8 事業者団体による会員に対する差別的な取扱い

 建物の補修工事業者等を会員とする団体が,当該団体に加入しなければ事業活動を行うことが困難な状況において,会員から徴収する協力金に関して,実際に要する技術指導の費用と無関係に,団体への加入期間によって差を設けることについて,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例

1 相談者

 X協会(建物の補修工事業者等を会員とする団体)

2 相談の要旨

(1)X協会は,Α工法による建物の補修工事業者,Α工法で用いる資材αのメーカー及び販売業者を会員とする団体である。
 なお,建物の補修工事業者は,X協会に加入しないと需要者からの信用が得られないことから,Α工法による建物の補修工事を行うことは,事実上困難である。

(2)Α工法は,人体への悪影響がほとんどなく,かつ,耐久性に優れた資材αを用いて行われる工事であることから,建設業者や官公庁が建物の補修工事を発注する際にΑ工法を仕様書で指定するケースが増え,急速に需要が伸びている。

(3)Α工法による建物の補修工事には特殊な施工技術を要するため,X協会は,補修工事業者の工事現場に技術者を派遣して技術指導を行っているところ,施工実績が少ない補修工事業者への派遣が多くなっている。
 X協会は,技術指導の費用に充てるため,現在,補修工事業者から一定額の「協力金」を徴収している。

(4)X協会は,技術者の派遣状況を踏まえて,
  [1] 会員である補修工事業者のうち,加入期間が2年以上の者を「正会員」,加入期間が2年未満の者を「準会員」と区別し,
  [2] 協力金の額について,正会員と準会員との間で大幅な差を設ける
ことを検討している。
 なお,正会員と準会員との間の協力金の差額については,両者に対し実際に要する技術指導の費用とは無関係に,X協会が任意に設定したものである。

  • 本件の概要図

 このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1)事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせることは,独占禁止法第8条第5号の規定に違反する。不公正な取引方法に該当する行為には,例えば,事業者団体からある事業者を不当に排斥し,又は事業者団体の内部においてある事業者を不当に差別的に取扱いその事業者の事業活動を困難にさせることが挙げられる(事業者団体ガイドライン第2-6-4〔事業者団体における差別的取扱い等〕)。
 また,事業者団体に加入しなければ事業活動を行うことが困難な状況において,社会通念上合理性のない高額に過ぎる入会金や負担金を徴収することにより,不当に団体への加入を制限することは,独占禁止法上問題となるおそれがある(事業者団体ガイドライン第2-5-1-3-[1]〔過大な入会金等の徴収〕)。

(2)本件は,X協会に加入しなければΑ工法による補修工事を行うことが困難な状況において,X協会が,会員から徴収する協力金について,実際に要する技術指導の費用と無関係に,X協会への加入期間によって差を設けることには合理的な理由がなく,加入期間が短い準会員を不当に差別的に取り扱うものであり,準会員が競争上不利な立場となって事業活動が困難になるおそれがあるとともに,新たに事業者が参入することを著しく困難とさせるおそれがあることから,独占禁止法上問題となるおそれがある。

4 回答の要旨

 X協会が,X協会に加入しなければ事業活動を行うことが困難な状況において,会員から徴収する協力金に関して,実際に要する技術指導の費用と無関係に,X協会への加入期間によって差を設けることは,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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