4 容器回収の共同化

 情報機器メーカーが,情報機器に使用する消耗品の容器回収を共同で行うことは,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 情報機器Aのメーカー5社

2 相談の要旨

(1) 情報機器メーカー5社(以下「5社」という。)は,情報機器Aを製造・販売しており,情報機器Aの販売市場における5社の合算シェアは約90パーセントである。
 また,5社は,情報機器Aに使用される消耗品Bを製造・販売している(5社が製造・販売する消耗品Bを「純正品」という。)。消耗品Bは,各社の情報機器Aに対応するように作られたものであり,メーカー間の互換性はない。

(2) 消耗品Bについては,純正品を製造・販売する5社のほか,いわゆる再生品を製造販売している事業者が複数存在し,消耗品Bの販売市場における再生品のシェアは約10パーセントである。
 再生品とは,量販店に回収ボックスを設置するなどして消耗品Bの空容器を回収し,これに内容物を充填するなど必要な処理を施して販売しているもので,純正品の50~70パーセント程度の価格で販売されている。

(3) 5社は,従来から,各社個別に消耗品Bの容器を回収し,再資源化処理(材料として再利用するマテリアルリサイクル)を進めてきたが,環境問題への取組の一層の強化のため,消耗品Bの容器の回収率が低位に推移している従来からの各社個別での回収に加え,回収率を高めるために5社共同で回収を行うことを検討している。
 具体的には,これまで5社が個別に量販店に容器回収ボックスを置くなどして回収を行ってきた方法に加え,全国約4,000箇所の郵便局に共同回収ボックスを設置して回収を行い,回収した容器は各社ごとに仕分け,これを各社が引き取ってこれまでと同様に再資源化処理を行うものである。
 5社は,本件共同回収の実施について,各社のホームページや製品のパッケージを利用してPRしていくことを予定している。
 本件共同回収に要する費用は,平均すれば消耗品B1個当たりα円で,これは消耗品Bの販売価格の1パーセント未満であり,この費用を販売価格に上乗せするかどうかは各社の判断に委ねる。

 このような5社の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 本件共同回収の実施により,5社間の消耗品Bの販売における競争が実質的に制限される場合には,不当な取引制限(独占禁止法第3条)として独占禁止法上問題となる。
 また,消耗品Bについては,情報機器メーカーごとに,純正品と再生品との競争が存在しており,本件共同回収の実施により,再生品メーカーが容器を回収することが困難となるおそれがある場合には,純正品と再生品との競争を阻害するものとして独占禁止法上問題となるおそれがある。

(2) 5社間の消耗品Bの販売競争に与える影響

 本件共同回収に要する費用(1個当たりα円)を,そのまま製品価格に転嫁するよう取り決める場合には,独占禁止法上問題となるおそれがあるが,本件共同回収では,この費用を販売価格に上乗せするかどうかは各社の判断に委ねられており,本件共同回収が5社間の消耗品Bの純正品の価格競争に影響を及ぼすとは認められない。

(3) 再生品と純正品との競争に与える影響

 本件共同回収は,新たに全国約4,000箇所の郵便局に回収ボックスを設置し,そのPRによって消費者のリサイクル意識を高め,これまでは廃棄されていた多くの空容器について,その回収を進めようとするものであり,これにより従来からの量販店等での再生品メーカーによる空容器の回収が妨げられて,その回収量が著しく減少するとは考えにくいことなどからすると,本件共同回収の実施が,純正品と再生品との競争を阻害するおそれは小さいと認められる。

4 回答の要旨

 5社が,本件共同回収を実施することは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

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