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(平成28年9月27日)平成27年度公正取引委員会年次報告について

平成28年9月27日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,独占禁止法第44条第1項の規定に基づき,内閣総理大臣を経由して,国会に対し,毎年,独占禁止法等の所管法令の施行の状況を報告しているところ,本日,平成27年度公正取引委員会年次報告書を国会に提出した。その要旨は以下のとおりである。

1 独占禁止法改正等

(1)環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(独占禁止法の一部改正を含む)の提出

 平成28年2月4日に我が国を含む12か国により署名された環太平洋パートナーシップ(TPP)協定には「各締約国は、自国の国の競争当局に対し、違反の疑いについて、当該国の競争当局とその執行の活動の対象となる者との間の合意により自主的に解決する権限を与える。」とする規定が含まれているところ(第16.2条5),同規定は,現行の独占禁止法上担保されていないことから,同規定を担保するため,独占禁止法を改正し,「合意により自主的に解決する」制度である確約手続を導入することとした。確約手続の導入を内容とする独占禁止法の一部改正を含む環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案は,平成28年3月8日に第190回通常国会へ提出され,同年3月24日に衆議院環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会へ付託された後,同年6月1日に衆議院において閉会中審査とされた。

(2)独占禁止法審査手続に関する指針の策定・公表

 「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律」(平成25年法律第100号。以下「平成25年独占禁止法改正法」という。)附則第16条において,「政府は、公正取引委員会が事件について必要な調査を行う手続について、我が国における他の行政手続との整合性を確保しつつ、事件関係人が十分な防御を行うことを確保する観点から検討を行い、この法律の公布後一年を目途に結論を得て、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずるものとする」こととされた。
 平成25年独占禁止法改正法附則第16条の規定に鑑み,内閣府特命担当大臣の下で開催された「独占禁止法審査手続についての懇談会」が取りまとめた報告書の提言を受け,行政調査手続の適正性をより一層確保する観点から,これまでの実務を踏まえて行政調査手続の標準的な実施手順や留意事項等を明確化した「独占禁止法審査手続に関する指針」を策定し,審査官等に周知徹底するとともに,調査手続の透明性を高め,円滑な調査の実施に資するよう,同指針を公表した(平成27年12月25日策定・公表。平成28年1月4日から適用)。

(3)独占禁止法研究会の開催

 公正取引委員会は,法定された算定方法に従って一律かつ画一的に算定・賦課する制度である現行課徴金制度の問題点を解消する観点から,課徴金制度の在り方について検討を行うため,平成28年2月以降,「独占禁止法研究会」(座長 岸井大太郎 法政大学法学部教授)を開催している。

2 厳正・的確な法運用

(1)独占禁止法違反行為の積極的排除

ア 公正取引委員会は,迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下,国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整,中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売など,社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に厳正かつ積極的に対処することとしている。
イ 独占禁止法違反被疑事件として平成27年度に審査を行った事件は138件である。そのうち同年度内に審査を完了したものは123件であった。
ウ 平成27年度においては,9件の法的措置を採った。これを行為類型別にみると,価格カルテルが2件,入札談合(官公需)が4件,受注調整(民需)が1件,その他が2件となっている(第1図参照)。また,総額85億1076万円の課徴金の納付を命じた(第2図参照)。
 なお,平成27年度においては,課徴金減免制度に基づき事業者が自らの違反行為に係る事実の報告等を行った件数は102件であった。

<平成27年度における法的措置事件>

価格カルテル

○ アルミ電解コンデンサ及びタンタル電解コンデンサの製造販売業者らによる価格カルテル事件

入札談合(官公需)

○ 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が発注する北陸新幹線消融雪設備工事の入札参加業者らによる入札談合事件
○ 東北地区,新潟地区及び北陸地区の地方公共団体が発注するポリ塩化アルミニウムの製造販売業者による入札談合事件

受注調整(民需) ○ 農業協同組合等が北海道の区域において発注する穀物の乾燥・調製・貯蔵施設工事等の施工業者による受注調整事件

事業者団体による構成事業者の機能又は活動の不当な制限

○ 水先人会による構成事業者の機能又は活動の不当な制限事件

第1図 法的措置件数等の数の推移

第2図 課徴金額等の推移

(注1) 平成17年独占禁止法改正法(独占禁止法の一部を改正する法律〔平成17年法律第35号〕をいう。以下同じ。)による改正前の独占禁止法に基づく課徴金の納付を命ずる審決に係る金額を含む。
(注2) 平成17年独占禁止法改正法による改正後の独占禁止法に基づく課徴金納付命令については当初命令額を記載している。

エ このほか,違反するおそれのある行為に対する警告6件,違反につながるおそれのある行為に対する注意106件(不当廉売事案について迅速処理による注意を行った841件を除く。)を行うなど,適切かつ迅速な法運用に努めた。
オ 公正取引委員会は,独占禁止法違反行為についての審査の過程において,競争政策上必要な措置を講じるべきと判断した事項について,事業者団体等に申入れや要請を行っている。
 平成27年度においては,日本水先人会連合会及び国土交通省に対して要請を行った。
カ 平成27年度における審判件数は,前年度から繰り越されたもの275件,平成27年度中に審判再開を行ったもの1件の合計276件(排除措置命令に係るものが137件,課徴金納付命令に係るものが139件)であった(第3図参照)。これらのうち,平成27年度中に平成25年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく審決を16件(排除措置命令に係る審決7件,課徴金納付命令に係る審決9件)行った。この結果,平成27年度末における審判件数(平成28年度に繰り越すもの)は260件となった。

第3図 審判件数の推移

(注1) 審判件数は,行政処分に対する審判請求ごとに付される事件番号の数である。
(注2) 「課徴金納付命令審判事件」には,平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく審判事件を含む。

(2)公正な取引慣行の推進

ア 優越的地位の濫用に対する取組

(ア) 公正取引委員会は,以前から,独占禁止法上の不公正な取引方法に該当する優越的地位の濫用行為が行われないよう監視を行うとともに,独占禁止法に違反する行為については厳正に対処している。
 また,優越的地位の濫用行為に係る審査を効率的かつ効果的に行い,必要な是正措置を講じていくことを目的とした「優越的地位濫用事件タスクフォース」を設置し,審査を行っている。
 平成27年度においては,優越的地位の濫用につながるおそれがあるとして51件の注意を行った。
(イ) 公正取引委員会は,中小事業者の取引の公正化を図る必要が高い分野について,実態調査等を実施し,普及・啓発に努めている。
 平成27年度においては,「テレビ番組制作の取引に関する実態調査報告書」(平成27年7月29日公表)を公表した。
(ウ) 公正取引委員会は,過去に優越的地位の濫用規制に対する違反がみられた業種,各種の実態調査で問題がみられた業種等の事業者に対して一層の法令遵守を促すことを目的として,業種ごとの実態に即した分かりやすい具体例を用いて説明を行う業種別講習会を実施している。
 平成27年度においては,業種別講習会を30回実施した。
(エ) 公正取引委員会は,下請事業者を始めとする中小事業者からの求めに応じ,当委員会事務総局の職員が出向いて,下請法等の内容を分かりやすく説明するとともに相談受付等を行う「中小事業者のための移動相談会」を実施している。
 平成27年度においては,「中小事業者のための移動相談会」を全国63か所で実施した。このほか,事業者団体が開催する研修会等に職員を21回講師として派遣するとともに,優越的地位の濫用規制に係るパンフレット,DVD等の資料を提供した。

イ 不当廉売に対する取組
 公正取引委員会は,小売業における不当廉売について,迅速に処理を行うとともに,大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって,周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについては,周辺の販売業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い,問題がみられた事案については,法的措置を採るなど厳正に対処している。
 平成27年度においては,不当廉売のおそれがあるとして,レギュラーガソリンについて2件の警告を行った。また,酒類,石油製品,家庭用電気製品等の小売業において,不当廉売につながるおそれがあるとして841件(酒類490件,石油製品341件,家庭用電気製品3件,その他7件)の事案に対して注意を行った。

ウ 下請法違反行為の積極的排除等
(ア) 公正取引委員会は,下請事業者からの自発的な情報提供が期待しにくいという下請取引の実態に鑑み,中小企業庁と協力し,親事業者及びこれらと取引している下請事業者を対象として定期的に書面調査を実施するなど違反行為の発見に努めている。また,中小事業者を取り巻く環境は依然として厳しい状況において,中小事業者の自主的な事業活動が阻害されることのないよう,下請法の迅速かつ効果的な運用により,下請取引の公正化及び下請事業者の利益の保護に努めている。
 平成27年度においては,親事業者39,101名及びこれらと取引している下請事業者214,000名を対象に書面調査を行い,書面調査等の結果,下請法に基づき4件の勧告を行い,5,980件の指導を行った(第4図参照)。

<平成27年度における勧告事件>
○ 婦人靴の卸・小売業者(親事業者)による下請事業者に対する下請代金の減額事件
○ スポーツ用品等の小売業者(親事業者)による下請事業者に対する下請代金の減額及び返品事件
○ 給排水部材等の卸売業者(親事業者)による下請事業者に対する下請代金の減額事件
○ 食料品及び日用品の小売業者(親事業者)による下請事業者に対する下請代金の減額事件

第4図 下請法の事件処理件数の推移

(注1)勧告を行った事件の中には,製造委託等及び役務委託等との双方において違反行為が認められたものがあるが,本図においては,当該事件の違反行為が主として行われた取引に区分して,件数を計上している。
(注2)「製造委託等」とは,製造委託及び修理委託をいい,「役務委託等」とは,情報成果物作成委託及び役務提供委託をいう。

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(イ) 平成27年度においては,下請事業者が被った不利益について,親事業者236名から,下請事業者7,760名に対し,下請代金の減額分の返還等,総額13億2622万円相当の原状回復が行われた(第5図参照)。このうち,主なものとしては[1]下請代金の減額事件においては,親事業者は総額7億7050万円を下請事業者に返還し,[2]下請代金の支払遅延事件においては,親事業者は総額3億2691万円の遅延利息を下請事業者に支払い,[3]返品事件においては,親事業者は下請事業者から総額1億7896万円相当の商品を引き取り,[4]不当な経済上の利益の提供要請事件においては,親事業者は総額3078万円の利益提供分を下請事業者に返還した。

第5図 原状回復の状況


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(ウ) 公正取引委員会は,親事業者の自発的な改善措置が,下請事業者が受けた不利益の早期回復に資することに鑑み,当委員会が調査に着手する前に,違反行為を自発的に申し出,かつ,自発的な改善措置を採っているなどの事由が認められる事案については,親事業者の法令遵守を促す観点から,下請事業者の利益を保護するために必要な措置を採ることを勧告するまでの必要はないものとして取り扱うこととし,この旨を公表している(平成20年12月17日公表)。
 平成27年度においては,前記のような親事業者からの違反行為の自発的な申出は52件であった。また,同年度に処理した自発的な申出は45件であり,そのうちの2件については,違反行為の内容が下請事業者に与える不利益が大きいなど勧告に相当するような事案であった。
(エ) 公正取引委員会は,下請代金の支払遅延,下請代金の減額,買いたたき等の行為が行われることのないよう,平成27年11月13日,約205,000名の親事業者及び約650の関係事業者団体に対し,下請法の遵守の徹底等について,公正取引委員会委員長及び経済産業大臣連名の文書をもって要請を行った。

エ 消費税転嫁対策に関する取組

(ア) 公正取引委員会は,様々な情報収集活動によって把握した消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」という。)に関する情報を踏まえ,立入検査等の調査を積極的に実施している。これらの調査の結果,転嫁拒否行為が認められた事業者に対しては,転嫁拒否行為に係る不利益の回復などの必要な改善指導を迅速に行っている。
 平成27年度においては,中小企業庁と合同で,中小企業・小規模事業者等(売手側。約290万名)に対する悉皆的(しっかいてき)な書面調査を実施した。また,中小企業庁と合同で,個人事業者(売手側。約350万名)に対する書面調査を実施した。さらに,中小企業庁と合同で,大規模小売事業者及び大企業等(買手側。約8万名)に対して,報告義務を課した書面調査を実施した。書面調査等の結果,消費税転嫁対策特別措置法に基づき勧告を行ったものは13件,指導を行ったものは349件であった。
(イ) 公正取引委員会は,転嫁拒否行為等に関する事業者からの相談や情報提供を一元的に受け付けるための相談窓口を設置し,平成27年度において,543件の相談に対応した。また,事業者にとって,より一層相談しやすい環境を整備するための移動相談会については,平成27年度において,全国各地で52回実施した。
(ウ) 公正取引委員会は,転嫁拒否行為を受けた事業者にとって,自らその事実を申し出にくい場合もあると考えられることから,転嫁拒否行為を受けた事業者からの情報提供を受動的に待つだけではなく,中小企業庁と合同で書面調査を実施し,転嫁拒否行為に関する情報収集を積極的に行った。また,様々な業界における転嫁拒否行為に関する情報や取引実態を把握するため,平成27年度においては,4,344名の事業者及び682の事業者団体に対してヒアリング調査を実施した。
(エ) 公正取引委員会は,平成27年度においては,消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為11件の届出を受け付けたほか,事業者又は事業者団体からの届出書の記載方法等に関する相談に対応した。
(オ) 公正取引委員会は,消費税転嫁対策特別措置法の内容を広く周知するため,事業者及び事業者団体を対象として,当委員会主催の説明会を実施している。
 平成27年度においては,51回の説明会を実施した。また,商工会議所,商工会及び事業者団体が開催する説明会等に公正取引委員会事務総局の職員を講師として27回派遣した。

(3)企業結合審査の充実

 独占禁止法は,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる会社の株式取得・所有,合併等を禁止している。公正取引委員会は,我が国における競争的な市場構造が確保されるよう,企業結合規制の的確な運用に努めている。
 平成27年度においては,独占禁止法第9条から第16条までの規定に基づく企業結合規制に関する業務として,銀行又は保険会社の議決権取得・保有について3件の認可を行い,持株会社等について104件の報告,会社の株式取得・合併・分割・共同株式移転・事業譲受け等について295件の届出をそれぞれ受理し,必要な審査を行った。
 また,平成27年度に届出のあった主な企業結合事案としては,次のようなものがあり,的確に処理するとともに,その内容を公表した。

<平成27年度に届出のあった主な企業結合事案>
○ 大阪製鐵株式会社による東京鋼鐵株式会社の株式取得
○ 日本製紙株式会社と特種東海製紙株式会社による段ボール原紙等の共同販売会社の設立等

3 競争環境の整備に向けた調査等

(1)「公的再生支援に関する競争政策上の考え方」の策定・公表

 「競争政策と公的再生支援の在り方に関する研究会」が平成26年12月19日に行った中間取りまとめにおいて,「公正取引委員会が,公的再生支援を行うに当たって支援機関が競争政策の観点から留意すべき点を盛り込んだ業種横断的なガイドラインを作成」することが適当であるとされたことを受け,公正取引委員会は,平成28年3月31日に「公的再生支援に関する競争政策上の考え方」を策定・公表した。
 同考え方は,公的再生支援が競争に与える影響を最小化するという観点から,公的再生支援機関が公的再生支援を実施するに当たっては,[1]民間だけでは円滑な事業再生が不可能であり,支援機関が公的な支援を行わざるを得ない場合に限って,民間の機能を補完するために実施すべきという「補完性の原則」,[2]様々な政策目的を達成するために事業再生が必要である場合において,当該事業再生のために必要最小限となるような規模・手法等で行うべきという「必要最小限の原則」及び[3]公的再生支援が市場メカニズムにどのような影響を与えるのかを明確にし,競争事業者がその影響について意見を提出することなどができるよう,可能な限り,個別の事案に関する情報について,迅速性や情報へのアクセスの容易性に配慮しつつ開示すべきという「透明性の原則」の三つの原則を踏まえるべきであるとした上で,公的再生支援が競争に与える影響やその影響を最小化するための考慮事項等を明らかにしている。

(2)「適正な電力取引についての指針」の改定

 平成23年3月に発生した東日本大震災とこれに伴う原子力事故を契機に,電力の安定供給の確保や電気料金の抑制等に向けた電力システム改革について検討が行われ,平成25年4月に「電力システムに関する改革方針」が閣議決定されたところ,当該改革方針を受け,平成25年から平成27年にかけて電気事業法(昭和39年法律第170号)が3段階に分けて改正された。そのうち,平成28年4月に電気の小売業への参入が全面自由化されることを主な内容とする第2段階の改正電気事業法が施行されることに伴い,公正取引委員会は,平成28年3月7日に経済産業省と共同して「適正な電力取引についての指針」を改定した。
 独占禁止法の観点から行った指針の改定内容として,セット販売における不当な取扱い,契約の切替えにおける不当な取扱い及び相対取引や卸電力取引所での取引を通じた電気の調達における不当な取扱いについて,独占禁止法上の考え方を新たに示している。

(3)「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」の改定

 公正取引委員会は,電気通信事業分野における最近の市場実態の変化等を踏まえ,「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」の独占禁止法部分について所要の改定を行い,平成28年5月20日に電気通信事業法(昭和59年法律第86号)部分の改定内容と合わせて公表した。
 同改定により,接続における不当な取扱い,セット提供における不当な取扱い,卸電気通信役務における不当な取扱いなどについて,独占禁止法上の考え方の補充を行うとともに,個別の事例に対応したより具体的な想定例の追加等を行っている。

(4)「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」の一部改正

 公正取引委員会は,「規制改革に関する第3次答申~多様で活力ある日本へ~」(平成27年6月16日規制改革会議)を受けて策定された「規制改革実施計画」(平成27年6月30日閣議決定)を踏まえ,「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月11日公表。以下「流通・取引慣行ガイドライン」という。)に関し同実施計画において検討することとされたいわゆるセーフ・ハーバーに関する基準や要件等について所要の検討を行い,流通・取引慣行ガイドラインを一部改正し,平成28年5月27日に公表した。今回の改正は,流通・取引慣行ガイドライン第1部及び第2部ともに,いわゆるセーフ・ハーバーの基準を,改正前の「市場におけるシェアが10%未満であり,かつ,その順位が上位4位以下」から「市場におけるシェアが20%以下」(順位基準は廃止)に改めるものである。

(5)「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」の一部改正

 公正取引委員会は,標準規格必須特許(規格の実施に当たり必須となる特許等をいう。以下同じ。)を有する者が,当該標準規格必須特許を利用する者に対して差止請求訴訟を提起する等の事例が国内外で生じていることを踏まえ,「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(平成19年9月28日公表)を一部改正し,平成28年1月21日に公表した。
 具体的には,FRAND宣言をした標準規格必須特許を有する者が,FRAND条件でライセンスを受ける意思を有する者に対し,ライセンスを拒絶し,又は差止請求訴訟を提起すること等は,規格を採用した製品の研究開発,生産又は販売を行う者の取引機会を排除し又はその競争機能を低下させる場合があり,当該製品の市場における競争を実質的に制限する場合には,私的独占に該当し,私的独占に該当しない場合であっても,公正競争阻害性を有するときには,不公正な取引方法(独占禁止法第19条〔一般指定第2項,第14項〕)に該当すること等を明らかにした。

(6)外航海運に係る独占禁止法適用除外制度の見直し

 外航海運については,海上運送法(昭和24年法律第187号)に基づき,船社による運賃及び料金その他の運送条件,航路,配船等を内容とする協定の締結について,国土交通大臣への事前届出を前提として,独占禁止法適用除外制度が設けられているところ,平成22年度における国土交通省による見直しの検討の結果,平成27年度に再度検討を行うこととなっていた。公正取引委員会は平成28年2月4日に,実態調査を踏まえて,外航海運に係る独占禁止法適用除外制度を維持する理由が存在するかどうかについて検討を行い,検討結果を取りまとめた報告書「外航海運に係る独占禁止法適用除外制度の在り方について」を公表し,同月以降,国土交通省と協議を行ってきた。
 国土交通省は,公正取引委員会との協議を踏まえ,平成28年6月14日に,外航海運に係る海上運送法上の独占禁止法適用除外制度は当面維持するが,運賃又は料金について加盟船社を拘束するいわゆる運賃同盟については,運賃同盟の締結件数が減少し,国際海上輸送サービスの安定的提供に支障が生じないと判断される場合には廃止の方向で見直しを行うこととし,運賃同盟以外の船社間協定については,諸外国における競争法適用除外制度,荷主の利益への影響や船社間協定の類型ごとの状況を踏まえ,必要と認められる場合には,公正取引委員会と協議しつつ見直しを行っていくとの再検討結果を公表した。

(7)競争評価に関する取組

 平成19年10月以後,各府省が規制の新設又は改廃を行おうとする際,原則として,規制の事前評価の実施が義務付けられ,その際,規制による競争状況への影響分析(以下「競争評価」という。)についても行うこととされ,平成22年4月から試行的に実施されている。競争評価については,各府省は,規制等に関して,競争状況への影響・分析に関するチェックリスト(以下「競争評価チェックリスト」という。)の記入を行い,評価書と共に総務省に提出し,総務省は競争評価チェックリストを公正取引委員会へ送付することとされている。
 平成27年度においては,総務省から88件の競争評価チェックリストを受領し,内容を精査した。

(8)入札談合の防止への取組

 入札談合の防止を徹底するためには,発注者側の取組が極めて重要であるとの観点から,公正取引委員会は,地方公共団体等の調達担当者等に対する独占禁止法や入札談合等関与行為防止法の研修会を開催するとともに,国,地方公共団体等が実施する調達担当者等に対する同様の研修会への講師の派遣及び資料の提供等の協力を行っている。
 平成27年度においては,研修会を全国で28回開催するとともに,国,地方公共団体等に対して289件の講師の派遣を行った。

(9)独占禁止法コンプライアンスの向上に向けた取組

 独占禁止法コンプライアンスの向上に関連した企業の取組を促していく観点から,公正取引委員会では,企業における独占禁止法に関するコンプライアンス活動の状況を調査し,改善のための方策等と併せて,報告書の取りまとめ・公表を行うとともに,その周知に努めている。
 平成27年度においては,平成27年3月27日に公表した,外国競争法に関するコンプライアンスを推進するために有効と考えられる方策や留意点を取りまとめた報告書「我が国企業における外国競争法コンプライアンスに関する取組状況について~グローバル・ルールとしての取組を目指して~」について,経済団体等12団体における講演等を通じて周知を行った。

(10)ガソリンの取引に関するフォローアップ調査

 公正取引委員会は,平成25年7月,「ガソリンの取引に関する調査報告書」を公表した。その後,ガソリン販売業者に対するガソリンの仕切価格の決定方法に変更があったことなどガソリンの流通市場における競争環境に変化がうかがわれることから,改めてガソリンの流通実態を把握するためにフォローアップ調査を実施し,平成28年4月28日に「ガソリンの取引に関するフォローアップ調査報告書」を公表した。

4 競争政策の運営基盤の強化

(1)競争政策に関する理論的・実証的な基盤の整備

 競争政策研究センターは,平成15年6月の発足以降,独占禁止法等の執行や競争政策の企画・立案・評価を行う上での理論的・実証的な基礎を強化するための活動を展開している。
 平成27年度においては,三つの研究テーマに取り組んだほか,公開セミナーを3回,ワークショップを5回開催した。

(2)経済のグローバル化への対応

 近年,複数の国・地域の競争法に抵触する事案,複数の国・地域の競争当局が同時に審査を行う必要のある事案等が増加するなど,競争当局間の協力・連携の強化の必要性が高まっている。このような状況を踏まえ,公正取引委員会は,二国間独占禁止協力協定,経済連携協定等に基づき,関係国の競争当局と連携して執行活動を行うなど,外国の競争当局との間で緊密な協力を行っている。
 また,公正取引委員会は,国際競争ネットワーク(ICN),経済協力開発機構(OECD),アジア太平洋経済協力(APEC),国連貿易開発会議(UNCTAD)等といった多国間会議にも積極的に参加している。
 さらに,発展途上国において,既存の競争法制を強化する動きや新たに競争法制を導入する動きが活発になっていることを受け,公正取引委員会は,これら諸国の競争当局等に対し,当委員会事務総局の職員の派遣や研修の実施等による技術支援活動を行っている。
 このほか,我が国の競争政策の状況を広く海外に周知することにより公正取引委員会の国際的なプレゼンスを向上させるため,英文ウェブサイトに掲載する報道発表資料の一層の充実,海外の弁護士会等が主催するセミナー等へのスピーカーの派遣等を行っている。
 平成27年度においては,主に以下の事項に取り組んだ。

ア 競争当局間における連携強化
 オーストラリア連邦の競争消費者委員会との間における二国間取決めの締結を行った。同取決めは,公正取引委員会が締結した,審査過程で得た情報の共有について規定した,初めての取決めである。また,中華人民共和国の国家発展改革委員会及び商務部との間において二国間覚書の締結を行った。

イ 多国間協議への参加
 国際競争ネットワーク(ICN)においては,その設立以来運営委員会メンバーを務めるとともに,平成24年度からはカルテル作業部会サブグループ1の共同議長も担当している。また,公正取引委員会主導のもと設立された「(カルテルに関する)非秘密情報の交換を促進するためのフレームワーク」及び「企業結合審査に係る国際協力のためのフレームワーク」を運用するなど各作業部会の取組に参画している。
 経済協力開発機構(OECD)においては,競争委員会の本会合及び各作業部会に参加し,寡占市場の問題点,定期船輸送市場等のテーマに即して,公正取引委員会の過去の経験,取組について紹介するなど,議論に参画した。
 このほか,ベトナムにおいて東アジア競争政策トップ会合及び東アジア競争法・政策カンファレンスを共催した。

ウ 経済連携協定への取組
 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に関し,競争政策章を中心として,その締結に関する取組に参画した。

エ 技術支援
 ベトナム競争当局に公正取引委員会職員を派遣するとともに,ベトナム,フィリピン,インドネシア,モンゴル等の競争当局職員を招いて研修を行う等により,競争政策に関する技術支援を実施している。

(3)競争政策の普及啓発に関する広報・広聴活動

 競争政策に関する意見・要望等を聴取して施策の実施の参考とし,併せて競争政策への理解の促進に資するため,独占禁止政策協力委員から意見聴取を行った。
 また,経済社会の変化に即応して競争政策を有効かつ適切に推進するため,公正取引委員会が広く有識者と意見を交換し,併せて競争政策の一層の理解を求めることを目的として,独占禁止懇話会を開催しており,平成27年度においては,3回開催した。
 さらに,全国9都市において,公正取引委員会委員と各地の有識者との懇談会を,また,全国各地区において,地方事務所長等の当委員会事務総局の職員と各地区の有識者との懇談会を,全国14都市において,公正取引委員会委員等による弁護士会や経済界等に対する講演会等を,それぞれ開催した。
 前記以外の活動として,本局及び地方事務所等の所在地以外の都市における独占禁止法等の普及啓発活動や相談対応の一層の充実を図るため,「一日公正取引委員会」を開催するとともに,一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動を紹介する「消費者セミナー」を開催した。
 加えて,中学校,高等学校及び大学(短期大学等を含む。)に職員を講師として派遣し,経済活動における競争の役割等について授業を行う独占禁止法教室(出前授業)の開催など,学校教育等を通じた競争政策の普及啓発に努めた。

<平成27年度における主な取組>
○ 独占禁止政策協力委員150名に対する意見聴取の実施
○ 独占禁止懇話会の開催(3回)
○ 地方有識者との懇談会の開催(函館市,仙台市,前橋市,名古屋市,和歌山市,松江市,松山市,熊本市及び那覇市)
○ その他の地方有識者との懇談会の開催(87回)
○ 弁護士会や経済界等に対する講演会等の開催(33回)
○ 一日公正取引委員会の開催(函館市,福島市,横浜市,岐阜市,和歌山市,岡山市,高知市及び長崎市)
○ 消費者セミナーの開催(57回)
○ 独占禁止法教室の開催(中学生向け61回,高校生向け27回,大学生等向け76回)

関連ファイル

 平成27年度公正取引委員会年次報告(PDF:4,523KB)

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問い合わせ先

公正取引委員会事務総局官房総務課
電話 03-3581-3574(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp/

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