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(平成16年度:事例3)大日本インキ化学工業株式会社と旭化成ライフ&リビング株式会社による二軸延伸ポリスチレンシート事業の統合について

第1 本件の概要

 本件は,大日本インキ化学工業株式会社(以下「大日本インキ」という。)及び旭化成ライフ&リビング株式会社(以下「旭化成L&L」という。)が,共同出資会社を設立し,当事会社の二軸延伸ポリスチレンシート(以下「OPSシート」という。)の製造販売に係る部門を譲渡することによって事業統合することを計画したものである。
 本件の関係法条は,独占禁止法第10条及び第16条である。

第2 製品の概要

 OPSシートは,エチレン及びベンゼンを原料として生産されるスチレンモノマーを重合して製造されるポリスチレン(以下「PS」という。)を熱成形加工してシート状にしたものであり,透明性及び光沢に優れ,かつ,薄くて強度がある容器が作りやすい引っ張り強さを有している。
 OPSシートのほとんどすべては,透明蓋,トレー類,フードパック等の透明食品包装資材に成形するための原材料として使用されている。

第3 独占禁止法上の考え方

1 一定の取引分野

 一定の取引分野の画定については,ユーザーにとって機能・効用が同種であるか否かなどの観点から検討した。
 OPSシートの用途のほとんどすべては,透明食品包装資材の原材料であるところ,当該用途に用いる原材料としては,OPSシートのほかに,A-PET シート(注)等も存在するが,成型品として加工された場合には,それぞれの特性に応じた用途があり,これらのシートで代替できるOPSシートの用途は一部に限られており,これら製品の機能・効用がOPSシートと同種とまでは認められないこと(後記 第3-2(5)参照),また,成型品の種類ごとに使用されるOPSシートの種類には特に違いはないことから,OPSシート全体の製造販売分野を一定の取引分野と画定した。
 また,地理的市場は,全国市場として画定した。

(注) A-PET(アモルファス・ポリエチレンテレフタレート)シートは,ポリエチレンテレフタレートを非結晶化状態にした樹脂をシート状にしたものである。

2 市場の状況

(1) 市場シェア等

 OPSシートの国内需要は,これまで拡大してきているが,今後は大幅な成長は見込めないとされている。平成14年度における市場規模は約270億円である。
 本件統合により,当事会社の合算販売数量シェア・順位は約50%・第1位となる(統合後のHHI 約3,400,HHIの増加分 約1,200)。

順位 会社名 シェア
1 A社 約30%
2 大日本インキ 約25%
3 旭化成L&L 約25%
4 B社 約10%
5 C社 約 5%
6 D社 約 5%
  輸入品 0~5%
(1) 当事会社合算 約50%
  合計 100%

 (出所:調査結果を基に当委員会において作成)
 (注)1 自社の関連会社で自家消費している場合があり,上記シェアは当該自家消費分を除いて算出したものである。
 (注)2 四捨五入しているため,合計は一致しない。

(2) 供給能力及び新規参入の有無

 OPSシートの需要は,今後も若干の増加又は横ばい傾向と予測されるところ,競争業者の供給余力は十分でなく,また,競争業者又は成型品メーカー等による新たな設備投資又は新規参入は期待できない状況である。

(3) 輸入

 国内販売量全体に占める輸入の割合は極めて少なく,輸入品は国内品と品質差(表面処理技術,厚みムラ,異物混入等)があること等から,使用できる用途が限られており,現状において十分な輸入圧力が存在するとは認められない。

(4) 取引の状況

ア ユーザーの取引先変更の容易性
 OPSシートの直接のユーザーは成形を行う成型品メーカーである。OPSシートには,メーカー間の品質差,使い慣れの問題もないことから,ユーザーにとって取引先の変更は容易であり,成型品メーカーは,より低廉な価格での調達を重視して複数購買を行っている。

イ ユーザーの価格推移
 OPSシートの価格は低下傾向にあり,また,OPSシートの価格からOPSシートの原料であるPSの価格を差し引いたスプレッド幅は継続して縮小している。

(5) 競合品からの競争圧力

 OPSシート以外の透明食品包装シートとして,特にA-PETシートとの代替関係について検討した。
 成型品メーカーは,OPSシートだけではなく,A-PETシート等の他のシートを用いた成形も行っているものがほとんどであり,最終ユーザーである量販店,コンビニエンスストア等の求める成型品の用途に応じてシートの種類を決定している。
 しかし,A-PETシートは,透明食品包装に用いることができる点では基本的にはOPSシートと機能・効用は類似しているが耐熱性等の特性が異なることから,成型品として求められる機能に応じて成型品メーカーはこれらの素材を使い分けており,また,両素材の価格変動も関連性があるとは認められなかったことから,A-PETシートとOPSシートが単一の商品市場を構成するとは認められない。しかしながら,A-PETシートがOPSシートの用途の一部を代替できる部分については,競争圧力となり得る。

(6) 川下市場からの競争圧力

 OPSシートについては,直接のユーザーである成型品メーカー及び最終ユーザーである量販店,コンビニエンスストア等の二段階からの競争圧力の有 無について検討した。
 成型品メーカー間の競争が活発に行われており,そのユーザーである量販店,コンビニエンスストア等の価格交渉力は強く,そのため,成型品メーカーは, OPSシートの価格を安く調達するために複数購買を実施しているが,成型品メーカーについては,必ずしもOPSシートメーカーに対して優位な立場で価格交渉を行うことができるとは認められない。
 ただし,OPSシートメーカーにとって,OPSシートの用途がほぼ透明食品包装シートに限られていることから,当事会社が取引先を失ってしまうような方法で価格交渉を行うことは困難であり,これはOPSシートメーカーが自由に価格を引き上げることをある程度妨げる要因となり得る。

(7) 川上市場の状況等

 OPSシートの製造原価に占めるPSの割合は大きく,川上市場であるPSメーカーとOPSシートメーカー間の取引関係をみると,本件統合により製造費用の共通化が進むおそれがある。

第4 当事会社が申し出た問題解消措置及び独占禁止法上の評価

1 当事会社が申し出た措置の概要

 本件について,当事会社に対し,統合後の市場における地位が著しく高まる上,市場に十分な供給余力がなく,輸入,参入の蓋然性も認められない等の問題点がある旨指摘したところ,当事会社が,問題解消措置等を検討するため,詳細審査の回答期限の延長を求めてきたので,当委員会はこれを了承した。その後,当事会社は以下の問題解消措置を採る旨申し出てきた。

(1) OPSシート製造設備の譲渡等の措置

 本件行為後のシェアがかなり高くなり,また,同業他社の供給余力が欠如しているという懸念に対して,生産能力9,000トンの設備を譲渡する。譲渡の候補対象は,運転・管理面や実効性を考慮して同業他社とする。
 また,設備譲渡ができない場合又は設備譲渡を望むメーカーが現れない場合には,生産費用に相当する価格での長期引取権(9,000トン)を設定する措置 を講じる。

(2) 海外メーカーへの技術支援

 海外メーカーの品質向上を図るため,塗布剤のノウハウ等の防曇技術の指導,厚みムラ,異物の混入を防ぐための品質管理の指導を中心に相手方の求めに応じて技術等の支援を実施することにより,輸入促進措置を講じる。
 支援先は,OPSシート製造設備を導入している海外メーカーのうち,当事会社の支援が可能な日本製OPSシート製造設備を保有しているメーカーとする。

(3) ユーザーによる新規参入に対する支援

 ユーザー側の技術的参入障壁を除去するため,ユーザーの内製化意思決定後の技術支援等の新規参入を促進するための措置を講じる。

(4) 情報遮断措置等

 PS部門の役員とOPSシート新会社の役員の兼務等を禁止する。

(5) 当委員会への報告等

ア コンプライアンス組織の設置
 以上の措置を徹底するために,監査役監査に当該措置のチェック機能を含ませる。

イ 当委員会への報告
 問題解消措置に対する履行状況について当委員会に報告する。また,新会社の販売状況及び当該市場の競争の実態については,当委員会からの求めに応じて, その都度報告する。

2 問題解消措置に対する当委員会の評価

(1) OPSシート製造設備の譲渡等の措置

 設備譲渡又は引取権設定の対象となる生産能力9,000トンの譲渡等がなされれば,他社に供給余力が生まれることになり,ユーザーにとって代替供給先を確保しやすくなると評価できる。
 この点に関し,設備譲渡については,関心を有している者は競争業者の一部であるが,少なくとも引取権については,引取り義務がないこともあり,各社とも前向きに検討しているとのことであった。

(2) 海外メーカーへの技術支援

 当事会社が行う技術支援の内容には,ユーザーが指摘する表面処理等の技術が含まれており,ユーザーも品質差がクリアされれば,輸入品を積極的に採用するとしている。
 したがって,実際に海外メーカーが支援を受け入れた場合には,輸入が促進され得ると評価できる。

(3) ユーザーによる新規参入に対する支援

 成型品メーカーによるOPSシート製造への参入障壁は,設備投資に要する投資コストが多大であることだけではなく,技術面での障壁もあり,それらによる投資リスクが相当大きいことが要因であると考えられる。したがって,本措置により,直ちに新規参 入者が現出することは難しいと考えられるものの,少なくとも技術面での参入障壁が低くなれば,市場の状況に応じて,新規参入者現出の蓋然性が高まる環境が整うこととなることについて一定の評価は可能である。

(4) 情報遮断措置等

 情報遮断の措置等は実行されれば一定の評価はできる。

3 総合評価

 本件の取引分野については,(1)OPSシートメーカー間には品質差がないこと,(2)OPS シート以外の透明食品包装資材の原材料として,A-PETシート等が存在しており,A-PETシートについては,一部代替可能な用途があり,その範囲で限定的ではあるが当該市場からの競争圧力が認められること及び(3)成型品市場での競争は活発に行われており,OPSシートの用途が透明食品包装資材の原材料に限られていることから,当事会社は取引先を失ってしまうような方法で価格交渉を行うことは困難な状況にあると考えられる中で,成型品市場における活発な競争に伴う価格引下げ要求があることから,限定的ではあるが川下市場からの競争圧力が認められる。
 こうした市場の状況を前提として,当事会社が申し出た問題解消措置のうち,設備譲渡又は長期引取権の設定については,これが実行されれば,他社の供給余力が増大し,当事会社が単独で市場を制限することとなるおそれのある行動を採ることは困難になると評価できる。
 また,海外メーカーへの技術支援についても,措置の内容がユーザーの懸念する表面処理の技術に係る支援等を含んでいるため,日本のユーザーの求める品質の製品を供給できるようになることにより輸入促進効果が期待でき,当事会社が単独で又は他社と協調して市場を制限することとなるおそれのある行動を採ることは困難になると評価できる。
 さらに,ユーザーによる新規参入に対する支援については,参入に当たっては投資コストが多大であるだけではなく,技術面での障壁もあり,投資リスクが相当大きいことから,本措置により,直ちに新規参入者が現出することは難しいと考えられるものの,少なくとも技術面での参入障壁が低くなれば,市場の状況に応じて,新規参入者現出の蓋然性が高まる環境が整うこととなることについて一定の評価は可能である。

第5 結論

 当事会社が申し出た問題解消措置も含めて総合的に勘案すれば,本件統合により当事会社が単独で又は他社と協調して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。
 なお,今後,当事会社が申し出た問題解消措置の履行を確実なものとするため,必要に応じて,当事会社から報告を受けること等により,その履行状況を監視するとともに,本件の一定の取引分野における競争状況についても十分に把握・監視していくこととする。

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公表事例において輸入について検討を行った例

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