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(平成30年3月29日)米国ドル建て国際機関債の取引を行う事業者に対する独占禁止法違反事件の処理について

(平成30年3月29日)米国ドル建て国際機関債の取引を行う事業者に対する独占禁止法違反事件の処理について

平成30年3月29日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,外国に所在する複数の事業者が,国際機関等がアメリカ合衆国ドル建てで発行する債券(以下「米国ドル建て国際機関債」という。)の取引に関し,受注調整を行っている疑いについて,独占禁止法の規定に基づいて審査を行ってきたところ,次のとおり,我が国に所在する金融機関を相手方とする取引において,独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていた事実が認められた。
 しかしながら,当該違反行為は,平成24年5月31日以降既になくなっており,独占禁止法第7条第2項ただし書及び同法第7条の2第27項に規定する期間を経過していることなどから,当委員会は,本件審査を終了するとともに,独占禁止法の運用の透明性を確保するほか,他の金融機関において本件と同様の独占禁止法違反行為が行われることのないよう未然防止を図るなどの観点から,本件の処理を公表することとした。

1 事業者の概要

番号

名称
(法人番号)

所在地 代表者
1

ドイチェ・バンク・アクチエンゲゼルシヤフト
(6700150001325)

ドイツ連邦共和国 フランクフルト・アム・マイン タウヌスアンラーゲ 12 ジョン・クライアン
2 メリルリンチ・インターナショナル 英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国) ロンドン キング・エドワード・ストリート 2

アレクサンダー・ウィルモット・シットウェル

2 本件違反行為等

(1) 見積依頼等
 我が国に所在する特定の金融機関(以下「特定顧客」という。)は,平成24年5月30日,特定の国際機関が新たに発行する額面金額計3億ドルの米国ドル建て国際機関債(以下「新発債」という。)を購入する取引及び自社の保有する当該国際機関が発行した額面金額計2億5000万ドルの米国ドル建て国際機関債(以下「既発債」という。)を売却する取引を同一の金融機関との間で行う入替取引(以下「本件取引」という。)を実施するため,新発債の主たる引受幹事会社であった,ドイチェ・バンク・アクチエンゲゼルシヤフト(以下「ドイチェバンク」という。)及びメリルリンチ・インターナショナル(以下「メリルリンチ」という。また,以下,両社を併せて「2社」という。)を含む英国ロンドンに本店又は営業所が所在する金融機関3社(以下「金融機関3社」という。)に対して,本件取引の取引条件について,見積依頼を行った。
 特定顧客は,金融機関3社のうち,新発債を特定顧客に売却でき,かつ,特定顧客にとって最も有利な既発債の取引条件を提示した者と本件取引を行うこととしており,金融機関3社は,このことを認識していた。
(2) 合意内容
 2社は,平成24年5月30日,それぞれ,本件取引に関する見積依頼の連絡を受け,2社の英国ロンドンに所在する本店又は営業所において米国ドル建て国際機関債の値付けを行うトレーダーの間で,情報ベンダーが提供するチャット機能を利用して既発債の購入に関する情報交換を行った。その上で,2社は,既発債について,メリルリンチが,ドイチェバンクが特定顧客に提示したとするスプレッド(注1)よりも大きい値(注2)を特定顧客に提示することにより,ドイチェバンクが本件取引を受注できるようにすることに合意した。この際,2社は,金融機関3社のうち2社以外の1社が本件取引に消極的であるとの認識を共有していた。
 (注1)ここでいう「スプレッド」とは,米国ドル建て国際機関債の利回りと,当該債券と償還期間が同程度の米国債の利回りとの差をいう。
 (注2)正の値のスプレッドが大きい値となるにつれて米国ドル建て国際機関債の価格は低下することとなる。
(3) 実施状況
 2社は,平成24年5月30日,それぞれ,特定顧客に対し,新発債を売却できる旨を回答するとともに,メリルリンチは,前記(2)の合意に基づき,既発債について,ドイチェバンクが特定顧客に提示したとするスプレッドよりも大きい値を提示した。
 その結果,同日,特定顧客は,既発債について,自社にとって最も有利なスプレッドを提示したドイチェバンクとの間で取引条件の交渉を行い,ドイチェバンクとの間で本件取引を実施することを決定し,これにより,ドイチェバンクが本件取引を受注した。

3 本件の処理等

(1) 法令の適用
 以上の事実によれば,2社は,共同して,本件取引について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする旨合意することにより,公共の利益に反して,本件取引に係る取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
(2) 本件の処理
 本件取引は平成24年5月30日に終了しており,前記の違反行為は同年5月31日以降既になくなっている。したがって,独占禁止法第7条第2項ただし書及び同法第7条の2第27項に規定する期間(5年)が経過しているものと認められるため,公正取引委員会は,本件において2社に対して排除措置命令及び課徴金納付命令を行うことはできない。
 また,当委員会は,2社が,米国ドル建て国際機関債の取引に関する独占禁止法違反行為の未然防止に向けた取組及び同法の遵守に向けた取組を行っていることを確認している。
 よって,当委員会は,本件審査を終了することとした。

問い合わせ先

公正取引委員会事務総局審査局第一審査上席(国際担当)
電話 03-3581-4013(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp/

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