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海外当局の動き

最近の動き(2017年12月更新)

米国

米国司法省のマカン・デラヒム反トラスト局長による,競争法の執行の重要性,効果的な競争法執行の世界的共有,今後取り組むべき課題等に関するスピーチ

2017年10月27日 米国司法省 公表
原文

【概要】

 標記スピーチの概要は以下のとおり。

 本日は,第一に自由市場システムにおける競争法の執行の重要性,第二に効果的な競争法の執行に関する世界的共有の進展,第三に今後取り組むべき課題についてお話したい。これら3点については,競争法を執行する際には法の支配及び手続の公正性が根源的な役割を担うことを強調したい。

自由市場システムにおける競争法の執行の重要性

 競争法の執行は,自由市場システムをサポートする上で非常に重要な役割を担っている。すわなち,競争法は,全ての者の利益のために,機会を生み出すエンジンが正常に機能し続けることを確保する。共謀や統合から生じた市場の失敗に関する歴史的事例は,自由市場が長期的に安定して成功する上で競争法の枠組みが重要であることを実証している。競争法の枠組みがうまく機能すれば,競争法の執行によって,効率性は最大化され,市場は整合的になり,全ての者が実力で競争する機会が得られる。
 競争法の執行は米国の核心的な価値観であることを強調したい。競争法制があることで,自由市場経済は経済的繁栄を最大化させる。また,最高裁判所が述べているように,競争法制は経済的自由に関する包括的な憲章としての役割を担っている。一般の福祉を増進し,自由を確保することは,憲法で規定されている。競争法制はテクノクラシー的な作用だけではなく,実際には,我々の最も重要な価値を提供する精緻な法典である。
 競争法の執行は,基本的な経済的価値観を補強することに加えて,法の支配を促進することにもなる。その中心となる反トラスト法は,経済の自由を侵害することには慎重であるが,市場の失敗を是正するためには積極的に介入することを念頭に置いている。我々は,政府介入に内在する自由に対する負担に敏感であり,競争政策に対し,法律の適正執行の枠組みを適用する。このアプローチは,法の支配による利益と制約を伴う。我々は法律を公布し,全ての者に対してこれを等しく適用し,独立した裁判所からの公平な裁定を追求する。市場参加者はそのように予測し,法律に従って行動する。

効果的な競争法の執行に関する世界的共有の進展

 競争法の執行による利益を他国と共有することが重要である。自由市場競争を通じた経済的機会の追及は,米国のみの目標ではない。世界中が市場経済に移行していることに伴い,自由経済が生活水準を上昇させ,より良い生活の探求を可能にしてきたことについては,世界中で認識されている。今日,自由経済になったことで,我々は,仕事,生産,消費及び投資の面において,人類史上最も豊かな時代に生きている。
 世界的に市場経済が進展していることに伴い,競争法の執行の必要性は国際的に拡大している。我々は同じ課題に直面しているところ,我々が学んできたことを共有し,他国の経験から学んでいくことが必要である。
 我々は二国間の協力協定の締結を大きく進展させてきた。今日,我々は15の協定を締結している。私は,既存の協定を見直すために,反トラスト局及び連邦取引委員会による取組を刷新するつもりである。また,FTAの中にも競争章が存在している。幸運なことに,トランプ大統領が主導した新しいNAFTAの交渉において,競争章は合意に達することができた。
 協定の有無に関わらず,反トラスト局は他国の競争当局と連携して調査を行ってきたが,こうした取組を私は強く支持する。私は以前も司法省に在籍していたが,その当時は,競争当局間の連携は,今日理解されているように,必ずしも深く効果的なものではなかった。GE及びHoneywellの企業結合事案において米国司法省と欧州委員会が異なる決定をしたことは記憶に新しく,私は以前のスピーチの中で「複数の当局が重複して競争法の責任を主張すること」は,「反トラスト法制が守るべき競争上の価値を侵害する可能性がある。」と警告していた。
 事案処理における連携によって,競争法を導入する国が増加することで発生する摩擦を事前に軽減することができる。また,効率性が上がることによって,法執行の効果が増大する。すなわち,より迅速な情報の入手が可能となり,その情報が意思決定に資することになる。個別事案における他国との連携は,企業結合事案では全体のおよそ4分の1で行われており,刑事事案では全体のおよそ半分が国際事案である。
 これら全ての取組が手続面及び実体面の収れんを容易にする一方,世界中で競争法体制が増えていくことで新たな課題が生じてきている。我々は,130の独立した機関とともに,実体法及び法執行上の相違を共有してきた。他国の競争当局の多くは,安定した競争法の執行に必要な事柄について,様々な見解を有している。米国では,二党間で競争の執行の基本的な点に関するコンセンサスは得られているが,その米国内においてさえも合意に至らないことがある。
 私はこうした議論を歓迎する。合意が得られていない分野を議論することは,競争法の理解を深めることになる。他方で,私は,競争法の執行に関する基本的なアプローチ,すなわち,競争法の執行において,無差別性,手続の公正性及び透明性が求められることは議論の余地がないと考えている。我々は競争法の執行に関しては,一般的手続規範からの適用の除外は無いという理解を発展させていかなくてはならない。

今後取り組むべき課題

 私は,経験豊富な法律家の雇用等により,反トラスト局の国際部門を強化することを計画している。来年は米国政府全体で緊縮政策が採られると見込まれるが,私は国際部門に必要な資産を確保していきたいと考えている。
 また,今後数か月間で,反トラスト局の最優先事項として,発展途上国に対する技術援助をどのように行うかについて,戦略を立てる予定である。近年,反トラスト局は新しい競争当局に対する援助を強化してきた。そのことは米国内外の消費者・事業者にとっても利益がある。
 新しい競争当局と定期的に連携し,安定的な分析の枠組み及び調査手続の公正性を強化することは,我々共通の利益となる。この目標に向かって,国際部門は,新しい競争当局に対して,我々に技術援助を求めるよう促していく。どの国からの求めも歓迎したいと思っているので,我々がどのように援助できるかを教えてもらいたい。
 法執行上のカウンターパートとの関係強化は,我々の執行活動に必要不可欠なことである。このために,私は,二国間の関係を調査することに資源を投入し,どうすれば更に強化できるかを探求したい。既に述べているとおり,私は協力協定を構築し強化できることを望んでいる。
 私は,緊密なカウンターパートとの間における,無差別性,手続の公正性及び透明性に関する規律を特に重視した新しいタイプの協定を検討している。私は,これらの規律に関する合意内容を拘束力あるものとして協定に記載できるかを検討したい。そうすることで,我々は国際的な競争規律を発展させるための次のステップに進むことができると信じている。

米国司法省のマカン・デラヒム反トラスト局長による,標準必須特許問題への当局のアプローチの転換(ホールドアップ問題に重点を置いてきたが,ホールドアウト問題の方がより大きな問題である)等に関するスピーチ

2017年11月10日 米国司法省 公表
原文

【概要】

 標記スピーチの概要は以下のとおり。

 本日は,反トラスト法の執行と知的財産に関する重要な議論,すなわち,標準化機関に関連する反トラスト法の役割に焦点を当てたい。標準化機関は高尚な目的から設立され,競争を促進させる重要な役割を担う。かつては,標準化機関は,一つの産業全体の問題に対して最も効率的な技術的解決方法を発見するという共通目的のために,エンジニアによって支配されていた。年月を重ねるにつれ,標準化機関のプロセスは,参加者達がどの技術又はどの補完的技術の結合が「標準」を勝ち取るかを決める際に最もよく機能するようになり,誰が「標準」を勝ち取ったか,その勝者がどのように知的財産権のライセンスを供与するかについては,それほど関心が持たれなくなった。
 時代は変わり,業界の標準規格は数十年で劇的に変化し,今日では多くの経済分野において必要不可欠な役割を担うようになった。多種多様な企業が企画・製造した製品が相互に機能することで,相互運用性のある標準規格は莫大な価値を生み出し,消費者に利益をもたらす新しい革新的技術を創出させる。世界経済は情報技術や知的財産によってますます特徴づけられており,業界の標準規格を策定することは,より重大かつ複雑になってきた。必要な資金も非常に高額であることから,標準化機関の成果物は,もはやエンジニアだけが関心を持つものではなく,今では,経営陣も非常に強い関心を持つようになっている。
 標準化機関に対する競争政策及び反トラスト法上の取扱いもまた進化している。反トラスト法の目的は自由市場における競争を守り,それによって消費者を守ることにある。しかしながら,それが誤って適用されれば,技術革新,競争プロセス及び消費者に対して著しく損害を与えることになる。私がこれまで述べてきたように,反トラスト法の執行当局は,可能な限り,発明者や創作者が彼らの知的財産権を活用する際の不必要な不確実性を排除するよう努めるべきである。なぜならば,そのような不確実性は技術革新のインセンティブを減少させ得るからである。競争プロセスを守る一方で技術革新のインセンティブを最大化させるために,私は,標準化機関の意味合い,反トラスト法の法執行の適切な役割について改めて考え直す必要があると提案する。
 特に,我々執行当局が,標準化機関に参加する技術の実装者(technology implementers)の懸念に便宜を図る方向に偏り,革新的な技術の発明によって適正な報酬を得ることが認められている知的財産の発明者のインセンティブを損わせている危険性を懸念している。発明者と実装者の利害衝突は常に緊張状態にある。その緊張状態は,自由市場によって,典型的にはライセンス料やライセンスの相互交換に関するライセンス合意を交渉する方法によって解決される。標準化機関が与える利益にもかかわらず,反トラスト法を誤って適用し,標準化機関内部の意思疎通やライセンス慣行を規制した場合,自由市場取引は妨害され,その結果,ダイナミックな技術革新のプロセスが損なわれることになる。
 高名な経済学者であり,元反トラスト局長代理のCarl Shapiro氏は,新しい標準規格に技術が実装された後に,当該技術の特許権者が,自らが要求するライセンス条件に合致するまでは,ライセンスの供与を遅らせると脅迫する問題が生じていることに焦点を当てた。これがいわゆるホールドアップ問題である。標準化機関がホールドアップ問題をどのように解消できるかについては非常に多く議論されてきた。また,近年,標準化機関と交わした確約(commitment)を監視するために反トラスト法をどのように役立てるかが議論されるようになってきた。
 ホールドアップ問題に関する議論がされる中で,より深刻な問題,すなわちホールドアウト問題に対する認識がしばしば失われている。個人の投資及び所有する知的財産権を通じて技術を開発する発明者と,知的財産権所有者からライセンスを受けてライセンス料を支払うことでその技術を市場化して活用する実装者の間の交渉を背景に,標準規格は策定される。ホールドアウト問題は,実装者が,自らが要求するライセンス条件に合致するまでは,標準規格に技術を実装する際のライセンス料を過少に支払う,又は,ライセンスを取得しないと脅迫する際に生ずる。
 私は,集団的なホールドアウト問題は,技術革新を妨げる,より深刻な障害であると認識している。最も重要なことは,ホールドアップ問題とホールドアウト問題は対称的ではないことである。すなわち,発明者が行っている投資は,その投資が割に合うものかが分かる前に行われていることを認識すべきである。たとえ技術革新が成功しても,実装者がホールドアウトしてしまえば,発明者は実装者によって支払われるべきライセンス料を得られなくなってしまう。対照的に,実装者は,新技術のライセンス料が決定された後に投資を行っていることから,少なくともある程度は,実装者はホールドアップされるリスクに対していくらかのバッファーを有していることになる。このような非対称性が存在することからも,実装者が過少投資することよりも,発明者が過少投資することの方に,より重大な懸念がある。
 反トラスト局長として私が優先することは,知的財産権と反トラスト法の間の政策的課題について,もっとバランスの取れた議論ができるようにすることにある。残念なことに,昨今,競争政策は,いわゆる単独行為的なホールドアップ問題に焦点が集まり過ぎ,技術革新や効率性に資するものが何かが無視される傾向にある。他の解決策ではなく,反トラスト法を適用し過ぎると,発明者が,自らの技術が標準規格に搭載される際の利益の代わりに引き受けている投資金とリスクの重要性が見落されることになる。新技術の実装者が共同して取引上の影響力を持てば持つほど,技術革新のインセンティブは損なわれていく。それゆえに,私は,ホールドアップ問題ばかりに焦点を当てる政策提案には懐疑的である。
 このような背景から,私は,競争当局や裁判所は,標準規格の策定に対する反トラスト法の適切な適用に配慮すべきであると提案する。いわゆるホールドアップ問題があるとして,反トラスト法又は競争法を不適切に適用しようとする世界的な傾向があるが,これは厄介なことである。特許権者が標準化機関と交わした確約に違反したのであれば,最初のかつ最善の防衛線は標準化機関それ自身及び参加者である。
 こうした確約は典型的には契約上同意されたものである。より具体的に言うと,標準化機関は,特許権者に対し,特許権者の技術が審査され,もしも(標準規格に)採用されれば,標準規格に搭載される際には,公正,合理的,かつ,無差別に技術のライセンスを供与する,いわゆるFRAND又はRAND宣言するよう努めることを義務付けている。ライセンス料や慣行が合理的又は無差別であるかに関する紛争は,自由市場の交渉においては,必ず生ずるものである。しかしながら,我々競争当局は,こうした紛争が協調的行為を伴う場合に,最大の関心を持つべきである。
 特許権者が標準化機関との確約に違反した場合,その行為は競争にある程度の影響を与えることになる。しかし,そのことは,潜在的なライセンシーのために反トラスト法による強権的な介入が必要であるということを意味するわけではない。標準化機関やその参加者が実現できるコモンローや法令に基づく是正措置の方がより適切なのである。
 現行法令の元では,特許権者の一方向的な行為が合理的であるかを審理することは,反トラスト法の義務でも役割でも無い。特許権者は,自らの行動が契約法や他のコモンロー上の責任が問われるかを把握しつつ,特許権の活用方法についての判断を下している。反トラスト法をそのような行為に無遠慮に適用した場合,そうした特許権者の判断を混乱させることになる。
 より重要なことは,反トラスト法上の罰則を抑制することが,より適切なコモンローによる是正を深化させ,標準化機関に誓約に従った行動をさせるのである。契約違反があった場合,合理的・無差別なライセンス料や確約事項について訴訟を起こすことができる。もしも合理性の判断基準に違反していれば,他の契約違反事件と同様に,当該基準に違反するとの決定が下されることになる。反トラスト法の執行当局はもっと控えめになり,消費者に利益を与える競争を促進する方法で反トラスト法を執行すべきである。
 標準規格の策定に関して反トラスト法による監視が重要な役割を担う場合もある。発明者が所有する知的財産権に関し,反トラスト法に違反してもよいとする特権が与えられているわけではない。標準化機関の参加者もまた反トラスト法の調査から除外されることはない。もしも標準化機関の参加者が自分たちの利益のためにライセンス交渉を歪曲しようとすれば,その参加者は共謀的・反競争的な行為を行っている可能性がある。
 裁判所や競争当局は,長い間,標準化機関は反競争的な行為が行われやすいと理解してきた。競争業者が集まる時,川下市場の価格拘束や新規参入阻害といった,いわゆるカルテルが行われる危険性が常にある。最高裁判所も,特定の競争業者や製品を排除するための手段として標準化機関を利用することは競争を侵害するとして非難している。そのような理由から,当局は標準化機関の参加者が買い手カルテル(経済学者が言うところの買手独占効果)を行う可能性について注意深く監視する必要がある。
 実装者が,標準化機関内において,新技術を搭載した製品を販売する際のゲートキーパーとして共に行動するとき,実装者は反競争的ライセンス条件を強いる動機及び手段を有する。究極的には,彼らは現行の技術を優先して,潜在的な新技術を締め出すこともできる。新技術が実装されないという危険性は,発明者と実装者に対して,同等に影響するものではない。ホールドアウトの可能性が実装者の取引上の重要なカードとなる。ホールドアップ問題とは異なり,実装者は新技術に多くの投資をする前にこの影響力を行使することができる。
 それゆえに,反トラスト局は,取引上の影響力を発明者から実装者に移行させることを目的とした標準化機関のルールに対して懐疑的であり,逆もまた然りである。また,実装者優位の取引に歪曲させるために,「合理的かつ無差別的である」ことを主張している標準化機関のルールについては,それが標準化機関における共謀行為によって作られたものであるかを注意深く監視する必要がある。
 もしも,標準化機関による「合理的な」ライセンス料が実装者又は発明者のどちらかに極めて有利である場合には,そのようなルールに至ったプロセスは反トラスト法上の調査の対象となり得る。
 特許権者の差止請求権を制限する標準化機関のルールを特許権者が破ることは,契約上の問題であり,反トラスト法違反になることは稀であることを認識する必要がある。特許は財産の一形態であり,独占的権利は特許権者が所有する最も基本的な取引上の権利である。特許権者からその権利を剥奪するというルールは,それが標準化機関が課したものか,裁判所が課したものかに問わず,技術革新のインセンティブを阻害し,ホールドアウト問題を悪化させることになる。結局のところ,差止命令の脅威が無ければ,実装者は,合理的なライセンス料の債務を負っていることを知りながら,特許侵害をし続けることが可能となるのである。
 反トラスト局は,標準化機関の参加者によるカルテルのような反競争的行為に対しては,注意深く監視していく。かつては「開放性」が確保されていれば標準化機関内におけるカルテルのような行為を防ぐことができると言われていたが,標準化機関は純粋に客観的な技術的取組を越えたものになってしまったことから,それは時代遅れである。それゆえに,私は,競争当局に対して,特許権者による標準化機関の確約違反に対して競争法を適用することにはもっと慎重になり,技術革新のプロセスを侵害する標準化機関内の共謀行為について改めて考えることを求める。同様に,標準化機関に対して,組織の発足時もそれ以降も,自分たちのルールを積極的に審査してもらいたい。事実,標準化機関は,反トラスト法の法令遵守の内部的な取組を実施し,自分たちのルール,そのルールの適用が反競争的でないかを定期的に評価するよう,勧められているはずである。
 標準化機関の意味合い及び反トラスト法の役割について考え直すことは,かなり前から行われている。新しく革新的な技術を巡る取引は,多額の投資を伴い,双方は取引の目標を改善するために,必要なあらゆる手段を用いるインセンティブを有している。そうした中で,競争市場のプロセスは成功している。標準化機関は知的財産権のライセンサー又はライセンシーが,自由市場では得られないであろう,有利な条件を得るための道具となるべきではない。
 我々は競争的なライセンス料が何かについて知り得る術が無い。我々は価格規制官庁ではないのである。もしも,反トラスト法の管轄にそぐわない分野に同法を適用したら,競争プロセスを破壊し,アメリカの消費者及び技術革新自体に深刻な損害を与えることになる。しかし,我々は,競争的なライセンス料が主流となることを確保するために,反競争的な行為を警戒しなくてはならない。これが,発明者側のホールドアップ問題の方が実装者によるホールドアウト問題による危険性よりも関心が持たれるべきでないとする理由である。技術革新のインセンティブを最大化し,等しく適正なインセンティブを実行することを確保するために,この非対称性を是正する時期が来ているのである。

米国司法省は,世界最大の通信事業者AT&T/DirecTVによるメディア企業タイム・ワーナーの買収計画について,垂直的統合の観点から,同計画の禁止を求めて民事提訴

2017年11月20日 米国司法省 公表
原文

【概要】

 米国司法省は,AT&T/DirecTVによるタイム・ワーナーの買収計画の禁止を求め民事訴訟を提起した。1080億ドルに及ぶこの買収計画は,競争を実質的に制限し,アメリカ国民に価格の上昇及びイノベーションの減退をもたらすおそれがある。
 AT&T/DirecTVが所有する巨大な映像配信インフラとタイム・ワーナーが所有する人気のテレビ番組が結合されれば,アメリカ史上最大の企業結合の一つとなる。タイム・ワーナーは, TBS,TNT,CNN,Cartoon Network,HBO及びCinemax等の放送チャンネルを有し,その中にはGame of Thrones(注:人気テレビドラマ),全米大学体育協会バスケットボールトーナメント,相当数に及ぶ MLB及びNBA のレギュラーシーズン及びプレーオフ等の番組が含まれる。
 コロンビア連邦地方裁判所に提出された訴状によれば,AT&T/DirecTVがタイム・ワーナーを買収すれば,タイム・ワーナーの高価値かつ人気のある放送チャンネル及び番組を支配することで,競争業者に対してタイム・ワーナーの放送チャンネル及び番組を配信するための権利を年間に何億ドルも値上げすることを強要し,当該競争業者を排除することが可能になる。また,市場支配力が増大することで,消費者の選択を増加させる新しく刺激的な映像配信モデルへの移行を鈍化させることになる。その結果として,革新的な放送チャンネル及び番組の提供は減少し,アメリカ国民はより高い料金を請求されることになる。
 AT&Tが明示的に認めてきたように,人気番組を支配している配信業者は,競争を阻害するために,その支配を利用するインセンティブ及び能力を持つことになる。そして,DirecTVが説明しているように,そのように垂直的に統合されたテレビ番組製作者は,競争関係にある配信業者に番組を提供しないと脅迫することにより,割高で自分たちにとって有利な条件を要求するようになり得る。本企業結合計画は,そのように垂直的に統合された番組制作会社を作り出し,その結果として,競争を確実に侵害することになる。
 デラヒム反トラスト局長は,「本件買収が実現されれば,アメリカの消費者が大きな損害を被ることになる。すなわち,毎月のテレビ料金の支払が高くなり,消費者が享受し始めている新しい革新的な選択肢が減少することになる。AT&T/DirecTVがタイム・ワーナーを買収することは違法であり,本件買収によって生ずる弊害を完全に防ぐための適切な問題解消措置も無い。当該買収計画の禁止を裁判所に求めることが,司法省が採れる唯一の適切な措置である。」と述べている。
 また,デラヒム反トラスト局長は,「買収計画が実現されれば,オンライン映像配信業者との破壊的な競争も侵害する。この競争によって消費者はより低価格で多様な選択肢を持つことが可能となっている。」と述べている。訴状で述べているとおり,AT&T/DirecTVにとって,同社が所有する有料テレビ放送は大きな収益源となっている。買収計画が認められれば,AT&T/DirecTV及びタイム・ワーナーは,新規参入を阻害するために,タイム・ワーナーの人気の放送チャンネル及び番組により高い利用料を課す等のインセンティブ及び能力を持つことになる。例えば,オンライン映像配信業者にとってタイム・ワーナーの番組は重要であるが,結合後企業がこれら番組を支配することで,オンライン映像配信業者の事業活動を阻害することが可能になる。実際,タイム・ワーナーの幹部は,オンライン映像配信業者が提供しているものは,タイム・ワーナーの番組が無ければ,空虚になると述べている。もしも買収計画が承認されれば,そうした影響力が増すばかりである。
 AT&Tは,テキサス州のダラスに本社を構える,デラウェア州で設立された法人である。同社は2016年に1630億ドル以上の利益を計上している,世界最大の通信事業者である。また,AT&Tは,2500万人以上の加入者を持つ,国内最大の多チャンネル映像番組配信事業者(MVPD:Multichannel Video Programming Distributor)である。同社は,3つの有料テレビ放送,すなわちDirecTV(約2100万人が加入している,2015年に合併により取得した衛星放送サービス),U-Verse(約400万人が加入している,地方のAT&Tの光ファイバー及び銅線通信を利用したサービス)及びDirecTV Now(約80万人が加入している,新しいオンライン映像サービス)を提供している。AT&Tは,19世紀に設立された会社で,地域の電話サービス供給市場において独占的地位を維持していたが,1982年,同社は,司法省によって提起された民事訴訟で和解するために,地域電話サービスに関する事業部門の一部を譲渡することに同意した。2011年,AT&TはT-Mobileを買収しようとしたが,司法省が当該買収が反トラスト法に抵触するとして民事提訴したことを受けて,買収を断念した。
 タイム・ワーナーは,ニューヨークに本社を構える,デラウェア州で設立された法人である。同社は2016年に293億ドルの利益を計上しており,同社によれば,最も人気のある同社の放送チャンネル及び番組は,有料テレビ放送に加入しているおよそ1億世帯のうちの9000万世帯に視聴されている。

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