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役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針

平成10年3月17日
公正取引委員会
改正:平成16年3月31日
改正:平成22年1月1日
改正:平成23年6月23日

はじめに

 近年、我が国経済のソフト化・サービス化が進展し、我が国経済に占めるサービス部門の比重が増大するとともに、事業者間の取引にあっても、部品、製品等といった商品の取引だけでなく、役務についての取引が増加しており、特に、いわゆるアウトソーシング(社内業務の外部委託)の動きの活発化に伴って、提供される役務の仕様等の具体的内容が役務の提供を委託した事業者(以下「委託者」という。)の指図により決定される取引(以下「役務の委託取引」という。)が重要なものとなってきている。
 公正取引委員会は、我が国の流通・取引慣行について、国民生活に真の豊かさが求められ、また、経済活動がグローバル化し我が国の国際的地位も向上する中で、消費者の利益が一層確保され、我が国市場が国際的により開放的なものへと変化していくことが求められているとの観点から、どのような行為が、公正かつ自由な競争を妨げ、独占禁止法に違反するのかを具体的に明らかにすることによって、独占禁止法違反行為の未然防止等を図るため、「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成三年七月十一日公正取引委員会事務局。以下「流通・取引慣行ガイドライン」という。)を作成・公表したところである。
 流通・取引慣行ガイドラインは、主として生産財・資本財の生産者と需要者との取引及び消費財が消費者の手元に渡るまでの流通取引を念頭において、事業者間の取引に関する独占禁止法上の考え方を示したものであるが、役務の取引についても、その考え方は基本的には同様であるとしている。
 しかし、事業者間の役務の委託取引においては、運輸、ビルメンテナンス等の委託取引のように役務の提供を受託した事業者(以下「受託者」という。)が役務を提供すること自体で債務の履行が完了するもののほか、ソフトウェア開発、テレビ番組制作等の委託取引のように受託者が役務を提供して得られる成果物(以下「情報成果物」という(注1)。)を引き渡すことで債務の履行が完了するものがあり、近年、その重要性が増加してきている(注2)。このような取引にあっては、委託がなされる時点では、取引の対象となる情報成果物の具体的内容が確定していないため、委託者が提供された情報成果物について「やり直し」を求めることもあるなど、流通・取引慣行ガイドラインの考え方をそのまま適用できない場合もみられる。
 経済のソフト化・サービス化が進展するとともに、政府規制の緩和等が進み、事業者間の役務の委託取引にあっても、市場をより開放的なものとし、公正かつ自由な競争を促進することが重要になっているが、この指針は、主として優越的地位の濫用規制の観点から、どのような行為が独占禁止法上問題となるかを、流通・取引慣行ガイドラインにおける取扱いを踏まえて明らかにすることにより、事業者の独占禁止法違反行為の未然防止とその適切な活動の展開に役立てようとするものである(注3)。
 公正取引委員会は平成十年三月十七日に「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」を公表したところであるが、情報通信社会の急速な進展に伴い、コンピュータ・ソフトウェアや映像・音楽等のコンテンツ等の情報成果物に係る取引の重要性がますます増していることに鑑み、特にこうした成果物に係る権利等の一方的取扱いに関する独占禁止法上の考え方をより一層明確化する必要があること、また平成十五年六月の法改正により下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)の対象に役務提供委託及び情報成果物作成委託が追加されたことに伴う所要の修正を行うなどのため、改定することとしたものである(注4)。

(注1)情報成果物とは、下請法に定める次に掲げるものをいう。

(1) プログラム(電子計算機に対する指令であって一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)

 例: テレビゲームソフト、会計ソフト、家電製品の制御プログラム、顧客管理システム

(2) 映画、放送番組その他映像又は音声その他の音響により構成されるもの

 例: テレビ番組、テレビCM、ラジオ番組、ラジオCM、映画、アニメーション

(3) 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの

 例: 設計図、ポスターのデザイン、商品・容器のデザイン、コンサルティングレポート、雑誌広告

(4) その他下請法の施行令で定めるもの

(注2) この指針において、「役務の委託取引」とは、役務提供の委託取引及び情報成果物作成の委託取引からなり、これら役務の委託取引における取引対象を総称する場合には、単に「役務」という。

(注3) 優越的地位の濫用として問題となるかどうかは、取引当事者間に取引上の地位の優劣があるか否か、取引上優越した地位にある事業者が当該地位を利用して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えているか否かを踏まえ、個別具体的な取引ごとに判断されるので、役務を提供する業種の別によってこの指針の考え方が異なるものではない。

(注4) 平成十五年六月に下請法が改正され、役務の委託取引が同法の規制対象となったことにより、資本金要件に該当する親事業者と下請事業者との間の役務の委託取引については改正下請法が適用される。
 また、荷主がユーザーとして運送業者等に委託を行う役務の委託取引については、「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の不公正な取引方法」(平成十六年公正取引委員会告示第一号)が適用される。
 これら以外の役務の委託取引については、この指針に示された考え方により独占禁止法第二条第九項第五号(優越的地位の濫用)(以下、特に記載のない限り、「不公正な取引方法」という。)が適用される。

第1 優越的地位の濫用規制についての基本的考え方

1 我が国における事業者間の役務の委託取引においては、特定の事業者間で継続的な取引が行われる場合がある。多くの委託者が継続的な取引を行っている場合には、一般に、受託者が取引先を変更することが困難となりがちであるほか、役務の提供に当たっては、個々の委託者ごとに異なったノウハウや設備を必要とする場合もあって、受託者は既存の取引関係をできるだけ維持しようと努めることとなりがちである(注5)。
 このように役務の委託取引において継続的な取引が行われ、委託者が取引上優越した地位にある場合に、当該委託者が、受託者に対し、正常な商慣習に照らして不当に不利益となるように役務の委託取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施する場合には、受託者の自由かつ自主的な判断による取引を阻害するとともに、受託者はその競争者との関係において競争上不利となる一方で、当該委託者はその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあるものである。
 このような行為は、優越的地位の濫用として不公正な取引方法に該当し、違法となる(独占禁止法第二条第九項第五号)。
 なお、独占禁止法による優越的地位の濫用規制は、このような行為によって役務の委託取引における委託者間あるいは受託者間等における公正な競争が阻害されるおそれがある場合に当該行為を排除しようとするものである。

(注5) 事業者間取引の継続性に関する独占禁止法上の考え方は、流通・取引慣行ガイドライン第1部の1(生産財等に係る継続的取引についての考え方)記載のとおりであり、役務の委託取引にあっても同様である。
 なお、優越的地位の濫用行為は、継続的な取引関係を背景として行われることが多いが、継続的な取引関係にない事業者間で行われることもある。

2 役務の委託取引において委託者が受託者に対し取引上優越した地位にある場合とは、受託者にとって委託者との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、委託者が受託者にとって著しく不利益な要請等を行っても、受託者がこれを受け入れざるを得ないような場合であり、その判断に当たっては、受託者の委託者に対する取引依存度、委託者の市場における地位、受託者にとっての取引先変更の可能性、その他委託者と取引することの必要性を示す具体的事実(取引当事者間の事業規模の格差、取引の対象となる役務の需給関係等)を総合的に考慮する。
 また、委託者の行為の不当性を判断する際の「正常な商慣習」とは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認される商慣習をいい、このため、委託者の行為が、現に存在する商慣習に合致していることをもって、それが直ちに正当化されるものではない。

3 役務の委託取引においても、委託者と受託者がどのような条件で取引するかは、基本的にはそれぞれの自主的な判断にゆだねられるものであるが、委託者が受託者に対し取引上優越した地位にある場合において、その地位を利用して、受託者に対し、代金の支払遅延、代金の減額要請、著しく低い対価での取引の要請、やり直しの要請、協賛金等の負担の要請、商品等の購入要請又は役務の成果物に係る権利等の一方的な取扱いを行う場合には、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注6)。
 以下では、これらの行為について、優越的地位の濫用規制の観点からの考え方を示しているが、優越的地位の濫用として問題となる行為は、これに限られるものではない。
 また、役務の委託取引において独占禁止法上問題となるのは、優越的地位の濫用の問題に限られるものではない。
 したがって、この指針に取り上げられていない行為が独占禁止法上問題となるかどうかは、同法の規定に照らして個別具体的に判断されるものである。

(注6) 委託者と受託者の間で取引の対象となる役務の具体的内容や品質に係る評価の基準、情報成果物に係る権利等の取扱い等があらかじめ明確になっていない場合には、受託者にとって不当にこれらの行為が行われたと認識されやすいので、これらについてあらかじめ明確にし、委託時に書面を交付するなどの対応をしておくことが望ましい。

4 以下では、委託者が取引の対象となる役務のユーザーである事業者の場合について独占禁止法上の考え方を示しているが、委託者としての地位を利用して取次業者や同業者(受託者と同種の役務の提供を業として行っている者をいう。以下同じ。)が、受託者に対し同様の行為を行う場合についても、基本的には同様の考え方によって、違法性が判断される。
 なお、このような多段階にわたる役務の委託取引においては、一次受託者が委託者から被った不利益を二次受託者等に転嫁している場合もあり得るが、これをもって、委託者及び一次受託者の行為が優越的地位の濫用として問題とならないとされるものではない(注7)。

(注7) 一次受託者が委託者の子会社である場合における委託者と一次受託者の間の取引が不公正な取引方法による規制の対象となるかについての考え方は、流通・取引慣行ガイドラインの「(付)親子会社間の取引」記載のとおりである。

第2 委託者による優越的地位の濫用行為

1 代金の支払遅延

(1) 考え方

 委託者が、提供を受けた役務の代金について、受託者に責任がないにもかかわらず、その全部又は一部を契約で定めた支払期日より遅れて支払うことがある。
 このような代金の支払遅延は、委託者側の収支の悪化や社内手続の遅延などを理由とすることが多いが、取引上優越した地位にある委託者が、正当な理由がないのに、契約で定めた支払期日に代金を支払わない場合であって、受託者が、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる。
 また、契約で定めた支払期日より遅れて代金を支払う場合だけでなく、取引上優越した地位にある委託者が、一方的に代金の支払期日を正常な商慣習に照らして遅く設定する場合や、支払期日の到来を恣意的に遅らせる場合にも、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい。ただし、支払期日が遅く設定される場合であっても、代金の額について支払期日までの受託者側の資金調達コストを踏まえた対価として交渉が行われるなど正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えていないと認められるときは、優越的地位の濫用の問題とはならない。

(2) 独占禁止法上問題となる場合

 取引上優越した地位にある委託者が代金の支払を遅らせることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。

(1) 社内の支払手続の遅延などを理由として、委託者側の一方的な都合により、契約で定めた支払期日に代金を支払わない場合

(2) 役務の成果物を対象とする取引において、役務の成果物の提供が終わっているにもかかわらず、当該成果物の検収を恣意的に遅らせることなどにより、契約で定めた支払期日に代金を支払わない場合

(3) 役務の成果物を対象とする取引において、代金は当該成果物を委託者が実際に使用した後に支払うこととされている場合に、委託者側の一方的な都合により当該成果物の使用時期を当初の予定より大幅に遅らせ、これを理由として代金の支払を遅らせるとき

2 代金の減額要請

(1) 考え方

 委託者が、受託者に対し、契約で定めた代金の減額を要請することがある。
 受託者が提供した役務の内容が委託時点で取り決めた条件に満たないことを理由として委託者が代金の減額を要請することもあるが、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、正当な理由がないのに、代金の減額を要請する場合には、あらかじめ計算できない不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注8)。
 また、委託者が契約で定めた代金を変更することなく、役務の仕様を変更したり、契約外の役務の提供を要請する場合もあるが、このように代金を実質的に減額することとなる場合の考え方は、上記と同様である。
 なお、受託者から提供された役務に瑕疵(かし)がある場合、委託内容と異なる役務が提供された場合、納期に間に合わなかったために取引の目的が達成できなかった場合等、受託者側の責めに帰すべき事由により、当該役務が提供された日から相当の期間内に、当該事由を勘案して相当と認められる金額の範囲内で代金を減額する場合、代金の減額要請が対価に係る交渉の一環として行われ、その額が需給関係を反映したものであると認められる場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない。

(注8) 受託者との間の継続的な取引関係の中で、代金の減額に代えて「協賛金」、「協力金」等の名目で金銭的な負担の要請が行われる場合があるが、その場合の考え方は、この代金の減額要請の場合と同様である。
 また、委託者が行う催事等の費用の一部に充当するために受託者に対して協賛金等の負担の要請が行われる場合があるが、その場合の考え方は、後記5のとおりである。

(2) 独占禁止法上問題となる場合

 取引上優越した地位にある委託者が代金の減額を行うことは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。

(1) 受託者に責任がないにもかかわらず、役務の提供を受けた後に、予算不足など委託者側の一方的な都合により、契約で定めた代金の減額を行う場合

(2) 提供を受けた役務について、あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくし、委託内容と異なることや瑕疵があることなどを理由として、契約で定めた代金の減額を行う場合

(3) 委託者側の一方的な都合により取引の対象となる役務の仕様等の変更、やり直し又は追加的な役務の提供を要請した結果、受託者側の作業量が大幅に増加することとなるため、受託者に対し当該作業量増加分に係る代金の支払を認めたにもかかわらず、当初の契約で定めた代金しか支払わない場合

(4) 受託者が委託者の要請に基づいて設備投資や人員の手配を行うなど、委託者に対する役務提供の準備のための費用を負担せざるを得なくなっているにもかかわらず、委託者側の一方的な都合により、当該役務の一部の委託を取りやめ、契約で定めた代金から委託取引の減少分に係る代金の減額を行う場合

3 著しく低い対価での取引の要請

(1) 考え方

 委託者が、受託者に対し、当該役務の内容と同種又は類似の内容の役務の提供に対し通常支払われる対価に比して著しく低い対価での取引を要請することがある。
 取引の対象となる役務の対価について、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、著しく低い対価での取引を要請する場合には、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注9)。
 しかし、委託者が要請する対価が受託者の見積りにおける対価に比べて著しく低く、受託者からみると、委託者による代金の買いたたき行為であると認識されるとしても、委託者から要請のあった対価で受託しようとする同業者が他に存在する場合など、それが対価に係る交渉の一環として行われるものであって、その額が需給関係を反映したものであると認められる場合や、いわゆるボリュームディスカウントなど取引条件の違いを正当に反映したものであると認められる場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない(注10)。
 なお、著しく低い対価での役務の委託取引を要請することが優越的地位の濫用行為に該当するか否かについては、対価の決定に当たり受託者と十分な協議が行われたかどうか等の対価の決定方法、他の受託者の対価と比べて差別的であるかどうか等の決定内容、取引の対象となる役務の需給関係を反映しているかどうか等の対価の決定状況などを勘案して総合的に判断することとなる。

(注9) このような場合、委託者と受託者の間で対価に係る交渉が十分に行われないときには、受託者は委託者による代金の買いたたき行為と認識しがちであるので、取引上優越した地位にある委託者は、当該対価が需給関係を反映したものであることについて十分受託者に説明した上で当該要請を行うことが望ましい。

(注10) 同業者が独占禁止法第二条第九項第三号又は一般指定第六項に規定する不当廉売に該当する行為を行っている場合には、当該同業者の提示する対価は需給関係を反映したものであるとは認められない。

(2) 独占禁止法上問題となる場合

 取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、役務の委託取引において著しく低い対価を定めることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。

(1) 受託者が役務の委託取引を行うに際して新たに設備投資や人員の手配を行う必要があるなど、これによって当該役務の提供に必要な費用等も大幅に増加するため、受託者が対価の引上げを求めたにもかかわらず、かかる費用増を十分考慮することなく、著しく低い対価を定める場合

(2) 受託者に対して短い納期の設定を行い、これによって当該役務の提供に必要な費用等も大幅に増加するため、受託者が対価の引上げを求めたにもかかわらず、かかる費用増を十分考慮することなく、著しく低い対価を定める場合

(3) 多量ないし長期間の役務の委託取引をすることを前提として受託者に見積りをさせ、その見積りにおける対価を少量ないし短期間しか取引しない場合の対価として定めるとき

(4) 特定の受託者に対し、合理的な理由がないにもかかわらず、他の受託者の対価と比べて差別的に低い対価を定める場合

4 やり直しの要請

(1) 考え方

 委託者が、受託者に対し、提供を受けた役務について、それに要する費用を負担することなくやり直しを要請することがある。
 提供を受けた役務の内容が委託時点で取り決めた条件に満たない場合には、委託者がやり直しを要請することは問題とならないが、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、その一方的な都合でやり直しを要請する場合には、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注11)。
 なお、やり直しのために通常必要とされる費用を委託者が負担するなど、受託者に不利益を与えないと認められる場合には、優越的地位の濫用の問題とはならない。

(注11) 役務の成果物が取引対象となる取引にあっては、受託者が成果物を試作した後でなければ具体的な仕様等が確定できないため、委託者が当該試作品につきやり直しを要請する場合がある。このような場合に、当該やり直しに係る費用が当初の対価に含まれていると認められるときは、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用として問題とはならない。

(2) 独占禁止法上問題となる場合

 取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、提供を受けた役務のやり直しをさせることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。

(1) 委託者側の一方的な都合により取引の対象となる役務の仕様等を変更したにもかかわらず、その旨を受託者に伝えないまま、受託者に継続して作業を行わせ、仕様に合致していないとして、受託者にやり直しをさせる場合

(2) 役務の提供を受ける過程で、その内容について了承したにもかかわらず、提供を受けた後に受託者にやり直しをさせる場合

(3) 提供を受けた役務について、あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくし、委託内容と異なることや瑕疵があることなどを理由として、受託者にやり直しをさせる場合

(4) 受託者が委託者に対し仕様ないし検査基準の明確化を求めたにもかかわらず、正当な理由なくこれを明確にしないまま、仕様等と異なることや瑕疵があることなどを理由として、受託者にやり直しをさせる場合

5 協賛金等の負担の要請

(1) 考え方

 委託者が催事、広告等を行うに当たり、受託者に対し、その費用の一部として協賛金等の負担を要請することがある(注12)。
 このような要請は委託者が流通業者である場合に行われることが多いが、流通業者が商品の納入業者に協賛金等の負担を要請する場合には、当該費用を負担することが納入商品の販売促進につながるなど受託者にとっても直接の利益となる場合もある。しかし、役務の委託取引においては、販売促進活動につながるなど自己の協賛金等の拠出額に見合った直接の利益を受託者が受けることは少ないので、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、その一方的な都合で協賛金等の負担を要請する場合には、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい。

(注12) 代金の減額に代えて協賛金等の負担の要請が行われる場合があるが、その場合についての考え方は、前記2のとおりである。

(2) 独占禁止法上問題となる場合

 取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、協賛金等を負担させることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。

(1) 協賛金等の負担額及びその算出根拠、使途等について、委託者と受託者の間で明確になっていない場合であって、受託者にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合

(2) 次のような方法により協賛金等を負担させ、受託者に不利益を与えることとなる場合(注13)

a 委託者の決算対策など、損益が悪化したことを理由として、協賛金等の負担を要請する場合

b 商品の納入業者など他の事業者に対しても協賛金等の負担の要請を行っていることを理由として、受託者が受ける直接の利益等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えて協賛金等の負担を要請する場合

c 一定期間に一定程度以上の委託取引がなされた場合に、協賛金等を徴収することをあらかじめ定めていた場合において、当該取引量に至らないにもかかわらず当該協賛金等の負担を要請するとき

(注13) (2)の場合は、協賛金等の負担の条件について委託者と受託者の間で明確になっている場合であっても違法となるケースである。

6 商品等の購入要請

(1) 考え方

 委託者が、受託者に対し、役務の委託取引関係を利用して自己の販売する商品又は役務のほか、委託者の関係会社や取引先事業者が販売する商品又は役務の購入を要請することがある。
 取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、商品又は役務の購入を要請する場合には、受託者は、当該商品又は役務の購入を希望しないときであっても、今後の役務の委託取引に与える影響を懸念して当該要請を受け入れざるを得ないこととなり、優越的地位の濫用として問題となる。
 なお、このような商品等の購入要請は、いわゆる相互取引(それぞれ相手方がその事業遂行上必要な商品又は役務を販売している場合において、取引の相手方からの商品又は役務の購入と、相手方への自己の商品又は役務の販売が関連付けられている取引をいう。)の申出として行われる場合があり、このような相互取引についての考え方は、流通・取引慣行ガイドライン第1部第5(不当な相互取引)記載のとおである。

(2) 独占禁止法上問題となる場合

 取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、自己又は自己の指定する者から、次のような方法により受託者がその事業遂行上必要としない商品又は役務を購入させることは、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。

(1) 委託取引担当者等の役務の委託取引に影響を及ぼし得る者が購入を要請する場合

(2) 受託者に対し、組織的又は計画的に購入を要請する場合

(3) 購入する意思がないとの表明があった場合又はその表明がなくとも明らかに購入する意思がないと認められる場合に、重ねて購入を要請し、又は不必要な商品を一方的に送付するとき

(4) 購入しなければ今後の役務の委託取引に影響すると受け取られるような要請をし、又はそのように受け取られるような販売の方法を用いる場合

7 情報成果物に係る権利等の一方的取扱い

(1) 考え方

 情報成果物が取引の対象となる役務の委託取引にあっては、受託者が作成した成果物について、受託者に著作権が発生したり、受託者にとって特許権、意匠権等の権利の対象となることがある。また、受託者が当該成果物を作成する過程で、他に転用可能な成果物、技術等を取得することがあり、これが取引の対象となる成果物とは別の財産的価値を有する場合がある。
 このような役務の委託取引において、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、当該成果物が自己との委託取引の過程で得られたこと又は自己の費用負担により作成されたことを理由として、一方的に、これらの受託者の権利を自己に譲渡(許諾を含む。以下同じ。)させたり、当該成果物、技術等を役務の委託取引の趣旨に反しない範囲で他の目的のために利用すること(二次利用)(注14)を制限する場合などには、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注15)。
 しかしながら、このような場合に、成果物等に係る権利の譲渡又は二次利用の制限に対する対価を別途支払ったり(注16)、当該対価を含む形で対価に係る交渉を行っていると認められるときは、優越的地位の濫用の問題とはならない(注17)。
 ただし、このような場合であっても、成果物等に係る権利の譲渡等に対する対価が不当に低い場合や成果物等に係る権利の譲渡等を事実上強制する場合など、受託者に対して不当に不利益を与える場合には、優越的地位の濫用として問題となる(注18)。

(注14) 二次利用としては、例えば、以下のような場合がある。

(1) 委託者からの発注により、受託者が地上放送用に制作したテレビ番組を、ビデオ化して販売する場合

(2) 委託者からの発注により、受託者が劇場映画用に制作したアニメーションを、インターネットにより配信する場合

(3) 委託者からの発注により、受託者が委託者の自社使用のために制作したコンピュータープログラムを、他の事業者のために使用する場合

(4) 委託者からの発注により、受託者が特定商品のために制作したキャラクターについて、他の商品に使用する場合

(注15) この(1)「考え方」及び下記(2)「独占禁止法上問題となる場合」において示されている考え方は、情報成果物の作成に伴い、受託者に権利が発生・帰属していることを前提としたものである。
 しかし、受託者が情報成果物を作成するに当たっては、役務の委託取引に基づき受託者が自己の有する技術、人員等により作成する場合だけでなく、委託者から提供された技術、人員等をも使用して作成する場合がある。
 委託者が役務の委託取引を行うに当たり,受託者に自己の有する技術を提供した場合は,役務の委託取引と技術取引とが同時に行われたものとみることができる。このため,情報成果物に係る権利の取扱いについても委託者が提供した技術との関係を考慮して判断されることとなるが,知的財産のうち技術に関するものの利用に係る制限行為に関する独占禁止法上の考え方については,「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(平成十九年九月二十八日公正取引委員会)のとおりである。
 また、委託者が技術、人員等を提供するなどにより、情報成果物を受託者と共同で作成したとみることができる場合においては、当該成果物に係る権利の譲渡、二次利用及び労務、費用等の負担に係る取決め内容について、委託者と受託者の間で著しく均衡を失し、これによって受託者が不当に不利益を受けることとなるときには、優越的地位の濫用又は共同行為における差別的取扱い(一般指定第五項)として問題となる。

(注16)二次利用の制限に対する対価には、二次利用による収益配分の条件として定める場合を含む。

(注17)当該対価を含む形で対価に係る交渉を行っていると認められるためには、取引の当事者双方が成果物等に係る権利の譲渡等が取引条件であることを認識し、委託者が成果物等に係る権利の譲渡等に対する対価が含まれることを明示した委託費用を提示するなど、取引条件を明確にした上で交渉する必要がある。
 また、違反行為を未然に防止するなどの観点からは、可能な場合には、委託者が委託費用を提示する際に権利の譲渡等に対する対価を明示していることが望ましい。

(注18)「対価が不当に低い場合」の判断に当たっては、本指針の「第2 3 著しく低い対価での取引の要請」に記載される考え方が適用される。
 また、「事実上強制する場合」の具体例として、例えば、受託者が権利の譲渡を伴う契約を拒んでいるにもかかわらず、今後の取引を行わないことを示唆するなどして、事実上、権利の譲渡を余儀なくさせる場合が挙げられる。

(2) 独占禁止法上問題となる場合

 情報成果物が取引対象となる役務の委託取引において、取引上優越した地位にある委託者が、当該成果物を作成した受託者に対し、次のような行為を行う場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。

ア 情報成果物の権利の譲渡

(1) 受託者に権利が発生するにもかかわらず、当該成果物が委託者との委託取引の過程で得られたこと又は委託者の費用負担により作成されたことを理由として、一方的に当該成果物に係る著作権、特許権等の権利を委託者に譲渡させる場合

(2) 受託者に権利が発生する場合において、二次利用による収益配分を条件として、著作権等の権利を委託者に譲渡したにもかかわらず、二次利用の管理を行う委託者が受託者からの二次利用の要請・提案に対して、合理的な理由がないのに応じない場合

イ 情報成果物の二次利用の制限等

(1) 受託者に権利が発生し、委託者には権利が発生しないにもかかわらず、委託者が、自らに又は自らにも権利が発生すると主張しこれを前提として、受託者との間で、一方的に当該成果物の二次利用の収益配分などの取引条件を取り決める場合、又は二次利用を制限する場合

(2) 受託者に権利が発生する場合において、委託者が、当該成果物が委託者との委託取引の過程で得られたこと又は委託者の費用負担により作成されたことを理由として、受託者に対し、一方的に当該成果物の二次利用の収益配分などの取引条件を取り決める場合、又は二次利用を制限する場合

(3) 受託者に権利が発生する場合において、受託者が、委託者が提示する成果物作成の対価に加えて、当該成果物の二次利用による収益配分の条件も考慮して当該成果物の作成を受託したにもかかわらず、二次利用の管理を行なう委託者が受託者からの二次利用の要請・提案に対して、合理的な理由がないのに応じない場合

ウ 受託者が情報成果物を作成する過程で発生した取引対象外の成果物等の権利の譲渡及び二次利用の制限等
 受託者が取引対象である情報成果物を作成する過程で生じた当該成果物以外の成果物等について、受託者に権利が発生する場合において、委託者が上記ア及びイと同様の行為を行う場合

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