ホーム >報道発表・広報活動 >報道発表資料 >平成27年 >10月 >

(平成27年10月2日)日本エア・リキード株式会社に対する審決について(エアセパレートガスの製造業者及び販売業者による価格カルテル事件)

(平成27年10月2日)日本エア・リキード株式会社に対する審決について(エアセパレートガスの製造業者及び販売業者による価格カルテル事件)

平成27年10月2日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,被審人日本エア・リキード株式会社(以下「被審人」という。)に対し,平成23年10月5日,審判手続を開始し,以後,審判官をして審判手続を行わせてきたところ,平成27年9月30日,被審人に対し,独占禁止法の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)による改正前の独占禁止法(以下「独占禁止法」という。)第66条第2項の規定に基づき,被審人の各審判請求をいずれも棄却する旨の審決を行った(本件平成23年(判)第79号及び第80号審決書については,当委員会ホームページの「報道発表資料」及び「審決等データベース」参照)。

1 被審人の概要

事業者名 本店所在地 代表者
日本エア・リキード株式会社

東京都港区芝浦三丁目4番1号グランパークタワー

代表取締役 矢原 史朗

2 被審人の審判請求の趣旨

(1) 平成23年(判)第79号

 平成23年(措)第3号排除措置命令の取消しを求める。

(2) 平成23年(判)第80号

 平成23年(納)第59号課徴金納付命令の取消しを求める。

3 主文の内容

 被審人の各審判請求をいずれも棄却する。

4 本件の経緯

平成23年
5月26日 排除措置命令及び課徴金納付命令
7月25日 被審人から排除措置命令及び課徴金納付命令に対して審判請求
10月5日 審判手続開始
11月15日 第1回審判

平成27年
1月30日 第20回審判(最終意見陳述を終了)
3月31日 審決案送達
4月13日 審決案に対する異議の申立て及び直接陳述の申出
7月24日 直接陳述の聴取
9月30日 審判請求を棄却する審決

5 審決の概要

(1) 原処分の原因となる事実

 被審人は,遅くとも平成20年1月23日までに,他の事業者と共同して,特定エアセパレートガス(注1)の販売価格を引き上げる旨を合意することにより(以下,この合意を「本件合意」という。),公共の利益に反して,我が国における特定エアセパレートガスの販売分野における競争を実質的に制限していた(以下,この行為を「本件違反行為」という。)。
 被審人の本件違反行為の実行期間は,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,平成20年4月1日から平成22年1月18日までであり,独占禁止法第7条の2の規定により算出された課徴金の額は48億2216万円である。

(注1) 「特定エアセパレートガス」とは,エアセパレートガス(空気から製造される酸素,窒素及びアルゴンをいう。)のうち,タンクローリーによる輸送によって供給するもの(医療に用いられるものとして販売するものを除く。)をいう。

(2) 本件の争点

ア 被審人,大陽日酸株式会社,エア・ウォーター株式会社及び岩谷産業株式会社の4社(以下「4社」という。)は共同して相互にその事業活動を拘束したか(争点1)
(ア) 本件合意の有無
(イ) 本件合意の対象範囲
a エレクトロニクス産業向け及び大規模顧客向けの特定エアセパレートガスは本件合意の対象に含まれるか。
b オンサイト供給(注2)及びパイピング供給(注2)においてガスの発生装置の例外的な運転の停止に備えて準備しておくこと(狭義のバックアップ)並びにオンサイト供給におけるガスの発生装置による製造量の不足分を補うために供給すること(ピークシェイブのバックアップ。以下,狭義のバックアップと併せて単に「バックアップ」という。)に係る特定エアセパレートガスは本件合意の対象に含まれるか。
c 通常の酸素や窒素と比べて純度が相当高い(99.7パーセント以上あるいは99.9999パーセント以上)など,特別の仕様及び品質が求められる製品(以下「超高純度ガス」という。)は本件合意の対象に含まれるか。
イ 本件合意は一定の取引分野における競争を実質的に制限するか(争点2)
(ア) 特定エアセパレートガスの販売分野という取引分野の画定の可否
(イ) 本件合意により影響を受ける取引段階
(ウ) 市場占有率の算定方法の相当性
ウ 本件排除措置命令の必要性及び相当性(争点3)
エ 課徴金算定の対象(争点4)
 特定エアセパレートガスのうち,次に掲げるものが独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該商品」に該当するか。
(ア) エレクトロニクス産業向けのもの,大規模顧客向けのもの,バックアップに係るもの及び超高純度ガスに該当するもの
(イ) シリンダー充てん業者に対して販売するもの
(ウ) 全額出資子会社等(注3)に対して販売するもの
オ 課徴金算定率(争点5)
 本件違反行為に係る取引について,被審人の業種を小売業又は卸売業以外と認定して10パーセントの課徴金算定率を適用すべきか,それとも,卸売業と認定して2パーセントの課徴金算定率を適用すべきか。

(注2) エアセパレートガスの供給形態としては,一般的に,次の4つの方法が存在する。
1 ローリー供給
 液化した酸素,窒素又はアルゴンをタンクローリーによる輸送によって供給する方法。
2 シリンダー供給
 液化した酸素,窒素又はアルゴンを充てん所において気化させ,シリンダー容器に充てんしてから供給する方法。
3 パイピング供給
 製造業者の製造プラントから直接配管で気体状の酸素,窒素又はアルゴンを供給する方法。
4 オンサイト供給
 需要者の工場の敷地内に酸素,窒素又はアルゴンの製造プラントを設置して製造供給する方法。

(注3) エアセパレートガスを製造し,被審人に販売している被審人の子会社である株式会社水島オキシトン,北九州オキシトン株式会社,鹿児島オキシトン株式会社,熊本オキシトン株式会社,川崎オキシトン株式会社,四日市オキシトン株式会社及び製鉄オキシトン株式会社の7社(以下「オキシトン7社」という。)並びに「オキシトン7社」以外の被審人全額出資子会社を併せたものをいう。

(3) 争点に対する判断の概要

ア 争点1について
(ア) 本件合意の有無
a 4社は,平成17年及び平成18年頃から,特定エアセパレートガス等の値上げに関して情報交換を行うなどしていたところ,このような関係にあった4社の各役員級の者が,個別の面談において,相互に,特定エアセパレートガスの販売価格の引上げを検討していることを確認し,さらに,4社の各部長級の者が,上記役員級の者の意向を踏まえ,個別の面談による情報交換,意見交換を行い,平成19年12月18日及び平成20年1月23日の各会合において,4社が足並みをそろえて,特定エアセパレートガスの販売価格を同年4月1日出荷分から現行価格より10パーセントを目安に引き上げることを相互に確認し,実際に,上記各会合において確認された内容に符合する需要者に対する特定エアセパレートガスの販売価格の引上げの申入れが行われたことが認められる。

b このような事実からすれば,4社間において,遅くとも同年1月23日までに,特定エアセパレートガスの販売価格を同年4月1日出荷分から現行価格より10パーセントを目安に引き上げる旨の本件合意が成立したものと認められる。

(イ) 本件合意の対象
a エレクトロニクス産業向け及び大規模顧客向けの特定エアセパレートガス
(a) 被審人の部長級の者は,顧客に対し営業活動を行う全国の支社を総括する被審人の営業本部の営業部長として,エレクトロニクス事業本部(以下「EL事業本部」という。)や大規模顧客向けのガスを取り扱うラージインダストリー事業本部(以下「LI事業本部」という。)所管の特定エアセパレートガスの販売価格について影響力を行使できる立場にあった。
(b) 被審人の役員級の者は,EL事業本部やLI事業本部所管のガスの販売価格についても影響力を行使できる立場にあり,被審人の役員級の者から4社による会合への出席等の指示を受けて同会合の内容を報告していた被審人の部長級の者は,被審人の役員級の者の所掌範囲内であるEL事業本部やLI事業本部所管の特定エアセパレートガスについても,本件合意の対象とすることができた。
(c) 被審人以外の3社の部長級の者も,各自の社内での形式上の所掌範囲にかかわらず,それぞれ特定エアセパレートガスの値上げに関し影響力を行使できる立場にあり,4社の販売する特定エアセパレートガス全般を本件合意の対象と認識していた。
(d) 特定エアセパレートガスの値上げに関する被審人の営業本部の意向は,EL事業本部及びLI事業本部にも反映される関係にあったことが推認でき,これに加え,被審人の役員級の者及び部長級の者の役職を併せ鑑みると,EL事業本部及びLI事業本部の特定エアセパレートガスは本件合意の対象であったことが推認できる。
(e) 以上のことからすれば,エレクトロニクス産業向け又は大規模顧客向けのものであっても,特定エアセパレートガスである限り,本件合意の対象であったと認められる。

b バックアップに係る特定エアセパレートガス
(a) 被審人と各需要者の契約内容をみる限り,バックアップに係る特定エアセパレートガスの価格は,固定価格として規定されておらず,オンサイト契約期間中改定が予定されていないものではなく,実際に一部の需要者との間で値上げ交渉が行われていた。
 これらの事実からは,バックアップに係る特定エアセパレートガスの販売価格が値上げの対象となり得たことが認められる。
(b) バックアップに係る特定エアセパレートガスの値上げの実施に関し,4社間で情報交換や調整行為が行われており,バックアップに係る特定エアセパレートガスの販売について4社は互いに競争関係にあることが推認される。
(c) 4社の部長級の者らは,平成19年12月18日及び平成20年1月23日の会合において,値上げ交渉の余地があり,他社と競争関係にあるバックアップに係る特定エアセパレートガスについて,これを他の特定エアセパレートガスと特に区別することなく本件合意を成立させた。
 このことから,4社の部長級の者らは,本件合意の成立において,バックアップに係る特定エアセパレートガスも念頭に置いていたものと認められる。
(d) 以上によれば,バックアップに係るものであっても,特定エアセパレートガスである限り,本件合意の対象であったと認められる。

c 超高純度ガス
 超高純度ガスは,製造工程において通常のエアセパレートガスと相違があったとしても,基本的な製造工程は通常のエアセパレートガスと異なることはなく,輸送においても,タンクローリーによって供給を行うという点において通常のエアセパレートガスと異なるところはない。また,コスト構造においては,製造や運搬に要するエネルギーコストが主たる費用を占めるという点において通常のエアセパレートガスと共通している。
 以上のことからすれば,特定エアセパレートガスの値上げを検討するに当たっては,通常のエアセパレートガスのみならず超高純度ガスも同様に値上げを検討するのが合理的である。
 4社の部長級の者による会合において,本件合意の対象から超高純度ガスに該当するものを除くなどの意見が出ていたことは何らうかがわれないし,被審人は,本件合意後,他の特定エアセパレートガスと同様,ローリー供給に係る超高純度ガスの需要者に対し,値上げの申入れ及び値上げの実施を行っていたことが認められる。
 以上によれば,超高純度ガスであっても,ローリー供給に係るものである限り,特定エアセパレートガスに該当するのであり,本件合意の対象であったと認められる。

(ウ) 本件合意が「共同して相互にその事業活動を拘束」するものであること
 本件合意により4社の事業活動が事実上拘束される結果となることは明らかであるから,本件合意は,独占禁止法第2条第6項の「その事業活動を拘束し」の要件を充足する。
 また,本件合意の成立により,4社の間に,本件合意の内容に基づいた行動を採ることを互いに認識し認容して歩調を合わせるという意思の連絡が形成されたものといえるから,本件合意は,同項の「共同して・・・相互に」の要件も充足する。

イ 争点2について
(ア) 特定エアセパレートガスの販売分野という取引分野の画定の可否
 本件合意がタンクローリーによって供給される液化酸素,液化窒素及び液化アルゴンの総称である特定エアセパレートガスの販売価格の引上げに関するものである以上,特定エアセパレートガスの販売分野という一定の取引分野を画定し,当該取引分野における競争が実質的に制限されているかを検討するのが相当であり,かつ,それで足りるというべきである。
 本件において,4社は,いずれも液化酸素,液化窒素及び液化アルゴンの製造及び販売を営む者であり,それぞれのガス種のいずれについても4社で90パーセント弱の高い市場占有率を有するものである。そして,液化酸素,液化窒素及び液化アルゴンは,いずれも空気を唯一の原料とするものである上,同一の製造方法によって製造されるものであり,併産することが可能なものであって,液化酸素,液化窒素及び液化アルゴンは,原料,製造方法において共通する部分が多い。これらの事情を併せ考慮すれば,液化酸素,液化窒素及び液化アルゴンは,相互に需要の代替性がないものであるとしても,これらの総称である特定エアセパレートガス全体を一個の取引分野として画定することについて,特に不都合は見当たらない。

(イ) 本件合意により影響を受ける取引段階
 特定エアセパレートガスの販売経路は,様々なものがあるところ,本件合意は,ディーラー又はグループ会社から需要者への販売価格まで制限するものではないが,4社による特定エアセパレートガスの総販売金額は,我が国における大手ガス製造業者13社による特定エアセパレートガスの総販売金額の約9割を占めているのであるから,4社の取引先に対する特定エアセパレートガスの販売価格が引き上げられると,ディーラー又はグループ会社から需要者への販売価格にも影響を与えることは明らかである。
 したがって,本件における一定の取引分野を,製造業者による出荷から需要者の購入に至るまでの特定エアセパレートガスの販売分野全体としたのは相当である。

(ウ) 市場占有率の算定方法の相当性
 本件における4社の市場占有率については,4社を含む大手ガス製造業者13社の直接の販売相手(需要者,ディーラー,他の製造業者のいずれかを問わない。)に対する販売金額を算出し(ただし,13社間売買に係る販売金額は除外する。),これに対する4社の各販売金額の割合を計算する方法により算定した。
 本件のように,一定の取引分野が,複数の取引段階を包含して画定される場合,取引段階を異にする全ての販売に係る販売金額を合計することは,一つの商品の販売金額が重複して計上される場合もあることから,これを避ける必要がある。
 この場合,製造業者の市場占有率が問題なのであるから,大手ガス製造業者13社の直接の販売相手に対する取引段階を捕捉して算定する方法が,製造業者別にその販売金額を直接的に把握することができる点で,多数存在するディーラーや需要者からその取引金額を集計する方法よりも,正確性や簡便性の点で優れており,さらに,13社各社の総販売金額を単純に合計すると,13社間の売買部分について一つの商品の販売金額が重複して計上されることになるから,当該13社間の売買における売主の販売金額を控除したものである。
 このような,本件における4社の市場占有率の算定方法は合理的である。

(エ) 本件合意が一定の取引分野における競争を実質的に制限するものであること
 以上によれば,我が国における大手ガス製造業者13社による特定エアセパレートガスの総販売金額の約9割を占めていた4社が本件合意をしたものであり,これにより4社がその意思で我が国における特定エアセパレートガスの取引分野における販売価格をある程度自由に左右することができる状態がもたらされたことが認められるから,本件合意は,独占禁止法第2条第6項の「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」の要件を充足する。

ウ 争点3について
(ア) 排除措置を命ずるにつき「特に必要があると認められるとき」に該当するか否か
 本件合意は,平成22年1月19日以降,事実上消滅し,その結果,被審人の違反行為もなくなっている。
 しかし,本件違反行為の実行期間は約1年9か月に及んでいること,4社は,平成20年当時,我が国における大手ガス製造業者13社による特定エアセパレートガスの総販売金額の約9割を占めており,同種の違反行為が行われやすい環境であったといえること,被審人を含む4社が,本件違反行為を取りやめたのは,公正取引委員会の立入検査が契機であり,被審人らの自発的な意思に基づくものではなかったこと等に鑑みれば,4社が本件違反行為と同様の違反行為を繰り返すおそれがあることが認められる。
 したがって,本件において,被審人に対して排除措置を命ずるにつき「特に必要がある」と認められる。

(イ) 本件排除措置命令の主文の相当性
a 主文第1項(2)及び第3項並びに第1項(3)及び第4項について
 本件排除措置命令の趣旨,目的に鑑み,社会通念に従って合理的に解釈すれば,本件排除措置命令の主文第1項(2)及び第3項並びに第1項(3)及び第4項において販売価格の決定やその改定に関する情報交換が禁止される「他の事業者」とは,競争関係に立つ事業者を意味し,ここで禁止される「販売価格」の決定やその改定に関する情報交換とは,競争事業者間における競争手段となるはずである自社の販売先に対する「販売価格」に関する決定やその改定に関する情報交換を当該競争事業者間ですることを意味するということはおのずと明らかであり,本件排除措置命令の主文の上記各条項の内容は何ら不明確とはいえない。
 また,「他の事業者」や「販売価格」の意味内容について,上記のとおり解される以上,本件排除措置命令の主文の上記各条項の適用範囲が過度に広範ということもない。

b 主文第2項について
 本件排除措置命令の主文第2項によって周知が命じられる「製造業者及び販売業者」とは,同項に「自社の取引先である特定エアセパレートガスの製造業者及び販売業者」とあるとおり,取引関係の存することが前提となっているから,被審人自身の特定エアセパレートガスの取引関係に照らせば,その範囲はおのずと明らかである。
 また,本件違反行為は,特定エアセパレートガスの販売価格の引上げカルテルであるところ,これを排除するための本件排除措置命令の趣旨,目的に鑑み,社会通念に従って合理的に解釈すれば,同主文第2項における「取引先である・・・製造業者及び販売業者」に仕入先を含まないことは明らかである。
 さらに,同主文第2項は,その周知の方法について,あらかじめ公正取引委員会の承認を受けなければならないところ,周知先や周知文案を含め,周知方法は,公正取引委員会による本件排除措置命令の趣旨,目的と社会通念に従って導かれる客観的基準に即した裁量に基づく承認によって確定されるのであるから,同項が過度に広範で不明確であるということもない。

c 以上のとおり,本件排除措置命令の主文は,何ら過度に広範で不明確なものとはいえず,違法とはいえない。

エ 争点4について
(ア) エレクトロニクス産業向けのもの,大規模顧客向けのもの,バックアップに係るもの及び超高純度ガスに当たるもの
 特定エアセパレートガスのうち,エレクトロニクス産業向けのもの,大規模顧客向けのもの,バックアップに係るもの及び超高純度ガスに該当するものは,いずれも本件合意の対象に含まれており,本件合意による相互拘束から除外されていることを示す事情は見当たらない。

(イ) シリンダー充てん業者に対して販売するもの
 本件における「一定の取引分野」は,特定エアセパレートガスの販売分野全体であり,ローリー供給によって供給されるエアセパレートガスの販売であれば,取引段階を問わず本件における「一定の取引分野」に含まれるものである。そして,被審人からシリンダー充てん業者に対しローリー供給によって供給されるエアセパレートガス,すなわち特定エアセパレートガスの販売も当然にこれに含まれるものであり,これを別異に解する理由はない。

(ウ) 全額出資子会社等に対して販売したもの
 被審人の全額出資子会社等であるとはいえ,被審人とは別個の法人格を有し,法律上も独立の取引主体として活動しているものである以上,そのような子会社に販売した商品が違反行為の対象である商品から除外されているものと認めることはできない。

(エ) 上記(ア)ないし(ウ)は,いずれも特定エアセパレートガスである以上,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であることは明らかであり,「当該商品」に該当する。

オ 争点5について
(ア) 課徴金の計算に当たり,違反行為に係る取引について,小売業又は卸売業に認定されるべき事業活動とそれ以外の事業活動の双方が行われていると認められる場合には,実行期間における違反行為に係る取引において,過半を占めていたと認められる事業活動に基づいて単一の業種を決定するのが相当である(以下,この考え方を「過半理論」という。)。

(イ) また,独占禁止法第7条の2第1項が小売業又は卸売業について例外的に軽減した課徴金算定率を規定したのは,卸売業や小売業の事業活動の性質上,売上高営業利益率が小さくなっている実態を考慮したためであるから,課徴金の計算に当たっては,外形的には事業活動の内容が商品を第三者から購入して販売するものであっても,実質的にみて小売業又は卸売業の機能に属しない他業種の事業活動を行っていると認められる特段の事情(以下,単に「特段の事情」という。)があるときには,当該他業種と同視できる事業を行っているものとして業種の認定を行うことが相当である。

(ウ) 被審人が,本件実行期間中に,自ら製造し販売した特定エアセパレートガス及びオキシトン7社から購入して販売した特定エアセパレートガスを合算した数量は,同期間の被審人における特定エアセパレートガスの製造数量及び購入数量の合計の約56.37パーセントに相当し,過半を占めていたことが認められる。
 オキシトン7社は,被審人による特定エアセパレートガス等の製品の安定的供給,輸送等の費用の削減を図ることを主な目的として設立されたものであるところ,オキシトン7社に対する被審人による高い議決権保有率や取締役に対して被審人の支配が及んでいるという会社支配の観点,被審人により製造設備の設置等が行われている状況,オキシトン7社の製造する特定エアセパレートガス等の製品の引取りの実態,オキシトン7社における生産量や販売価格への関与の実態に照らし,オキシトン7社による特定エアセパレートガスの製造については,被審人の支配下にあるものといえるものであって,被審人自らが製造するのと同様の実態があったといえるのであり,実質的にみて,小売業又は卸売業の機能に属しない他業種の事業活動を行っていると認められる特段の事情が認められる。
 したがって,過半理論により,被審人の業種を小売業又は卸売業以外の業種と認定し,課徴金算定率を10パーセントとするのが相当である。

関連ファイル

問い合わせ先

公正取引委員会事務総局官房総務課審決訟務室
電話 03-3581-5478(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp/

ページトップへ