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平成27年 年頭所感(平成27年1月)

平成27年 年頭所感(平成27年1月)


 1.新年明けましておめでとうございます。公正取引委員会委員長として2度目の新年を迎えることとなりました。一昨年3月の就任以来,公正取引委員会の取り組むべき課題として,[1]価格カルテル・入札談合を始めとする反競争的行為への厳正かつ実効性のある独占禁止法執行,[2]公正かつ自由な市場環境を積極的に創出するための競争唱導,[3]企業活動のグローバル化へ迅速かつ効果的に対応するための国際的協力・連携を掲げてきましたが,本年においてもこうした課題に取り組んでまいります。
 我が国経済は,個人消費などに弱さもみられますが,緩やかな回復基調が続いているところです。デフレを脱却し,経済の好循環を確かなものとするためには,企業等がイノベーションに挑戦する具体的な行動を起こすことを通じて日本経済全体としての生産性を向上させるとともに,成長の果実ができるだけ早く国民の暮らしに反映されていくことが重要です。競争政策の推進は,企業が効率性を向上させ,かつ,その成果を良質・廉価な商品・サービスの提供に代表される消費者利益の増進につなげることで,企業自らも利益を上げていくことができるという市場メカニズムの働きを確保することであり,これは正に経済が活力をもって発展していくために不可欠な基盤を提供する施策であります。競争当局として,自由で公正な競争基盤の確保に努め,日本経済の持続的な成長につなげていきたいと考えております。

2.競争環境の整備は,成長戦略でも今後成長が見込まれる分野とされている社会福祉,農業,医療,エネルギー,インフラ等の分野において特に重要な課題です。また,デジタルエコノミー,知的財産といった技術革新分野は,経済発展を牽引するイノベーションが見込まれる一方で,極めて早いスピードで市場環境が変化しており,競争政策においても,より複雑化する実態を見極め,競争環境を適切に整備していくことが求められるところです。
 公正取引委員会も,こうした分野における問題に積極的に取り組んでいるところです。昨年は,例えば,送電工事,新幹線設備工事,外航海運,インフルエンザ予防接種,農協の活動に係る独占禁止法事案を取り上げましたが,本年も引き続き,厳正かつ積極的な法執行に努めてまいります。また,競争環境を積極的に創出していくための競争唱導についても,法執行と「車の両輪」をなすものと位置付け,それぞれのステークホルダーへ競争当局のメッセージをしっかり届けていくこととしています。昨年は,サービスを質的・量的に向上させ,ひいては,我が国の成長分野へ押し上げることが期待されている保育分野の現状について調査を行い,競争政策の観点からの提言を取りまとめた報告書を公表するとともに,地方自治体への説明会や消費者セミナーを通じた周知活動を精力的に行いました。今後も,我が国経済の活性化にとって重要な分野を中心に,競争環境の積極的な整備を図るための提言を行っていくとともに,企業による競争法コンプライアンス強化への支援などについても引き続き取り組んでいく所存です。さらに,技術革新や流通・市場構造の変化に対応して,公正かつ自由な競争環境と企業の創意工夫・効率化を達成するため,これらの問題に関する独占禁止法上の考え方の整理・明確化を進め,より的確なガイダンスを提供していきたいと考えています。
 もちろん,公正取引委員会が取り組むべき分野はこれらにとどまるものではありません。国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合に対する厳正な法執行や,中小企業へ不当に不利益を与える優越的地位の濫用や下請法違反行為に対する厳正かつ効果的な対応についても,引き続き精力的に取り組んでまいります。

3.消費税の転嫁対策は政府の重要課題であり,公正取引委員会においても消費税の転嫁拒否等の行為に対して迅速かつ厳正に対処してきているところです。御案内のとおり,昨年11月,安倍総理は,本年10月に予定されていた消費税率の10%への引上げを延期する方針を表明されています。公正取引委員会としては,今後とも昨年4月の引上げに伴う転嫁拒否等の行為の発生が懸念されることから,引き続き,消費税転嫁対策特別措置法に基づく迅速かつ厳正な対処に努めていきます。

4.国際的な面では,年々企業活動のグローバル化が進む中,国際カルテルの摘発や国際合併事案の審査などに迅速かつ効果的に対処していくことが競争当局としての重要な課題です。公正取引委員会においても,競争分野での国際的な協力や収斂に向けて,二国間対話やICN,OECD等の多国間枠組みを通じて,引き続き積極的に取り組んでまいります。また,個別の法執行についても,各国競争当局と情報交換を行いながら審査を進める例がますます増えてきていますが,こうした執行協力を一層推進していくとともに,その基盤となる独占禁止協力協定,経済連携協定等,競争当局間覚書等の協力枠組みについても更に構築・拡充していきたいと考えています。

5.最後に,本年に予定される改正独占禁止法の施行により,公正取引委員会の審判制度は廃止され,排除措置命令等に対する不服審査は東京地方裁判所において行われることとなり,また,排除措置命令等を行おうとする際の処分前手続が拡充され,新たに意見聴取手続が導入されます。今後,改正法関係政令・規則を速やかに制定し,早ければ本年4月の改正法施行を目指して引き続き作業を進めてまいります。
 また,改正法附則第16条に基づき,内閣府「独占禁止法審査手続についての懇談会」が行ってきた審査手続の検討については,昨年12月に報告書が取りまとめられ,公表されました。公正取引委員会としては,本報告書の内容を踏まえ,公正取引委員会としての具体的対応を検討してまいります。

6.以上,公正取引委員会は,本年も,経済の活性化と消費者利益の増進という競争当局の職責を着実に果たすべく力を尽くしてまいりたいと考えています。引き続き,御指導・御鞭撻をお願い申し上げますとともに,皆様の御健勝と御発展を祈念いたしまして,私の新年の御挨拶とさせていただきます。

公正取引委員会委員長 杉本 和行

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