5 並行輸入品の修理受託の拒否

 総代理店が並行輸入品の修理等について,自社顧客の優先などの対応を採ることは,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 A社(機械装置の輸入・販売会社)

2 相談の要旨

(1) A社は,B社(海外の作業用機械装置のメーカー)の日本における総販売代理店である。

(2) 相談の対象であるB社製の作業用機械装置については,A社のほか並行輸入を行う並行輸入会社や中古品を販売する中古品販売者が15社存在し,全国で2,000台流通している装置のうちA社が販売したものは1,500台である。B社製作業用機械装置の流通経路は以下のとおりである。

(3) A社は,自社が販売したB社製作業用機械装置については修理,情報提供,部品の提供等のアフターサービスや研修の実施等(以下「修理等」という。)を行うための体制を整えているが,中古品販売者や並行輸入会社は修理等の体制を整えていない。このため,A社は中古品販売者や並行輸入会社が販売したものについても修理等を行っている。
 しかし,最近,並行輸入によるB社製作業用機械装置が増加しており,A社の現在の体制では,物的,人的リソースの制約から,対応に支障が生じるようになっている。そこで,A社は,B社製作業用機械装置の修理等について,自社顧客の優先などの対応を採ることとしたいが,独占禁止法上問題ないか。
 なお,中古品販売者や並行輸入会社に,修理等を行うことができない特段の事情は認められない。

3 独占禁止法上の考え方

(1) B社製作業用機械装置の修理等については,ユーザーによる購入先の選択に影響を及ぼすことから,本件では,国内におけるB社製作業用機械装置の販売における競争に及ぼす影響について検討する。

(2) 総代理店契約が輸入品について行われ,一方で第三者が契約当事者間のルートとは別のルートで契約対象商品を輸入し,並行輸入品として販売する,又は正規輸入品の中古品が流通することがある。中古品や並行輸入品は,一般に価格競争を促進する効果を有するものであるところ,総代理店が合理的理由なく修理等を拒否することは,不公正な取引方法(第15項・競争者に対する取引妨害)として問題となるおそれがある。

【参考】
 総代理店は自己の供給する数量に対応して修理体制を整えたり,補修部品を在庫するのが通常であるから,並行輸入品の修理に応じることができず,また,その修理に必要な補修部品を供給できない場合もある。したがって,例えば,総代理店が修理に対応できない客観的事情がある場合に並行輸入品の修理を拒否したり,自己が取り扱う商品と並行輸入品との間で修理等の条件に差異を設けても,そのこと自体が独占禁止法上問題となるものではない。
 しかし,総代理店もしくは販売業者以外の者では並行輸入品の修理が著しく困難であり,又はこれら以外の者から修理に必要な補修部品を入手することが著しく困難である場合において,自己の取扱商品でないことのみを理由に修理若しくは補修部品の供給を拒否し,又は販売業者に修理若しくは補修部品の供給を拒否するようにさせることは,それらが契約対象商品の価格を維持するために行われる場合には,不公正な取引方法に該当し,違法となる(一般指定15)。
 [流通取引慣行ガイドライン 第3部第3-2(6)並行輸入品の修理等の拒否]
 ※ 【参考】については,関連するガイドラインの該当部分を引用しているが,紙幅との関係から若干の修正を施している(以下同じ。)。

(3) 本件では,中古品販売者や並行輸入会社が修理等の体制を整えていないことから,A社が,中古品や並行輸入品など自社以外から販売されたB社製作業用機械装置の修理等を拒否することについては,中古品販売者や並行輸入会社の事業活動に及ぼす影響が大きい。
 しかしながら,中古品販売者や並行輸入会社においては修理等を自ら行うことが著しく困難な状況にあるとは認められず,また,並行輸入品の供給量の増加に伴い,A社の物的,人的リソースの制約から,すべてのB社製作業用機械装置の修理等に対応することが困難な場合に,自社の販売先を優先して取り扱うことについては,合理的な理由が認められる。

(4) したがって,A社が,B社製作業用機械装置の修理等について,自社顧客の優先などの対応を採ることは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 A社が,B社製作業用機械装置の修理等について,自社顧客の優先などの対応を採ることは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
 ただし,中古品販売者や並行輸入会社が修理等を行うことが困難な場合に,自社で販売したものではないことのみを理由として修理等を拒否することは,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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