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(平成28年11月18日)ワン・ブルー・エルエルシーに対する独占禁止法違反事件の処理について

(平成28年11月18日)ワン・ブルー・エルエルシーに対する独占禁止法違反事件の処理について

平成28年11月18日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,ワン・ブルー・エルエルシー(以下「ワン・ブルー」という。)に対し,独占禁止法の規定に基づいて審査を行ってきたところ,次のとおり,ワン・ブルーの行為は,不公正な取引方法の第14項(競争者に対する取引妨害)に該当し,独占禁止法第19条の規定に違反すると認められた。しかしながら,当該違反行為は既になくなっており,特に排除措置を命ずる必要があるとは認められないことから,本件審査を終了することとした。

1 ワン・ブルーの概要

名称
ワン・ブルー・エルエルシー
所在地
アメリカ合衆国 ニューヨーク州 ニューヨーク市ブロードウェイ 1350番地
代表者
ロエロフ・ピーター・クレイマー

(1) ワン・ブルーは,ブルーレイディスク(以下「BD」という。)規格の実施に当たり必須となる特許(以下「BD標準規格必須特許」という。)の特許権者(以下「ワン・ブルーの特許権者」という。)から委託を受け,多数のBD標準規格必須特許の管理等を行っているパテントプールである。
(2) ワン・ブルーの特許権者は,BD標準規格必須特許について他の者に公正,妥当かつ無差別な条件(FRAND〔fair, reasonable and non-discriminatory〕条件)でライセンスをすることを表明していた。また,ワン・ブルーの特許権者の中には,記録型BD(注)を製造販売している者が存在するところ,当該製造販売業者は,我が国における記録型BDの販売シェアの過半を占めている
(注)BDのうち,使用者においてデータの記録ができるもの。
(3) ワン・ブルーは,記録型BD,BDプレイヤー,BDレコーダー等の製品ごとにBD標準規格必須特許のライセンスを行っている。
 ワン・ブルーからBD標準規格必須特許のライセンスを受けることを希望する者は,製品ごとにワン・ブルーのライセンスプログラムに登録するための契約を締結することにより,当該製品の製造販売に必要なBD標準規格必須特許のライセンスを一括で受けることができるほか,ワン・ブルーの特許権者と個別に交渉してライセンスを受けることも可能となっている。

2 本件違反行為等

(1) ワン・ブルーは,平成24年頃から,我が国に所在し,記録型BDを製造販売するイメーション株式会社(以下「イメーション」という。)及びその親会社であり米国に所在するイメーション・コーポレーション(以下「米イメーション」という。)と,記録型BDに係るBD標準規格必須特許のライセンスについて交渉を行っていたが,ライセンス料について当事者間で合意することができなかった。
 当該交渉において,イメーション及び米イメーションは,ワン・ブルーに対し,公正で妥当なライセンス料を支払う意思があることの表明,公正で妥当と考えるライセンス料の提案,ワン・ブルーが提示するライセンス料の設定根拠の説明の要請等を行っていたが,ワン・ブルーは,非差別的な条件を提供するためにライセンス料について交渉はできないとして,当該設定根拠の説明も行わなかった。
(2) ワン・ブルーは,前記(1)のライセンスについての交渉を促進させるため,平成25年6月頃,イメーションが製造販売する記録型BDの販売を行っていた取引先小売業者のうち,我が国における有力な取引先3社に対して,ワン・ブルーの特許権者が当該取引先の特許権侵害行為について差止請求権を有していること等を内容とする通知書を送付した(以下,当該通知書の送付を「本件告知」という。)。
(3) 当該取引先小売業者のうち1社は,本件告知を受けて,平成25年6月中旬頃から平成27年3月頃までの約1年9か月間,イメーションが製造販売する記録型BDの販売を停止した。
(4) イメーションは,平成25年8月,ワン・ブルーによる本件告知と同様の行為の差止め等を求めて,東京地方裁判所に訴訟を提起したところ,同裁判所は,平成26年5月16日の知的財産高等裁判所大合議決定で示された差止請求権の行使の制限に関する法的見解を踏まえて,平成27年2月18日,ワン・ブルーの特許権者が前記(2)の差止請求権を行使することは「権利の濫用」として許されず,これを行使できるかのように告知することは虚偽の事実を告知したものというべきであり,不正競争防止法上の不正競争に該当する旨の判決をし,その後,当該判決は確定している。
(5) 前記(4)の判決が確定したことを受け,イメーションが製造販売する記録型BDの販売を停止していた前記(3)の小売業者は,平成27年4月頃,その販売を再開した。
(6) イメーションは,平成27年12月頃,記録型BD市場等の今後の成長が困難な見通しであるなどの理由から,記録型BDの製造販売事業から撤退している。

3 公正取引委員会の対応

(1) イメーションは,前記2(1)の事実によれば,記録型BDに係るBD標準規格必須特許について,FRAND条件でライセンスを受ける意思を有していた者と認められるところ,前記1及び2(1)から(3)までの事実によれば,ワン・ブルーは,自己と我が国における記録型BDの取引において競争関係にある事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害していたものであって,この行為は,不公正な取引方法の第14項(競争者に対する取引妨害)に該当し,独占禁止法第19条の規定に違反するものである。
(2) 前記2(5)のとおり,イメーションが製造販売する記録型BDの販売を停止していた小売業者が,平成27年4月頃,その販売を再開したことから,遅くとも同月頃以降,ワン・ブルーの違反行為は行われていないと認められる。
(3) 前記(1)のとおり,ワン・ブルーの行為は,不公正な取引方法の第14項(競争者に対する取引妨害)に該当し,独占禁止法第19条に違反するものであるが,
 ア 前記2(4)から(6)までの事実及びワン・ブルーが本件告知後,同様の行為を行っていないこと
 イ ワン・ブルーは,前記2(4)の判決,独占禁止法,「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(FRAND条件でライセンスを受ける意思を有する者に対する差止請求訴訟の提起等に係る考え方)等を遵守すること,本件告知と同様の行為を行わないことについて確認しており,さらに,本件告知等の業務上の意思決定及び遂行が数名で行われていることを踏まえれば,同社における法令遵守体制が確保されていること
 ウ 近年,記録型BDの市場規模はほぼ横ばいであり,記録型BDの製造販売事業から撤退した事業者が存在するなど,今後,当該市場への新規参入が活発に行われる可能性は低いところ,現在,我が国で販売されている記録型BDのほとんど全ての製造販売業者は,ワン・ブルーと記録型BDに係るBD標準規格必須特許のライセンス契約を締結していること
等の諸事情を総合的に勘案すれば,違反行為が繰り返されるおそれはなく,かつ,違反行為の結果が残存しており競争秩序の回復が不十分であるとは認められなかったことから,特に排除措置を命ずる必要があるとは認められないと判断し,本件審査を終了することとした。
(4) 当委員会としては,今後とも,知的財産の利用における公正かつ自由な競争の促進の観点から,知的財産に関する技術・製品分野における競争の状況を注視するとともに,事業者又は事業者団体による知的財産の利用に関する独占禁止法上問題となる行為があった場合には厳正に対処していくこととする。

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公正取引委員会事務総局審査局第三審査
電話 03-3581-3383(直通)
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