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(令和5年3月30日)旧一般電気事業者らに対する排除措置命令及び課徴金納付命令等について

(令和5年3月30日)旧一般電気事業者らに対する排除措置命令及び課徴金納付命令等について

令和5年3月30日

公正取引委員会


公正取引委員会は、中部電力株式会社、中部電力ミライズ株式会社、中国電力株式会社、九州電力株式会社及び九電みらいエナジー株式会社に対し、本日、独占禁止法の規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。

 本件は、旧一般電気事業者(注1)ら(中部電力株式会社、中部電力ミライズ株式会社、中国電力株式会社、九州電力株式会社、九電みらいエナジー株式会社及び関西電力株式会社の6社。)が、独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたものである。

 また、旧一般電気事業者が会員となっている電気事業連合会に対し、本日、後記第2のとおり、申入れを行った。

 さらに、電力市場の監視等を行う電力・ガス取引監視等委員会に対し、本日、後記第3のとおり、情報提供を行った。

(注1)「旧一般電気事業者」とは、従来、電気事業法(昭和39年法律第170号)による参入規制によって自社の供給区域における電気の小売供給の独占が認められていた電力会社10社をいう。

第1 排除措置命令及び課徴金納付命令 

1 違反事業者、排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者、課徴金額(違反事業者名、各違反事業者の課徴金額等の詳細については別表のとおり。)

 ⑴ 中部電力管内(注2)又は関西電力管内に所在する大口顧客(注3)に対して小売供給を行う電気
番号違反事業者名
排除措置命令
 課徴金納付命令課徴金額
 中部電力株式会社 ― ○ 201億8338万円
 中部電力ミライズ株式会社 ○ ○ 73億7252万円
 関西電力株式会社 ― ― ―
  合計額 275億5590万円

 ⑵ 中国電力管内又は関西電力管内に所在する相対顧客(注6)及び中国電力管内に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気
番号
違反事業者名
排除措置命令
 課徴金納付命令課徴金額
中国電力株式会社 707億1586万円
関西電力株式会社
  合計額 707億1586万円

 ⑶ 九州電力管内又は関西電力管内に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気

番号
違反事業者名
排除措置命令
課徴金納付命令
課徴金額
 九州電力株式会社(注7) ○ 27億6223万円
 九電みらいエナジー株式会社 ― ―
 関西電力株式会社 ― ― ―
 合計額 27億6223万円

(注2)「管内」とは、電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律(平成11年法律第50号)による改正前の電気事業法(昭和39年法律第170号)の規定に基づき、一般電気事業を営むことについて許可されていた旧一般電気事業者の供給区域をいう。

(注3)「大口顧客」とは、特別高圧需要又は高圧大口需要に係る電気の使用者(官公庁等を除く。)をいう

(注4)違反事業者名については、以下「株式会社」の記載を省略する。

(注5)表中の「―」は、排除措置命令又は課徴金納付命令の対象事業者ではないことを示し、「○」は、排除措置命令又は課徴金納付命令の対象事業者であることを示している。

(注6)「相対顧客」とは、特別高圧需要、高圧大口需要又は高圧小口需要に係る電気の使用者(官公庁等を除く。)をいう。

(注7)九州電力は、調査協力減算制度を利用した。


2 違反行為の概要(詳細は別添排除措置命令書参照)

⑴ 中部電力管内及び関西電力管内

 ア 中部電力及び関西電力は、遅くとも平成30年11月2日までに、中部電力管内又は関西電力管内に所在する大口顧客に対する安値の見積り(注8)提示による電気料金の水準の低落を防止して自社の利益の確保を図るため、互いに、相手方の供給区域において相手方が小売供給を行う大口顧客の獲得のための営業活動を制限することを合意し、中部電力ミライズは、令和2年4月1日、電気の小売供給を行う事業の全部を中部電力から承継することにより、同社に替わって当該合意に参加した。

イ 中部電力(令和2年4月1日以降にあっては中部電力ミライズ。中部電力及び中部電力ミライズの2社を以下「中部電2社」という。)及び関西電力は、当該合意の下に、

(ア) 関西電力にあっては、中部電力管内に所在する大口顧客に対する見積り提示を、代理業者を通じて行うもの、紹介業者から大口顧客の紹介を受けて行うもの及び大口顧客から見積り提示の依頼を受けるなどして行うものに限定する

(イ) 中部電力にあっては、関西電力管内に所在する大口顧客の獲得に係る目標を大幅に減少させる

(ウ) 相手方の供給区域において、相手方が小売供給を行う大口顧客に対して獲得が見込まれない見積りを提示し、又は、見積り提示を辞退する

(エ) 相手方の供給区域において、大口顧客に対して見積り提示する際に基準となる電気料金の下限値を引き上げることなどにより、相手方の供給区域に所在する大口顧客に対して見積り提示する電気料金の水準を上昇させる

(オ) 自社の供給区域において、大口顧客に対して見積り提示する際に基準となる電気料金の下限値を引き上げることなどにより、自社の供給区域に所在する大口顧客に対して見積り提示する電気料金の水準を維持又は上昇させる

などしていた。

ウ 中部電2社及び関西電力は、前記アの合意をすることにより、公共の利益に反して、中部電力管内又は関西電力管内に所在する大口顧客に対して小売供給を行う電気の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注8)電気料金に係る見積りをいう。以下同じ。


⑵ 中国電力管内及び関西電力管内

ア 中国電力及び関西電力は、遅くとも平成30年11月8日までに、中国電力管内又は関西電力管内に所在する相対顧客に対する安値の見積り提示及び中国電力管内の官公庁入札での安値の電気料金の提示による電気料金の水準の低落を防止して自社の利益の確保を図るため、
(ア) 互いに、相手方の供給区域に所在する相対顧客の獲得のための営業活動を制限する

(イ) 関西電力にあっては、中国電力管内において同日以降順次実施される官公庁入札における入札参加及び安値による入札を制限する

ことを合意した。

イ 中国電力及び関西電力は、当該合意の下に、

(ア) 相手方の供給区域に所在する相対顧客に対する見積り提示を、代理業者を通じて行うもの、紹介業者から相対顧客の紹介を受けて行うもの及び相対顧客から見積り提示の依頼を受けるなどして行うものに限定する

(イ) 相手方の供給区域において、相対顧客に対して見積り提示する際に、関西電力にあっては見積りの基準となる電気料金の下限値を引き上げること、中国電力にあっては見積り提示する電気料金の基準を引き上げることにより、相手方の供給区域に所在する相対顧客に見積り提示する電気料金の水準を上昇させる

(ウ) 自社の供給区域において、相対顧客に対して見積り提示する際に、見積りの基準となる電気料金の下限値を引き上げることなどにより、自社の供給区域に所在する相対顧客に見積り提示する電気料金の水準を維持又は上昇させる

(エ) 関西電力にあっては、中国電力管内の官公庁入札について、1年間に供給する電力量が30万キロワットアワー未満の官公庁入札に参加しないこと及び電気料金を提示する際に基準となる下限値を引き上げて当該下限値未満の電気料金を提示しないことを中国電力に伝える

(オ) 中国電力にあっては、中国電力管内の官公庁入札で提示する電気料金の水準を上昇させる

などしていた。

ウ 中国電力及び関西電力は、前記アの合意をすることにより、公共の利益に反して、中国電力管内又は関西電力管内に所在する相対顧客及び中国電力管内に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気の取引分野における競争を実質的に制限していた。


⑶ 九州電力管内及び関西電力管内

ア 九州電力及び関西電力は、遅くとも平成30年10月12日までに、九州電力管内又は関西電力管内の官公庁入札等における安値の電気料金の提示による電気料金の水準の低落を防止して自社の利益の確保を図るため、互いに、相手方の供給区域において同日以降順次実施される官公庁入札等で安値による電気料金の提示を制限することを合意した。

イ 九電みらいエナジーは、遅くとも平成30年10月31日までに、九州電力から前記アの内容を伝達され、前記アの合意に参加した。

ウ 当該合意の下に、

(ア) 関西電力は、官公庁入札等で電気料金を提示する際に基準となる下限値を引き上げ、九州電力管内又は関西電力管内の官公庁入札等で自社が提示する電気料金の水準を九州電力に伝える

(イ) 九州電力は、前記(ア)の関西電力が提示する電気料金の水準を九電みらいエナジーに伝える

(ウ) 九州電力及び九電みらいエナジーの2社(以下「九電2社」という。)は、前記(ア)の関西電力が提示する電気料金の水準を踏まえ、九州電力管内又は関西電力管内の官公庁入札等で提示する電気料金を引き上げる

(エ) 九電2社は、九州電力管内において関西電力が電気の小売供給を行う需要規模(注9)等を踏まえ、関西電力管内において九電みらいエナジーが電気の小売供給を行う需要規模の上限を設定する

などしていた。

エ 九電2社及び関西電力は、前記アの合意をすることにより、公共の利益に反して、九州電力管内又は関西電力管内に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注9)「需要規模」とは、官公庁等に係る契約電力の合計をいう。


3 排除措置命令の概要

  前記2の違反行為ごとに、それぞれ、次のとおり排除措置命令を行った。

⑴ 排除措置命令の対象事業者(以下「名宛人」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。

ア 前記2⑴ないし⑶の各アの合意が消滅していることを確認すること。

イ 今後、他の事業者と共同して、互いに、中部電力ミライズにあっては相手方が小売供給を行う大口顧客の獲得のための営業活動を制限する行為を行ってはならず、中国電力にあっては相対顧客の獲得のための営業活動を制限する行為並びに官公庁入札における入札参加及び安値による入札を制限する行為を行ってはならず、九電2社にあっては官公庁入札等で安値による電気料金の提示を制限する行為を行わないこと

ウ 今後、電気の小売供給を行う事業を営む他の事業者と、電気料金等に関する情報交換を行わないこと。

⑵ 前記⑴に基づいて採った措置を、中部電力ミライズにあっては、中部電力管内又は関西電力管内に所在する大口顧客に周知し、中国電力にあっては、中国電力管内又は関西電力管内に所在する相対顧客及び中国電力管内に所在する官公庁等に周知し、九電2社にあっては、九州電力管内又は関西電力管内に所在する官公庁等に周知し、かつ、名宛人は、それぞれ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。

⑶ 今後、他の事業者と共同して、互いに、中部電力ミライズにあっては相手方が小売供給を行う大口顧客の獲得のための営業活動を制限する行為を行ってはならず、中国電力にあっては相対顧客の獲得のための営業活動を制限する行為並びに官公庁入札における入札参加及び安値による入札を制限する行為を行ってはならず、九電2社にあっては官公庁入札等で安値による電気料金の提示を制限する行為を行ってはならない。

⑷ 名宛人は、それぞれ、今後、電気の小売供給を行う事業を営む他の事業者と、電気料金等に関する情報交換を行ってはならない

⑸ 名宛人は、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

ア 役員及び従業員に対する、電気の小売供給に係る営業活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の周知徹底(九電みらいエナジーにあっては当該行動指針の作成及び役員及び従業員に対する周知徹底)

イ 電気の小売供給に係る営業活動に関する独占禁止法の遵守についての、当該営業活動に従事する役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者及び第三者による定期的な監査

ウ 独占禁止法違反行為に係る調査への協力を行った者に対する適切な取扱いを定める規程の作成


4 課徴金納付命令の概要

  中部電力、中部電力ミライズ、中国電力及び九州電力は、令和5年10月31日までに、それぞれ前記1の「課徴金額」欄記載の額(総額1010億3399万円)を支払わなければならない。


第2 電気事業連合会に対する申入れ

  電気事業連合会の会員である中部電力、関西電力、中国電力及び九州電力を含む違反事業者により、前記第1の2の独占禁止法違反行為が行われ、排除措置命令を行ったこと、また、本件審査において、当該違反事業者が、同連合会が開催する会合の機会や同連合会へ出向したことのある者同士が出向した際に構築した業務上の関係を利用して、本件違反行為に係る情報交換を行っていた事実が認められたことから、同連合会に対し、今後、本件違反行為と同様の行為又は独占禁止法違反につながる情報交換が行われないよう、同連合会の会員、役員及び事務局職員に対して周知徹底することを申し入れた。

第3 電力・ガス取引監視等委員会に対する情報提供

  本件審査において認められた以下の事実等について、電気の小売供給市場における競争の適正化を図るため、電力・ガス取引監視等委員会に対し情報提供を行った。

 1 違反事業者により、前記第1の2の独占禁止法違反行為が行われ、排除措置命令を行ったこと。

2 旧一般電気事業者及びその販売子会社は、会合等において、営業活動に関する情報交換を行っていたこと。また、旧一般電気事業者及びその販売子会社は、自社の供給区域外の顧客に営業活動を行う際に、当該区域を供給区域とする旧一般電気事業者に対して、「仁義切り」などと称して、当該顧客に営業活動を行うことなどに関する情報交換を慣習的に行っていたこと。当該情報交換は、旧一般電気事業者及びその販売子会社の代表者、役員級、担当者級といった幅広い層で行われていたこと。

3 電力・ガス取引監視等委員会が、旧一般電気事業者及びその販売子会社の小売供給価格を監視するモニタリング調査を行っていたところ、旧一般電気事業者及びその販売子会社の中には、当該調査を行っていたことを利用し、他の旧一般電気事業者に対し、安値での小売供給に関して牽制等をしていた者がいたこと。

4 旧一般電気事業者の中には、競争により顧客移動が生じていることを示すために、価格競争によらず、相互に顧客を獲得することを企図していた者がいたこと。

5 旧一般電気事業者の中には、各供給区域における電気の需要の大部分に相当する電気を自ら発電又は調達してきたところ、自社又はその販売子会社の小売価格及び自社の販売子会社に卸供給する価格を、当該販売子会社以外の新電力(注10)に卸供給を行う価格よりも安価に設定していた者がいたこと。

6 旧一般電気事業者の中には、卸売市場への電気の供給量の絞り込みを行い、市場価格(注11)を引き上げることなどにより、外部からの調達に依存する新電力の競争力を低下させることを企図していた者がいたこと。

7 旧一般電気事業者の中には、新電力に対し、相対取引で電気の卸供給を行うに当たり、当該旧一般電気事業者の供給区域においては当該電気の小売供給を行わないように求めていた者がいたこと。

(注10)「新電力」とは、電気の自由化により新規に参入した小売電気事業者をいう。

(注11)日本卸電力取引所からの調達価格

関連ファイル

(印刷用)(令和5年3月30日)旧一般電気事業者らに対する排除措置命令及び課徴金納付命令等についてpdfダウンロード(173 KB)

(令和5年3月30日)別表pdfダウンロード(87 KB)

(令和5年3月30日)本件の概要pdfダウンロード(234 KB)

(令和5年3月30日)参考1(過去の電力分野における事件)pdfダウンロード(95 KB)

(令和5年3月30日)参考2-3(参照条文及び課徴金制度の概要)pdfダウンロード(141 KB)

(令和5年3月30日)別添(排除措置命令書)pdfダウンロード(249 KB)


問い合わせ先

公正取引委員会事務総局審査局第三審査
電話 03-3581-3383(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp

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