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(令和4年3月3日)日本年金機構が発注するデータプリントサービスの入札等の参加業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令等について

(令和4年3月3日)日本年金機構が発注するデータプリントサービスの入札等の参加業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令等について

令和4年3月3日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,日本年金機構が発注する特定データプリントサービス(注1)の入札等(注2)の参加業者に対し,本日,独占禁止法の規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。
 本件は,特定データプリントサービスの入札等の参加業者が,独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたものである。
 また,日本年金機構に対し,後記第2のとおり,要請を行った。

(注1)「特定データプリントサービス」とは,日本年金機構が一般競争入札等の方法により発注する「ねんきん定期便の作成及び発送準備業務(直近1年間通知者用)」等の22業務に係るデータプリントサービス(発注者から発注者の顧客のデータを預かり,データの編集・加工,印刷・印字,封入・封かん,発送準備などを行う業務)をいう(別添排除措置命令書別紙1参照)。

(注2)一般競争入札による受注者がいない又は一般競争入札による受注者の受注予定数量が調達予定数量に達しない場合に,予定価格の制限の範囲内で最も低い見積価格を提示した者を受注者とする見積り合わせを実施。

第1 排除措置命令及び課徴金納付命令について

1 違反事業者数,排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者数並びに課徴金額
   (違反事業者名,各違反事業者の課徴金額等については別表のとおり。)

違反事業者数

排除措置命令
対象事業者数

課徴金納付命令
対象事業者数

課徴金額
26社 25社 24社 17億4161万円  

2 違反行為等の概要(詳細は別添排除措置命令書参照)

(1) 別表記載の26社(以下「26社」という。)は,遅くとも平成28年5月6日以降(注3),特定データプリントサービスについて,受注価格の低落防止等を図るため

ア(ア) 受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する

 (イ) 受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する

旨の合意の下に

イ(ア) 東洋紙業株式会社,ナカバヤシ株式会社,共同印刷株式会社,株式会社ビー・プロ,株式会社谷口製作所及び北越パッケージ株式会社の6社(注4)(以下「6社」という。)は,特定データプリントサービスごとに,6社以外の事業者から,受注希望を確認する

 (イ) 6社は,会合を開催するなどして,特定データプリントサービスごとに,26社の受注希望,毎年発注される特定データプリントサービスについては26社の過去の受注実績,新たに発注される特定データプリントサービスについては26社の日本年金機構に対する仕様の作成等への協力状況等を勘案して

a 1社落札入札の特定データプリントサービスについては,受注予定者及び受注予定者の入札価格

b 複数社落札入札(注5)の特定データプリントサービスについては,受注予定者,受注予定者ごとの受注予定数量並びに受注予定者の中で最も高い価格で入札を行う者及びその者の入札価格

を決定する

(ウ) 6社は,前記(イ)で決定した受注予定者,受注予定数量及び受注予定者の入札価格を6社以外の入札参加者に連絡する

(エ) 受注予定者は

a 1社落札入札の特定データプリントサービスについては,前記(イ)で決定した受注予定者の入札価格

b 複数社落札入札の特定データプリントサービスについては,受注予定者の中で最も高い価格で入札を行う者は前記(イ)で決定した入札価格及び受注予定数量,それ以外の受注予定者は前記(イ)で決定した受注予定者の中で最も高い価格で入札を行う者の入札価格よりも低い価格及び受注予定数量

を提示する

(オ) 受注予定者以外の入札参加者は

a 1社落札入札の特定データプリントサービスについては,前記(イ)で決定した受注予定者の入札価格よりも高い価格

b 複数社落札入札の特定データプリントサービスについては,前記(イ)で決定した受注予定者の中で最も高い価格で入札を行う者の入札価格よりも高い価格

を提示する

ことなどにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。

(注3)三条印刷株式会社にあっては平成29年4月7日以降である。

(注4)株式会社谷口製作所にあっては平成28年11月頃から令和元年10月7日までの間,北越パッケージ株式会社にあっては遅くとも平成28年5月6日から同年9月末頃までの間である。

(注5)入札参加者に,調達予定数量の範囲内で受注予定数量及び入札価格を提示させ,予定価格の制限の範囲内の入札価格を提示した者のうち,低い入札価格を提示した者から順次調達予定数量に達するまでの者を受注者とする入札方法をいう。

(2) 6社は,前記⑴の実効を確保するため

ア 特定データプリントサービスの入札等に新規に参加する者に対して前記⑴アの合意への参加を要請する

イ 受注予定者を決定するに当たり,受注を希望する者の数が多く,受注を希望する者を希望どおりに受注予定者にすることができない場合,受注予定者以外の者に業務の一部又は全部を下請に出すことなどを条件にして受注予定者とする

  などしていた。

(2⑵の事例)

・ ねんきん定期便の作成及び発送準備業務(直近1年間通知者用)
  あらかじめ複数社でグループを作り,毎年行われる入札ごとに,グループ内の事業者のうち1社を受注予定者とすることとし,各グループの受注者はグループ内の他の事業者に業務の一部又は全部を下請に出すなどして利益を分け合っていた。

・ 年金振込通知書の作成及び発送準備業務(10月定期支払分)
  6社は,前年度受注実績があり,入札制度の見直しにより入札参加資格がなくなった受注希望者にも見積り合わせにより受注させるため,入札における受注予定者の受注予定数量を調達予定数量に満たないよう割り振った。

(3) 26社は,前記⑴アの合意をすることにより,公共の利益に反して,特定データプリントサービスの取引分野における競争を実質的に制限していた。

3 排除措置命令の概要

(1) 排除措置命令の対象事業者(以下「名宛人」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会等において決議しなければならない。

ア 前記2の行為を取りやめていることを確認すること。

イ 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,特定データプリントサービスについて,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行うこと。

ウ 今後,相互に,又は他の事業者と,特定データプリントサービスの受注に関する情報交換を行わないこと。

(2) 名宛人は,それぞれ,前記⑴に基づいて採った措置を,自社を除く名宛人及び日本年金機構に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(3) 名宛人は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,特定データプリントサービスについて,受注予定者を決定してはならない。

(4) 名宛人のうち,東洋紙業株式会社,ナカバヤシ株式会社,共同印刷株式会社,株式会社ビー・プロ及び株式会社谷口製作所は,それぞれ,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

ア 官公需の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定及び自社の従業員に対する周知徹底

イ 官公需の受注に関する独占禁止法の遵守についての,データプリントサービスの入札に関与する者に対する定期的な研修及び法務担当者等による定期的な監査

4 課徴金納付命令の概要

課徴金納付命令の対象事業者は,令和4年10月4日までに,それぞれ別表の「課徴金額」欄記載の額(総額17億4161万円)を支払わなければならない。

なお,6社は,共同して,継続的に,特定データプリントサービスについて,6社以外の事業者からなされたそれぞれの受注希望を受けて,26社の受注希望等を勘案して,6社以外の事業者の取引の相手方を指定していたことが認められたため,令和元年の独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法第7条の2第8項第2号に該当する者であることから,同項の規定に基づき,5割加算した算定率を適用している(参考4参照)。

第2 日本年金機構に対する要請について

1 本件審査の過程において認められた事実

(1) 日本年金機構は,平成28年1月末頃,特定データプリントサービスの入札において,いわゆる入札談合(以下「談合」という。)が行われている旨の情報(以下「本件談合情報」という。)について通報を受け,内部調査を行ったにもかかわらず,その結果を含む本件談合情報を公正取引委員会に通報しなかった。

(2) 日本年金機構は,特定データプリントサービスの入札について,入札前に入札参加者が他の入札参加者を把握することができる方法により実施していた。

2 要請の概要

(1) 前記1⑴の対応は,その判断が適切なものとはいえないものであった。また,前記1⑵の方法による入札の実施は,26社以外の者が入札に参加した場合,26社は入札価格を下げるなどの対応を採るなどして談合を行いやすくさせていたものであり,入札における公正かつ自由な競争を確保する上で,適切なものとはいえないものであった。

(2) よって,公正取引委員会は,日本年金機構に対し,次のとおり要請を行った。

ア 今後,談合情報に接した場合には,日本年金機構の発注担当者が適切に公正取引委員会に対して通報し得るよう,所要の改善を図ること

イ 日本年金機構の入札方法について,入札前に入札参加者が他の入札参加者を把握することができないよう,入札方法の見直しなど,適切な措置を講じること

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問い合わせ先

公正取引委員会事務総局審査局第四審査
電話 03-3581-3345(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/

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