ホーム >報道発表・広報活動 >報道発表資料 >平成27年 >3月 >

(平成27年3月16日)平成27年2月までの消費税転嫁対策の取組について

(平成27年3月16日)平成27年2月までの消費税転嫁対策の取組について

平成27年3月16日
公正取引委員会

1 はじめに

 公正取引委員会は,今般の消費税率の引上げに当たり,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から,消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」という。)の未然防止のための取組と,転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組を進めてきた。
 公正取引委員会は,転嫁拒否行為に関する情報を積極的に収集するため,消費税率の引上げが実施された平成26年4月以降,中小企業庁と合同で,中小企業・小規模事業者等に対する悉皆的な書面調査や,大規模小売事業者及び大企業等に対する書面調査を実施したところであり,これらによって把握した情報等に基づき,転嫁拒否行為に対して迅速かつ厳正に対処しているところである。
 また,平成26年4月から平成27年1月までに計14件の勧告・公表を行ったほか,平成27年2月に1件の勧告・公表を行ったところである。
 今後も引き続き,転嫁拒否行為に対して迅速かつ厳正に対処していくとともに,重大な転嫁拒否行為が認められた場合には勧告・公表を積極的に行うこととしている。また,転嫁拒否行為の未然防止のための取組についても,引き続き実施していく。

2 転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組

(1) 転嫁拒否行為に関する情報収集

ア 中小企業・小規模事業者等に対する悉皆的な書面調査
 公正取引委員会は,平成26年4月から6月にかけて,中小企業庁と合同で,中小企業・小規模事業者等(売手側)から転嫁拒否行為に関する情報提供を求めるため,中小企業・小規模事業者等全体に対して,広く調査票を送付又は配布して,書面調査を実施したところである。
 転嫁拒否行為は,今後も行われる可能性があることから,平成26年度内にわたって違反行為を監視するため,平成26年7月以降も書面調査を引き続き実施している。
さらに,公正取引委員会は,これまでの書面調査に加え,個人事業者からの情報収集を一層強化すべく,中小企業庁と合同で,個人事業者に対して書面調査を実施するため,平成26年11月に調査票を送付したところである。

イ 事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査
公正取引委員会は,転嫁拒否行為に関する情報等を把握するため,これまでに9,478社の事業者及び1,652の事業者団体に対してヒアリング調査を実施した(平成27年2月末時点)。

(2) 転嫁拒否行為に対する調査及び勧告・指導

 公正取引委員会は,様々な情報収集活動によって把握した情報を踏まえ,立入検査等の調査を積極的に実施しており,違反行為が認められた事業者に対しては転嫁拒否行為に係る不利益の回復などの必要な改善措置を迅速に行っている。また,重大な転嫁拒否行為が認められた場合には,勧告・公表を積極的に行っている(公正取引委員会及び中小企業庁における平成25年10月から平成27年2月までの対応実績は別紙参照)。
 公正取引委員会及び中小企業庁は,平成27年2月に65件の指導を行い,平成25年10月から平成27年2月までの指導件数の合計は1,615件である。また,公正取引委員会は,平成27年2月に1件の勧告を行い,平成25年10月から平成27年2月までの勧告件数の合計は15件である(別添1)。
 違反行為類型別では,買いたたき(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号後段)が1,320件,本体価格での交渉の拒否(同法第3条第3号)が243件,役務利用・利益提供の要請(同法第3条第2号)が67件及び減額(同法第3条第1号前段)が36件となっている(合計1,666件)。

(3) 平成27年2月における転嫁拒否行為に対する措置

 公正取引委員会は,平成27年2月に1件の勧告を行っており,同月における勧告の概要は以下のとおりである。
 また,公正取引委員会及び中小企業庁は,平成27年2月に65件の指導を行っており,同月における主な指導事例は別添2のとおりである。

〇 株式会社広島東洋カープに対する件(平成27年2月26日勧告)

ア 株式会社広島東洋カープ(以下「広島東洋カープ」という。)は,プロ野球球団を運営し,プロ野球の興行のほか,プロ野球球団のロゴマーク等を表示する商品(以下「グッズ」という。)の販売等の事業を営む事業者であり,直接又は同社の関連会社である株式会社カルピオ(以下「カルピオ」という。)を通じて,継続して個人事業者又は資本金の額若しくは出資の総額が3億円以下の事業者から,グッズの供給を受けている。

イ 広島東洋カープは,毎年,2月1日から翌年1月31日までの期間を1シーズンとして,当該期間において販売するグッズについて,その前年の10月末頃から翌年1月中旬頃までの間に,前記アの事業者(以下「本件事業者」という。)と価格交渉を行い,自らの仕入価格及びカルピオの仕入価格をそれぞれ定めている。

ウ 広島東洋カープは,平成26年2月1日から平成27年1月31日までのシーズン(以下「本件シーズン」という。)に販売するグッズの消費税を含めた販売価格を,消費税率が引き上げられる平成26年4月1日以後も同額とする旨を決定し,かかる決定を踏まえ,平成25年10月末頃以後,本件事業者に対して,本件シーズンに販売するグッズの仕入価格(消費税を含む。以下同じ。)について,前シーズンに販売するグッズの仕入価格と同額に定め,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分に相当する額を上乗せしないよう要請した。

エ 広島東洋カープは,公正取引委員会が本件について調査開始の連絡をした後,平成26年4月1日以後に本件事業者から供給を受けるグッズの仕入価格のうち,消費税率の引上げ分の全部又は一部を上乗せせずに定めたものについて,平成27年2月10日までに,消費税率の引上げ分に相当する額を上乗せした額まで引き上げることを本件事業者との間で合意し,平成26年4月1日に遡って当該引上げ分相当額を本件事業者に対して支払った。

オ 公正取引委員会は,前記ウの要請行為が,消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号後段(買いたたき)の規定に違反するものであるとして,同法第6条第1項の規定に基づき,広島東洋カープに対し,今後,特定供給事業者による消費税の転嫁を拒むことのないよう,自社の役員及び従業員に本勧告の内容について周知徹底すること,同法の研修の実施等の社内体制整備のための措置を講じること,実施した措置を速やかに公正取引委員会に報告すること等を内容とする勧告を行った。

3 転嫁拒否行為の未然防止のための取組

〇 公正取引委員会主催説明会

 公正取引委員会は,消費税転嫁対策特別措置法の内容を広く周知するため,事業者及び事業者団体を対象として,公正取引委員会主催の説明会を実施しており,これまでに全国55か所において合計70回の説明会を実施した(平成27年3月16日時点)。
 公正取引委員会は,平成27年度においても,事業者及び事業者団体を対象とした公正取引委員会主催の説明会を全都道府県で開催することとしており,現在,公正取引委員会のホームページにおいて説明会の応募を受け付けている(以下のURLを参照)。
http://www.jftc.go.jp/tenkataisaku/setumeikai.html
 当該説明会では,消費税転嫁対策特別措置法で禁止されている転嫁拒否行為の概要やこれまでの勧告・指導事例などについて,公正取引委員会の職員が説明する。
 また,説明会の開催に併せて,転嫁拒否行為を受ける事業者等からの相談を公正取引委員会の職員が受け付ける移動相談会を開催する。

別紙

転嫁拒否行為に対する対応実績(平成27年2月まで)

公正取引委員会
中小企業庁

 平成27年2月までの公正取引委員会及び中小企業庁における転嫁拒否行為に対する対応状況は下表のとおりである(勧告事件及び主な指導事例については,別添1及び別添2を参照)。

表1:転嫁拒否行為に対する対応状況(注1)
調査着手 立入検査 指導(注2) 勧告(注3) 措置請求
4,072件 2,183件

1,615件
≪80件≫

15件
≪2件≫

3件

(注1) 公正取引委員会及び中小企業庁の合算。また,平成27年2月までの累計(平成25年10月~平成27年2月)。≪ ≫内の件数は,大規模小売事業者に対する指導又は勧告の件数で内数である。
(注2) 転嫁拒否行為を行っていると回答した事業者に対する下請代金支払遅延等防止法に基づく中小企業庁の指導を含む。
(注3) 勧告は,公正取引委員会のみが行う。

表2:勧告及び指導件数の内訳(業種別)(注4)
業種 指導 勧告 合計
建設業 102件 0件

102件

製造業 548件 0件 548件
情報通信業 145件 1件 146件
運輸業(道路貨物運送業等) 158件 0件 158件
卸売業 148件 1件 149件
小売業 159件 2件 161件
不動産業 36件 1件 37件
技術サービス業(広告・建築設計業等) 108件 0件 108件
医療福祉 20件 1件 21件
事業サービス業(ビルメンテナンス業・警備業等) 25件 0件 25件
その他(注5) 166件 9件 175件
合 計 1,615件 15件 1,630件

(注4) 複数の業種にわたる事業者が勧告又は指導の対象となった場合は,当該事業者の主な業種を1件として計上している。
(注5) 「その他」は,旅行業,自動車整備業・機械等修理業,労働者派遣業等である。

表3:勧告及び指導件数の内訳(行為類型別)
行為類型 指導 勧告 合計
減額 33件 3件 36件
買いたたき(注6)

1,305件

15件 1,320件
役務利用・利益提供の要請 67件 0件 67件
本体価格での交渉の拒否 243件 0件 243件
合 計(注7) 1,648件 18件 1,666件

(注6) 買いたたきの勧告及び指導件数には,平成26年3月31日以前に減額行為があり,同年4月1日以降に違反のおそれがあるものを含む。
(注7) 事業者の中には,複数の行為を行っている場合があり,表1及び表2に記載の件数とは一致しない。

別添1

勧告事件(平成27年2月まで)

 

名称
(勧告年月日)

概要

違反法条
(違反行為類型)

1

株式会社JR東日本ステーションリテイリング
(平成26年4月23日)

 駅構内等で食料品,衣料品等を販売する株式会社JR東日本ステーションリテイリングは,消費税率の引上げに伴う売上高の減少を防止するため,納入業者に対し,仕入価格を通常支払われる仕入価格に比べ3%程度低く設定することになる販売促進企画への参加を要請した。

第3条第1号後段
(買いたたき)

2

株式会社三城
(平成26年6月12日)

 メガネ等を販売する株式会社三城は,消費税率の引上げに対応するため,店舗の賃貸人のうち,税込価格で賃料を契約している賃貸人に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずに賃料を据え置いた。

第3条第1号後段
(買いたたき)

3

山形市(山形市立病院済生館)
(平成26年6月17日)

 山形市立病院済生館は,消費税率の引上げに対応するため,医療材料の納入価格を引き下げることとし,納入業者に対し,平成25年度下期の納入価格に一定率を乗じた額等を減じて算出した医療材料ごとの納入価格の目標値を定めた。

第3条第1号後段
(買いたたき)

4

一般社団法人東京都自転車商防犯協力会
(平成26年6月26日)

 東京都公安委員会が指定する自転車の防犯登録を行う一般社団法人東京都自転車商防犯協力会は,防犯登録業務を委託している自転車販売店等に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずに委託手数料を据え置いた。

第3条第1号後段
(買いたたき)

5

一般社団法人兵庫県自転車防犯登録会
(平成26年6月26日)

 兵庫県公安委員会が指定する自転車の防犯登録を行う一般社団法人兵庫県自転車防犯登録会は,消費税率の引上げに伴う自らの経費の負担を回避するため,防犯登録業務を委託している自転車販売店等に対し,消費税率の引上げ前の額より更に低い委託手数料を定めた。

第3条第1号後段
(買いたたき)

6

株式会社ルネサンス
(平成26年7月24日)

 スポーツ施設の運営等の事業を行う株式会社ルネサンスは,消費税率の引上げに対応するため,スポーツ指導を行う個人事業者に対し,免税事業者に該当することを理由として,消費税率の引上げ分を上乗せせずに業務委託料を据え置く等した。

第3条第1号後段
(買いたたき)

7

産業機械健康保険組合
(平成26年8月1日)

 健康保険給付事業及び保健・福祉事業を行う産業機械健康保険組合は,健康診断に関する委託契約を締結している病院等に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずに委託料金を据え置いた。

第3条第1号後段
(買いたたき)

8~10

吉野家グループ
 株式会社吉野家資産管理サービス
 株式会社北日本吉野家
 株式会社中日本吉野家
(平成26年9月24日)

 店舗等の賃貸借等の事業を行う株式会社吉野家資産管理サービス,外食業を行う株式会社北日本吉野家及び株式会社中日本吉野家の3社は,それぞれ,店舗所有者(賃貸人)の一部に対し,賃料の消費税率の引上げ分を減額し,又は賃料の消費税率の引上げ分を上乗せせずに据え置いた。
※中小企業庁長官からの措置請求案件

第3条第1号前段(減額)及び同号後段(買いたたき)
11

山佐産業株式会社
(平成26年10月22日)

 パチンコホール等の遊技場にスロットの販売等を行う山佐産業株式会社は,スロットの販売等の業務に関する業務委託契約を締結している販売代理店に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずに業務委託手数料を据え置いて支払った。

第3条第1号後段
(買いたたき)

12

東映アニメーション株式会社
(平成26年12月17日)

 主にアニメーションの製作事業を行う東映アニメーション株式会社は,アニメーションの原画,動画等の制作業務を委託している個人事業者に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずに委託料を据え置いて支払った。

第3条第1号後段
(買いたたき)

13

株式会社トライグループ
(平成26年12月19日)

 学習指導事業を行う株式会社トライグループは,
[1] 家庭教師の業務委託契約を締結している個人事業者に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずに委託料金を据え置いて支払った。
[2] 教室施設の賃貸人のうち,税込価格で賃料を契約している賃貸人の一部に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずに賃料を据え置いて支払った。

第3条第1号後段
(買いたたき)

14

住友不動産エスフォルタ株式会社
(平成27年1月30日)

 スポーツ施設の運営等の事業を行う住友不動産エスフォルタ株式会社は,スポーツ指導を行う個人事業者及び法人事業者に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずに業務委託料を据え置いて支払った。

第3条第1号後段
(買いたたき)

15

株式会社広島東洋カープ
(平成27年2月26日)

 プロ野球球団を運営し,球団のロゴマーク等を表示する商品(以下「グッズ」という。)の販売等を行う株式会社広島東洋カープは,グッズの納入業者に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずにグッズの仕入価格を据え置いた。

第3条第1号後段
(買いたたき)

別添2

主な指導事例(平成27年2月)

〇 買いたたき(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号後段)
業種 概 要
製造業  A社は,紙製品の袋詰めを委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
ビルメンテナンス業  B社は,清掃業務を委託している者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
放送業  C社は,ラジオ番組の出演者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの出演料を据え置いていた。
金属製品製造業  D社は,ブリキ缶の納入業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの納入代金を据え置いていた。
地方公共団体  E市は,水道メーターの検針及び水道料金の集金を委託している者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
卸売業  F社は,物品の運送業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。

関連ファイル

問い合わせ先

問い合わせ先 公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引企画課
        電話 03-3581-3371(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp/

ページトップへ