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海外当局の動き

海外当局の動き

最近の動き(2026年3月更新)

米国

DOJ及び米国郵便公社、内部告発者に対する初の報奨金として100万ドルを支給

2026年1月29日 米国司法省 公表

原文

【概要】

 2026年1月29日、米国司法省(以下「DOJ」という。)反トラスト局は、内部告発者報奨プログラムに基づき、刑事上の反トラスト法違反に関する報告を行った内部告発者に対し、初めて報奨金を支給したことを公表した。
 中古車を対象としたオンラインオークション仲介業者であるEBLOCK Corporation(以下「EBLOCK」という。)が刑事上の反トラスト法違反及び詐欺容疑について起訴猶予合意により解決することにつながった情報を提供した告発者に対し、100万ドルの報奨金を支給した。EBLOCKは訴追猶予合意に基づき、328万ドルの刑事罰金を支払うことに合意している。

1 不正行為の内容
 本日、米国カリフォルニア中部地区連邦地方裁判所に提出された刑事訴状及び起訴猶予合意書によると、以下のとおり不正行為が行われたとされる。
 (1) 2020年11月、EBLOCK は同業の中古車オンラインオークションプラットフォーム運営会社(以下「A社」という。)を買収した。EBLOCK は当該買収後、A社内での入札談合及び詐欺行為について速やかな是正措置を直ちに講じなかった。
 (2) 2020年11月から2022年2月にかけて、A社の関係者と別のオンラインオークションプラットフォーム運営会社(以下「B社」という。)の関係者が共謀し、A社のオンラインオークション上で販売される中古車について競争を制限又は排除する行為を行っていた。これは連邦反トラスト法(シャーマン法)第1条の規定に違反する行為である。また、EBLOCKは、A社のプラットフォームにおける偽装入札(注1)について直ちに是正措置を講じなかった。これは詐欺を禁じる連邦法に違反する行為である。
(注1) 虚偽の入札を行って正規の購入者が支払う価格を人為的に引き上げる行為。
(3) 裁判書類に記載されているように、A社の元従業員はB社の従業員と共謀し、入札情報を共有するとともに、特定の車両に対するA社又はB社の最高入札額を合意した。A社の従業員はB社に対し、競売サイト上で他の買い手や売り手の機密入札情報を閲覧することが可能な特別なアクセス権及びユーザー権限を提供した。共謀者らは、入札談合計画に基づき購入した車両の共有在庫リストを維持し、それらの車両を再出品して偽装入札を行うことで、正当な買い手が支払う価格を人為的に引き上げる意図で連携して実行した。さらに、オンラインオークションでは、実際の自動車販売店の同意なしに、それらの店名で自動的に偽装入札を行うソフトウェアの開発を委託し、入札者数や身元を偽った。共謀者らはこの計画による利益を取りまとめて分配した。これらの行為の過程で、計画を裏付ける様々な文書が米国郵便(U.S. Mail)で送付されていた。

2 処分及び是正措置
 本訴追猶予合意において、EBLOCK は以下の措置を講じることに合意した。 
(1) 328万ドルの刑事罰金の支払
(2) 適切なコンプライアンス・プログラムの実施
(3) DOJの進行中の刑事事件捜査及び将来の起訴手続への協力  
 
3 連邦法による保護措置
 連邦法は、刑事上の反トラスト法違反を報告した従業員を、雇用主による報復から保護する。反トラスト局は、常に、内部告発者を保護し情報の利用が公的な身元特定につながるリスクを最小限に抑えるために合理的な措置を講じる。

4 報奨金の仕組み
 反トラスト局は、法執行機関である米国郵便検査局(U.S. Postal Inspection Service)及び米国郵便公社監察総局(U.S. Postal Service Office of Inspector General)と連携し、内部告発者への報奨金を支払う。内部告発者が報奨金の受給資格を得られる可能性があるのは、刑事上の反トラスト法違反又は関連する犯罪に関する独自情報を自発的に提供し、その結果として少なくとも100万ドル以上の刑事罰金又はその他の金銭的回収が生じた場合である。内部告発者に対する報奨金の額は、回収された金額の15%から30%の範囲となり得る。

5 関係者による主なコメント
 (1) DOJ反トラスト局 Omeed A. Assefi次長(刑事執行担当)
 反トラスト法違反のカルテルに参加した企業のうち最初に共謀を反トラスト局に報告した企業は、減免措置を受けられる可能性があることを忘れるべきではない。しかし、減免申請を巡る競争は激化している。従業員とその弁護士は、内部告発を行い、自社に先んじて反トラスト局に申告するよう促されているからだ。

 (2) 米国郵便検査局 Gary Barksdale署長 
  本件において、被告は米国郵便を利用して詐欺計画に関連する書類を送付した。この計画は、無防備な自動車の購入者を守るよりも、違法な利益を優先するものであった。
  今回の100万ドルの報奨金は、内部告発者報奨プログラムが開始されてからわずか6か月後に授与されたものである。この報奨金は、米国郵便公社と反トラスト局が、米国郵便に関連する反トラスト法違反や関連する競争上の犯罪行為について、正確で実行可能な情報を提供する者を支援する姿勢を示している。
 

EU

欧州委、DMAに基づき相互運用性及びオンライン検索データ共有に係る遵守義務確保のため、グーグルに対する特定手続を開始

2026年1月27日 欧州委員会 公表

原文

【概要】

1 概要
 2026年1月27日、欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、デジタル市場法(以下「DMA」という。)に基づくグーグルの遵守義務を支援するため、2件の特定手続を開始した。これらの特定手続は、DMA上の2つの義務に関するグーグルの遵守状況について、欧州委とグーグルとの間で行っていた規制に関する協議(regulatory dialogue)を正式なものとする。
 第1の手続は、DMA第6条第7項の規定に基づき、グーグルのAndroid OSにより制御されるハードウェア及びソフトウェアの機能について、第三者の開発者に対し、無償かつ効果的な相互運用性を提供するというグーグルの義務に関するもので、Gemini等のグーグル自身の人工知能(以下「AI」という。)サービスによって利用される機能に焦点を当てている。欧州委は、グーグルが第三者のAIサービス提供者に対して、グーグル自身のサービスで利用可能な機能と同等で効果的なアクセスを付与する方法について明確化しようとしている。その目的は、第三者のプロバイダが、スマートフォン等のモバイル端末上で急速に進化するAI分野において、技術革新を推進し、同等な競争条件を確保することにある。
 第2の手続は、DMA第6条第11項の規定に基づき、グーグル検索(注1)が保有する匿名化されたランキング、検索クエリ、クリック及び閲覧データへのアクセスを、第三者のオンライン検索エンジン提供者に対し、公正、合理的かつ非差別的(FRAND)な条件で認めるというグーグルの義務に関するものである。本件手続は、対象となるデータの範囲、匿名化手法、アクセス条件、そしてAIチャットボット提供者が当該データにアクセスする資格を有するかどうかに焦点を当てている。こうしたグーグルに課せられる義務の効果的な遵守と実効的なデータへのアクセスが確保されれば、第三者のオンライン検索エンジン提供者は、自らのサービスを最適化し、利用者に対してグーグル検索の真の代替となるサービスを提供できるようになる。
(注1) いわゆるオンライン検索エンジンについて、DMA第2条第6項では、「ユーザーが検索クエリを入力できるようにするデジタルサービスを指し、原則として全てのウェブサイト、または特定の言語の全てのウェブサイトを対象に、キーワード、音声リクエスト、フレーズその他の入力形式による任意の主題のクエリに基づいて検索を実行し、要求された内容に関連する情報が見つかるあらゆる形式で結果を返すもの」と定義されている。

2 今後の手続
 欧州委は、本件手続を開始から6か月以内に終了させる予定である。今後3か月以内に、欧州委はグーグルに対し、DMAの効果的な遵守を確保するために課すことを予定している措置案を記載した予備的見解を通知する。また、欧州委は、予備的見解及び予定されている措置について機密情報を含まない要約版を公表し、第三者がこれらに対して意見を提出できるようにする。
 本件手続は、その性質上、DMAへの適合性について何ら立場を示すものではない。また、DMAに定められた義務のいずれかについてゲートキーパーの非遵守を認定する決定を欧州委が採択する権限を害するものではなく、制裁金又は定期制裁金(注2)を課す可能性も含め、欧州委の権限は維持される。
(注2) 義務を履行するまでの期間、日額単位で課される制裁金のこと。  

3 背景
 DMAは、デジタル分野における市場の競争可能性及び公正性を確保することを目的としている。同法は、ビジネスユーザーと消費者との間の重要なゲートウェイとなり、その地位によってデジタル経済におけるボトルネックを生み出し得る大規模なデジタルプラットフォームであるゲートキーパーを規制するものである。
 2023年9月6日、欧州委は、グーグルが提供するグーグル検索、Google Play、Google Maps、YouTube、Google Android OS、Google Chrome、Google Shopping及びオンライン広告サービスをコアプラットフォームサービスに指定した。2024年3月7日(注:DMAの施行日)以降、グーグルは、指定されたプラットフォームサービスに関して適用されるDMA上の全ての義務を完全に遵守しなければならないとされている。
 欧州委は、2025年4月にDMAの実施状況及び目標達成に向けた進捗に関する年次報告書を公表した。

4 テレサ・リベラ上級副委員長(クリーンで公正かつ競争力のある移行担当)による声明
 AIツールは、我々がスマートフォンでのオンライン情報の検索や取得の方法、さらには端末とのやりとりの仕方までも変革しつつある。これは新たな機会を生み出すものである。我々は、この深い技術変化の潜在力と恩恵を最大限に引き出すため、競争の舞台が最大手の数社にとって有利になるのではなく、開かれた、公平なものとなるようにしなければならないと考えている。本日の手続により、グーグルがDMAに基づく相互運用性及びオンライン検索データ共有に係る義務をどのように遵守すべきかについて、より詳細に説明し、同社を支援したいと考えている。  

5 ヘナ・ヴィルックネン上級副委員長(テック主権・安全保障・民主主義)による声明
 何百万もの欧州市民が日々オンライン検索エンジンに依存し、そして今やより一層AIサービスに依存している。本日のDMAに基づく手続は、グーグル検索やGeminiのようなグーグル自身のサービスと同様の検索データ及びAndroid OSへのアクセスを第三者のオンライン検索エンジン及びAI提供者にも確保するための指針をグーグルに示すものである。我々の目標は、AI市場を開かれたものとし、実力に基づく競争を促進し、技術革新を推進することで、消費者と企業の双方に利益をもたらすことである。


その他

韓国

タクシー配車市場における支配的地位の濫用を行ったとして、タクシー配車アプリ事業者とその幹部3名を在宅起訴

2026年1月26日 ソウル南部地方検察庁 公表
 ソウル南部地方検察庁は、タクシー配車アプリ事業者であるカカオモビリティと同社の幹部3名(以下併せて「被告人」という。)を公正取引法違反の疑いで在宅起訴した。
 本件は、韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)が、2024年10月2日にカカオモビリティを公正取引法違反の疑いで検察に告発(注1)したことを契機に、ソウル南部地方検察庁が捜査を実施したものである。
 (注1) KFTCは、カカオモビリティを刑事告発した旨をウェブサイト上で公表している。他方、ソウル南部地方検察庁は、韓国法務部(日本の法務省に相当)が定める刑事事件の公報に関する規定に基づき、事業者名や幹部の実名については明らかにしていない。

1 被告人及び公訴事実の要旨
(1) 被告人
・カカオモビリティ(注2) 
・カカオモビリティ代表取締役 
・カカオモビリティ副社長 
・カカオモビリティ事業室長
 (注2) 韓国の中型タクシー一般配車市場において95%のシェアを占める。

(2) 公訴事実の要旨
 被告人は、中型タクシー一般配車市場における支配的地位を濫用し、2021年2月から2023年12月頃までの間、中小加盟競争事業者(訳注:タクシードライバーと加盟契約を結びブランド運営を行う事業者。)4社(A社、B社、C社及びD社)に対し、次の不公正取引行為を行った。
・手数料の支払い又は営業上の秘密(出発地や経路情報等)の提供を要求
・上記の要求に応じない当該中小加盟競争事業者に所属するドライバーに対して、カカオモビリティのタクシーアプリを利用できないよう遮断

2 本件違反行為の構造
(1) 中型タクシー一般配車市場
 タクシー配車アプリ事業者は、タクシー配車アプリを通じて乗客とドライバーを結び付ける。
配車方式は、加盟契約を締結したドライバーのみが利用できる「加盟配車」と全てのドライバーが利用できる「一般配車」の2種類からなる。
 カカオモビリティは、加盟ブランドを運営し、加盟契約を締結したドライバーに「加盟配車」を割り当て、加盟契約締結の有無を問わず全てのドライバーに「一般配車」を割り当てていた。
 中小加盟競争事業者に所属するドライバーは、カカオモビリティの一般配車を利用していたものの、手数料は一切支払っていなかった。

 (2) 犯行経緯
 被告人は、2019年11月から2020年11月頃まで、競争加盟事業者に所属するドライバーに対する一般配車を遮断する案を検討したものの、公正取引法違反による摘発の可能性が高いとの結論に至り、実行しなかった。
 しかし、2020年12月頃、タクシー加盟市場における競争が激化し、韓国政府がタクシー業界の独占的な構造の解消に向けて旅客自動車運輸事業法(注3)の改正を検討するなど、カカオモビリティの加盟市場シェア(注4)の拡大が困難となり得る環境に直面した。 
 被告人らは、「ブランド混同問題(注5)」等を名目として、中小加盟競争事業者に対して、手数料の支払等を要求し、これに応じない場合には所属するドライバーに対する配車を遮断する計画を実行した。
(注3) タクシー、バス、レンタカーなどの旅客運送事業を規制する法律
(注4) 2021年3月時点で55%(加盟ドライバー数基準)であった。
(注5) カカオモビリティの一般配車利用客が、同社のタクシーではなく他のブランドのタクシーが割り当てられたと抗議する問題のこと。

(3) カカオモビリティが要求した不当な条件
 カカオモビリティは、2021年2月から2023年12月頃まで、中小加盟競争事業者であるA社、B社、C社及びD社に対し、従前徴収していなかった所属するドライバーの一般配車の利用手数料を代わりに支払うこと、又は、営業秘密データ(出発地や経路情報等)を提供することを要求し、いずれにも応じなかった場合は所属するドライバーのカカオモビリティのタクシーアプリ使用を遮断すると通知した。
 これらの中小加盟競争事業者は、所属するドライバーが個人的に利用する一般配車の手数料を支払う理由がなく、提示された手数料の水準も加盟料の2~3倍と非常に高額であった。また、カカオモビリティは営業秘密データをナビゲーションの高度化等に使用する目的で不当な要求を行っていたと認定した。

(4) 市場に与えた影響
 被告人は自らの要求に応じなかったA社に所属するドライバーのアカウント14,042件(2021年7月から2023年12月まで)、B社に所属するドライバーのアカウント1,095件(2021年7月から同年11月まで)に対し、一般配車等のサービス提供を停止した。
 また、被告人は、A社及びB社の加盟表示を付けているタクシーに関する通報を受けて、配車遮断措置を実行した。配車を遮断されたドライバーが自ら車両から加盟表示を剥がし、写真で認証するとカカオモビリティが配車遮断措置を解除した事実も確認された。
 これにより、一般配車を遮断されたドライバーは月平均約101万ウォンの収入減少が生じ、特にB社は被告人の遮断行為が継続した期間の前後で加盟運行車両数が半減し、その後、新規加盟車両を募集できなくなり、中型タクシー加盟ブランド事業の中止を余儀なくされた

(5)その他
 ソウル南部地方検察庁は、これに加え、KFTCが告発したいわゆる「配車の集中配分」に関する公正取引法違反事件(カカオモビリティが所属するドライバーに対して有利に一般配車を割り当てた疑い)及び金融委員会が2024年11月に通知した外部監査法違反事件(カカオモビリティが売上高を水増しした疑い)についても併せて捜査したものの、嫌疑を証明することが困難であり、全て嫌疑なしと判断した。

3 本件捜査の意義
(1) 犯罪全容の解明
 KFTCによる告発後、ソウル南部地方検察庁は、綿密な捜査により本件犯罪の内容を具体的に確認し、その主導的立場にあったカカオモビリティの幹部3名(個人)を起訴するなど、本件の実態に合致する適切な処分に至った。

(2) 支配的地位の濫用への厳正な対応
 カカオモビリティは中型タクシー加盟ブランド市場に参入した中小加盟競争事業者の事業活動に多大な支障をきたし、これらの一部が該当事業を中止するなどして、中型タクシー一般配車市場のみならず、中型タクシー加盟ブランド市場においても支配的地位を一層強化した。
 これはタクシー配車市場全体の自由な競争を制限し、同市場のイノベーションを阻害することで、タクシー利用者が享受する便益を低下させ、負担する費用を増加させる、国民生活に影響を及ぼす重大事案であると判断し、被告人全員について在宅起訴とした。

4 今後の計画
 ソウル南部地方検察庁は公訴維持に万全を期し、今後も市場競争秩序を損ない国民生活と国家経済発展を阻害する各種公正取引法違反事件に対し、法と原則に基づき厳正に対応する。

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