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高速バスの共同運行に係る独占禁止法上の考え方について

高速バスの共同運行に係る独占禁止法上の考え方について

平成16年2月24日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,昨年5月,東北地区において高速バスを運行する乗合バス事業者による独占禁止法違反被疑事件の処理について公表した際に,平成9年に示した「一般乗合旅客自動車運送事業に係る相談について」(平成9年7月,以下「平成9年の考え方」という。)を見直す旨を公表したところである。
 今般,当委員会は,別紙のとおり,「高速バスの共同運行に係る独占禁止法上の考え方」(以下「今回の考え方」という。)を取りまとめた。

1 経緯

 平成9年の考え方は,同年に道路運送法に基づく適用除外カルテルの範囲が縮減された際,当時の制度及び実態に基づいて,道路運送法第19条第1項の協定の認可を受けずに行うことのできる,バス事業一般における一定の共同経営についての独占禁止法上の考え方を示したものである。
 そこでは,共同運行において事業者間で運賃・料金,運行回数及び運行系統に関する調整を行うものは,原則として独占禁止法上問題としつつも,高速バスの共同運行については,「事業施設等の関係で初期投資に必要な費用を単独では負担し難いこと等(例えば,都市間を結び,停車する停留所を限定して運行する急行系統で,運行系統キロが概ね50キロメートル以上の乗合バスがこれに該当する)により,事業者が単独で参入しにくい場合において,新規路線を開設するために行われる共同経営に関する協定は,路線分割,市場分割を行う協定を除き,原則として独占禁止法上問題とはならない」としている。
 しかしながら,平成9年以降,平成14年2月の改正道路運送法の施行により需給調整規制が廃止され,高速バスにおいては,一定の新規参入が生じる等の競争環境の変化が見受けられること,そうした中において昨年5月のような新規参入者の排除につながるおそれのある行為が行われたこと等を踏まえ,今般,平成9年の考え方の高速バスにおける共同運行に係る部分について,原則として独占禁止法上問題のない場合を明確化することとした。

2 高速バスの共同運行に係る独占禁止法上の考え方のポイント

 今回の考え方においては,以下のような明確化を図っている。
ア 平成9年の考え方では,共同運行に参加する事業者による新規参入者に対応する行為等について触れられていなかったことから,原則として独占禁止法上問題ないと考えられる共同運行であっても,それに参加する事業者が共同して,例えば,新規参入者に対応することによりその事業活動を排除する行為,正当な理由がないのに新規参入者によるバスプール(鉄道の駅前に設置されている乗降場)の使用を同意しない等の新規参入を阻害する行為,事業者が既存の協定から脱退して単独での運行に移行することを不当に制限する行為等は独占禁止法上問題となることを明示。
イ 平成9年の考え方では,どのような場合が単独で参入しにくい場合と考えられるのか不明確であることから,今回の考え方では,高速バスの実態を踏まえて,具体的な場合を例示。
ウ 平成9年の考え方では,単独で参入しにくい事業者が新規に路線を開設する場合への言及にとどまっており,単独での運行が可能になる等の事情の変更があった場合の考え方が必ずしも明確でないことから,今回の考え方では,一度新規に路線を開設した後も引き続き単独で当該路線を維持することが困難な状態が続いているのであれば,原則として独占禁止法上問題ない旨を明確化。
エ 平成9年の考え方では,独占禁止法上問題のない共同経営に関する協定の範囲には何ら限定がないことから,今回の考え方では,上記のような高速バスの特性に応じた必要な範囲を超えない協定が原則として独占禁止法上問題ない旨を明確化。
オ 今回の考え方で独占禁止法上問題ないとされている場合から外れる場合については,独占禁止法の一般論に基づいて判断されることとなることから,今回の考え方の冒頭において,その一般論を示しつつ,プールした運賃を運行回数比等で分け合う運賃プールは,そこでいう運賃等の制限に当たる旨を確認的に記述。

3 公正取引委員会の今後の対応

 公正取引委員会は,規制緩和の趣旨に沿って,高速バス路線における新規参入が円滑に行われ,高速バス事業における公正かつ自由な競争の促進に資するよう,高速バスの共同運行に関して新規参入阻害行為等の独占禁止法上の問題が生じる場合には厳正に対処することとしている。
 また,高速バスの共同運行に係るバス事業者等からの相談に対しては,独占禁止法違反行為の未然防止の観点から積極的に対応することとしている。

別紙 高速バスの共同運行に係る独占禁止法上の考え方

1 一般に,一般乗合旅客自動車運送事業者(以下単に「事業者」という。)による,運賃・料金,運行回数又は運行系統を制限する協定及び路線分割,市場分割を行う協定は,原則として独占禁止法上問題となる。(注1)
(注1) 例えば,協定に参加する各事業者の運賃収入をいったんプールした上で,それを運行回数比等に応じて配分する形態に関する協定は,事業者間で運賃,運行回数等について制限することになり,原則として独占禁止法上問題となる。
 また,運賃収入を着券精算する等各事業者の実乗車人数に応じて運賃収入を精算する形態に関する協定であっても,事業者間で運賃,運行回数等について制限することになる場合には,原則として独占禁止法上問題となる。

2 しかしながら,高速バス(都市間を結び,停車する停留所を限定して運行する急行系統で,運行系統キロが概ね50キロメートル以上の乗合バスをいう。)の運行については,着地が事業者の営業区域から遠隔地にあり,事業者が単独では運行しにくい場合が多いという特性がある。こうした高速バスの運行における特性を踏まえると,そうした特性に応じた必要な範囲を超えない形で行われる以下の協定は,参入可能な事業体を増やすという競争促進的効果が認められ,また,事業者が単独では達成し得ない効率性を達成することにより利用者の利便に資すると考えられることから,路線分割,市場分割を行う協定を除き,原則として独占禁止法上問題とはならない。
ア 事業者が単独では参入しにくい場合(注2)において,新規路線を開設するために行われる共同経営に関する協定
イ 上記アの目的に基づく協定を既に行っている事業者が単独では当該協定に係る路線を維持することが困難な場合(注2)に行われている当該協定
 ただし,平成14年2月に施行された道路運送法の改正によるいわゆる需給調整規制の廃止により,路線への参入が行いやすくなる等,競争環境が変化している中,当該協定に参加する事業者が共同して,競合路線を運行する他の事業者を排除し又は他の事業者による競合路線への新規参入を阻害する行為及び他の事業者が協定に参加し又は協定から脱退することを不当に制限する行為は独占禁止法上問題となる。
(注2) 例えば,着地が事業者の営業所から遠隔地にあるため,当該事業者が,(1)着地において復路の集客を行うのに必要な経営資源を有していない,(2)バスターミナル等の発着施設,駐車場等の施設を着地において有していない状況にあり,それに要する費用を単独では負担し難い場合が考えられる。

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公正取引委員会事務総局経済取引局調整課企画官
電話 03-3581-5483(直通)
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