ホーム >報道発表・広報活動 >報道発表資料 >

(平成26年6月20日)食品分野におけるプライベート・ブランド商品の取引に関する実態調査報告書

(平成26年6月20日)食品分野におけるプライベート・ブランド商品の取引に関する実態調査報告書

平成26年6月20日
公正取引委員会

関連資料

第1 調査の趣旨・方法等

1 調査の趣旨

 公正取引委員会は,独占禁止法上の優越的地位の濫用規制及び下請法に基づき,事業者に不当に不利益を与える行為に対して厳正かつ効果的に対処するとともに,違反行為の未然防止に係る取組を行っている。
 この未然防止の取組の一環として,優越的地位の濫用又は下請法の問題となり得る事例が見受けられる取引分野について,従前より取引の実態を把握するための調査を実施してきたところ,これまでに実施した実態調査において,一部のプライベート・ブランド商品の取引について,返品,受領拒否といった優越的地位の濫用又は下請法違反となり得る事例が見受けられると指摘してきた。また,近年の下請法違反事件の中には,プライベート・ブランド商品の取引に関するものが一定の割合を占めているところである。
 このような実情を踏まえ,平成20年以降,国内のプライベート・ブランド商品が急激に売上高を伸ばしていると言われている中で,プライベート・ブランド商品の取引において,小売業者等による問題となり得る行為が行われていないかについて,その実態を把握する必要があると考え,今般,プライベート・ブランド商品の中で売上規模の大半を占める食品分野におけるプライベート・ブランド商品の取引に関し,実態調査を実施することとした(注1)。
 また,平成26年4月に消費税率が引き上げられたことを踏まえ,今回の調査票においては,優越的地位の濫用規制及び下請法の問題に関する設問だけでなく,消費税の価格への転嫁に係る交渉等に関する設問も設けた。

(注1)プライベート・ブランド商品の市場規模は約3兆円と言われている(出典:「PB商品の裏側」『週刊東洋経済』2012.12.22)。このうち,食品分野におけるプライベート・ブランド商品の市場規模については,平成21年は約2兆1587億円,平成24年(見通し)は約2兆6385億円となっている(出典:いずれも「PB食品市場の最新動向と将来展望2013」株式会社富士経済,2012.12)。

2 調査方法

(1) 書面調査
 本調査では,「小売業者(食品スーパー,総合スーパー,コンビニエンスストア等)」,「ボランタリーチェーン(注2)等の共同仕入機構」,「卸売業者」など(以下「小売業者等」という。)が,規格,意匠,型式等を指定して製造委託した「食品」のうち,小売業者等のオリジナル・ブランドが付されていること,販売者として小売業者等の表示があることなど(注3) の特徴を有する商品をプライベート・ブランド商品(以下「PB商品」という。)とした。
 また,PB商品について,製造委託又は発注を行う小売業者等と製造を請け負ったPB商品の納入取引を行っている「製造業者」又は「卸売業者」(以下「製造業者等」という。)との間の「取引」を対象とした。

(注2) 資本的に独立した事業者が共同して組織化し,仕入れや販売,商品企画等に関する戦略を一元的に行うことで,スケールメリットによるコスト削減,業務の効率化による競争力の確立を目指すものをいう。
(注3)上記の例のほか,小売業者等の名称と製造業者等の名称の両方が記載されている商品,小売業者等の名称が記載されていないが,製造業者等の既存商品について,小売業者等が内容量や包装といった特別の仕様を指定しているような商品のうち,仕様を指定した小売業者等以外に販売できない商品を調査対象としている。

 その上で,PB商品の製造委託を行っていると思われる小売業者等については500名,製造を請け負ったPB商品の納入取引を行っていると思われる製造業者等については3,000名を対象として,調査票を送付し,書面調査を実施した。
 調査票の発送数及び回答者数は,下記のとおりである。

対象事業者 発送数(A) 回答者数(B)(B/A)
小売業者等 500名 334名(66.8%)
製造業者等 3,000名 940名(31.3%)

 そして,この書面調査において,PB商品の取引を現に行っている小売業者等及び製造業者等に対して,食品のPB商品に係る取引高が多い取引先上位5社との取引について,それぞれ回答を求めたところ,小売業者等から978取引,製造業者等から1,835取引についてそれぞれ回答があり,本調査では,これらの取引に係る回答を基に結果を取りまとめている。

(2) ヒアリング
 書面調査に回答した製造業者等のうち,小売業者等から受けた要請等の内容を具体的に回答した27社を対象にヒアリングを実施した。

3 調査対象期間等

(1) 調査票発送日:平成26年2月21日
(2) 回答期限:平成26年3月20日
(3) 調査対象期間:平成25年1月1日から平成25年12月31日

第2 調査結果のまとめ

1 調査結果の概要

(1) 優越的地位の濫用となり得る行為の状況
ア PB商品の取引条件の設定等に係る要請
(ア) PB商品の取引条件の設定等に係る要請の状況
 製造業者等に対し,PB商品の取引を開始した経緯について聞いたところ,集計対象とした1,835取引のうち,「ナショナル・ブランド商品(以下「NB商品」という。)の取引のある小売業者等から要請を受けた。」が850取引(46.3%),「NB商品の取引がない小売業者等から要請を受けた。」が306取引(16.7%)となっており,PB商品の取引は,NB商品の取引の有無にかかわらず,小売業者等から要請を受けて開始されることが相対的に多いという結果であった。
 そして,製造業者等から回答のあった1,835取引について,小売業者等からPB商品の取引条件の設定等に係る優越的地位の濫用となり得る行為を受けたとの回答があった取引数,及び各取引数が1,835取引に占める割合について,具体的な行為の内容ごとに,それぞれ一覧表の形でまとめると,図1のとおりとなる。
 また,図1においては,1つの取引で小売業者等から複数の行為を受けたものの重複は排除していないが,この重複を排除すると,1,835取引のうち,小売業者等から,PB商品の取引条件の設定等に係る優越的地位の濫用となり得る行為を1つ以上受けたとの回答があった取引は,合計欄に記載の198取引となる。

図1 PB商品の取引条件の設定等に係る優越的地位の濫用となり得る行為
行為の内容

優越的地位の濫用と
なり得る行為を受けたと回答した取引数

集計対象取引数に
占める割合

原価構成や製造工程に係る情報など,開示することにより価格交渉等において不利な立場に立つこととなる情報の開示を取引条件として設定するもの 156取引 8.4% (156/1835)
NB商品と同水準の原材料の使用を求めるにもかかわらず,取引価格についてはNB商品より著しく低い価格での取引を要請するもの 90取引 4.9% (90/1835)
利益率が低い等により製造委託の要請を断ろうとしたところ,NB商品の取引の中止,取引数量の減少をちらつかせ,製造委託に応じるように要請するもの 39取引 2.1% (39/1835)
PB商品の取引を開始することを条件に,本来支払う必要のないリベート・協賛金等の負担を要請するもの 20取引 1.1% (20/1835)
その他(月1回特売をすることを取引条件とするもの,PB商品を製造するためにNB商品の製造を取り止めるよう要請するもの等) 25取引 1.4% (25/1835)
合計 198取引 10.8% (198/1835)

 図1によると,PB商品の取引条件の設定等に係る優越的地位の濫用となり得る行為の内容として,製造業者等からの回答数が最も多かった内容は,原価構成や製造工程に係る情報など,開示することにより価格交渉等において不利な立場に立つこととなる情報の開示を取引条件として設定するもの(156取引)であった。この156取引のうち56取引(35.9%)においては,取引を開始した後にも,取引の対価の一方的決定,減額等となり得る行為が行われていた。PB商品の取引を開始する際にこうした情報開示が取引条件として設定されている取引では,製造業者等の取引上の地位が小売業者等に対して不利なものとなり,取引を開始した後においても優越的地位の濫用となり得る行為が行われやすくなっているものと考えられる。
 また,PB商品の取引条件の設定等に係る優越的地位の濫用となり得る行為として,次に回答数が多かった内容は,NB商品と同水準の原材料の使用を求められるにもかかわらず,取引価格についてはNB商品より著しく低い価格での取引を要請するもの(90取引)であった。この90取引のうち46取引(51.1%)においては,製造業者等は,取引を開始した後にも,小売業者等から,小売業者等の同業他社の価格水準に合わせ,納入価格の引下げを求められていると回答しており,PB商品の取引に関しては,製造業者等にとって厳しい価格水準による取引が行われている様子がうかがえる。

(イ) 小売業者等の業態
 前記(1)ア(ア)でPB商品の取引条件の設定等に係る優越的地位の濫用となり得る行為を1つ以上受けたと回答した198取引について,要請等を行った小売業者等を業態別にみると,総合スーパーが51取引(25.8%),生協(注4) が49取引(24.7%),卸売業者が27取引(13.6%),コンビニエンスストアが21取引(10.6%),食品スーパーが11取引(5.6%)等であった。

(注4)日本生活協同組合連合会及び同連合会に加入している全国の生活協同組合を含む。

図2  PB商品の取引条件の設定等に係る優越的地位の濫用となり得る行為を行った小売業者等の業態(注5)

(注5)図中のN値は割合を出す際に使用した分母となる値であり,図2でいえば,PB商品の取引条件の設定等に係る優越的地位の濫用となり得る行為を1つ以上受けたと回答した198取引を分母としている。

イ PB商品の取引に係るその他不当な要請
(ア) PB商品の取引に係るその他優越的地位の濫用となり得る行為の状況
 製造業者等から回答のあった1,835取引について,小売業者等から前記ア以外の優越的地位の濫用となり得る行為を受けたとの回答があった取引数,各取引数が集計対象である1,835取引に占める割合について,行為類型ごとに,それぞれ一覧表の形でまとめると,図3のとおりとなる。
 また,前記アと同様に,図3において回答の重複を排除すると,1,835取引のうち,小売業者等から,前記ア以外の優越的地位の濫用となり得る行為を1つ以上受けたとの回答があった取引は合計欄に記載の162取引(8.8%)となる。

図3 PB商品の取引に係るその他優越的地位の濫用となり得る行為
行為類型

優越的地位の濫用となり得る
行為を受けたと回答した取引数

集計対象取引数に
占める割合

購入・利用の要請 42取引 2.3% (42/1835)
協賛金等の負担の要請 67取引 3.7% (67/1835)
従業員等の派遣の要請 30取引 1.6% (30/1835)
受領拒否 10取引 0.5% (10/1835)
返品 12取引 0.7% (12/1835)
支払遅延 2取引 0.1% (2/1835)
減額 7取引 0.4% (7/1835)
取引の対価の一方的決定 16取引 0.9% (16/1835)
その他不利益となる要請 40取引 2.2% (40/1835)
  契約上特に定めがないにもかかわらず,出荷の条件として新たな検査を受けるよう求め,検査に要した費用を負担させるもの 22取引 1.2% (22/1835)
事前に一定数量を示して発注を確約していたにもかかわらず,小売業者等の一方的な都合により,発注数量を著しく減少する又は発注を取り消すもの 17取引 0.9% (17/1835)
あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくして,発注内容と異なること又は瑕疵があることを理由に,やり直しをさせるもの 6取引 0.3% (6/1835)
商品の製造委託を受けて,原材料,包装資材等を調達しているにもかかわらず,小売業者等の一方的な都合により,当該調達に要した費用を支払うことなく,発注を取り消すもの 6取引 0.3% (6/1835)
合計 162取引 8.8% (162/1835)

 図3によると,前記ア以外の不当な要請としては,回答がほとんどみられない行為類型もあるが,これまでの実態調査と同様に,「協賛金等の負担の要請」,「購入・利用の要請」,「従業員等の派遣の要請」などの優越的地位の濫用となり得る行為を受けたとの回答が一定程度みられた(注6)ほか,「その他不利益となる要請」を受けたとの回答の割合も相対的に高くなっていた。
 そして,「その他不利益となる要請」の具体的内容としては,契約上特に定めがないにもかかわらず,出荷の条件として新たな検査を受けるよう求め,検査に要した費用を負担させるものとの回答が22取引と相対的に多くなっていた。そして,この22取引について,受入検査に係る事項が発注書面に記載されているかどうかをみると,22取引全てにおいて,そのような事項が記載されてないとの回答であった。このことから,事前に取引条件として定めていなかった事項について,その後の取引の中で費用負担が必要な状況が発生した際に,製造業者等に負担が要請されているものと考えられる。

(注6)「大規模小売業者等と納入業者との取引に関する実態調査報告書」(平成24年7月公表)では,集計対象取引に占める優越的地位の濫用となり得る協賛金等の負担の要請を受けたと回答した取引が8.4%,購入・利用の要請が5.4%,従業員等の派遣の要請が3.3%等であり,他の行為類型に比べて相対的に多い結果であった。

(イ) 小売業者等の業態
 前記(1)イ(ア)でPB商品の取引に係るその他優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと回答した162取引について,要請等を行った小売業者等を業態別にみると,総合スーパーが32取引(19.8%),卸売業者が26取引(16.0%),食品スーパーが24取引(14.8%),生協が23取引(14.2%),コンビニエンスストアが19取引(11.7%)等の結果であった。

図4 その他PB商品の取引に係る優越的地位の濫用となり得る行為を行った小売業者等の業態

ウ 小括
 前記のPB商品の取引条件の設定等に係る要請(図1)と,PB商品の取引に係るその他の不当な要請(図3)の間でも重複がみられるところであるが,この重複を排除すると,調査対象とした1,835取引のうち,PB商品の取引を通じて,小売業者等から1つ以上優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと回答した取引は290取引(15.8%)となる。
 そして,この290取引について,要請等を行った小売業者等を業態別にみると,総合スーパーが67取引(23.1%),生協が53取引(18.3%),卸売業者が47取引(16.2%),コンビニエンスストアが34取引(11.7%),食品スーパーが31取引(10.7%)等の結果であった。

図5 PB商品の取引に係る優越的地位の濫用となり得る行為を行った小売業者等の業態

 さらに,本調査では,製造業者等から回答のあった1,835取引について,小売業者等の業態をみると,総合スーパーは302取引,生協は264取引,卸売業者は334取引,コンビニエンスストアは162取引,食品スーパーは243取引となっていたところ(本文図11参照),これら業態別の取引数のうち,1つ以上優越的地位の濫用となり得る行為を受けたとの回答があった取引数の割合をみると,総合スーパーは302取引中67取引(22.2%),生協は264取引中53取引(20.1%),卸売業者は334取引中47取引(14.1%),コンビニエンスストアは162取引中34取引(21.0%),食品スーパーは243取引中31取引(12.8%)となっていた。

図6 業態別の取引数に占める優越的地位の濫用となり得る行為を行ったと回答した取引数の割合

(2) 下請法の適用対象となり得る取引における状況
ア 調査結果の概要
 小売業者等が自社のPB商品の製造を他の事業者に委託することは,原則として下請法上の「製造委託」に該当する。また,下請法上,この製造委託に関して下請法の適用対象となる取引は,資本金3億円超の小売業者等と資本金3億円以下の製造業者等の間の取引となっている。そして,この資本金区分に該当する「製造委託」の取引において,下請法が禁止する行為類型に当たる行為が行われた場合には,原則として下請法上問題となる。
 下請法が禁止する行為類型と,優越的地位の濫用として問題となる行為類型には共通する行為類型があるところ,その共通する行為類型について,図3において優越的地位の濫用となり得る行為を受けたとの回答があった取引数([1])及び[1]の取引数のうち前記の資本金区分でみた場合に下請法の適用対象となる取引数([2])について一覧表の形でまとめると,図7のとおりとなる。
 図7において回答の重複を排除すると,小売業者等から優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと回答した取引数は140取引,このうち下請法の適用対象となる取引
は66取引となる。

図7 優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと回答した取引数のうち,下請法の適用対象となる取引数
行為類型

優越的地位の濫用となり得る
行為を受けたと回答した取引数
([1])

[1]の取引数のうち下請法の適用対象となる取引数([2])
購入・利用強制 42取引 18取引
利用提供要請 協賛金等の負担の要請 67取引 32取引
従業員等の派遣の要請 30取引 15取引
受領拒否 10取引 7取引
返品 12取引 7取引
支払遅延 2取引 1取引
減額 7取引 4取引
買いたたき(取引の対価の一方的決定) 16取引 10取引
合計 140取引 66取引

 図7によると,優越的地位の濫用となり得る行為の半数近くが下請法の適用対象となる取引で行われている様子が見てとれる。

イ 小売業者等の業態 
 前記(2)アの66取引について,下請法上問題となり得る行為を行った小売業者等を業態別にみると,生協が15取引(22.7%),総合スーパーが14取引(21.2%),コンビニエンスストア及び食品スーパーが共に9取引(13.6%),卸売業者が6取引(9.1%)等となっており,図2及び図4と比較すると,下請法上問題となり得る行為では生協の割合が大きくなっていた。

図8 下請法上問題となり得る行為を行った小売業者等の業態

2 PB商品の取引の開始時期と小売業者等からの要請等の開始時期との関係

(1) 要請等の開始時期
 小売業者等から1つ以上優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと製造業者等が回答した290取引について,小売業者等からの要請等が,PB商品の取引開始後に行われるようになったものであるかを聞いたところ,「PB商品の取引開始後に初めて行われるようになった。」との回答が116取引(40.0%),「PB商品の取引開始前から行われていた。」との回答が147取引(50.7%)等であった。
 なお,この116取引について,要請等を行った小売業者等を業態別にみると,生協が28取引(24.1%),卸売業者が20取引(17.2%),コンビニエンスストアが19取引(16.4%),総合スーパーが16取引(13.8%),その他が12取引(10.3%)等であった。

図9 要請等の開始時期

(2) 要請等に係る負担の程度の変化
 前記2(1)で「PB商品の取引開始前から行われていた。」と製造業者等が回答した147取引について,PB商品の取引開始後に,小売業者等からの要請等に係る負担の程度がどのように変化したかを聞いたところ,「増加している。」との回答が30取引(20.4%),「変わらない。」が95取引(64.6%),「減少している。」が18取引(12.2%)等の結果であった。

図10 要請等に係る負担の程度の変化

3 優越的地位の濫用となり得る行為が見られた取引の傾向

(1) 小売業者等とのPB商品に係る年間取引高と,優越的地位の濫用となり得る行為がみられた取引との相関
 集計対象とした1,835取引のうち,小売業者等とのPB商品に係る年間取引高について製造業者等から回答のなかった126取引を除く1,709取引を対象として,小売業者等とのPB商品に係る年間取引高を基に区分すると,図11の「区分に該当する取引数」欄に記載の取引数となる。
 また,各区分の取引数の中で,小売業者等から1つ以上優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと製造業者等が回答した取引数は,図11の「優越的地位の濫用となり得る取引数」欄に記載の取引数となる。
 そして,各区分の取引数に占める優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと回答した取引数の割合をみると,「3億円超」の区分で最も割合が高くなっており,PB商品に係る年間取引高が大きい取引において,優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと回答した取引数の割合が高くなるという傾向がみられた。

図11 小売業者等とのPB商品に係る年間取引高と,優越的地位の濫用となり得る行為がみられた取引との相関

(2) 小売業者等の資本金と,優越的地位の濫用となり得る行為がみられた取引との相関
 集計対象とした1,835取引のうち,小売業者等の資本金について製造業者等から回答のなかった118取引を除く1,717取引を対象として,小売業者等の資本金を基に区分すると,図12の「区分に該当する取引数」欄に記載の取引数となる。
 また,各区分の取引数の中で,小売業者等から1つ以上優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと製造業者等が回答した取引数は,図12の「優越的地位の濫用となり得る取引数」欄に記載の取引数となる。
 そして,各区分の取引数に占める優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと回答した取引数の割合をみると,「3億円超」の区分で最も割合が高くなっており,資本金が大きい小売業者等との取引において,優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと回答した取引数の割合が高くなるという傾向がみられた。

図12 小売業者等の資本金と,優越的地位の濫用となり得る行為がみられた取引との相関

4 総括

(1) PB商品の取引の現状と今後 
 今回の調査において,PB商品の取引を行っていると回答した事業者は,小売業者等では238名(71.3%),製造業者等では570名(60.6%)となっており(本文図1及び図8参照),この製造業者等には資本金3億円以上の者が90名(15.8%)含まれていた。
 そして,これらのPB商品の取引を行っている事業者に対し,PB商品の取引を行うようになった理由を聞いたところ,小売業者等においては,同業他社との差別化を図るため,企業のブランドイメージの向上を図るため,消費者の低価格志向に対応するため,の順に回答が多く,製造業者等においては,安定的な数量の発注を受けることができると考えたため,小売業者等との取引を開始(拡大)することができると考えたため,生産設備の稼働率を向上することができると考えたため,といった理由が相対的に多くなっていた(本文図4及び図16参照)ことから,PB商品の取引を行うことは,小売業者等及び製造業者等の双方にとって相応のメリットがあると考えられる。
 また,PB商品の取引を行っていると回答した事業者に対し,3事業年度前と直近事業年度を比較した場合の取引高全体に占めるPB商品に係る取引高の割合の推移を聞いたところ,「増加している。」との回答が,小売業者等では331取引(33.8%),製造業者等では591取引(32.2%)となっていた(本文図6及び図82参照)。
 これらから,PB商品の取引は資本金の大きい製造業者等も含め,幅広く行われるようになってきており,今後もPB商品の取引を行う事業者や,その取引高が増加する可能性があると考えられる。
(2) PB商品の取引を行う上での問題点
ア PB商品の取引において優越的地位の濫用となり得る行為が行われる際の特徴
(ア) 本調査では,PB商品の取引を開始する際に,小売業者等から取引条件の設定に係る優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと製造業者等が回答した取引が相対的に多くなっていた。
 製造業者等からの回答として最も多かった行為の内容は,原価構成や製造工程に係る情報など,開示することにより価格交渉等において製造業者等が不利な立場に立つこととなる情報の開示を取引条件として設定されているものであった。前記1(1)ア(ア)に記載のとおり,こうした情報の開示が取引条件として設定されている取引では,取引の開始後にも,取引の対価の一方的決定(注7),減額等の他の行為類型に該当する行為が行われる割合が相対的に高くなっていたところであり,公正取引委員会として,上記のような情報の開示を取引条件として設定すること自体についても注視していく必要がある。
 また,製造業者等からの回答として次に多かった行為の内容は,NB商品と同水準の原材料の使用を求められるにもかかわらず,取引価格についてはNB商品より著しく低い価格での取引を要請されるものであった。こうした行為もそれ自体が優越的地位の濫用となり得るものであり,公正取引委員会として併せて注視していく必要がある。

(注7)「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(以下「優越ガイドライン」という。)」において,優越的地位の濫用として問題となる行為の想定例として,「取引の相手方から,社外秘である製造原価計算資料,労務管理関係資料等を提出させ,当該資料を分析し,『利益率が高いので値下げに応じられるはず』などと主張し,著しく低い納入価格を一方的に定めること」が挙げられている。

(イ) 製造業者等が,PB商品の取引を開始する際に小売業者等からの取引条件の設定に係る要請を受け入れている理由の一つに,NB商品の取引への影響を懸念していることが考えられる。今回の調査でも,製造業者等が,利益率が低い等の理由により製造委託の要請を断ろうとしたところ,NB商品の取引の中止,取引数量の減少をちらつかせ,小売業者等から製造委託に応じるように要請されたとの回答が39取引あった。また,製造業者等へのヒアリングにおいても,「PB商品の取引条件を交渉している中で,PB商品の製造委託に応じなければNB商品も扱わない旨を示唆され,実際に,NB商品の取引の一部を停止された。」旨の具体的な回答があったところであり,PB商品の取引を開始する時点でNB商品の取引も行っているような取引においては,製造業者等は,PB商品の取引に関する要請を断ると,NB商品の取引にも影響があると考え,自社に不利益となる要請であっても受け入れざるを得ないものとして受け入れている場合があると考えられる。

(ウ) 次に,PB商品の取引開始の際に行われる要請以外の行為としては,「購入・利用の要請」や「協賛金等の負担の要請」といった典型的な優越的地位の濫用となり得る行為とともに,「その他不利益となる要請」に係る行為が多くなっていた。
 「その他不利益となる要請」の内容としては,出荷の条件として契約上定めのない検査を受けるよう求め,検査に要した費用の負担を要請するもの,事前に一定数量を示して発注を確約していたにもかかわらず,小売業者等の一方的な都合により,発注数量を著しく減少する又は発注を取り消すものが多くなっていた。こうした行為も,前記(ア)と同様に優越的地位の濫用となり得るものであるため,公正取引委員会として注視していく必要がある。

(エ) 今回の調査では,PB商品の取引を開始する際の取引条件の設定等に係る優越的地位の濫用となり得る行為が相対的に多く行われている状況が明らかとなった。その原因の一つとしては,小売業者等の側において,製造業者等との間で取引条件を設定する行為が,その態様によっては優越的地位の濫用となり得る行為となることが意識されにくいためではないかと考えられる。小売業者等が一方的に取引条件を設定するなどにより,製造業者等に不当に不利益を与えることとなる場合は,優越的地位の濫用となり得るものであり,PB商品の取引の拡大が今後も見込まれる中,公正取引委員会としても,今後,違反行為の未然防止の観点から,こうした点について一層の周知を図っていく必要がある。

イ 優越的地位の濫用となり得る行為を行った小売業者等の業態
 今回の調査において,1つ以上優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと製造業者等が回答したPB商品の取引について,小売業者等の業態をみると,総合スーパー,生協,卸売業者,コンビニエンスストア,食品スーパーとの回答が相対的に多くなっていた(概要図5参照)。
 このため,これらの小売業者等と製造業者等の間で行われるPB商品の取引に関して,優越的地位の濫用となり得る行為又は下請法上問題となり得る行為が行われることがないよう,今後とも公正取引委員会として注視していく必要がある。
 また,卸売業者については,これまでに実施した実態調査においても,卸売業者から製造業者に対して,優越的地位の濫用となり得る行為が行われている事例がある旨を指摘してきたところであるが(注8),今回の調査においても,卸売業者から優越的地位の濫用となり得る行為を受けている旨の回答が一定程度みられたところである。
 卸売業者が行っている要請等の中には,卸売業者が,自社の利益を図るために要請等を行っている場合だけでなく,小売業者から要請等を受けた費用を自社だけで負担しきれず,その費用の一部又は全部の補填を製造業者に要請している場合もあると考えられるが,こうした要請等についても,卸売業者と製造業者との間での優越的地位の濫用となり得るものである。このため,卸売業者から製造業者に対して行われる要請等については,今後とも公正取引委員会として注視していく必要がある。
(注8)「物流センターを利用して行われる取引に関する実態調査報告書」(平成25年8月公表),「大規模小売業者等と納入業者との取引に関する実態調査報告書」(平成24年7月公表),「食料品製造業者と卸売業者との取引に関する実態調査報告書」(平成23年10月公表)等を参照。

ウ 優越的地位の濫用となり得る行為がみられた取引の傾向
 今回の調査における優越的地位の濫用となり得る行為が行われたPB商品の取引についてみると,[1]小売業者等とのPB商品に係る年間取引高が大きい取引,及び[2]資本金が大きい小売業者等との取引において,製造業者等が小売業者等から優越的地位の濫用となり得る行為を受けたと回答する割合が高くなるという傾向がみられた。
 製造業者等の立場からすると,小売業者等とのPB商品に係る年間取引高が大きい場合,又は小売業者等の資本金規模が大きい場合,小売業者等からの要請等の内容が不利なものであったとしても当該要請を受け入れざるを得ないものとして受け入れる傾向があると考えられる。

5 消費税の扱いについて

 今回の調査では,製造業者等に対し,小売業者等とのPB商品の取引において,消費税率の引上げ分を納入価格に転嫁できたかを聞いたところ,集計対象とした1,835取引のうち,「おおむね転嫁できた(できそうである。)。」が1,470取引(80.1%),「ある程度転嫁できた(できそうである。)。」が130取引(7.1%)となっており,これらを合わせると1,600取引(87.2%)であった。一方で,「あまり転嫁できなかった(できない見込みである。)。」が46取引(2.5%),「ほとんど転嫁できなかった(できない見込みである。)。」が53取引(2.9%)となっており,これらを合わせると99取引(5.4%)であった。
 また,消費税の価格転嫁に係る交渉において,小売業者等から消費税の転嫁拒否等の行為を受けたことがあるかを聞いたところ,「受けたことがある。」との回答が22取引であり,この22取引のうち,転嫁拒否行為を「受け入れた。」との回答が9取引であった。
 回答のあった9取引の転嫁拒否行為の内容としては,「商品の内容量を減らすなどの仕様変更により,消費税率引上げ後も単価を据え置くこととされたが,仕様変更による自社のコスト削減効果が小さいため,消費税率の引上げを反映した額よりも低い単価での取引の要請を受けた。」が5取引,「今後,消費税率が引上げられることを見据え,引き上げられる消費税分に見合った額(又は率)の納入価格に引き下げるための値下げの要請を受けた。」が4取引といった結果であった。
 消費税率の引上げ分の価格への転嫁に関しては,今後,消費税率の引上げ後に行われた取引に関して代金の決済が行われる際に,小売業者等が製造業者等に対し,減額を行ったり,協賛金等の負担を要請するなどの行為が行われるおそれがあり,引き続き書面調査などによる積極的な情報収集を行っていく必要がある。

第3 公正取引委員会の対応

 今回の調査の結果,食品分野におけるPB商品の一部の取引において,主として独占禁止法又は下請法上問題となり得る行為が行われていることが明らかとなった。また,回答数は少ないものの,消費税転嫁対策特別措置法上問題となり得る行為が行われていることが明らかとなった。このため,公正取引委員会は,違反行為の未然防止及び取引の公正化の観点から,調査結果を公表するとともに,以下の対応を行うこととする。

1(1) 小売業者等を対象とする講習会を実施し,本調査結果並びに優越ガイドライン及び下請法の内容を説明する。
 (2) また,小売業者等の関係事業者団体に対して,本調査結果を報告するとともに,小売業者等が問題点の解消に向けた自主的な取組を行えるよう,改めて優越ガイドライン等の内容を傘下会員に周知徹底するなど,業界における取引の公正化に向けた自主的な取組を要請する。

2 公正取引委員会は,今後とも,食品分野におけるPB商品の取引実態を注視し,独占禁止法,下請法又は消費税転嫁対策特別措置法上問題となるおそれのある行為の把握に努めるとともに,これらの法律に違反する行為に対しては,厳正に対処していく。

問い合わせ先

問い合わせ先 公正取引委員会事務総局経済取引局取引部企業取引課
電話  03-3581-3373(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp

ページトップへ