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平成25年6月26日付 事務総長定例会見記録

平成25年6月26日付 事務総長定例会見記録

 [配布資料]

 [発言事項]

事務総長会見記録(平成25年6月26日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

再販売価格維持行為に関する諸外国の規制等の現状と公正取引委員会の考え方について

(事務総長) 
 本日,私からは,先週,一部の報道で,メーカーが小売業者に対して自社商品の価格を指定,指示すること,独占禁止法では再販売価格の拘束と言っておりますけれども,こういったメーカーによる価格の指定について,欧米では価格指定が認められるようになっており,日本においても公正取引委員会がメーカーの価格指定を容認する方向で検討に入るといった内容が報じられておりますので,再販売価格の維持行為,いわゆるメーカーの価格指定について,欧米諸国における取り扱いの現状と公正取引委員会の考え方についてお話しさせていただきたいと思います。
 資料は,欧米なり各国の状況と日本のことを取りまとめたものであります。まず米国ですけれども,米国におきましては,最低再販売価格の維持行為につきましては,1911年の最高裁の判決で,当然違法の原則ということになって,それがずっと継続されてきたわけですけれども,2007年のリージン事件という事件がありまして,この事件において連邦最高裁判所は,5対4の僅差でありましたけれども,1911年のドクターマイルズ事件判決を破棄して,最低再販売価格の維持行為は合理の原則で律すべきであると宣言したところであります。
 ただ,この当然違法の原則,1911年以来保持されていた当然違法の原則というのは,そうした行為が行われただけで違反とされるというもので,反証なり正当化が許されないというものですけども,これを合理の原則ということで,個別事案ごとに不当性を判断するという原則に立場を変えるということになったわけですけれども,これによって,メーカーの価格指定が認められるようになったと,そういったものではないということに御留意いただきたいと思います。
 次に,欧州ですけれども,EUでは,最低再販売価格の維持は,価格カルテルのような競争制限行為の場合と同じように,条約の101条1項によって禁止されておりまして,これについては一括適用免除というものが認められているんですけれども,最低再販売価格の維持については,2010年に規則が改正されたんですけれども,その規則において,購入者の販売価格を決定するようなことについては,一括的適用免除の対象ではない,すなわちハードコア制限ということが明示されております。したがって,最低再販売価格の維持については,一括適用免除を受けることができない,言い換えれば,いわゆる原則禁止の考え方がとられているということができると思います。
 アメリカ,EU以外に,個別の欧州の英国,ドイツ,フランス,カナダ,それから豪州と韓国の規定を並べて,表に取りまとめておりますけれども,これらのいずれの国においても,メーカーによる小売業者に対する価格指定なり,いわゆる再販売価格の拘束というものは法律等で禁止されているところです。法律の条文が,豪州のように,再販売価格という文言があるものとないものもありますけれども,近年の主な事案ということで,2010年以降の最近の主な事案をピックアップしたものですけれども,英国ではOFT,これはイギリスの競争当局ですけれども,旅行会社が取引先であるホテルのチェーンと宿泊料金の値下げを制限するような協定を結んでいたことについて問題として取り上げられております。
 また,ドイツでは,電動工具メーカーが推奨価格での販売を行われなければ契約条件を不利にするといった形で推奨価格での販売を強制したということで,820万ユーロの制裁金が課されております。
 フランスでも,昨年の3月ですけれども,専門店向けのドッグフードについて小売価格を拘束していたと,メーカーが小売価格を拘束していたということで,総額約3500万ユーロ強の制裁金が課されております。
 豪州でも,2010年の事案なり,2012年の1月の事案がありますけれども,2012年の事案を御紹介すると,化粧品メーカーが販売業者に対して,自社の製品をオンラインで販売する際に,指示した価格以下で販売しないようにさせていたことが再販売価格維持に当たるとして,オーストラリアの連邦裁に提訴されております。
 韓国でも,こういった再販価格,メーカーによる価格指定については,是正命令なり課徴金が課された事例がございます。
 次に,参考として,日本の規制なり,最近の事案を書いてございますけれども,日本では独占禁止法の第2条の9項の4号ということで,メーカーが自分の小売業者に対して,小売業者というのは,自分で販売価格を自主的に決定するというのは,事業者の事業活動において最も基本的な事項ですから,そういったことを規制するということは,流通業者間の価格競争を減少,消滅させるという考え方に基づきまして,法律にありますように,正当な理由がないのに取引先小売業者の販売価格の自由な決定を拘束することは禁止するという,独占禁止法に違反するという規定になっております。
 そして,最近の事例を取り上げておりますけれども,昨年の3月には,アディダスジャパンの件で,これは「イージートーン」というものについて,アディダスジャパンが定めた値引き限度価格以上の価格で販売するようにさせていたというような行為を違反として,法的措置を講じております。また,平成20年には,ハマナカに対する件がございます。また,同じように平成18年には日産化学工業,平成16年にはグリーングループに対する件ということで,再販売価格維持行為,メーカーによる販売小売業者に対する価格指定については法的措置を講じているところであります。
 以上,申し上げたとおり,メーカーによる小売業者に対する価格指定,いわゆる再販売価格の拘束という行為については,欧米諸国におきまして,各国いずれにおいても厳しく規制されております。したがって,公正取引委員会が,冒頭申し上げたとおり,欧米並みにメーカーによる価格指定を容認する方向で検討に入る旨,報道されたところですけれども,これは誤りでして,公正取引委員会としては,欧米でも厳しく規制されているメーカーによる価格指定につきまして,そうしたメーカーによる価格指定を容認する方向での見直しを行う考えはございませんし,メーカーによる小売業者の自由な価格設定を制限することを容認するということは,公正かつ自由な競争を阻害し,消費者の利益を損なうものであり,適当ではないと考えているところです。
 私からは以上です。

 質疑応答

(問)今お話のあった価格指定について,欧米並みにやるという方向では検討されないと。その上で,流通ガイドラインそのものについては,施行から22年余りたっていますけれども,これは特に検討する必要なしということでしょうか。
(事務総長)今日,申し上げませんでしたけども,御質問のあった点につきましては,公正取引委員会は平成3年に「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」というものを公表しておりまして,いわゆる「流通取引慣行ガイドライン」と呼ばれておりますが,これを平成3年に公表しております。このガイドラインの当時というのは,戦後,日本の流通分野というのは,メーカーがマーケティング戦略として,いろいろな商品で,メーカーがマーケティングをして,流通網を形成していったという歴史があります。そうした中で,メーカーが取引先の小売業者に対して販売価格を規制したり,それから,販売地域なり販売方法を規制するというようなことがあって,これを独占禁止法でいろいろと取り上げてきた歴史がございます。
 そしてまた,当時は,いわゆる我が国の流通取引慣行が,経済がグローバル化して国際的になったということも背景に,我が国の流通網がより国際的に,より開放されたものになるようにという考え方に基づいて,今申し上げたようなガイドラインを公表しております。
 それで,そのガイドラインにおきましては,再販売価格維持行為というものは,小売業者の,事業者の事業活動において,自分の販売価格を自主的に決定するということは最も基本的な事項で,これによって,事業者間の競争と消費者の選択が確保されるという考え方に基づいて,メーカーがマーケティングの一環として,または流通業者の要請を受けて,流通業者の販売価格を拘束する場合には,流通業者の価格競争を減少,消滅させることになるから,原則として不公正な取引方法として違法となるという考え方を明らかにしているところです。
 最近では,御承知のとおり,その後,日本の流通実態というのはかなり変わってきておりまして,「優越的地位の濫用」というような言葉に代表されるように,小売業者による川上に対するいろいろな行為が独占禁止法で問題となっております。そうした中で,公正取引委員会も,例えば,近年であれば,優越的地位の濫用に関するガイドラインということで,どういった行為があれば,独占禁止法上問題になるといったようなガイドラインを出してきているところです。
 今申し上げたようなことで,このガイドラインは平成3年に出しております。したがいまして,もう22年経っていますので,もちろん必要に応じて,このガイドラインの見直しということを行うことはあると思っております。
 ただ,今申し上げたように,欧米では価格指定が認められるようになってきて,日本では厳しいので,そういった欧米と同様に,日本において,メーカーの価格指定を容認する方向で,このガイドラインを検討するということについては,この再販売価格の拘束というのは,まず法律で禁止されておりまして,平成21年の独占禁止法の改正では,課徴金の対象行為にもなるようになったところであります。そして,今申し上げたように,現状では,欧米諸国においても,この再販売価格の拘束,メーカーによる価格指定というのは厳しく規制されております。今,ガイドラインについての見直しの御質問でしたが,二十何年かたっていますので,今後,このガイドラインの見直しを行わないということを申し上げるつもりもありませんし,必要に応じて見直しを行うことというのはあると思いますけれども,しかし,少なくとも,メーカーによる小売業者に対する価格指定を容認するという方向での見直しを行うつもりはありませんし,それは自由かつ公正な競争を促進して,消費者の利益を確保するという観点からも適当ではないというふうに考えています。

(問)欧州の,例えば,商品の生産で,技術的,経済的進歩の促進に役立ちとか,こういった一種の規定を置くとか,合理の原則を敷くとか,そういったことも取り入れる考えは特にないということでよろしいんでしょうか。
(事務総長)合理の原則を取り入れるといいますか,法律によって,条文はさまざま,規定ぶりは変わっておりまして,日本は,御紹介したように,法律で,正当な理由がないのに,小売業者の販売価格の自由な決定を拘束することはいけないというふうに書いてあるわけです。ですから,日本で言えば,そういう規制でやっていますし,欧米でも,それぞれ規定は違いますけども,原則禁止だという考え方は,今御質問のEUも同じだと思っております。

(問)もちろん原則禁止というところは,誰も反対しないと思いますし,消費者の利益を損なうような改定というのは,誰も望んでないと思うのですが,いわゆるガイドラインの解釈として,一部メーカーにあるところとして,今おっしゃった正当な理由というところが指す範疇について,必ずしもよく分からないと。中で出てきたのが,EUの事例のように,いわゆる新製品ですとか,そういった一部については適用しないということを宣言することができると。もちろん個別に,価格拘束をやったような事例があれば,米国のように,日本でも,どこの世界でも,それは罰するんでしょうけれども,価格維持そのものを見直すという意味ではなくて,そういった一部の,欧州のような話を取り入れていくというお考えは,今のところ,全くないということでよろしいですか。
(事務総長)冒頭申し上げたように,私が今日御説明させていただいたのは,報道を見ますと,メーカーによる価格指定が欧米では認められているというような印象を持たれるようなことについて,事実関係を御説明しようと思って,欧米ではそういった事実関係はないということを申し上げたつもりですけども,今御質問のあった正当な理由があるかどうかということで言えば,日本では,裁判でも争われたことがあって,例えば,少し古いですけども,昭和50年の最高裁判決がありまして,そこでは,上位メーカーの2社に比べて,小さなシェアしか有していない事業者が再販行為をやった事案なんですけれども,これによって,他の商品との間における競争が促進されるから,正当な理由を認めるべきだということを事業者が主張いたしまして,これに対して,最高裁の判決は,相手方の事業活動における競争の制限を排除することを主眼とするものであるから,右のような再販売価格維持行為により云々ということで,競争阻害性があることを否定することはできないということが,最高裁の判決として判示されております。
 また,直近であれば,先ほどお配りした資料の中に,日本の事件として,ハマナカの事件がありますけども,ハマナカの毛糸について,値引き限度価格を定めたということで,法的措置を講じた事件ですけれども,これについて,会社のほうが争いまして,これについては,一昨年の平成23年の4月に東京高裁の判決が出されておりまして,正当な理由があるかどうかということで,原告は,本件行為の目的は,大多数の中小の小売業者が生き残れるようにし,産業としての,文化としての手芸手編み業を維持し,手芸手編み業界全体を守るということにあるということを主張したんですけども,これに対して,この正当な理由は,公正な競争秩序維持の観点から,相手方の事業活動における自由な競争を阻害するおそれがないことをいうということで,中小小売業者が自由な価格競争をしないことで生き残りを図るということは,公正かつ自由な競争秩序維持の見地から見て,正当性がないことは明らかである,文化としての手芸手編み業を維持するということは,一般的に見て,保護に値する価値とは言えるものの,それが一般消費者の利益を確保するという独占禁止法の目的と直接関係するとは言えないということが判決としては書かれております。
 そして,正当な理由ということではなくて,再販については,いろいろな議論が,特に経済分析についても議論が出ているところでありまして,公正取引委員会も,CPRC,競争政策研究センターで,そういった研究を最近もしたりしておりまして,いろいろ勉強はしなければいけないテーマだと思います。
 ただ,現時点で今,何か検討を行うという予定はありませんけれども,先ほど申しましたように,今後とも検討なり見直しを行うということは,必要に応じて行っていこうということは考えております。

(問)必要に応じて見直しは行うけれども,いわゆる公正な競争を害するであるとか,消費者の利益が損なうような形ではもちろん,そういう方向で検討する考えは毛頭ないということですか。
(事務総長)そうですね。ですから,今,何か,御質問のようなことについて見直しを行うということを決めているものではないです。むしろ,先ほど申しましたように,メーカーの価格指定を認めるというような方向での見直しを行うつもりはありません。
 ただ,流通取引慣行ガイドラインは,今,御質問のあった再販売価格のことだけではなしに,いろいろなことについても考え方を書いておりますので,今後,必要に応じて,ガイドラインの見直しを行うということは,もちろんあると思います。

(問)つまり,法で禁じられているメーカーの再販価格維持を変えるつもりは毛頭ないと。
(事務総長)はい。

(問)ただし,そのガイドラインについて,必要なのであれば見直していくということはあり得ると,そういうことでよろしいですかね。
(事務総長)今後,必要に応じてということです。

以上

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