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(平成30年5月31日)株式会社小糸製作所に対する審決について(自動車メーカーが発注するヘッドランプ及びリアコンビネーションランプの見積り合わせの参加業者による受注調整事件)

(平成30年5月31日)株式会社小糸製作所に対する審決について(自動車メーカーが発注するヘッドランプ及びリアコンビネーションランプの見積り合わせの参加業者による受注調整事件)

平成30年5月31日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,被審人株式会社小糸製作所(以下「被審人」という。)に対し,平成25年7月17日,審判手続を開始し,以後,審判官をして審判手続を行わせてきたところ,平成30年5月30日,被審人に対し,独占禁止法の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)による改正前の独占禁止法(以下「独占禁止法」という。)第66条第2項の規定に基づき,被審人の各審判請求を棄却する旨の審決を行った(本件平成25年(判)第11号ないし第20号審決書については,当委員会ホームページの「報道発表資料」参照)。

1 被審人の概要

事業者名 本店所在地 代表者

株式会社小糸製作所
法人番号1010401009745

東京都港区高輪四丁目8番3号

代表取締役 三原 弘志

2 被審人の審判請求の趣旨

 別表1のとおり,被審人に対する各排除措置命令及び各課徴金納付命令の全部の取消しを求める(別表1は印刷用ファイルに添付)。

3 主文の内容

 被審人の各審判請求をいずれも棄却する。

4 本件の経緯

平成25年
3月22日 排除措置命令及び課徴金納付命令
5月23日 被審人から排除措置命令及び課徴金納付命令に対して審判請求
7月17日 審判手続開始
9月27日 第1回審判

平成28年
7月26日 第14回審判(審判手続終結)
平成30年
3月30日 審決案送達
5月30日 被審人の各審判請求を棄却する審決

5 原処分の原因となる事実

(1) 被審人は,市光工業株式会社(以下「市光工業」という。)及びスタンレー電気株式会社(以下「スタンレー電気」といい,被審人とスタンレー電気を併せて「2社」,被審人,市光工業及びスタンレー電気を併せて「3社」という。)のうち別表2の「被審人以外の違反事業者」欄記載の者とそれぞれ共同して,同表の「自動車メーカー」欄記載の自動車メーカー5社等(注1)が発注するヘッドランプ及びリアコンビネーションランプ(注2)(以下,併せて「ヘッドランプ等」という。)であって,それぞれ見積り合わせを実施して受注者を選定するもの(以下,それぞれ「日産自動車等発注の特定自動車用ランプ」(注3),「トヨタ自動車発注の特定自動車用ランプ」,「富士重工業発注の特定自動車用ランプ」(注4),「三菱自動車工業発注の特定自動車用ランプ」及び「マツダ発注の特定自動車用ランプ」といい,これらを併せて「自動車メーカー5社等発注の特定自動車用ランプ」という。)について,遅くとも同表の「違反行為の始期」欄記載の時期以降,量産価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,自動車メーカー5社等発注の特定自動車用ランプの各取引分野における競争を実質的に制限していた(以下,日産自動車等発注の特定自動車用ランプに係るものを「本件違反行為1」,トヨタ自動車発注の特定自動車用ランプに係るものを「本件違反行為2」,富士重工業発注の特定自動車用ランプに係るものを「本件違反行為3」,三菱自動車工業発注の特定自動車用ランプに係るものを「本件違反行為4」及びマツダ発注の特定自動車用ランプに係るものを「本件違反行為5」といい,これらを併せて「本件各違反行為」という。)(別表2は印刷用ファイルに添付)。
(注1) 「自動車メーカー5社等」とは,日産自動車等,トヨタ自動車,富士重工業,三菱自動車工業及びマツダを併せたものをいう。
(注2) 「ヘッドランプ」とは,自動車用ランプのうち,自動車の前面に搭載される前照灯,車幅灯,方向指示器等が組み合わされたものをいう。また,「リアコンビネーションランプ」とは,自動車用ランプのうち,自動車の後面に搭載される後退灯,尾灯,制動灯,方向指示器等が組み合わされたものをいう。
(注3) 日産自動車等発注の特定自動車用ランプは,日産自動車等が発注するヘッドランプ等のうち日本国内で製造されるものである。また,同社らが見積り合わせを委託したRNPO(日産自動車等の関連会社であるRenault Nissan Purchasing Organizationをいう。以下同じ。)が見積り合わせを実施して,受注者を選定している。
(注4) 富士重工業発注の特定自動車用ランプは,富士重工業が自ら又は他の自動車メーカーと共同して見積り合わせを実施して受注者を選定している。

(2) 被審人の本件各違反行為の実行期間は,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,別表3の「実行期間」欄記載のとおりであり,独占禁止法第7条の2の規定により算出された課徴金の額は,同表の「課徴金額」欄記載のとおりである(別表3は印刷用ファイルに添付)。

6 審決の概要

(1) 本件の争点

ア 3社又は2社は,自動車メーカー5社等発注の特定自動車用ランプについて平成25年(措)第1号ないし第5号の各排除措置命令の命令書記載の合意をしていたか(争点1)
イ 争点1の各合意は独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限(以下「不当な取引制限」という。)に該当するか(争点2)
ウ(ア) 本件各違反行為は独占禁止法第7条の2第1項第1号にいう「商品・・・の対価に係るもの」(以下「商品の対価に係るもの」という。)に該当するか
 (イ) 被審人が受注した審決案別紙3ないし7の各「被審人の課徴金算定の基礎となる売上額(税込み,円)」欄に金額の記載のあるヘッドランプ等(以下「審決案別紙3ないし7の課徴金対象物件」という。)は独占禁止法第7条の2第1項にいう「当該商品」(以下「当該商品」という。)に該当するか
(争点3)

(2) 争点に対する判断の概要

ア 争点1について
(ア) 日産自動車等発注の特定自動車用ランプについて
 3社は,日産自動車等発注の特定自動車用ランプについて,量産価格の低落防止等を図るため,遅くとも平成15年2月頃から平成23年12月22日までの間(以下「本件対象期間1」という。)にソーシング(注5)が実施された34物件のうちの25物件について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように要求仕様値(注6)等の調整をして見積回答の提出を行うなど受注調整を行っていた。そして,3社の各営業担当者は,日産自動車等がソーシングを行って発注する日産自動車等発注の特定自動車用ランプについて,3社の各営業担当者が集まって,受注予定者を決め,受注予定者が受注できるよう見積価格を調整するという受注調整を行うこととしていた旨,おおむね一致して供述している。これらのことからすると,3社は,遅くとも平成15年2月頃以降,日産自動車等発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように3社の要求仕様値等を調整することとしていたものと認められる。
 また,量産価格の低落防止等を図るためには,受注予定者を決定して,見積回答における要求仕様値等を調整するのみならず,その後のソーシングの様々な場面において,受注予定者が受注することができるように協力する必要があり,3社においても,その旨認識していたものと認められる。そして,実際,3社は,個別物件のソーシングにおいて,必要に応じて,受注予定者は積極的にVE提案(注7)による原価低減提案をし,他のサプライヤー候補(注8)は積極的にVE提案による原価低減提案をしない,自動車の量産が開始された後における各年度の値引率(プロダクティビティ)について受注予定者の見積価格より低くなるように調整する,見積回答後の日産自動車等又はRNPOとの交渉においても受注予定者は積極的に提案し,他のサプライヤー候補は積極的な提案をしない,日産自動車等からの値引き要請について情報交換するなどにより,受注予定者が受注できるように協力していたことからすると,3社は,日産自動車等発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように3社の要求仕様値等を調整するとともに,必要に応じて適切な方法を講じることによって受注予定者が受注できるように協力することとしていたものと認められる。
 以上によれば,3社は,遅くとも平成15年2月頃までに,日産自動車等発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように3社の要求仕様値等を調整する(受注予定者が受注できるように協力するという内容を含む。)旨の合意(以下「本件合意1」という。)をしたものと認められる。
(注5) 「ソーシング」とは,日産自動車等が呼称する見積り合わせの手続をいう。
(注6) 「要求仕様値」とは,製品単価(構成部品費,材料費,加工費等を合計したヘッドランプ等の部品費)及び型費(ヘッドランプ等の製造に必要となる金型の製作費)を合わせたものをいう。
(注7) 「VE提案」とは,原価低減のための技術提案(Value Engineering提案)をいう。
(注8) 「サプライヤー候補」とは,自動車メーカー5社等が行う見積り合わせの参加者をいう。

(イ) トヨタ自動車発注の特定自動車用ランプについて
 3社は,トヨタ自動車発注の特定自動車用ランプについて,量産価格の低落防止等を図るため,遅くとも平成19年2月頃から平成23年5月23日までの間(以下「本件対象期間2」という。)に競合発注(注9)が実施された17物件のうちの16物件について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように要求仕様値の調整をして見積回答の提出を行うなどの受注調整を行っていた。そして,3社の各営業担当者は,トヨタ自動車が競合発注を行って納入業者を選定するトヨタ自動車発注の特定自動車用ランプについて,3社の各営業担当者が集まって,受注予定者を決め,受注予定者が受注できるよう見積価格を調整するという受注調整を行うこととしていた旨,おおむね一致して供述している。これらのことからすると,3社は,遅くとも平成19年2月以降,トヨタ自動車発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように3社の要求仕様値を調整することとしていたものと認められる。
 また,量産価格の低落防止等を図るためには,受注予定者を決定して,見積回答における要求仕様値を調整するのみならず,その後の競合発注の様々な場面において,受注予定者が受注することができるように協力する必要があり,3社においても,その旨認識していたものと認められる。そして,実際,3社は,個別物件の競合発注において,必要に応じて,VE提案による原価低減提案を調整するなどにより,受注予定者が受注できるように協力していたことからすると,3社は,トヨタ自動車発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように3社の要求仕様値を調整するとともに,必要に応じて適切な方法を講じることによって受注予定者が受注できるように協力することとしていたものと認められる。
 以上によれば,3社は,遅くとも平成19年2月頃までに,トヨタ自動車発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように3社の要求仕様値を調整する(受注予定者が受注できるように協力することを含む。)旨の合意(以下「本件合意2」という。)をしたものと認められる。
(注9) 「競合発注」とは,トヨタ自動車が呼称する見積り合わせの手続をいう。

(ウ) 富士重工業発注の特定自動車用ランプについて
 3社は,富士重工業発注の特定自動車用ランプについて,量産価格の低落防止等を図るため,遅くとも平成14年7月頃から平成23年12月22日までの間(以下「本件対象期間3」という。)に競合(注10)が実施された26物件のうちの19物件について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように要求仕様値の調整をして見積回答の提出を行うなどの受注調整を行っていた。そして,3社の各営業担当者は,富士重工業が競合を行って納入業者を選定する富士重工業発注の特定自動車用ランプについて,3社の各営業担当者が集まって,受注予定者を決め,受注予定者が受注できるよう見積価格を調整するという受注調整を行うこととしていた旨,おおむね一致して供述している。これらのことからすると,3社は,遅くとも平成14年7月頃以降,富士重工業発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように3社の要求仕様値を調整することとしていたものと認められる。
 また,量産価格の低落防止等を図るためには,受注予定者を決定して,見積回答における要求仕様値を調整するのみならず,その後の競合の様々な場面において,受注予定者が受注することができるように協力する必要があり,3社においても,その旨認識していたものと認められる。そして,実際,3社は,個別物件の競合において,必要に応じて,VE提案を反映した見積価格の情報,見積回答後における富士重工業との交渉において再提出した見積価格の情報を連絡するなどにより,受注予定者が受注できるように協力していたことからすると,3社は,富士重工業発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように3社の要求仕様値を調整するとともに,必要に応じて適切な方法を講じることによって受注予定者が受注できるように協力することとしていたものと認められる。
 以上によれば,3社は,遅くとも平成14年7月頃までに,富士重工業発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように3社の要求仕様値を調整する(受注予定者が受注できるように協力することを含む。)旨の合意(以下「本件合意3」という。)をしたものと認められる。
(注10) 「競合」とは,富士重工業が呼称する見積り合わせの手続をいう。

(エ) 三菱自動車工業発注の特定自動車用ランプについて
 2社は,三菱自動車工業発注の特定自動車用ランプについて,量産価格の低落防止等を図るため,遅くとも平成16年6月頃から平成23年8月21日までの間(以下「本件対象期間4」という。)に見積り合わせが実施された13物件のうちの10物件について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように要求仕様値の調整をして見積回答の提出を行うなどの受注調整を行っていた。そして,2社の各営業担当者は,三菱自動車工業が見積り合わせを行って納入業者を選定する三菱自動車工業発注の特定自動車用ランプについて,2社の各営業担当者が集まって,受注予定者を決め,受注予定者が受注できるよう見積価格を調整するという受注調整を行うこととしていた旨,おおむね一致して供述している。これらのことからすると,2社は,遅くとも平成16年6月頃以降,三菱自動車工業発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように2社の要求仕様値を調整することとしていたものと認められる。
 また,量産価格の低落防止等を図るためには,受注予定者を決定して,見積回答における要求仕様値を調整するのみならず,その後の見積り合わせの様々な場面において,受注予定者が受注することができるように協力する必要があり,2社においても,その旨認識していたものと認められる。そして,実際,2社は,個別物件の見積り合わせにおいて,必要に応じて,見積回答の再提案について調整するなどにより,受注予定者が受注できるように協力していたことからすると,2社は,三菱自動車工業発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように2社の要求仕様値を調整するとともに,必要に応じて適切な方法を講じることによって受注予定者が受注できるように協力することとしていたものと認められる。
 以上によれば,2社は,遅くとも平成16年6月頃までに,三菱自動車工業発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように2社の要求仕様値を調整する(受注予定者が受注できるように協力することを含む。)旨の合意(以下「本件合意4」という。)をしたものと認められる。

(オ) マツダ発注の特定自動車用ランプについて
 2社は,マツダ発注の特定自動車用ランプについて,量産価格の低落防止等を図るため,遅くとも平成16年6月頃から平成23年8月21日までの間(以下「本件対象期間5」といい,本件対象期間1ないし本件対象期間5を併せて「本件各対象期間」という。)にコンペ(注11)が実施された18物件のうちの10物件について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように要求仕様値の調整をして見積回答の提出を行うなどの受注調整を行っていた。そして,2社の各営業担当者等は,マツダがコンペを行って納入業者を選定するマツダ発注の特定自動車用ランプについて,2社の各営業担当者が集まって,受注予定者を決め,受注予定者が受注できるよう見積価格を調整するという受注調整を行うこととしていた旨,おおむね一致して供述している。これらのことからすると,2社は,遅くとも平成16年6月頃以降,マツダ発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように2社の要求仕様値を調整することとしていたものと認められる。
 また,量産価格の低落防止等を図るためには,受注予定者を決定して,見積回答における要求仕様値を調整するのみならず,その後のコンペの様々な場面において,受注予定者が受注することができるように協力する必要があり,2社においても,その旨認識していたものと認められる。そして,実際,2社は,個別物件のコンペにおいて,必要に応じて,見積回答後におけるマツダとの交渉において,再度の見積回答を求められても,再度の見積回答には応じない,見積回答時に調整した受注予定者の要求仕様値を下回らない範囲でしか値下げに応じないなどにより,受注予定者が受注できるように協力していたことからすると,2社は,マツダ発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように2社の要求仕様値を調整するとともに,必要に応じて適切な方法を講じることによって受注予定者が受注できるように協力することとしていたものと認められる。
 以上によれば,2社は,遅くとも平成16年6月頃までに,マツダ発注の特定自動車用ランプについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように2社の要求仕様値を調整する(受注予定者が受注できるように協力することを含む。)旨の合意(以下「本件合意5」といい,本件合意1ないし本件合意5を併せて「本件各合意」という。)をしたものと認められる。
(注11) 「コンペ」とは,マツダが呼称する見積り合わせの手続をいう。

イ 争点2について
 本件各合意は,3社又は2社が,自動車メーカー5社等発注の特定自動車用ランプについて,話合い等によって受注予定者をあらかじめ決定し,受注予定者が受注することができるように協力するという内容の取決めであり,本件各合意の参加者は,本来的には自由に見積価格等を決めることができるはずのところを,このような取決めがされたときは,これに制約されて意思決定を行うことになるという意味において,その事業活動が事実上拘束される結果となることは明らかであるから,本件各合意は,独占禁止法第2条第6項にいう「その事業活動を拘束し」の要件を充足する。
 また,本件各合意の成立により,3社又は2社の間に,上記の取決めに基づいた行動をとることを互いに認識し認容して歩調を合わせるという意思の連絡が形成されたものといえるから,本件各合意は,独占禁止法第2条第6項にいう「共同して・・・相互に」の要件も充足する。
 さらに,独占禁止法第2条第6項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」とは,当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい,本件各合意のような受注調整の基本的な方法や手順等を取り決める行為によって競争制限が行われる場合には,当該取決めによって,その当事者である事業者らがその意思で自動車メーカー5社等発注の特定自動車用ランプの見積り合わせの手続に係る各市場における受注者及びその見積価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらすことをいうものと解される。
 そして,本件各合意の参加者並びにその対象となった自動車メーカー5社等発注の特定自動車用ランプの取引の内容及びその範囲に加え,[1]本件各対象期間に見積り合わせが実施された自動車メーカー5社等発注の特定自動車用ランプについては,そのほぼ全ての物件について,3社又は2社の中から当該発注手続のサプライヤー候補が選定されていたこと,[2]本件各対象期間に見積り合わせが実施された自動車メーカー5社等発注の特定自動車用ランプについては,その大部分の物件について,3社又は2社が,本件各合意の内容に沿った受注調整を行って,受注予定者を決定し,受注予定者が受注することができるように協力していたこと,[3]本件各合意は,自動車メーカー5社等発注の特定自動車用ランプの量産価格の低落防止等を目的とするものであったところ,3社又は2社が,自動車メーカー5社等発注の特定自動車用ランプについて4年以上の期間にわたって継続的に個別物件において要求仕様値(等)(注12)を調整し受注に協力する旨の受注調整を行っていたという事実は,3社又は2社において,要求仕様値(等)を調整することで量産価格を左右できると考えていた証左といえることなどを併せ考慮すれば,本件各合意は,上記の状態をもたらし得るものであったといえる。しかも,本件各対象期間に見積り合わせが実施された自動車メーカー5社等発注の特定自動車用ランプについては,そのほとんど全ての物件を3社又は2社のうちのいずれかが受注し,受注調整が行われた物件については,その大部分の物件を受注調整で受注予定者と決定された者が現に受注していたことからすると,本件各合意は,本件各対象期間中,自動車メーカー5社等発注の特定自動車用ランプの各取引分野において,事実上の拘束力をもって有効に機能し,3社又は2社がその意思で上記各取引分野における受注者及びその見積価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらしていたものと認めるのが相当である。
 したがって,本件各合意は,独占禁止法第2条第6項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」の要件を充足する。
 加えて,このような本件各合意が,独占禁止法第2条第6項にいう「公共の利益に反して」の要件を充足するものであることも明らかである。
 以上によれば,本件各合意は不当な取引制限に該当するものと認められる。
(注12) 「要求仕様値(等)」とは,日産自動車等発注の特定自動車用ランプにおいては「要求仕様値等」をいい,トヨタ自動車発注の特定自動車用ランプ,富士重工業発注の特定自動車用ランプ,三菱自動車工業発注の特定自動車用ランプ及びマツダ発注の特定自動車用ランプにおいては「要求仕様値」をいう。

ウ 争点3について
(ア) 本件各違反行為は商品の対価に係るものに該当すること
 本件各合意は,受注予定者を決定し,要求仕様値(等)を調整することによって受注予定者が受注できるように協力するというものであり,商品の価格を制限するものであるから,商品の対価に係るものに該当するものと認めるのが相当である。

(イ) 審決案別紙3ないし7の課徴金対象物件が当該商品に該当すること
 不当な取引制限等の摘発に伴う不利益を増大させてその経済的誘因を小さくし,不当な取引制限等の予防効果を強化することを目的とする課徴金制度の趣旨に鑑みると,当該商品とは,本件においては,本件各合意の対象とされた自動車メーカー5社等発注の特定自動車用ランプであって,本件各合意に基づく受注調整等の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解される。
 審決案別紙3の課徴金対象物件は,日産自動車等発注の特定自動車用ランプであって,本件合意1の対象商品であり,審決案別紙8及び別紙9で認定した受注調整が本件合意1の内容に沿ったものであったことからすると,上記各物件については,本件合意1に基づいて受注調整が行われたものと認められる。そうすると,審決案別紙3の課徴金対象物件は,日産自動車等発注の特定自動車用ランプであって,本件合意1に基づいて受注調整が行われ,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものと認められ,当該商品に該当するものと認められる。
 また,審決案別紙4ないし別紙7の課徴金対象物件についても,同様に,当該商品に該当するものと認められる。

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公正取引委員会事務総局官房総務課審決訟務室
電話 03-3581-5478(直通)
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