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平成23年6月15日付 事務総長定例会見記録

平成23年6月15日付 事務総長定例会見記録

 [配布資料]

 [発言事項]

事務総長会見記録(平成23年6月15日(水曜)13時30分~於 官房第1会議室)

 [発言事項]

金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書-平成23年フォローアップ調査報告書-について

 (事務総長)
 本日,私からは,金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書-平成23年フォローアップ調査報告書-についてお話ししたいと思います。
 概要の1ページの調査の趣旨にありますように,公正取引委員会では,金融機関が借り手企業に対して取引上の優越的地位を利用して金融商品を販売するといった不公正な取引が行われていないかについて,これまで平成13年と平成18年の2回にわたって実態調査を行っておりまして,その結果を公表するとともに,金融機関と借り手企業の取引が適正に行われるよう引き続き監視していくことを明らかにしております。
 前回の調査を行った平成18年から4年以上経過し,その間,リーマンショックや円高の進行といった経済情勢が変化する中で,金融機関と借り手企業との取引がどのような実態にあるかということを検証するために,昨年12月から本年2月にかけまして,金融機関と借り手企業に対してアンケート調査などを実施し,その結果を取りまとめましたので,本日,公表することといたしました。
 今回の調査結果のポイントとしては,一定の評価ができる点と,引き続き注意が必要と考えられる点の2点が挙げられます。
 まず,一定の評価ができる点ですが,2ページの表にありますように,金融機関は,融資を受けている借り手企業に対して,預金の創設・増額や預金以外の金融商品・サービスの購入といった各種の要請を行うことがありますが,今回の調査結果によりますと,金融機関から各種の要請を受けたことがあるという借り手企業は,過去の2回の調査と比べても,その割合が相当程度減少しておりまして,単純平均いたしますと,13年の調査では11.9%,18年の調査では10.2%でしたが,今回の調査では4.9%という結果になっております。
 また,4ページを見ていただきますと,このような要請に対して,借り手企業が自らの意思に反してその要請に応じたという借り手企業の割合も,前回や前々回の調査と比べますと減少しているということがいえると思います。
 これは金融機関における独占禁止法関係のコンプライアンスの取組が進んだことによるものと思われます。
 次に,引き続き注意が必要と考えられる点ですが,8ページを御覧いただきますと,要請に対する借り手企業の受け止め方ですが,金融機関からの各種の要請があった場合に断りにくく感じるという借り手企業の割合は27.2%となっております。前回が30.3%ですので,大体同程度の数字となっております。また,図表11にありますように,意思に反して各種の要請に応じた理由として最も多かったものは,次回の融資が困難になると思ったというもので,50%強の数字となっておりまして,これについても前回の調査に比べて大きな変化はありませんでした。また,9ページにありますように,融資先の取引先の金融機関が,平成18年以降変わっていないとする借り手企業の割合も,引き続き71.8%という数字になっております。このようなことから,借り手企業による融資取引先の変更は,なかなか容易な状況にあるとはいえないと思います。したがって,依然として借り手企業は金融機関から要請があった場合,断りづらい立場にあるということがいえると思います。
 このような状況を踏まえまして,資料の1ページ目に戻っていただきまして,「金融機関が留意すべき事項」にありますように,今回の調査におきましては,独占禁止法上直ちに問題となる事例は見受けられませんでしたが,借り手企業は,金融機関の意向というものをおもんぱかって要請に応じることが少なくありません。このため,金融機関は,借り手企業が要請を断りづらい立場にあるということを十分考慮して,このような各種の要請を行うに当たっては,今後の融資に関し不利な取扱いをされると受け取られないような形で慎重に行う必要があります。特に,借り手企業に対して,その要請に応じる意思がないと認められるにもかかわらず,重ねて要請を行うといった行為は,不公正な取引方法に当たるおそれがあるため,そのような行為をしないよう注意する必要があるという指摘を行っております。
 以上のとおり,今回の調査によれば,経済情勢の変化にもかかわらず,金融機関と借り手企業との取引における取引慣行については,全体としては改善の方向にあると考えられますが,公正取引委員会としましては,今般の震災後の状況も含めまして,引き続き注視し,問題のあるような事案に接した場合には厳正に対処していくことを考えているところです。

 [質疑応答]

(問) 今,御説明いただいた調査報告書ですが,要請の検証についてのニーズ,コンプライアンスの認識が必要になったという点を理由に挙げていらっしゃいましたが,これはリーマンショック後の借り手の資金需要が縮小しているという事実があり,そちらの理由から各種の要請を銀行が借り手にしにくくなっているという背景があるのではないかと思うのですが,その点はどのように分析されていらっしゃいますか。

 (事務総長) 実際の融資の要望が,どの程度変化してきているかということは,今回の調査では対象にしていないので,その点についてはお答えできないですが,今回の調査では,あくまでも優越的地位の濫用の立場から,従来と比べて各種の要請を受けたことがあるかという割合と,それが意思に反して要請を受けたかといったものを調査していますので,そのような背景的な経済動向については,調査の結果としては表れておりません。
 ただ,リーマンショックや円高の進行といった経済情勢があるので,今回,5年ぶりになりますが調査を行ったところです。

 (問) 今回のアンケートで借り手企業2,000社に発送して回答数が1,283社なのですが,借り手企業はどのような企業ですか,中小企業でしょうか。

 (事務総長) 調査報告書本体の2ページの注にありますように,2,000社を抽出いたしまして,その対象は大企業が400社,いわゆる中堅企業といわれている企業が100社,中小企業が1,500社という形で調査をしております。これは18年の調査と同様に連続性という形でこのような調査の対象企業を選定しております。
 また,注6にありますように,回答の割合は,全体で64.2%,1,283社ですが,そのうち中小企業が869社ですので,全体の3分の2程度が中小企業からの回答であり,この調査のベースとなっているものです。

 (問) 昨日,企業結合の新たなガイドラインの公表がありましたが,そこでアジアのマーケットを1つの判断の基準にするということですが,実際,公取委として,アジアと国内ではない海外マーケットの状況の把握などの議論は,どのような形でやられるのか,場合によっては他国の競争当局とも連携をしながらやっていかれるのでしょうか。
 また,新日鐵,住金の合併で,意見の募集をやっておられると思いますが,現時点でこの案件に関する意見というのはどれぐらい集まっているのでしょうか。件数などの状況を差し支えない範囲で教えていただければと思います。

 (事務総長) まず,東アジア市場を今回のパブコメでいただいた意見を踏まえましてガイドラインに追記しましたが,これは,従前から国を越えて,需要者の動向,要するに取引が世界やアジアで行われているという実態があり,需要者が世界やアジアの供給者を見ながら取引をしているということであれば,その取引の地理的範囲は,世界になる場合も,アジアになる場合も,東アジアになる場合もあるということで,今回,特に世界市場と書きますと世界だけしか捉えないような誤解を与えてもいけないので,より分かりやすく具体化するために世界だけではなく,東アジア市場を例示として追加して,国を越えた場合でもいろいろな場合があるということを追加したわけです。では,実際にどのような事例でそれを判断するかということを日頃はどうしているかということですが,これは個別の案件,個別の商品ごとに取引の実態は違うものですから,私どもは,経常的にはいろいろな各種の経済調査もやっておりますが,個別の案件における判断としては,個別の案件で取引の実態がどうなっているかということを当時会社の方からよく説明を受け,また,取引先や競争者の方からもいろいろ意見や実態を伺って,その実態を捉えていきます。その中で必要に応じて,海外にも同時に届出が出されるような案件の場合には,海外の競争当局とも意見を交換する場合もあろうかと思います。そのような形で,個別案件ごとに進めていくというのが実態だと思います。
 2点目の新日鐵と住友金属についての情報の募集の状況ですが,この情報の募集については,先々週,この件についてお話しさせていただいたときに,通常ですと詳細に審査する段階で情報の募集を行っているわけですが,本件は大規模で公表もされているという案件ですので,早い段階から情報の募集を行ったものでありまして,その情報の募集を開始した際にも,この審査のためだけに使いますということを申し上げていますので,どのような情報が寄せられているかということは申し上げられません。
 次に件数ですが,これは私どもの本件の審査期間中,情報を受け付けるということにしておりますので,今,審査中の段階で,この件数を言った場合に,例えば,既に多くの意見が寄せられているということになれば,これを検討していたユーザーの方が,それならもう提出する必要はないと思ってやめるとか,逆に非常に件数が少ない場合には,そんなに少ないのであれば自分も提供するのをやめようとか,提供を躊躇するといったことがいろいろ懸念されますので,我々としては,本件の情報の提供の募集の趣旨はできる限り広く情報を求めたいということですので,審査が終了するまでは件数も含めて内容については差し控えさせていただきたいと思います。

 (問) 件数は結構なのですが,もう意見は集まりつつあるのでしょうか。

 (事務総長) そこも申し訳ございませんが,差し控えさせていただきたいと思います。

 以上

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