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(平成14年度:事例12)日本ポリケム(株)及び日本ポリオレフィン(株)のポリエチレン事業の統合について

(平成14年度:事例12)日本ポリケム(株)及び日本ポリオレフィン(株)のポリエチレン事業の統合について

第1 本件の概要等

1 本件の概要

 本件は,日本ポリケム株式会社(以下「ポリケム」という。)及び日本ポリオレフィン株式会社(以下「日本ポリオレフィン」という。)が,国際競争に対処するため,共同出資会社を設立することにより,ポリエチレン事業を統合するものである(新会社の名称は,「日本ポリエチレン株式会社」。)。

2 製品概要

 ポリエチレンは,石油から精製されるナフサを分解して生産されるエチレンを重合(分子量の比較 的小さい化合物を結合させて大きな分子量の化合物とすること。)して製造され,密度の大小により,高密度ポリエチレン(以下「HDPE」という。)と低密度ポリエチレン(以下「LDPE」という。)に分類される。また,直鎖状低密度ポリエチレン(以下「LLDPE」という。)は,低密度のポリエチレンであるが,エチレンにブテン-1などを共重合させて製造される。LLDPEは,低コストで生産できるものの,高品質を求めるユーザーは,LDPEを使用する傾 向がみられる。

第2 独占禁止法上の考え方

1 一定の取引分野

 ポリエチレンは,HDPE,LDPE及びLLDPEの3つに大別される。ユーザーは,各ポリエチレンを機能・効用の異なるものとして,用途に応じて使い分けており,更に製造方法も異なることから,それぞれの品目について,一定の取引分野が成立するものと判断した。
 これらのうち,統合後に想定される市場の状況(注)からみて,LDPEについて,詳細な検討を行った。

 (注) HDPE及びLLDPEについては,現に輸入圧力が一定程度働いていると考えられることに加え,輸入品の品質向上や関税の引下げ等により,一層の輸入圧力が見込まれることから,競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

2 競争への影響

(1) 市場の状況

 LDPEの国内出荷数量シェアは次表のとおりであり,本件統合により,当事会社の合算販売数量シェア・順位は,約30%・第1位となる。また,上位3社累積シェアは,約70%となる。
 しかしながら,ポリケム,B社に,それぞれ,35%,50%出資している東燃化学株式会社(以下「東燃化学」という。)が存在することから(参考参 照),当事会社であるポリケムとB社との間には,競争への影響をみるべき企業結合関係が認められ,これを前提とすれば,当事会社グループの合算販売数量シェア・順位は約45%・第1位となる。また,上位3社累積シェアは,約80%となる。

LDPEの国内出荷数量シェア
順位 メーカー シェア
1 A社 約25%
2 日本ポリオレフィン 約15%
3 ポリケム 約15%
4 B社 約15%
5 C社 約10%
6 D社 約10%
7 E社 約10%
  輸入 0~5%
(1) 当事会社合算 約30%
  合計 100%
(B社との企業結合関係を考慮した場合)
順位 メーカー シェア
1 A社 約25%
2 日本ポリオレフィン 約15%
3 ポリケム 約15%
4 B社 約15%
5 C社 約10%
6 D社 約10%
7 E社 約10%
  輸入 0~5%
(1) 当事会社合算 約30%
  合計 100%

(出所:当事会社提出資料)

(2) 輸入圧力の限定性

 輸入品については,その品質向上やユーザー側のより低廉な価格による調達を重視する方針の強まりなどから,ユーザーの一部には輸入品を採用したり,今後,その採用について検討しようとする動きがみられることに加え,関税が平成16年までに段階的に引き下げられることとなっている。
 しかしながら,LDPEの用途は,フィルムなど高い品質や安全性が要求されるものが大半を占めていることから,現状では輸入品の使用は限定的である。また,実際にも輸入品のシェアは0~5%にとどまり,海外との価格の連動性についても有意な関係は認められない状況にある。
 このため,LDPEについて,今後,輸入圧力が高まる可能性は認められるものの,現状において品質等に対する要求の高さから,輸入圧力が十分に働く蓋然性が高いとは認められない。

(3) 独占禁止法上の評価及び問題点の指摘

 LDPEについては,前記2(2)のとおり,今後,輸入圧力が十分に働く蓋然性が高いとは認められないところ,当事会社であるポリケムとB社との結合関係を前提とすれば,当事会社の合算販売数量シェアは約45%,上位3社累積シェアは約80%となることから,LDPEの取引分野における競争を実質的に制限することとなるおそれがあると考えられる旨,問題点の指摘を行った。

第3 B社との企業結合関係の解消

 前記の公正取引委員会による問題点の指摘後,ポリケムの親会社(出資比率:65%)である三菱 化学株式会社(以下「三菱化学」という。)が,東燃化学からポリケムの株式(出資比率:35%)をすべて譲り受け,ポリケムを同社の100%子会社にしたことから,当事会社であるポリケムとB社との間の企業結合関係が解消された。

第4 独占禁止法上の評価

 前記第3のとおり,当事会社であるポリケムとB社との企業結合関係が解消されたことから,本件統合により,LDPEの取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

(参考)

出資関係図

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