酒類メーカーが,共同して,未回収パレットの回収を行うとともに,回収データの収集等を行うことは,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
酒類メーカー4社
2 相談の要旨
(1) 酒類メーカー4社(以下「4社」という。)は,様々な商品を製造・販売しており,販売市場における4社の合算シェアが約90パーセントを占める商品もある。
各社は,製造・販売している商品のほとんどについて,運搬,保管等のための荷台としてプラスチックパレット(以下「パレット」という。)を用いており,これを回収して再利用している。4社は,物流効率化のため,パレットのサイズを共通とし,共同で利用している。
(2) パレットの所有者は各社であり,卸売事業者等の流通事業者には無償で貸与され,各社は,それぞれ取引先卸売事業者の卸売センターを通じてパレットを回収するという独自のルートで回収しているが,全体で毎年約5万枚以上が回収されずに流出・紛失し,毎年3億円を超える損害が生じている。流出・紛失したパレットは,他の製品の運搬等に使われたり,運搬以外の用途で利用される等しており,これらを各社が発見・回収することは難しい状況にある。
(3) 4社は,パレットの回収率を高めるために,流通事業者にパレットの返却を呼びかけるなどしてきたが,状況が改善されないことから,4社共同で,未回収パレットの回収等をパレット回収等についてのノウハウを有する事業者に委託することを検討している。
4社共同で回収を委託するパレットは,各社独自のルートで回収できない未回収パレットに限られ,現在利用されているパレットに占める未回収パレットの割合は約0.6パーセントである。
(4) さらに,4社は,効率的な回収や流出・紛失の防止のため,各社が把握している回収率が特に悪い卸売センターのパレットの出荷枚数・回収枚数のデータを突き合わせ,当該卸売センターの回収率が悪い原因についての調査を当該委託業者に依頼することも検討している。
このような4社の取組は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1) 本件は,競争関係にある4社が,共同して,未回収パレットの回収を行うとともに,回収データの収集等を行うものであるので,このような取組が,4社間の酒類の販売競争に与える影響について検討する。
(2) 本件については
ア 商品の製造・販売に付随する運搬,保管等に係る部分での共同事業であって,4社が共同で回収するのは未回収パレットに限られ,この共同回収実施後も各社独自のルートでの回収は継続されるので,現在利用されているパレットに占める未回収パレットの割合が約0.6パーセントであることからすれば,この共同回収により4社間で共通化されるパレット回収費用はわずかであり,商品価格への影響は小さいと考えられる
イ 4社が突き合わせる卸売センターのデータはパレットの出荷枚数・回収枚数に限られ,4社は様々な商品の運搬,保管等にパレットを使用していることからすれば,このデータから各社の商品ごとの出荷数量等の具体的な取引内容を特定することはできず,4社間で販売価格,数量等の取引内容についての情報交換などが行われるおそれは小さいと考えられる
ことから,4社間の酒類の販売競争には,ほとんど影響を与えないと認められる。
4 回答の要旨
4社が,共同して,未回収パレットの回収を行うとともに,回収データの突合せ等を行うことは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。