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(平成14年度:事例11)同和鉱業(株)及び三菱マテリアル(株)による亜鉛事業の統合について

(平成14年度:事例11)同和鉱業(株)及び三菱マテリアル(株)による亜鉛事業の統合について

第1 本件の概要等

1 本件の概要

 本件は,同和鉱業(株)(以下「同和鉱業」という。)及び三菱マテリアル(株)(以下「三菱マテリアル」という。)が,物流面及び管理費の削減によるコスト競争力の強化を図り,国際競争力を確保することを目的として,共同加工会社(新会社の名称は,「秋田ジンクソリューションズ(株)」。)及び共同販売会社(新会社の名称は,「ジンクエクセル(株)」。)を設立することにより,亜鉛事業を統合するものである。

2 製品概要

 亜鉛は,電気亜鉛,精留亜鉛及び蒸留亜鉛の3種類に大別されるが,このうち,電気亜鉛と精留亜鉛は,いずれも99.99%以上の品位を有しており,最純亜鉛と総称されている。ユーザーは,その用途に必要な品位を有する亜鉛を購入しており,最純亜鉛の購入に当たり,電気亜鉛,精留亜鉛という種類の指定までは行わないのが一般的である。また,品位において最純亜鉛に劣る蒸留亜鉛についても,メーカーにとり不純物を除去し最純亜鉛の品位に高めることは容易である。
 亜鉛は,亜鉛メッキ鋼板,一般メッキ,伸銅など広範な用途に用いられている。

3 製品取引の特徴

 亜鉛は,LME(ロンドン金属取引所)で取引される国際商品であり,国内の価格は,LME価格に連動して推移している。

第2 独占禁止法上の考え方

1 一定の取引分野

 亜鉛は,3種類に大別され,ユーザーはその用途に必要な品位を有する亜鉛を購入しているところ,前記のとおり,電気亜鉛,精留亜鉛については品位が同等であることから最純亜鉛として一般的に機能・効用が同種のものとして取り扱われていると認められる。また,品位において劣る蒸留亜鉛についても,メーカーにとり不純物を除去し最純亜鉛の品位に高めることは容易であることから,本件においては,亜鉛全体の製造・販売分野に一定の取引分野が成立すると判断した。

2 競争への影響

(1) 市場の状況

 本件統合により,当事会社の合算販売数量シェア・順位は,約25%・第2位となる。また,上位3社累積シェアは,約75%となる。

亜鉛の国内販売数量シェア
順位 メーカー シェア
1 A社 約35%
2 同和鉱業 約20%
3 B社 約20%
4 C社 約15%
5 輸入 約10%
6 三菱マテリアル 約5%
  その他 0~5%
(2) 当事会社合算 約25%
  合計 100%

(2) 考慮事項

ア 競争事業者
 国内販売数量シェア約35%,同約20%及び同約15%を有する有力な競争事業者が存在する。

イ LME価格との連動性
 LME価格が,亜鉛メーカーとユーザーとの間の価格交渉のベースとなっており,大手亜鉛メーカーとしても,LME価格を無視した価格設定を行うことは困難となっている。実際にも,亜鉛の国内販売価格は,LME価格と連動して推移している。

ウ 輸入
 輸入品の価格もLME価格に連動しているが,国内品よりも安価となる場合がある。また,国内品と輸入品との間で品質差がなく,ユーザーは,国内品と輸入品の価格を比較して購入していることから,輸入価格が国内価格を下回り,その差が拡大する場合には,輸入品のシェアが増加しており(注),輸入品が競争圧力として働いていると考えられる。

 (注) 平成9年度には,国内品よりも輸入品の価格が低くなっており,その際の輸入品の割合は20%を超えた。

(3) 独占禁止法上の評価

 亜鉛は,LME価格を無視した国内価格を設定することは困難であるほか,輸入価格と国内価格との差が拡大する場合には,実際にも輸入品の割合が増加しており,輸入圧力が一定程度働いていると認められることから,本件統合により,亜鉛の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。

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