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平成22年4月7日付 事務総長定例会見記録

平成22年4月7日付 事務総長定例会見記録

 [発言事項]

事務総長会見記録(平成22年4月7日(水曜)13時30分~於 官房第1会議室)

 [発言事項]

平成21年度における独占禁止法及び下請法の運用状況について

 (事務総長) まず,独占禁止法違反行為に対する法的措置でありますが,平成21年度としては26件の法的措置,排除措置命令を行ったということであります。ここ5年間は,10数件ないし20件台前半の数字でしたので,過去5年間では最高であるいうことであります。個々の事件についてみましても,多様な分野において,それなりにインパクトのある審査が行うことができたのではないかと考えております。
 また,課徴金納付命令の金額でありますが,360億7471万円ということでありまして,これも過去最高額であります。これまでの過去最高額が平成20年度の270億3642万円でありますから,それに比べても90億円程多くなって過去最高額となったということであります。この360億円の内訳でありますが,平成17年改正法に基づく課徴金納付命令,平成17年以降の事件になりますが,これが232億,それ以前の旧法の独占禁止法違反事件に基づいて審判等が行われて,その旧法に基づいての課徴金納付を命じる審決によって行われた,そういう面では,平成17年以前の事件についての課徴金納付命令というのが128億であったということで,それを合わせた数字が360億円ということであります。
 行為類型別で見てみますと,入札談合事件,これが17件ということでありまして,電力会社が発注する電力用電線の入札談合事件,国土交通省が発注する車両管理業務の入札談合事件,それから防衛省航空自衛隊が発注する什器類の入札談合事件があったわけでありますが,御案内のとおり,国土交通省が発注する車両管理業務の事件,それから防衛省航空自衛隊が発注する什器類入札談合事件につきましては,発注者の職員による入札談合等関与行為が認められたということで,入札談合等関与行為防止法を適用して,国土交通大臣,防衛大臣に対して,それぞれ改善措置要求を行ったところであります。
 それから,カルテル事件,これが5件ありまして,大きな事件としては溶融亜鉛メッキ鋼板,これは刑事告発を行った事件でありますが,これに対しての行政処分であります法的措置が3件,岡山市の市立中学校の修学旅行に関しての料金カルテル事件,テレビ用ブラウン管の製造販売業者らによる価格カルテル事件があったわけでありますが,特にこのテレビ用ブラウン管の製造販売業者による価格カルテル事件では,海外で行われた我が国向けの競争制限行為に関して外国事業者に課徴金の納付を命じた初めての事件であったという特徴が挙げられると思います。
 また,中小事業者に不当な不利益を与える行為につきましてもいくつか取り上げておりまして,優越的地位の濫用行為につきましては,フランチャイズチェーン本部,セブン-イレブンジャパンについての事件,それから大型のホームセンターに関しての事件と合わせ,いずれも大規模事業者が納入業者,あるいは加盟店に対して,優越的地位を濫用したということで法的措置を2件採っております。そのほか,ガソリンスタンドにおける不当廉売事案や荷主による物流事業者に対しての優越的地位の濫用事件等に関して,9件の警告・公表も行っております。
 そのほか,知的財産権に関連する事件として,国際的な標準規格に必須な知的財産権を有する者によるライセンス契約において,非係争条項,あるいは無償許諾条項といったような契約条項を余儀なくさせるという行為が拘束条件付取引に当たるとして法的措置を採ったクアルコムの事件,それから,農業協同組合が運営する農産物の直売所による拘束条件付き取引事件,こういった事件も取り上げて法的措置を命じているということであります。
 このように非常に多様な分野において,インパクトのある事件審査を行うことができたということがこの1年間を振り返ってみた感想であります。
 次に下請法の運用状況,平成21年度における下請法の法的措置,勧告・公表でありますが,これにつきましては15件の勧告・公表を行っておりまして,これも平成16年4月の改正下請法施行以来,最多であったということであります。
 この15件は,いずれも下請代金の減額事案,不当値引の事案でありますが,昨年の4月に行った株式会社マルハニチロ食品に関しての事件では,不当な経済上の利益の提供要請,いわゆる協賛金の要請に関しても勧告を行っております。この協賛金の提供要請も平成16年4月から勧告対象にしているわけでありますが,これも本件が初めての適用事例であるということであります。この15件の勧告事件におきましては,下請事業者531名に対しまして,総額3億9259万円の減額分の返還がされているところであります。
 そのほか細かな運用状況等につきましては,後日,数字がまとまりましてから公表させていただきます。法執行の実績に関しては以上であります。

国際カルテル担当上席等機構の充実について

 (事務総長) 本年4月1日から,国際カルテル担当の上席審査専門官という組織が新設されております。御案内のとおり,近年,経済活動もグローバル化し,それに関連して国際カルテルも見受けられ,迅速かつ厳正に対処するためには各国の競争当局間がそれぞれ連携・協力をしていくことが重要になってきているわけであります。
 こういった状況の中で,公正取引委員会におきましても,今年の1月から施行されました改正独占禁止法によりまして,課徴金減免制度の改正,具体的にはグループリーニエンシーと申しますか,親子会社などが一体としてリーニエンシーを出せるようにする,それから,対象事業者数も3社から5社に拡大・拡充するということも行っております。
 また,除斥期間の延長,これは実はかなり影響が大きく,アメリカ,EUにおいては,違反行為が終了してから5年ないし10年ぐらいまで措置が講じられる制度がありますが,日本の場合には課徴金納付命令,排除措置命令,いずれも違反行為が終了してから3年間しか措置が命じられなかったことから,同じような情報が寄せられてもアメリカ,EUの方では調査に入れますが,日本の方は調査をしても措置が命じられない可能性があったわけであります。除斥期間については3年を5年に延長するという法律改正が今年の1月から施行されておりまして,国際カルテルについては,従前よりは対処しやすくなりますし,また,事件数も増加することが予想されるわけであります。
 こうしたことから,国際カルテル事件に関しての証拠収集でありますとか,関係当局との調整,折衝,ノウハウの蓄積,効率的な事件処理を行うために国際カルテル事件を専属的に指揮する国際カルテル担当の上席審査専門官を新設することにいたしました。今回新設されました上席審査専門官のところには,審査専門官等10名程度の組織で発足をさせておりまして,今後,必要に応じまして,増員も図りつつ事件処理に当たってまいりたいと考えているところであります。

 [質疑応答]

 (問) 先ほど昨年度の数字のお話では去年より件数が増えているようですが,これは当局の積極的な対応の表れなのか,それとも,たまたまそういう事件と遭遇したのか,その辺りの分析をお願いします。

 (事務総長) まだ細かな分析ができているわけではありませんが,平成21年度の件数が26件で,昨年度が17件ですから,それより9件ほど増えているわけであります。談合事件などは,1つの事件でいくつかの地区でありますとか,先ほど言った電力会社の発注分野とか国土交通省の発注する業務もそうですが,その発注部局によって事件が分かれることもありますので,必ずしもその件数が公正取引委員会の取り上げた案件と対応しているわけではありません。
 ただ,この平成21年度の特徴としては,先ほど申し上げたように,平成20年度では逆に価格カルテル事件が多かったのですが,平成21年度では談合事件,特に官製談合事件で2件の改善措置要求を行ったということが挙げられると思いますし,それから,知的財産権の関連の事案でありますとか,フランチャイズチェーン本部の事案というような,従前あまり取り上げていなかった分野の事案も含めて処理できましたので,そういう面では非常に多様な分野について,いろいろな事件の処理,判断を出すことができたということが挙げられると思います。

 (問) 毎回で恐縮ですが,BHPとリオの生産統合のその後の進捗状況はいかがでしょうか。

 (事務総長) 御案内のとおり,公正取引委員会としましては,事前相談の申出がありましたので,それに応じた形で追加資料の提出を求めているということが,以前お話したとおりであります。事前相談が1月20日にありまして,追加資料の提出を公正取引委員会として2月8日に求めており,現時点において,その追加資料の提出がされている状況でありません。そういう面では,追加資料の提出を待って審査手続に入っていくということになるわけでありますが, 御案内のとおり,これまで出されている情報もありますので,そういったものも分析しながら進めているというところでありまして,今後とも,シェア等様々なデータも含め,市場の全般的な状況も総合的に勘案しながら,競争を実質的に制限するということにならないかどうか審査を進めていくということになろうと思います。

 (問) 昨年の数字のお話ですが,昨年は,多様な分野について,いろいろとあったというのは,社会的な背景として何かしら分析できる部分もあるかと思うのですが,分析できるものとしては何かあるのでしょうか。

 (問) 社会的な背景ということでありますか。そうですね,社会的な背景の分析というほどまでというのはちょっと言えないと思いますが,優越的地位の濫用事件などについて取り上げているということからは,経済環境が厳しくなってきて,大規模事業者が中小業者に対して,不当なしわ寄せをする事案というのが増加してきたという傾向もあると思います。それから,昨年度,平成20年度においては価格カルテル事件も結構多かったのですが,平成21年度は,どちらかというと談合事件が多くなってきているという状況です。平成20年度は,どちらかというと,リーマン・ショック前で,価格が非常に上がる,原材料なども随分上がって,それを価格転嫁していくという状況での価格カルテル事件が見受けられたのですが,この1年間の傾向としては,価格カルテル事件よりは官製談合事件も含めて,談合事件が比較的多かったということかと思います。
 また,社会的な背景という面でいうと,国際カルテルの事件などが見受けられたように,やはり取引も国際化してきていますので企業間取引やカルテルといったような行為も,国際的に行われる傾向というのが見られるということも挙げられると思います。

 以上

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