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(平成29年1月18日)独占禁止懇話会第205回会合議事概要

(平成29年1月18日)独占禁止懇話会第205回会合議事概要

平成29年1月18日
公正取引委員会

1 日時

平成28年12月22日(木曜)10時00分から12時00分

2 場所

公正取引委員会大会議室

3 議題

 携帯電話市場における競争政策上の課題について
 介護分野に関する調査報告書
 課徴金減免制度導入後の10年の成果と今後の在り方

4 議事概要

 各議題について,事務総局から説明を行い,会員から大要以下のような意見・質問が出された。

(1)携帯電話市場における競争政策上の課題について

 会員 携帯電話の販売に関して記事にすると,反響が大変大きい。携帯電話は生活に欠かせないものとなっており,関心が高いと考えられる。公正取引委員会が携帯電話市場における競争政策上の課題を整理することは,消費者が競争政策への理解を深めることに役立つ。
契約解除料金が高すぎるという消費者の声があるところ,資料205-1-3の13頁には,「ユーザーが中途解約することが困難な程度に契約解除料を不当に高く設定する場合には,独占禁止法上問題となるおそれがある」と記載されているが,この基準をより具体的に,客観的に示すことは可能か。示せるのであればMNOの認識が深まる。
 事務総局 ユーザーの乗換えを阻害するかの判断は,ケースバイケースにならざるを得ず,契約解除料の金額だけでなく,サービス内容も考慮する必要がある。

 会員 国際的にみて,日本の携帯電話通信料の水準は高いのか。仮に,そうではないとするならば,個別には問題があっても,全体としては事業が効率的に営まれ,設備投資が適切に行われているということになるのではないか。
 事務総局 総務省のデータによれば,諸外国と比べ著しく高いわけではないものと理解している。他方で,資料205-1-3の8頁でも指摘したように,契約内容が複雑であるため,高齢者などにとっては理解が困難な場合があるとの指摘もある。

 会員 アプリ市場の競争に関しては,今回は重点的な問題として取り上げなかったということであろうが,記述が少ないと感じた。
平成28年9月に,経済産業省において取りまとめられた「第四次産業革命に向けた横断的制度研究会報告書」においては,OSやアプリストアを運営している事業者について実態調査を行い,重要な指摘がなされている。公正取引委員会もこの研究会にオブザーバーとして参加し,また,実態調査を経済産業省と共同で行っているので,今後に期待している。
 事務総局 今回,公正取引委員会は通信役務市場と端末市場について重点的に調査したため,公表した報告書ではアプリ市場に係る記述は少ないが,引き続き,検討課題としたい。

 会員 本報告書においては,MVNOの新規参入促進が中心的に取り上げられているが,MNO間の競争・乗換えの促進も重要である。また,格安スマホは確かに安いが,MVNOの通信契約のうち,MNOの回線の利用がほとんどであって,再販売もあり,これで競争単位といえるのか疑問。MVNOが自立した競争単位となれるような政策を検討すべき。
 事務総局 今回の報告書においては,MVNOの新規参入促進を携帯電話市場における競争を促進する大きな手段として位置付けている。MVNOの新規参入により,価格競争だけでなく,MVNOが独自のSIMカードを発行することなどを通じて,多様なサービスが提供されるようになり,消費者にとっての選択肢が増えることが重要と考えている。

 会員 MNO間の競争を活発にするのも重要であるが,寡占的・協調的な状況下で競争的な行動を期待するのは難しい。そのような状況下では,撹乱作用としてMVNOの新規参入が重要となってくる。

 会員 端末が無料というのは要するに,バンドリングの一形態であって,消費者が合理性の脆弱性につけ込まれやすい契約設計になっていることが問題である。新規参入を促すためには,このような消費者との契約上の問題が解消されることも重要なのではないか。
また,携帯電話を基盤として発展するプラットフォーム市場における,競争阻害的な,特に新規参入阻害的な行為を防止する上でも,今後とも公正取引委員会による調査・研究に期待している。

 会員 現在のMNOによる端末販売戦略はバンドリングの一形態であり,非ハードコアカルテルのような印象を受けるが,形式的には,端末料金を割り引いているので消費者利益を侵害しているようにはみえず,違法であると言い切るのはなかなか難しいように思う。いわゆる2年縛りもあり,消費者がロックインされるという現状につながっていると思われる。

 会員 本報告書において,移動電気通信業は,独占的状態の市場構造要件を満たしていると記載しているところ,公正取引委員会による措置が採られていないということは,何か弊害要件等を満たさないということであろうが,独占禁止法第2条第7項のどの要件を満たさないために独占的状態とは認められないのか。
 事務総局 独占的状態にあるというためには,営業利益率,新規参入等の要件についても精査する必要がある。

(2) 介護分野に関する調査報告書

 会員 事業者の業務の効率化という観点からは,保険外サービスの提供をアウトソーシングするという制度設計も考えられる。
 事務総局 公正取引委員会としては,保険内サービスと保険外サービスを同時一体的に提供することを一律に禁止するのではなく,同時提供を禁止することにより業務が非効率になっているのであればそれを可能とし,保険内サービスと保険外サービスの同時提供が商品として成り立つかどうか事業者に考えてもらえればよいのではないかと考えている。その上で,自身で提供するものとアウトソーシングするものと,事業者が個々に判断していただければよいと考えている。

 会員 医療分野における混合診療の議論では,株式会社の参入により高額な保険外サービスばかりを提供する事業者が出てくると,保険内サービスのみの提供を希望する消費者によくないのではないかという問題意識があったと記憶しているが,介護分野においても同じような懸念があると考えられる。
 事務総局 混合介護を導入すれば,保険内サービスと組み合わせることになるので,その意味では高額化することも考えられる。ただし,制度設計として,保険内サービスのみを受けることも可能にするなど,利用者が選択できるようにすべきであると考えている。
事業者に色々なサービスの選択肢を持たせることによって,事業者が体力をつけ,全体として,サービスを維持できるようになるのではないかと考えている。

 会員 株式会社の参入がサービスの質の向上につながればよいが,株式会社は営利を目的としているのであり,株主に配当したりする必要等もあることから,株式会社が特別養護老人ホーム運営事業に参入できるようにしたとしても,サービスの質や労働者の待遇を上げるか,疑問である。
 事務総局 株式会社も社会福祉法人と同様に,守るべきルールを守ってもらう必要がある。また,事業者のサービスの良し悪しが分かるようにしていくことで,サービスの質・労働者の待遇を下げてでも営利を追求しようとする事業者を牽制していく必要があると考えている。
 事務総局 本報告書公表後,介護関係者,国会等で様々な議論があり,特別養護老人ホーム運営事業への株式会社の参入,株式会社と社会福祉法人の税制面でのイコールフッティング,いわゆる混合介護の弾力化について,厳しい御意見をいただいた。公正取引委員会としては,競争の促進という観点から,産業としての介護サービスに関する報告書を作成したところであるが,同時に,介護サービスは,福祉の面も強いところがある。そのため,株式会社が利益優先に走ったり,混合介護の弾力化により利用者が知らないうちに過剰なサービスを押し付けられたり,介護サービスを行っている方の待遇面で不利益が発生したりするのではないか,ボランティアを含め福祉を担うべき業態の方に任せるべきではないかといった意見も出たところである。公正取引委員会としては,先ほど申し上げたように,産業としての介護サービスについて競争政策の観点から提言をしたが,他の観点からの議論も必要であることは重々承知している。

 会員 資料205-2-1の3頁に需給調整を目的とした規制として,総量規制が取り上げられている。総量規制の運用に当たっては,需給バランスが取れていないことを理解した上で,透明性を確保することが必要と考える。総量規制については,前提として,適切な介護サービス量を見込むことが必要であって,これが十分に行われないと利用者に必要な介護サービスが供給されないことにつながりかねない。
また,先日,社会保障審議会介護保険部会でとりまとめられた意見に,サービス供給への保険者の関与に係る記述がある。介護サービス事業者の新規指定においては,地域の介護サービスの需給バランスを考慮し,利用者の選択権を阻害しないことが重要ではないか。

 会員 参入規制には経済的規制と社会的規制の2種類が存在する。経済的規制に関してはレントシーキング等の批判もあり,先進国では,原則的には廃止するという状況にある。一方で,社会的規制は消費者・利用者や労働者等の安全・安心を論拠として導入される規制である。参入規制を論ずるに当たっては,この2種類の規制態様があるということを考慮しなければならず,まず,社会的規制の論拠となるものを損なわないことを保障した上で,経済的な効率性の向上を論じなければならない。

 会員 今後,対応の良くない地方公共団体等において,どのようにイコールフッティングの実効性を担保するかということが問題であると考えている。例えば,独占禁止法や官製談合防止法を適用したり,調査をした上で,公表したりするのか。
 事務総局 イコールフッティングの実効性担保に関しては,地方公共団体の行為を独占禁止法・官製談合防止法により取り締まることはできないので,今回のアンケート調査のフォローアップのような形で行っていきたいと考えている。

 会員 参入規制について,需給調整をやむなしとするのは,既存事業者の保護につながり,問題があるのではないか。既存事業者が入れ替わらなければ利用者は救われないのではないか。
 事務総局 いわゆる総量規制についてはそもそも不要との意見もあるが,介護給付費が過剰となることを抑制するためなどの理由からやむを得ない面もあると考えている。ただし,地域ごとの介護サービスのニーズを的確に見極めるべきである旨,報告書に記載している。

(3) 課徴金減免制度導入後の10年の成果と今後の在り方

 会員 課徴金減免申請に関する公正取引委員会への事前相談において,申請した場合に得られる順位が低い場合に申請自体をやめてしまう事業者がいるのではないかと思うが,そのような順位を回答しているのか。
 事務総局 事業者が減免申請を行うか否かの判断に当たり,申請した場合に得られる順位は重要な要素であるため,回答している。ただし,回答に当たっては,それなりの情報がなければ判断できないため,様々な情報を確認した上で回答する。
また,事前相談は,真に減免申請を検討している事業者のためのものであり,情報収集目的と思しき事業者には回答しない。

 会員 事前相談において申請した場合に得られる順位を回答しているとのことであるが,最終的な順位は申請者から提出される報告書・資料の内容と,違反行為者の範囲,取引分野等の違反行為に対する措置の内容から確定されるところ,事前に回答していた順位と最終的な順位が異なる場合はないのか。
 事務総局 そういった可能性は考えられるが,事前相談時になるべく具体的に話を聞き,事前相談に回答した順位と最終的な措置の段階での順位が異なることがないよう,慎重に対応している。

 会員 平成28年5月以前においては,課徴金減免制度の適用事業者は公表を望む場合のみ公表されていたところ,平成28年6月より,課徴金減免制度の適用事業者が全て公表されるようになった。全て公表されることが,減免申請のディスインセンティブとはならないのか。
 事務総局 課徴金減免制度が導入された当時は,我が国初の制度であり,事業者が制度を活用するか否か,疑問視されていたため,申請のディスインセンティブを排除するために,希望した事業者のみ公表するという制度設計にした。
しかし,本来的には,制度運用の透明性の観点から公表すべきであり,課徴金減免制度が定着した今日においては,ディスインセンティブ排除の必要性もなくなったと判断し,あるべき姿に戻した。

                                                 以上

 (文責:公正取引委員会事務総局 速報のため事後修正の可能性あり。)

関連ファイル

参考

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独占禁止懇話会の最近の開催状況

問い合わせ先

公正取引委員会事務総局経済取引局総務課
電話 03-3581-5476(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp/

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