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平成26年 年頭所感(平成26年1月)

平成26年 年頭所感(平成26年1月)

1 明けましておめでとうございます。私は昨年3月に公正取引委員会委員長に就任して以来初めての新年を迎えることとなりました。新年に当たりひとこと競争政策当局としての所感を述べさせていただきます。
 政府は,平成25年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」を踏まえて,いわゆる「三本の矢」により,我が国経済の再生に取り組んでいます。こうした取組が経済の更なる発展につながっていくためには,「公正かつ自由な競争」を確保することが欠かせません。正に「競争こそ成長戦略の基盤」であり,「競争なくして成長なし」です。
 独占禁止法等の厳正かつ的確な執行をはじめとする競争政策の推進は,「公正かつ自由な競争」を確保・促進することを通じて事業者が創意工夫を発揮できるようにし,我が国経済の活性化を図るとともに,消費者の利益を確保していくことだと考えており,本年もこうしたミッションを果たしていく所存です。
 

2 公正取引委員会としては,本年においても独占禁止法等の厳正な執行をはじめとする競争政策の推進に積極的に取り組んでまいります。
(1) 第一は,独占禁止法及び下請法の厳正かつ的確な執行です。昨年9月には独立行政法人が発注する機械設備工事に係る入札談合の疑いで犯則調査を開始しました。行政調査では,医療,農業,運輸といった分野の価格カルテル等事件,大規模小売業者に対する優越的地位の濫用事件等の審査を行っております。国民生活に影響の大きい価格カルテル等や中小事業者に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用,下請法違反行為などに厳正かつ的確に対処してまいります。
 また,近時,企業活動のグローバル化が進む中で,他国の競争当局との間での国際協力・連携を図ることが益々重要になってきております。これまでも,独占禁止協力協定,経済連携協定等の二国間の枠組みや,OECD,ICN等の多国間の枠組みを通じて,競争当局間の国際連携の推進を図ってきておりますが,今後とも,国際カルテル事案や国境をまたぐ企業結合案件といった個別の法執行も含めた国際連携・協力の強化を図っていくとともに,その基盤となる協力枠組みの構築・拡充に積極的に取り組んでまいります。
(2) 第二に,厳正な法執行と車の両輪として,競争環境の整備に取り組んでまいります。政府規制等に関する調査・検討,提言等について,本年は,特に成長が期待される分野の政府規制や公的制度について,事業者の創意工夫の発揮を妨げているものがないか等の観点から調査・検討を行い,必要な提言等を行うことを通じて同分野の競争環境の整備に努めてまいりたいと考えています。また,今後とも,国民各層に対して,「公正かつ自由な競争」を確保することの意義について一層の理解を得られるよう,積極的に競争政策について説明するとともに,広く国民の皆さまの声に耳を傾け,こうした声をフィードバックしてまいります。
 

3 更に,本年の課題としては,昨年12月に可決・成立した,改正独占禁止法(25年改正法)の施行準備と,本年4月1日からの消費税率引上げの実施に向けた,消費税転嫁対策特別措置法の迅速かつ厳正な運用があります。
(1) 25年改正法は,排除措置命令等に対する不服審査について,現行の審判制度を廃止し,抗告訴訟として第一審は東京地方裁判所の専属管轄とすること,公正取引委員会が排除措置命令等を行う際の処分前手続について,更なる充実・透明化の観点から意見聴取手続を整備すること等を内容としております。本改正法は公布から1年半後までに施行されることとなりますが,新しい仕組みが円滑に機能するよう実施に必要な手当てを行ってまいります。
 また,25年改正法の附則第16条では,政府は,公正取引委員会の行政調査手続について,我が国における他の行政手続との整合性を確保しつつ,事件関係人が十分な防御を行うことを確保する観点から検討を行い,一年を目途に結論を得て,必要があると認めるときは,所要の措置を講ずることとされております。公正取引委員会としても,これを受けた検討に,的確に対応してまいりたいと考えています。
(2) 本年4月から消費税率が8%に引き上げられます。消費税の転嫁対策については政府一丸となって取り組んでいるところですが,公正取引委員会としても積極的に取り組み,その中心的な役割を果たしてまいります。
 消費税の転嫁拒否等の行為の未然防止に向け,昨年9月には消費税転嫁対策特別措置法の運用の透明性を確保し,事業者の予見可能性を高めることを目的としたガイドラインを,策定・公表いたしました。また,公正取引委員会主催の説明会を全国で開催し,商工会議所等や事業者団体が開催する説明会等に講師を派遣するなどの周知活動を実施しております。消費税転嫁対策特別措置法の概要を分かりやすく説明した事業者等向けのパンフレットの配布,事業者に対する消費税転嫁対策特別措置法の遵守の徹底を要請する文書の発出なども行ってきております。
 消費税の転嫁拒否等の行為の取締りについては,「消費税率の引上げを見据えた大規模小売業者による買いたたき等の行為の緊急調査」を実施し,その調査結果を昨年6月に公表したほか,昨年10月に消費税転嫁対策調査室を本局及び全国の地方事務所等に設置しました。昨年11月には,15万社を対象とした書面調査を中小企業庁と協力して実施し,消費税の転嫁拒否等の行為に関する情報を積極的に収集したところです。このような書面調査なども活用し,転嫁拒否等の行為に対して迅速かつ厳正に対処してまいります。平成26年度には,これを更に大幅に上回る規模の書面調査を実施することとしております。
 このように消費税の転嫁拒否等の行為について未然防止を図るとともに,違反行為に対しては迅速かつ厳正に対処してまいりたいと考えております。
 

4 以上,公正取引委員会としては,本年も競争当局としての役割を着実に果たすべく力を尽くしてまいりたいと考えています。引き続き,御指導・御鞭撻をお願い申し上げますとともに,皆様の御健勝と御発展を祈念いたしまして,私の新年の御挨拶とさせていただきます。

公正取引委員会委員長 杉本 和行

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