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(平成17年度:事例7)日本精工株式会社による株式会社天辻鋼球製作所の株式取得について

第1 本件の概要

 本件は,軸受等の製造販売事業を営む日本精工株式会社(以下「日本精工」という。)が,鋼球の製造販売事業を営む株式会社天辻鋼球製作所(以下「天辻鋼球」という。)の全株式を取得することを計画したものである。
 本件の関係法条は,独占禁止法第10条である。

第2 一定の取引分野

1 製品の概要

(1) 鋼球

 鋼球とは,主として玉軸受等の部品(転動体)として用いられる,耐磨耗性等に優れた金属製の高精度(高真球度)の球であり,主に,高炭素クロム軸受鋼で作られているが,軸受の使用環境によりステンレス鋼(防錆性を求められる場合),炭素鋼(強度要求が高くない場合)なども使用される。

(2) 玉軸受

 回転する軸を支え,軸に加わる荷重を受け,軸心を中心に回転するようにする機械部品を「軸受」といい,自動車,産業機械,家電製品等の各種機械の回転部分に使用される。軸受には,軸と軸受の接触状況等により様々な種類の製品があり,軸と軸受の間に鋼球を入れたものを「玉軸受」という。

(3) リニアガイド

 通常の軸受が回転運動をするのに対し,荷重を支えながら直線運動の案内をするものを「直動案内軸受」といい,工作機械やX-Yテーブルなどの送り装置に使用されている。直動案内軸受のうち,玉を用いたレール付きのユニットを「リニアガイド」という。

(4) ボールねじ

 ボールねじは,ねじ軸とナットとの間(溝)に鋼球を組み込み,ねじ軸を回転させたときのナットとの間に生じる摩擦を減少させるようにしたものである。通常のねじは締結用部品として用いられるが,ボールねじは,ねじ軸の回転運動を効率よくナットの移動運動に変換させることができることを利用して,移動用部品(ねじ軸上で物を移動させる。),伝動用部品(ねじ軸の回転を利用して大きなものを動かす。)として用いられる。

2 当事会社間の取引関係

 日本精工は,玉軸受,リニアガイド,ボールねじ(以下「玉軸受等」という。)の製造販売を行っているところ,玉軸受等の製造に使用する鋼球の大部分を天辻鋼球から調達している。
 このように,当事会社は水平的関係(同一市場における競争関係)にはなく,垂直的関係(特定の商品を売買する関係)にある。

3 一定の取引分野の画定

(1) 商品範囲

 川上市場の製品として鋼球が,川下市場の製品として玉軸受等の3製品が存在する。

ア 川上市場
 鋼球の材料には各種鋼材が使用されており,玉軸受等の使用環境に応じて適切な鋼材が選択される。しかしながら,鋼材が異なっても基本的な製造工程は同じであり,鋼球メーカーは軸受メーカーの要求に応えるため,鋼材の異なる鋼球を取りそろえているのが通常であることから,鋼球について一定の取引分野を画定した。

イ 川下市場
 玉軸受等は,それぞれ機能・効用が異なっており,製品間で代替性はないことから,玉軸受,リニアガイド,ボールねじの各製品について,それぞれ一定の取引分野を画定した。
 ただし,鋼球メーカー,軸受メーカー間の取引の状況は,玉軸受,リニアガイド,ボールねじのいずれについても大きな違いはなく,本件株式取得が天辻鋼球以外の鋼球メーカーの鋼球の販売や,日本精工以外の軸受メーカーの部品調達に及ぼす影響等を検討するに当たっては,これら3製品をまとめて分析することとした。

(2) 地理的範囲

 いずれの製品についても,事業者は全国を事業地域としており,商品の特性や輸送費用等からみて特段の事情も認められないことから,地理的範囲は川上市場及び川下市場共に全国で画定した。

第3 本件企業結合が競争に与える影響の検討

1 市場の状況

(1) 鋼球

ア 市場規模
 平成16年度における国内の鋼球の市場規模は,約300億円であり,このうち,約200億円を玉軸受等向けが占める。近年の景気拡大を受けた玉軸受等の需要増加に伴って,玉軸受等の構成部品である鋼球の市場規模も拡大傾向にある。

イ 市場シェア

順位 メーカー名 シェア
1 天辻鋼球 約50%
2 A社 約40%
  その他 約5%
  輸入 約5%
  合計 100%
HHI 約4,200

 (出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)

(2) 玉軸受,リニアガイド及びボールねじ

ア 市場の状況
 平成16年度における国内の玉軸受等の市場規模は全体で約3450億円であり,製品ごとにみると,玉軸受が約2400億円,リニアガイドが約540億円,ボールねじが約510億円となっている。近年の景気回復に伴い,企業収益が着実に改善するとともに,設備投資が拡大したことを受けて,工作機械や一般機械等の部品となる玉軸受等の需要は増加傾向にある。

イ 市場シェア

玉軸受
順位 メーカー名 シェア
1 日本精工 約35%
2 B社 約25%
3 C社 約20%
4 D社 約5%
  その他 約5%
  輸入 約10%
  合計 100%
HHI 約2,400
リニアガイド
順位 メーカー名 シェア
1 E社 約60%
2 F社 約20%
3 日本精工 約10%
  その他 約5%
  輸入 約5%
  合計 100%
HHI 約4,600
ボールねじ
順位 メーカー名 シェア
1 日本精工 約35%
2 G社 約25%
3 H社 約15%
4 I社 約5%
  その他 約15%
  輸入 約5%
  合計 100%
HHI 約2,200

 (出所:いずれも当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)

2 その他の考慮事項

(1) 軸受メーカーにとっての購入先変更の容易性

 鋼球には,国際規格(ISO3290)が設定されており,これに準じた国内規格(JIS B 1501)も設定されている。鋼球メーカーは上記規格に即して製品の製造を行っており,技術水準や品質面での差はなく,軸受メーカーが取引先鋼球メーカーを変更することは可能であり,同一の玉軸受等に使用する鋼球を複数の鋼球メーカーから調達している軸受メーカーも存在する。

(2) 供給余力

 鋼球の生産について,月間の操業日数を調整することにより一定程度の増産が可能とされており,当事会社の競争事業者にも,一定程度の供給余力があると認められる。

(3) 内製

 軸受メーカーにとって,鋼球調達の安定性の確保は重要な課題であるところ,軸受メーカーの中には,鋼球の供給が滞るリスクを回避するため,鋼球の内製を行っている事業者も存在する。これらメーカーは,何らかの事情で取引先鋼球メーカーからの鋼球の供給が滞った場合にも,内製割合を増加させることにより鋼球を調達することが可能である。

(4) 鋼球の供給拒否を行うことに伴うデメリット

 鋼球の製造には高額な設備を要するところ,投下資本を回収し,利益を上げるためには,売上高を増加させるとともに,稼働率を上げ単位当たりの生産コストを引き下げることが重要である。仮に,天辻鋼球が,日本精工以外の軸受メーカーへの鋼球の供給を拒否すれば,売上高の大幅な減少,稼働率の低下に伴う製造コストの大幅な増加を招くことになるため,天辻鋼球のみならず,同社を子会社とする日本精工にとっても,鋼球の供給拒否を行うインセンティブはないものと考えられる。

(5) 輸入について

 鋼球には国際規格が定められており,国内の軸受メーカーが,海外メーカーの鋼球を輸入して玉軸受等を製造することは可能であるが,平成16年の鋼球の推定輸入額は10億円程度で,国内の鋼球需要の3%程度にとどまっている。
 国内の軸受関連製品が多様なため鋼球の仕様は細分化されており,国内で鋼球の販売活動を行うには数多くのバリエーションを用意する必要があること,きめ細やかな営業と需要の変動に対応するための在庫を確保する体制を整える必要があること等,日本での販売体制を整えるのには多額の資金を投下する必要があることから,鋼球の輸入はわずかとなっている。

第4 独占禁止法上の評価

1 単独行動による競争の実質的制限について

(1) 日本精工による天辻鋼球以外の鋼球メーカーからの鋼球調達の拒否

 日本精工は,天辻鋼球以外の鋼球メーカーからも鋼球を調達しているところ,鋼球調達の安定性の確保の観点から,天辻鋼球以外の鋼球メーカーからの鋼球の調達を取り止めるインセンティブはなく,今後も他メーカーから継続して鋼球を調達することとしている。また,仮に,日本精工が天辻鋼球以外の鋼球メーカーからの鋼球調達を拒否したとしても,日本精工に代わる販売先となり得る有力な軸受メーカーが複数存在する。
 これらのことから,当事会社の単独行動により,鋼球の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

(2) 天辻鋼球による日本精工以外の軸受メーカーへの鋼球供給の拒否

 天辻鋼球は,鋼球の生産コストの削減のためには,一定数量以上の販売量を確保することが必要であり,日本精工以外の軸受メーカーへの鋼球の供給を拒否すれば,大幅な販売量の減少が避けられないため,日本精工以外の軸受メーカーへの供給については,これからも継続していく状況にあると考えられる。
 また,仮に,軸受メーカーへの鋼球の供給を拒否したとしても,鋼球を内製している軸受メーカーにとっては,内製比率を引き上げることで対応可能であり,また,鋼球を内製していない軸受メーカーも鋼球調達先を競合鋼球メーカーへ切り替えることによって鋼球を調達することが可能であると考えられる。
 したがって,当事会社の単独行動により,玉軸受等の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。
 なお,鋼球は,玉軸受等以外の用途にも使用されているが,日本精工は,これら用途に係る事業を行っていないことから,当事会社が玉軸受等以外の用途の鋼球需要者への鋼球の供給を拒否するインセンティブはないと判断した。

2 協調的行動による競争の実質的制限について

(1) 鋼球メーカー間の協調的行動の可能性について

 本件により,天辻鋼球は,日本精工と取引関係にある自己以外の鋼球メーカーの日本精工向けの販売価格を知り得ることになる。
 しかしながら,鋼球の需要者である軸受メーカーは,自動車メーカーや工作機器メーカーを顧客としており,自らが顧客から価格引下げ圧力を受ける立場にあるところ,大手軸受メーカーの中には,使用する鋼球の一部を内製している者もおり,仮に,天辻鋼球が自己以外の鋼球メーカーの鋼球販売価格を知ったことを契機に,鋼球メーカー間で協調的な価格設定が行われた場合には,これら軸受メーカーが内製割合を増加させることにより鋼球メーカーの価格政策に対抗することが可能であると考えられる。他方,スケールメリットを生かすことが事業上有益である鋼球メーカーにとって,鋼球販売量の減少につながりかねない協調的な価格設定を行うインセンティブはないと考えられる。
 したがって,当事会社と競争事業者の協調的行動により,鋼球の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

(2) 軸受メーカー間の協調的行動の可能性について

 日本精工は,天辻鋼球が競合軸受メーカーに鋼球を販売する価格を知り得ることになるが,軸受メーカーの事業規模はそれぞれ異なり,各製品の販売コストも基本的に異なることから,当該価格情報を基に競合軸受メーカーの玉軸受等の販売価格を推測することが容易になるとはいえず,当事会社と競争事業者の協調的行動により,玉軸受等の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

第5 結論

 以上の状況から,本件行為により,上記第2の3で画定した一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

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公表事例において輸入について検討を行った例

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