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平成22年2月3日付 事務総長定例会見記

平成22年2月3日付 事務総長定例会見記

 [発言事項]

事務総長会見記録(平成22年2月3日(水曜)13時30分~於 官房第1会議室)

 [発言事項]

最近の下請法違反事件について

 (事務総長) まず,1点目ですが,公正取引委員会は,従来から下請法違反行為に関しましては厳正に対処してきているところでありまして,平成21年度におきましては,本日までに14件の下請法違反事件について勧告,公表を行っております。このうち4件につきましては,いずれも下請代金の減額という違反行為が認められたことから,先週の1月27日から昨日までの1週間の間に勧告,公表した案件でありますので,本日は,この4件の概要の紹介とともに,それぞれ関連する業界において注意していただきたい点についてもお話をさせていただきたいと思います。
 1件目は,1月27日に勧告いたしました貨物自動車運送事業者のコイズミ物流株式会社に対する件であり,2件目も貨物自動車運送事業者に対するもので,1月27日に勧告いたしました諸星運輸株式会社に対する件であります。3件目は,1月29日に勧告いたしましたタオル等の製造・販売業者の丸眞株式会社に対する件であり,4件目は,昨日勧告いたしました食料品等を中心に販売しているスーパーマーケットの株式会社とりせんに対する件の4件であります。
 この4件の勧告事件のうち,1件目と2件目のコイズミ物流と諸星運輸に対する件はいずれも運送事業者による下請代金の減額案件であります。公正取引委員会は,下請法が改正されまして,勧告事件を公表することになった平成16年4月以降,この5年強の間に67件の下請法違反事件の勧告・公表の措置を採っておりますが,この運送関係の事業者に対しての勧告が19件であり,3割近くを占めているという状況にあります。平成21年度におきましてもこれまでに2件,今申しました2件を含めまして4件の勧告・公表を行っておりまして,運送関係の業界におきましても一層,下請取引の適正化が望まれるわけです。今回は,取扱手数料といった名目で下請代金から一定額を差し引く,それが貨物運送業界において半ば慣習化していたということもあったようでありますが,下請法では,親事業者が下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに発注時に定められた下請代金の額を発注後に減ずることを禁止しているわけでありまして,その減額の名目,方法,金額の多少を問わず,発注後いつの時点で減額しても下請法違反となるというわけであります。業界の慣習であったからという形で,一定額を差し引くことは下請法違反となりますので,こういう点についても十分注意していただきたいと思います。
 それから3件目の丸眞株式会社に対する件,これは先ほど申しましたようにタオル等の製造・販売業者であります。これは「歩引」の名目で下請代金から一定額を差し引いていた事件ですが,平成21年度におきましては,6月に勧告した東光商事株式会社に対する件,あるいは10月21日に勧告しました株式会社キングに対する件と,いずれも繊維製品関係の事業者が「歩引」の名目で下請代金から一定額を差し引いていた減額事件であったわけであります。
 このように繊維製品関係の業界においては「歩引」の名目で下請代金から一定額を差し引くという減額案件が相次いで認められたわけでありまして,この「歩引」が業界の慣習のようなものであっても,下請法上は,下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに,発注時に定められた下請代金の額を発注後に減ずることは,下請法違反になるわけでありますので,繊維製品関係の業界におきましては,従前,私どもも何度か業界への改善要請を行っておりますが,下請法違反事件が後を絶たないということもありますので,十分注意していただきたいと思います。
 それから4件目の株式会社とりせんに対する件でありますが,これは,自社で販売するプライベートブランド商品の製造委託について減額が行われていたというものであります。これは製造設備を持たず,製造をしていない事業者であっても,自らが販売する物品についての製造を他の事業者に委託するという場合は,下請法上の製造委託に該当するので,スーパーマーケットをはじめとする大規模小売業者が自社のプライベートブランド商品の製造を委託するということは,下請法の規制対象に含まれますので,この点についても十分御注意いただきたいと思います。
 公正取引委員会といたしましては,引き続き,下請法違反行為が行われないように監視に努めるとともに,違反行為を行った事業者に対しては,厳正に対処してまいりたいと考えております。

中小事業者取引公正化推進プログラムの実施状況について

 (事務総長) 2点目でありますが,昨年11月に公表いたしました中小事業者取引公正化推進プログラムの実施状況についてであります。昨年11月18日から,厳しい経済状況下において取引先の大企業等から不当なしわ寄せを受けやすい中小事業者全般について,その取引の公正化を一層推進することを目的とした「中小事業者取引公正化推進プログラム」を実施しているわけでありますが,本日は,そのプログラムに挙げられた項目のうち,中小事業者の立場に立った相談や広報,あるいは大企業,親事業者のコンプライアンスの推進等に係る取組を中心に,現時点までどういう実施状況になっているかお話させていただければと思います。
 まず,1つ目が公正取引委員会による中小事業者のための移動相談会というものであります。これは,下請事業者のほか,大規模小売業者と取引している納入業者でありますとか,荷主と取引している物流事業者といった中小事業者等が不当な不利益を受けることがないようにということで,いろいろな御要望に応じまして,中小事業者が所在する地域等に公正取引委員会の職員が出張いたしまして,独占禁止法上の優越的地位の濫用規定,あるいは下請法についての規定の内容等を説明する,あるいは相談の受付も行うこととしております。
 昨年の11月18日に公表させていただいた以降,全国で15件実施しておりまして,今後,更に年度内に,現在予定されているところで11件実施する予定となっております。移動相談会には,製造業,運送業,ソフトウェア制作業,様々な事業者の方からお申込みいただいているところであります。
 2つ目でありますが,中小事業者専用相談窓口の設置についてであります。これは,公正取引委員会の本局及び各地方事務所の下請課等におきまして優越的地位の濫用規制あるいは下請法についての個別相談に関しての窓口を設置いたしまして,データの集計の関係で恐縮なのですが,昨年の暮れまで,11月に実施してから1か月半ほどですが,全国で1,400件ほどのお問い合わせをいただいている状況であります。
 それから3つ目が業種別講習会の実施についてであります。これまで独占禁止法違反行為が見られた業種なり,各種の実態調査で問題があった業種等に関しましては,優越的地位の濫用規制あるいは下請法について,業種ごとの実態に即した具体例を用いること等により説明を行い,一層の法令遵守を促すための講習会を実施していたわけでありますが,この業種別講習会につきましては,昨年11月25日に金融機関向けに実施しており,今後,今年度中に,製造業者向け,あるいはコンテンツの制作業界向け,あるいは物流業界向けといった業種向けの講習会を全国で19回ほど実施することを予定している状況であります。
 このほか,中小事業者取引公正化推進プログラムにおきましては,下請取引以外の中小事業者の取引の公正化を図る必要が高い分野に係る特別調査といたしまして,大規模小売業者と納入業者との取引に関する調査,あるいは荷主と物流事業者との間の取引に関する調査も実施しておりまして,現在,調査結果の取りまとめ作業をしているところであります。
 また,違反事件の摘発のために,優越的地位の濫用行為に関しまして重点的かつ効率的な事件処理を行うために,審査局内に優越的地位濫用事件のタスクフォースも設置しておりまして,現在,事件処理に向けて鋭意作業をしているという状況であります。
 昨今の経済情勢からも中小事業者が相変わらず非常に厳しい状況にあるということでありまして,大企業,親事業者との取引において大変厳しい状況,対応を迫られているということでありますので,公正取引委員会といたしましては,今後とも中小事業者取引の適正化,公正化を一層推進するという観点から,今申しましたプログラムを着実に実施してまいりたいと考えているところであります。

 [質疑応答]

 (問) 先日,内閣府の大塚副大臣が独占禁止法の適用除外の制度について,見直しなのか,研究なのか分かりませんが,3月末までに公正取引委員会から説明を聞くというようなお話があったのですが,具体的に,今現在,どういったお話が公正取引委員会にきていて,今後の進め方,現時点での対応とスケジュール感を教えてください。

 (事務総長) お話は,大塚副大臣が公正取引委員会の担当になられたということもあって,経済成長戦略との関係で,独禁法の適用除外措置に御関心をお持ちになられまして,この適用除外制度等が地域及び経済の活性化に資する対応になっているかどうかという問題意識から私どものほうに実態についての説明を求められているということだろうと思います。
 この独占禁止法の適用除外制度と申しますのは,私どもも従前から,この見直しを進めてきておりまして,平成8年当時は,実は30法律,89制度ほどあったわけでありますが,現在ではこれが15法律,21制度まで縮減されてきていますし,平成9年,平成11年,平成12年といった年に,それぞれ公正取引委員会として関係省庁とも協議をした上で適用除外の制度の縮小を図る法律改正を行ってきている状況であります。
 ただ,まだ現在時点においても,航空でありますとか,農協でありますとか,農業分野,いろいろと適用除外制度が残っているということであります。これにつきまして,現状どうなっているかという実態についての御報告をするようにという御指示があったということでありますので,それを踏まえさせていただきまして,私どもとしても,従前の見直しの状況でありますとか,その後,公正取引委員会としても,例えば外航海運でありますとか,あるいは国際航空に関しましては,私どもとして見解を述べて,関係省庁に適用除外制度の見直しをしていただくように検討の要請を行っている例もありますし,あるいは独禁法違反事件として処理をしている分野の問題もございます。こういった状況等も含めて御説明をさせていただければと考えております。
 スケジュール感ということでありますが,いろいろ御指示がありますので,2月,3月という期間に作業をして御報告をするということになるだろうと思っております。

 (問) 今の関連なのですが,この報告をするために公取委さんの中で何か特別チームみたいなものを作って作業をするとかですね,実際はどのような形での作業の進め方になるのでしょうか。

 (事務総長) 実際こういう適用除外制度についての私どもの担当の部署は,経済取引局の調整課という課が所掌しておりますので,そちらのほうで一定の作業を行っていくということになると思っております。期間の問題もございますので,大々的な調査をこれから行うのは限界もあると思いますので,とりあえずその現状について,私どもが把握している実態なり,それをもとに御報告させていただくということで,また新たな御指示があれば,それを踏まえて作業をさせていただくということになるのではないかと思っております。

 (問) 別件ですが,先週の会見でも出た質問ですが,JAL,日本航空の関連で前原大臣の発言でも質問しましたが,これについて今もって仙谷大臣から特にこちらに何か,指針なりを作るようにという指示というのは,今の時点でもまだないということでよろしいのでしょうか。

 (事務総長) そうですね。先週も述べさせていただきましたが,具体的に何かこういう作業をしなさい,あるいはこういうことを検討してほしいというような御要請があったということは承知しておりません。

 (問) キリンとサントリーの件について何かありますでしょうか。

 (事務総長) キリンとサントリーの経営統合ということで,以前から何回も御質問いただいている話でありますが,現状を申し上げますと,当時会社に追加資料のリストを提示させていただいて,資料の提出を促しているところでありますが,先月末,その資料の一部が提出されている状況であります。ただ,私どもがリストとしてお願いした資料すべてが届いてそろっているというわけではありませんので,そういう意味では,まだ現時点において第1次審査に入っているという状況ではありませんが,私どもとしましても,今まで出していただいた資料等につきまして,内容の検討を進めさせていただくことと併せまして,その他,残っている資料もなるべく早い段階で出していただくようにお願いをしているという状況であります。

 (問) 海外の鉄鉱会社のリオ・ティントとBHPビリトンの事業統合の件で,海外当局では審査始まっているようですが,公取さんのほうはどういう状況なのでしょうか。

 (事務総長) このBHPビリトンとリオ・ティントの件では,日本における代理人を通じまして資料の提出がありまして,事前相談の申し出ということかと思います。現在,その資料の内容を精査している状況であります。
 事前相談ということであれば,公正取引委員会としても一定のスキームに従って審査を進めていくということになると思います。この案件は御案内のとおり,一昨年の段階でも,私どもは事件として調査を途中まで進めていた経緯もございますし,今回は若干スキームが違いますが,日本の鉄鋼メーカーに大きな影響が出る重要な案件であると思いますから,しっかりとした厳正な調査,審査が必要だろうと考えているところであります。

 以上

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