選択に資する情報の提供に制限を加えるような自主規制等を行うことは独占禁止法上問題となるおそれがある。
 本件自主基準については、事実に合致しない広告、誤導又は誤認のおそれのある広告等を禁止するものであり、需要者の選択を誤りないものにするために必要と認められることから、独占禁止法上問題とならない。

2 また、依頼人を表示した広告及び受託中の案件等を表示した広告を制限することについては、通常、依頼人は自己が依頼したことを広告として利用されることを想定していないことから、これを制限することには合理性が認められる。
 さらに、一律に禁止するのではなく、依頼人からの同意を条件に広告が認められていることから、需要者の正しい選択に資する情報の提供に制限を加えるものとはいえず、独占禁止法上問題とならない。

事例3 顧客に関する活動

(相談の要旨)

1 C資格者団体は、会員の業務は公共性の高い業務であり、会員には適正な業務執行が求められているという立場から、不当な手段によって依頼を誘致する行為を行わないように自主基準を設定することとした。

2 自主基準では、以下の行為を禁止しているが、独占禁止法上問題ないか。

(1) 正当な理由がないのに著しく低い報酬で業務を受託し、他の会員の事業活動を困難にさせるおそれがある行為

(2) 正常な商慣習の範囲を超えた金品等の提供又は供応等、不当な利益をもって依頼を誘致する行為

(3) 面識のない者(現在及び過去の依頼者、友人、親族並びにこれらに準じる者以外をいう。)に対する訪問、電話、郵便等による依頼の誘致

独占禁止法上の考え方)

1 相談の要旨の2(1)について

 報酬に対する規制については、価格は競争の最も重要な手段であるところ、資格者団体が会員の価格設定を制限することは独占禁止法上問題となる(独占禁止法第八条第一号)。

2 相談の要旨の2(2)について

 資格者団体が自主規制を行うことには、法律上の品位保持の観点から一定の根拠を有するところであるが、顧客の獲得行為を制限することは、競争の本質的な機能を損なうため、原則として独占禁止法上問題となるものである。
 しかし、正常な商慣習の範囲を超える金品等の提供又は供応により、依頼を誘致する行為を禁止することは、不公正な競争手段により顧客の誘致することを禁止するものと認められ、独占禁止法上問題とならない。

3 相談の要旨の2(3)について

 面識のない者に対する依頼の誘致を一律に禁止することは、会員による顧客獲得のための活動を広範に制限することになり、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第八条第四号)。

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