13 大規模小売業者の食品売場における試食販売イベントの実施

 各種イベントの企画・運営業者が,大規模小売業者からの業務委託を受け,大規模小売業者の食品売場における試食販売イベントを行うに当たり,大規模小売業者が業務委託に係る費用の一部を納入業者に一定額の協賛金として負担させることについて,実質的に大規模小売業者が,納入業者に対し,算出根拠が不明確である協賛金を負担させることになることなどから,大規模小売業者について,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例

1 相談者

 X社(各種イベントの企画・運営を行う事業者)

2 相談の要旨

(1) X社は,各種イベントの企画・運営を行う事業者である。

(2) 大規模小売業者の食品売場における試食販売イベントは,通常,納入業者から派遣された従業員等が自社納入商品のみについて行っているが,X社は,このような試食販売イベントについて,大規模小売業者から委託を受け,次のような方法により,自社の販売員を派遣し,納入業者の従業員等に代わって試食販売業務を行うことを検討している。

ア 試食販売イベントに参加する納入業者は,1日当たり一定額(○○円)を協賛金として大規模小売業者に支払う。

イ 大規模小売業者は,X社と業務委託契約を締結し,納入業者から支払われた協賛金のうち,一部を大規模小売業者自身の事務経費として控除し,残りの金額をX社に対し委託費として支払う。

 なお,試食販売イベントに使用する食材,販促物等は,X社が調達し,試食販売イベントにかかる諸経費を別途納入業者に負担させることはない。

(3) これにより,例えば,納入業者A社のアルコール試飲販売と納入業者B社のつまみの試食販売を同時に開催するなど,複数の納入業者の試食販売イベントを同時に開催することが可能となり,相乗効果による売上げ増加が見込まれる。
 なお,X社は,試食販売イベントの開催時における販売数量及び販売金額データについて大規模小売業者から提供を受け,その販売効果に関する資料を作成するとともに,売場において,商品に対する消費者の意見を集約した資料の作成も行い,これらの資料を納入業者に提供する。

 このようなX社の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 本件取組によれば,納入業者が大規模小売業者に対して実質的にX社が行う試食販売イベントに係る協賛金を提供することとなることから,大規模小売業者による不公正な取引方法(大規模小売業告示)の問題が生じるかどうかを検討する。

(2) 一般に,大規模小売業者が,自己等のために,納入業者に本来当該納入業者が提供する必要 のない金銭を提供させること,又は,納入業者が得る利益等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えて金銭を提供させることは,独占禁止法上問題となる(大規模小売業告示第8項・不当な経済上の利益の収受等)。

(3) 本件については,

ア 複数の納入業者が関わる試食販売イベントについて,1日当たり一定額の協賛金を納入業者に負担させることは,本来であれば納入業者ごとに,また,イベントごとに算出方法が異なるものを合算し案分しているだけであると考えられ,算出根拠が不明確であること

イ 複数の納入業者がそれぞれ支払うことになる事前に決められた1日当たり一定額の協賛金が,個々の納入業者の商品の売上げ増等となることによる納入業者自体の利益の範囲を超えて過大になるおそれがあること

から,納入業者に協賛金を提供させることは大規模小売業告示第8項に抵触するおそれがある。

4 回答の要旨

 X社及びX社と業務委託契約を締結した大規模小売業者が,前記取組を実施することは,大規模小売業者について,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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