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不当廉売に関する独占禁止法上の考え方

平成21年12月18日
公正取引委員会
改正:平成23年6月23日

1 はじめに

 不当廉売は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)において,不公正な取引方法の一つとして禁止されている。不当廉売の規定は,平成21年法律第51号及び不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の改正によって,次のようになった。

(1) 独占禁止法第2条第9項第3号

 正当な理由がないのに,商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

(2) 不公正な取引方法第6項

 法第2条第9項第3号に該当する行為のほか,不当に商品又は役務を低い対価で供給し,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。

 このうち,独占禁止法第2条第9項第3号に規定する不当廉売(以下「法定不当廉売」という。)を行った事業者が,過去10年以内に法定不当廉売を行ったとして行政処分を受けたことがあるなど一定の条件を満たす場合には,課徴金の納付が命じられることになった(注1)。このため,不当廉売に係る法運用の透明性,事業者の予見可能性を向上させる観点から,公正取引委員会は,法定不当廉売の要件のうち,特に「供給に要する費用を著しく下回る対価」に重点を置いて,不当廉売に関する独占禁止法上の考え方を従前よりも明確化するため,「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」(昭和59年11月20日公正取引委員会事務局)を一部改定することとした。
 なお,これは不当廉売の規定の適用に当たり,留意すべき事項を示したものであり,具体的なケースについては,個々の事案ごとに判断を要するものであることはいうまでもない。

(注1) 法定不当廉売に該当する行為に対しては,独占禁止法第2条第9項第3号の規定だけを適用すれば足りるので,当該行為に不公正な取引方法第6項の規定が適用されることはない。

2 不当廉売規制の目的

 独占禁止法の目的は,いうまでもなく公正かつ自由な競争を維持・促進することにあり,事業者が創意により良質・廉価な商品又は役務(以下単に「商品」という。)を供給しようとする努力を助長しようとするものである。この中でも,企業努力による価格競争は,本来,競争政策が維持促進しようとする能率競争(良質・廉価な商品を提供して顧客を獲得する競争をいう。)の中核をなすものである。この意味で,価格の安さ自体を不当視するものではないことは当然であるが,逆に価格の安さを常に正当視するものでもない。企業の効率性によって達成した低価格で商品を提供するのではなく,採算を度外視した低価格によって顧客を獲得しようとするのは,独占禁止法の目的からみて問題がある場合があり,そのような場合には,規制の必要がある。正当な理由がないのにコストを下回る価格,いいかえれば他の商品の供給による利益その他の資金を投入するのでなければ供給を継続することができないような低価格を設定することによって競争者の顧客を獲得することは,企業努力又は正常な競争過程を反映せず,廉売を行っている事業者(以下「廉売行為者」という。)自らと同等又はそれ以上に効率的な事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあり,公正な競争秩序に影響を及ぼすおそれがある場合もあるからである。

3 独占禁止法第2条第9項第3号の規定

 独占禁止法第2条第9項第3号の規定は,次のとおりである。

 三 正当な理由がないのに,商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

 同号の要件は,(1)廉売の態様(価格・費用基準及び継続性),(2)「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」,(3)正当な理由の三つの面からとらえることができる。

(1) 廉売の態様

ア 価格・費用基準

(ア) 価格・費用基準すなわち「供給に要する費用を著しく下回る対価」という要件は,前記2の不当廉売規制の目的に即して解釈すべきである。

(イ) すなわち,不当廉売規制の目的の一つは,廉売行為者自らと同等又はそれ以上に効率的な事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるような廉売を規制することにある。仮に,廉売行為者自らと同等に効率的な事業者,例えば,廉売行為者と同じ費用で商品を供給することができる事業者が存在し,又は参入を検討していたとしても,商品の供給が増大するにつれ損失が拡大するような価格でしか供給することができないのであれば,むしろ,供給をしない方が費用の負担を免れることができることから,供給を継続せずに撤退し,又は参入を断念する方がよいことになる。つまり,廉売行為者自身がその費用すら下回る価格で供給を行えば,他の事業者も廉売行為者と同じ価格で供給せざるを得なくなり,仮に,他の事業者が同じ費用で供給することができたとしても,早晩,撤退又は参入断念を余儀なくされることを意味する。このように,廉売行為者自らと同等に効率的な事業者の事業の継続等に係る判断に影響を与える価格であるかどうかは,それが当該廉売行為者自身にとって直ちに損失をもたらす水準にあるかどうかに左右されることになる。したがって,「供給に要する費用」とは,廉売行為者の「供給に要する費用」であり,業界一般の「供給に要する費用」又は現実に存在する特定の競争者の費用ではない。

(ウ) 前記2の不当廉売規制の目的からみて,事業者が自らの企業努力又は正常な競争過程を反映した価格設定を行うことは妨げられていない。例えば,商品の価格が「供給に要する費用」,すなわち総販売原価(注2)を下回っていても,供給を継続した方が当該商品の供給に係る損失が小さくなるときは,当該価格で供給することは合理的である。このような観点から,価格・費用基準は,廉売行為者にとって明らかに経済合理性のない価格設定であるかを判断することができるものとすることが適切である。この点,商品の供給が増大するにつれ損失が拡大するような価格設定行動は,特段の事情がない限り,経済合理性のないものであるということができる。したがって,価格設定についての経済合理性の有無は,廉売の対象となった商品(以下「廉売対象商品」という。)を供給することによって発生する費用と価格との比較により判断することが適当である(注3)。これにより,事業者が採算に合うと考えて設定した価格が違法とされることを懸念し事業活動に影響が生じる可能性をできるだけ少なくすることができる。

(注2) 総販売原価とは,廉売対象商品の供給に要するすべての費用を合計したものであり,通常の製造業では,製造原価に販売費及び一般管理費を加えたもの,通常の販売業では,仕入原価に販売費及び一般管理費を加えたものである。
 ここでの「製造原価」とは,当期の製造活動によって完成した全製品の製造に要した費用の合計である製造原価報告書上の当期製品製造原価ではなく,当該廉売によって販売された製品の製造に要した費用の合計額のことである。仕入原価,販売費及び一般管理費についても同様であり,当該廉売によって販売された製品の仕入れ,販売及び管理に要した費用の合計額のことである。
 販売費及び一般管理費のように複数の事業に共通する費用については,これが各事業にどのように配賦されるかが問題となるところ,企業会計上は,当該費用の発生により各事業が便益を受ける程度等に応じ,各事業者が実情に即して合理的に選択した配賦基準に従って配賦されることが一般的である。複数の事業に共通する費用の配賦基準については,このほかにも様々な方法があるが,廉売行為者が実情に即して合理的に選択した配賦基準を用いていると認められる場合には,当該配賦基準に基づき各事業に費用の配賦を行った上で,総販売原価の算定を行うものとする。その上で,複数の商品に共通する費用についても,実情に即して合理的に配賦することにより,廉売対象商品の総販売原価の算定を行うものとする。
 また,研究開発費等のように一括して計上される費用については,廉売行為者が実情に即して合理的な期間において当該費用を回収することとしていると認められる場合には,当該期間にわたって費用の配賦を行った上で,廉売対象商品の総販売原価の算定を行うものとする。

(注3) 経済合理性があるかどうかについては,概念的には,設定された価格が平均回避可能費用(廉売行為者が廉売対象商品の追加供給をやめた場合に生じなくなる廉売対象商品固有の固定費用及び可変費用を合算した費用を追加供給量で除することによって得られる廉売対象商品一単位当たりの費用をいう。)を回収することができるかどうかによって判断される。実務上は,これに相当するものとして,後記(エ)に示した考え方を用いる。

(エ) 総販売原価を著しく下回る価格であるかどうかは,廉売対象商品を供給することによって発生する費用を下回る収入しか得られないような価格であるかどうかという観点から,事案に即して算定されることになる。この算定に当たっては,次の点に留意する。

a 供給に要する費用には,廉売対象商品を供給しなければ発生しない費用(以下「可変的性質を持つ費用」という。)とそれ以外の費用とがある。可変的性質を持つ費用でさえ回収できないような低い価格を設定すれば,廉売対象商品の供給が増大するにつれ損失が拡大する。したがって,可変的性質を持つ費用を下回る価格は,「供給に要する費用を著しく下回る対価」であると推定される(他方,可変的性質を持つ費用以上の価格は「供給に要する費用を著しく下回る対価」ではないので,その価格での供給は,法定不当廉売に該当することはない。)。

b 可変的性質を持つ費用に該当する費用かどうかについては,廉売対象商品の供給量の変化に応じて増減する費用か,廉売対象商品の供給と密接な関連性を有する費用かという観点から評価する。

(a) 変動費(操業度に応じて総額において比例的に増減する原価をいう。)は,可変的性質を持つ費用となる。また,明確に変動費であると認められなくても,費用の性格上,廉売対象商品の供給量の変化に応じてある程度増減するとみられる費用は,特段の事情(注4)がない限り,可変的性質を持つ費用と推定される。例えば,変動費としては製品の製造に直接用いられる材料費や仕入価格が挙げられ,費用の性格上廉売対象商品の供給量の変化に応じてある程度増減する費用としては運送費,検収費等の商品仕入れに付随する諸経費が挙げられる。
 さらに,費用の性格からそのように推定するまでは至らないものであっても,個別の事案において,廉売期間中,供給量の変化に応じて増減している費用は,原則として,可変的性質を持つ費用として取り扱われる。

(注4) 継続的な廉売ではあるものの,廉売期間が比較的短く,期間中の廉売対象商品の供給によってはその費用が増減し得ないといった事情は,特段の事情に該当する事由である。

(b) 企業会計上の各種費用項目のうち,廉売対象商品の供給と密接な関連性を有する費用項目は,以下に示すように,可変的性質を持つ費用となる又は推定される場合がある。

(i) 製造原価

 製造原価は製造業者が廉売を行うことにより販売した当該製品の「売上原価」を構成する重要な一要素である。製造原価は,製造業者が,ある製品について廉売を行った場合に,当該製品の供給と密接な関連性を有するものとして算定される費用項目であり,その性格上,特段の事情(注5)がない限り,可変的性質を持つ費用と推定される。製造原価のうち製造直接費(直接材料費,直接労務費及び直接経費)は,可変的性質を持つ費用となる。

(注5) 特段の事情に該当する事由としては,製造原価の中に,明らかに当該製品の供給と関連性のない費用項目があるといった事情(例えば,当該製品を製造する工場敷地内にある福利厚生施設(テニスコート,プール等)の減価償却費が製造原価に含まれている場合)が挙げられる。

(ii) 仕入原価

 仕入原価とは,仕入価格(注6)と,運送費,検収費等の仕入れに付随する諸経費との合計額である。仕入原価は,販売業者が,ある製品について廉売を行った場合に,当該製品の供給と密接な関連性を有するものとして算定される費用項目であり,その性格上,特段の事情がない限り,可変的性質を持つ費用と推定される。仕入原価のうち仕入価格は,可変的性質を持つ費用となる。

(注6) ここでの「仕入価格」とは,名目上の仕入価格ではなく,実際の取引において当該製品に関して値引き,リベート,現品添付等が行われている場合には,これらを考慮に入れた実質的な仕入価格をいう。

(iii) 営業費

 営業費は,販売費及び一般管理費から構成されるところ,これに含まれる費用項目のうち,廉売対象商品の注文の履行に要する費用である倉庫費,運送費及び掛売販売集金費は,事業者が,ある商品について廉売を行った場合に,廉売対象商品の供給と密接な関連性を有するものとして算定される費用項目であり,その性格上,可変的性質を持つ費用となる。

(c) 廉売対象商品の供給量の変化に応じて増減する費用か,廉売対象商品の供給と密接な関連性を有する費用かという観点から,費用の性格上,特段の事情がない限り可変的性質を持つ費用には該当しないと推定される費用(注7)又は可変的性質を持つ費用とはならない費用(注8)がある。

(注7) 廉売対象商品の注文の獲得に要する費用(例えば,広告費,市場調査費,接待費)は,特段の事情がない限り,可変的性質を持つ費用には該当しないと推定される。特段の事情に該当する事由としては,廉売対象商品の供給を開始又は継続するために不可避的に発生した費用であるといった事情が挙げられる。
 例えば,廉売対象商品の需要創出のために発売開始前に集中的に支出した宣伝広告費については,その費用の支出なくして廉売対象商品の供給自体が行われなかったと認められる場合があり得る。このような廉売対象商品の供給を開始又は継続するために不可避的に発生した費用であるといった事情があれば,当該費用は,廉売対象商品の供給と密接な関連性を有する費用であり,廉売対象商品を供給しなければ発生しなかったものとして,可変的性質を持つ費用とされる。

(注8) 本社組織である人事部や経理部における人件費,交通費及び通信費は,費用の性格上,廉売対象商品の供給量の変化に応じて増減する費用ではなく,廉売対象商品の供給と密接な関連性を有する費用でもないので,可変的性質を持つ費用とはならない。

イ 継続性

 前記2のとおり,不当廉売に該当するためには,廉売が廉売行為者自らと同等に効率的な事業者の事業の継続等に係る判断に影響を与え得るものである必要がある。したがって,不当廉売となるのは,一般的には,廉売がある程度「継続して」行われる場合である。このため,独占禁止法第2条第9項第3号の規定は,「供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給すること」と規定している。
 「継続して」とは,相当期間にわたって繰り返して廉売を行い,又は廉売を行っている事業者の営業方針等から客観的にそれが予測されることであるが,毎日継続して行われることを必ずしも要しない。例えば,毎週末等の日を定めて行う廉売であっても,需要者の購買状況によっては継続して供給しているとみることができる場合がある。

(2) 「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」

 「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある」にいうところの「他の事業者」とは,通常の場合,廉売対象商品について当該廉売を行っている者と競争関係にある者を指すが,廉売の態様によっては,競争関係にない者が含まれる場合もあり得る。例えば,卸売・小売業者による廉売によって製造業者等の競争関係に影響が及ぶ場合であれば,「他の事業者」に,廉売対象商品と同種の商品を供給する製造業者等が含まれる場合もある。

 「事業活動を困難にさせるおそれがある」とは,現に事業活動が困難になることは必要なく,諸般の状況からそのような結果が招来される具体的な可能性が認められる場合(注9)を含む趣旨である。このような可能性の有無は,他の事業者の実際の状況のほか,廉売行為者の事業の規模及び態様,廉売対象商品の数量,廉売期間,広告宣伝の状況,廉売対象商品の特性,廉売行為者の意図・目的等を総合的に考慮して,個別具体的に判断される。

(注9) 例えば,有力な事業者が,他の事業者を排除する意図の下に,可変的性質を持つ費用を下回る価格で廉売を行い,その結果,急激に販売数量が増加し,当該市場において販売数量で首位に至るような場合には,個々の事業者の事業活動が現に困難になっているとまでは認められなくとも,「事業活動を困難にさせるおそれがある」に該当する。

(3) 正当な理由

 前記(1)及び(2)の要件に当たるものであっても,廉売を正当化する特段の事情があれば,公正な競争を阻害するおそれがあるものとはいえず,不当廉売とはならない。例えば,需給関係から廉売対象商品の販売価格が低落している場合,廉売対象商品の原材料の再調達価格が取得原価より低くなっている場合において,商品や原材料の市況に対応して低い価格を設定したとき,商品の価格を決定した後に原材料を調達する取引において,想定しがたい原材料価格の高騰により結果として供給に要する費用を著しく下回ることとなったときは,「正当な理由」があるものと考えられる(注10)。

(注10) 生鮮食料品のようにその品質が急速に低下するおそれがあるものや季節商品のようにその販売の最盛期を過ぎたものについて,見切り販売をする必要がある場合は,可変的性質を持つ費用を下回るような低い価格を設定することに「正当な理由」があるものと考えられる。きず物,はんぱ物その他の瑕疵(かし)のある商品について相応の低い価格を設定する場合も同様に考えられる。

4 不公正な取引方法第6項の規定

(1) 不公正な取引方法第6項の規定は,次のとおりである。

 (不当廉売)
 6 法第2条第9項第3号に該当する行為のほか,不当に商品又は役務を低い対価で供給し,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。

 法定不当廉売の要件である価格・費用基準及び継続性のいずれか又は両方を満たさない場合,すなわち,廉売行為者が可変的性質を持つ費用以上の価格(総販売原価を下回ることが前提)で供給する場合や,可変的性質を持つ費用を下回る価格で単発的に供給する場合であっても,廉売対象商品の特性,廉売行為者の意図・目的,廉売の効果,市場全体の状況等からみて,公正な競争秩序に悪影響を与えるときは,不公正な取引方法第6項の規定に該当し,不当廉売として規制される。

(2) 「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」の有無については,前記3(2)イに掲げる事項を総合的に考慮して,個別事案ごとに判断することとなるが,例えば,市場シェアの高い事業者が,継続して,かつ,大量に廉売する場合,又はこのような事業者が,他の事業者にとって経営上重要な商品を集中的に廉売する場合は,一般的には,他の事業者の事業活動に影響を与えると考えられるので,可変的性質を持つ費用以上の価格での供給であっても,不公正な取引方法第6項の規定に該当する場合がある。この場合には,廉売対象商品の供給と関連のある費用(製造原価又は仕入原価及び販売費)を下回っているかどうかを考慮する。

5 廉売問題に関連するその他の規制

 廉売問題に関連する独占禁止法上の規制のうち,主要なものを挙げると次のとおりである。

(1) 差別対価,取引条件等の差別取扱い

ア 独占禁止法が禁止する差別対価等

 差別対価については,独占禁止法第2条第9項第2号において「不当に,地域又は相手方により差別的な対価をもつて,商品又は役務を継続して供給することであつて,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」と(注11),不公正な取引方法第3項において「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第2条第9項第2号に該当する行為のほか,不当に,地域又は相手方により差別的な対価をもつて,商品若しくは役務を供給し,又はこれらの供給を受けること。」と規定されている。独占禁止法第2条第9項第2号は,商品を供給するケースに限られ,供給を受ける行為は含まれていないことに留意する必要がある。
 また,取引条件等の差別取扱いについては,不公正な取引方法第4項において,「不当に,ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利又は不利な取扱いをすること。」と規定されている。

(注11) 独占禁止法第2条第9項第2号に規定する差別対価を行った事業者が,過去10年以内に同号に規定する差別対価を行ったとして行政処分を受けたことがあるなど一定の条件を満たす場合には,課徴金の納付が命じられる。
 独占禁止法第2条第9項第2号に規定する差別対価に該当する行為に対しては,同号の規定だけを適用すれば足りるので,当該行為に不公正な取引方法第3項の規定が適用されることはない。

イ 差別対価等の規制の基本的な考え方

(ア) 経済活動において,取引数量の多寡,決済条件,配送条件等の相違を反映して取引価格に差が設けられることは,広く一般にみられることである。また,地域による需給関係の相違を反映して取引価格に差異が設けられることも通常である。
 このような観点からすれば,取引価格や取引条件に差異が設けられても,それが取引数量の相違等正当なコスト差に基づくものである場合や,商品の需給関係を反映したものである場合等においては,本質的に公正な競争を阻害するおそれがあるとはいえないものと考えられる。
 しかし,例えば,有力な事業者が,競争者を排除するため,当該競争者と競合する販売地域又は顧客に限って廉売を行い,公正な競争秩序に悪影響を与える場合は,独占禁止法上問題となる。
 また,有力な事業者が同一の商品について,取引価格やその他の取引条件等について,合理的な理由なく差別的な取扱いをし,差別を受ける相手方の競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼすことにより公正な競争秩序に悪影響を与える場合にも,独占禁止法上問題となる。

(イ) 個々の行為がどのような場合に独占禁止法上の差別対価等に該当するかは,個別具体的な事案において,行為者の意図・目的,取引価格・取引条件の格差の程度,供給に要する費用と価格との関係,行為者及び競争者の市場における地位,取引の相手方の状況,商品の特性,取引形態等を総合的に勘案し,市場における競争秩序に与える影響を勘案した上で判断されるものである。

(2) 優越的地位の濫用行為

 自己の取引上の地位が相手方に優越している事業者が,その地位を利用して,取引の相手方に対し,自己に対する低価格での納入や自己の決算対策のための協賛金の支払いを強要すること等は,独占禁止法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用)に該当するおそれがある。
 公正取引委員会は,「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月11日公正取引委員会事務局),「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」(平成10年3月17日公正取引委員会),「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」の運用基準(平成17年事務総長通達第9号),「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(平成22年11月30日公正取引委員会)で明らかにした考え方等を踏まえ,厳正に対処する(注12)。

(注12) 独占禁止法第2条第9項第5号に規定される優越的地位の濫用を行った事業者に対しては,当該行為が継続してするものであるなど一定の条件を満たす場合には,課徴金の納付が命じられる。

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