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平成30年4月18日付 事務総長定例会見記録

平成30年4月18日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(平成30年4月18日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

第15回CPRC国際シンポジウムの開催について

 本日,私の方からは,国際シンポジウムについてお話しいたします。
 競争政策研究センター(CPRC)では,来る5月18日に,株式会社日本経済新聞社,公益財団法人公正取引協会と共催の上,ビッグデータとAIの活用がもたらす新しいビジネスと競争政策について,国際シンポジウムをイイノホールで開催いたします。
 近年,IoTの普及やAIの高度化等を背景に,データを事業に利用することで,生産性の向上や消費者にとっての最適なサービスが提供される可能性は増大しています。一方で,特定のプラットフォーマーに大量のデータが集中し,当該事業者による行為を通じて競争者が排除されたり,企業が利用するアルゴリズム同士によるカルテル,いわゆるデジタルカルテルが行われたりする可能性も指摘されてきております。
 このような課題を踏まえまして,お手元の資料にございますように,今回のシンポジウムでは,ビッグデータやAIの活用が進み,ビジネスや競争環境に変化が生じている中で,競争政策上の課題とその解決の方向性について取り上げることといたしました。
 第1部では,基調講演として,IoTやAI等を通じて,大量のデータを獲得したプラットフォーマーによる支配的地位の濫用行為等について,北米と欧州から著名な経済学者・法学者による基調講演が行われます。
 具体的には,まず,応用ゲーム理論,イノベーション経済学等が御専門のジョシュア・ガンズ トロント大学教授をお迎えして,データ・ポータビリティを中心に御講演をいただきます。
 続いて,欧州委員会競争総局副チーフエコノミストであるスヴェン・エルヴェック氏をお迎えして,ビッグデータと欧州における競争政策について御講演をいただきます。
 最後に,近年はデジタル時代における競争法の適用に関する研究者として高名なアリエル・エズラチ オックスフォード大学教授をお迎えして,デジタルカルテルに関する議論を含め,競争法とオンライン市場等について御講演をいただきます。
 第2部では,冒頭,「データと競争政策に関する検討会」の座長も務められた元公正取引委員会委員である後藤晃東京大学名誉教授からコメントを頂いた後,岡田羊祐CPRC所長・一橋大学大学院経済学研究科教授をモデレーターとして,第1部の講演者及びコメンテーターによるパネルディスカッションを行うこととしております。
 このパネルディスカッションでは,AIやデータの活用が進む北米やプラットフォーマーに対する法執行が活発な欧州の経験を踏まえながら,競争政策上の教訓やベストプラクティスについて,熱心な議論が行われるものと期待しております。
 既にCPRCのホームページにおいて参加者を募集しておりますので,奮って御参加いただければと考えております。

質疑応答

(問) 先週,金融庁の有識者会議がですね,競争の在り方についての報告書を出したんですけども,それについて,内容を御覧になってるかと思いますが,所感をお伺いしたいんですけれども。
(事務総長) 先週,金融庁の検討会の報告書が公表されましたことは承知しております。この報告書は,金融庁が設置された検討会議において作成され,金融庁に提出されたものと理解しております。
 この報告書の内容につきまして,金融庁から,現段階において特段の御説明は受けておりませんが,今,御質問にもございましたように,既に公表されておりますので,内容については勉強させていただいております。
 報告書の中で,特定の事案について触れている部分もございますが,それは個別の事案の話でありますので。また,報告書の内容について,例えば市場シェアの高まりと金利の関係でありますとか,あるいは取引分野,市場の画定の仕方に対する理解でありますとか,外国における監督官庁と競争当局の関係でありますとか,私どもの観点からしますと,若干疑問があるような内容も含まれているというふうに理解しております。
 その疑問の詳細につきましては,担当課であります企業結合課の方に御照会いただければと思います。ただ,最前から申し上げておりますように,公正取引委員会の行政,あるいは本件,今回の場合で言えば企業結合でございますけれども,そうした事柄に関して,いろいろな御意見があるということは私どもにとっても有益なことでありますし,そうしたことは真摯に受け止めさせていただきたいと思います。参考にできるものは参考にしてまいりたいと考えております。

(問) 十八銀行とFFG(ふくおかフィナンシャルグループ)の企業結合に関する長崎県の企業への再アンケートの分析状況について,最終的な分析結果をいつごろまとめられそうかという見通しを教えていただけますでしょうか。
(事務総長) 何度も同じようなことを申し上げて恐縮ですけれども,追加で行いましたアンケート調査については現在分析中でございまして,今月中には分析を終えたいと思っております。ただ,このアンケートを行いましたのは,FFGと十八銀行の統合の審査のために行ったものでございますので,それは統合が競争を制限することになるかどうかということの判断のための材料として行っておりますので,その分析の結果を一つ一つ,こういう場で御説明するということは考えておりません。それは最終的な審査の結果がどうなるかということの中で,必要に応じて触れていくことになるかと思います。
(問) 先ほど金融庁のレポートに関する受け止めで,若干疑問があるという説明をされていましたけれども,疑問があるというのはどういう意味での疑問ということでしょうか。中身について,分析の結果について,これが正しいものかどうかというところで疑問をお持ちということでしょうか。
(事務総長) 詳細はこの場では控えさせていただきますけれども,記載された内容で違った考え方もあるのではないかとか,あるいは分析の仕方でこういう見方もあるのではないかというものでございます。

(問) そもそものところで恐縮なんですけれども,長崎県での経営統合の件なんですけれども,昨年末に新潟県の方は了承というふうなことがあったわけですけれども,長崎県の方がこれだけ難航しているというのは,何が違うのかというところを教えていただければと思うんですけれども。
(事務総長) 今,御質問にございましたように,昨年,北越銀行と第四銀行の統合の件については,独占禁止法上違反になることはないであろうということで結論を出しております。
 今の御質問はですね,現在進行中の案件について,どこがどう問題なのかということに関わる話ですので,具体的にお答えするのは,ちょっとまだ時期尚早だと思います。
 ただ,私どもの理解している限りでは,その両行が統合し,かつ,その両行が具体的に営業されている範囲や業務,そうしたもので見た場合に,競争を制限するおそれがあるのではないかという観点から,先ほどのアンケートも含めてですね,情報収集,資料収集,それから当事会社との間のコミュニケーションをとってきているところでございます。
 繰り返しになりますけれども,まだ審査の途中でございますので,余り詳しい内容に触れるのは適当ではないというふうに思っています。
(問) お答えいただけるのかというのはあるんですけれども,新潟のケースでは,二つが合併して,貸出金のシェアが55パーセントぐらいと出ていましたけれども,長崎の場合,70パーセントぐらいということで,その辺の線引きみたいなものというのが何かあるんでしょうか。
(事務総長) 競争の状況というのは,シェアだけで決まるわけではありませんし,また,シェアのとり方という問題もあろうかと思います。50パーセントが良くて70パーセントが駄目だという単純な考え方をしているわけではございません。
 ただ,シェアが小さいよりは大きい方が競争上の悪影響を及ぼす可能性は高まりますので,より慎重な検討が必要になるというふうには考えてます。ただ,そこで,繰り返しになりますけれども,シェアだけが問題ということを言っているわけではございませんで,二つもしくはそれ以上の企業が統合することによって,将来の競争状況がどういうふうに変わるのかというのを検討するということになります。先ほど申しましたけれども,それは,より競争に及ぼす影響が大きそうな案件については,より慎重な調査や判断が必要になるということだと御理解いただきたいと思います。
(問) 地元の方でも,長崎は非常に離島なんかも多くて,他の県なんかと比べると状況も違うので,貸出金以外を何か考慮して御判断していただけないのかなというふうに思っている声も聞かれるわけなんですけれども,現状でいうところの,1番手,2番手の銀行と,3番手の銀行というのがちょっと弱いというふうな意味合いと考えてよろしいんでしょうか。
(事務総長) 若干繰り返しになりますけれども,企業統合を審査する際には,統合された企業が新しくでき,その後,残った競争者との関係も含めて,その競争者が競争を仕掛ける力があるのかどうか。それは,その競争者の存在が大きければ大きいほど,統合によって競争が減殺されることに対する補償,償い,穴埋めとしてはですね,大きな力になりますし,逆に競争相手が弱ければ弱いほど,そうした効果が見込みにくいということはあります。

(問) 3点お伺いしたいと思います。
 1点目は,金融庁の先ほどの検討会議がまとめた報告書についてなんですけれども,公正取引委員会としては,長崎の統合事案について今審査中ですが,この金融庁の検討会議の報告書を受けて,長崎の案件の審査というのが変わるんでしょうか。
(事務総長) 先ほども申しましたけれども,様々な御意見があれば,それはそれで拝聴する用意はありますけれども,具体的な案件について,それが競争上,どういう評価をされるかという,まだ今,途中の段階でありますので,個々の事柄が,その審査に対してどういう影響を及ぼすのかというのは,今申し上げるべきではないと思います。

(問) 2点目ですが,報告書の一番最後にですね,今後,新しい競争政策の在り方について,政府全体で取り組んでいく必要があるというふうに結ばれていまして,菅官房長官も,政府全体で取り組もうということで会見でおっしゃっているんですけれども,これについて,公正取引委員会としては,どういうふうに捉えていらっしゃるでしょうか。
(事務総長) 報告書の中にそういう記載があり,また,官房長官が会見でそのような御発言をされていることは承知しております。
 その後,具体的にどのような場が設けられるのか,そういった件について,私ども,まだ承知をしておりませんけれども,人口減少によって縮小を余儀なくされている地域経済に関して,地域経済振興の観点から,地域金融統合などの動きと競争の在り方について,そうした検討を行う場ができるということであれば,競争当局としては,議論には参加させていただきたいというふうに思います。

(問) 3点目ですが,やはり報告書で,1点,私読んでいて,大きな矛盾があるなと思ったのはですね,分析で,全国47,東京を除く道府県について,県内で営業していけるかどうかというモデルを用いて分析をされていまして,長崎は1行では存続できない地域に入っているんですけども,その表の前のところでは,本件の統合が発表されてから,県外銀行からの貸出が増えていますと。1行で存続できない地域なのに,なぜ県外から増えているのか。一時的かもしれませんが,それが持続的かどうかというところが報告書で触れていなくて,少なくともこの点は何か大きな矛盾をはらんでいるんじゃないかなと思うんですけど,山田事務総長,いかがでしょうか。
(事務総長) 先ほども申しましたけれども,私どもとしても,報告書の中身に,若干ここはどうなのかなと思う点は幾つかございます。ただ,今おっしゃったような点というのは,報告書の中で何か矛盾があるのではないかという御指摘かと思いますので,それは,私どもの方から何かコメントをするのは適当ではないと思います。

(問) 今回,ある種,金融庁が報告書を出してきて,金融のこういう企業結合の在り方は,通常の企業結合とは違う考え方を採るべきじゃないかというようなメッセージが込められているかと読み取れますけれども,飽くまでも地域金融の企業結合に対しても,公正取引委員会としては,特にダブルスタンダードを設けて審査をするつもりはないということでよろしいんでしょうか。
(事務総長) 今,地域金融についてというお話でございました。先ほどの御質問にもありましたような,政府全体として,地域経済,地域金融に及ぼす影響というようなことの観点から,検討の場を設けられるということであれば,それに参加してまいりますというふうに申し上げました。
 ただ,企業結合審査を行う際の考え方につきましては,ガイドラインを出しておりますので,これは業種を限定しているわけではなくて,基本的にどの業種にも当てはまるような基本的な考え方を示しております。ですので,監督官庁がいるような業界であっても,企業結合審査における考え方自身というのは基本的には同じだと思っております。
 ただ,もちろん,それぞれの企業が置かれている環境というのは事案ごとによって異なるわけですし,その際に考慮しなければならない要素というのは,その展開されている事業ごとに異なるものは当然あると思います。Aという事業で適用される考え方・周辺の事情というのが,Bという事業で,そのまま当てはまるわけではありませんので,そうした意味での,その事業特有の事情というのは,当然,将来の競争状況を考える上で,斟酌しなければいけない問題だと思います。ただ,そのために何か特別なものが必要だというふうには,少なくとも現時点では考えておりません。

(問) 金融庁の有識者会議の中でですね,参与の方から,今後,金融に限らずですね,人口減少で競争が成立しなくなる地域というのが想定し得ると。そうした状況においてですね,公正取引委員会というのは,硬直的な,戦後にできた独占禁止法の枠組みの中でですね,審査するということが,役割をもう果たしてないのではないかという厳しい指摘もあったんですけれども,このことについては,どのように思われますでしょうか。
(事務総長) こと企業結合審査ということであれば,個別の事情に応じて判断するという基本的なラインは変わっておりませんし,そういう意味で,どの業種においても同様の考え方が適用されると申し上げているつもりであります。ですから,その中には,例えば,衰退産業で,1社が倒産しそうになっていて,ほぼ1社しか存在し得ないというような場合も,多分,救済であるとか,それは若干極端な例ではありますけれども,そうした状況というのは,当然,企業結合審査の中でも考慮する要素にはなってきますので,それは何をどういうふうに考慮するかという問題であって,枠組み自身の問題ではないと思います。

以上

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