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11 大規模小売業者による災害時における廉価販売

11 大規模小売業者による災害時における廉価販売

 大規模小売業者が,災害時に被災地域において,被災者にとって災害時に必要とされる物品を選定し,当該物品に限定して,通常の仕入価格を下回る価格で販売することは,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X社(大規模小売業者)

2 相談の要旨

(1) X社は,総合スーパーを営む大規模小売業者である。

(2) X社では,地震や水害等の災害時に,被災地域において物品が不足することにより,被災者が困窮するケースがあったことを踏まえ,今後,災害時に,被災者への緊急援助として,被災地域において災害時に必要とされる物品を選定し,当該商品に限定して,災害発生後10日目から2週間,通常の仕入価格を下回る価格で販売することを検討している。

(3) X社は,本件取組を実施するに当たり,できるだけ安く販売するため,納入業者にも協力を要請し,賛同を得られた納入業者からは,通常の納入価格を下回る価格で納入してもらうこととしている。

 このようなX社の販売方法は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 事業者が正当な理由なく,供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し,その他不当に商品又は役務を低い対価で供給し,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある場合には,不公正な取引方法(一般指定第6項・不当廉売)として問題となる。

(2) X社が,通常の仕入価格を下回る価格で商品を販売することは,供給に要する費用を著しく下回る価格で販売するものであるが,本件取組は災害時に,被災地域において被災者にとって必要な物品を,被災者への緊急援助として販売するという社会公共的な目的に基づくものであって,

ア 販売商品は,被災者にとって災害時に必要とされる物品を選定し,当該商品に限定するとしていること

イ 災害発生後10日目から2週間のみという期間限定で行うものであることから,周辺の小売業者に与える影響は限定的であると考えられるため,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

(3) なお,X社は,納入業者の賛同を得て,通常の納入価格を下回る価格で納入してもらうとしているが,

ア X社が,既に購入した商品について,災害時に値引販売をしたことを理由に,値引販売した額に相当する額を納入業者に値引きさせることは,原則として,独占禁止法上問題となる(大規模小売業者告示第2項・不当な値引き)

イ X社が,災害時に値引販売に供するために商品を購入する場合であったとしても,納入業者と協議することなく,納入業者の仕入価格を下回る納入価格を定め,その価格で納入するよう一方的に指示して,通常の納入価格に比べて著しく低い価格をもって納入業者に納入させることは,独占禁止法上の問題を生じやすい(一般指定第14項第3号)ことから,慎重な対応が必要である。

4 回答の要旨

 X社が,災害時に被災地域において,被災者にとって必要な物品を,被災者への緊急援助として,仕入価格を下回る価格で販売することは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
 ただし,納入業者の賛同を得て,通常の納入価格を下回る価格で納入してもらうことについては,X社が,大規模小売業告示に規定する不当な値引き等の行為を行わないよう慎重な対応が必要である。

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