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(平成27年3月27日)我が国企業における外国競争法コンプライアンスに関する取組状況について~グローバル・ルールとしての取組を目指して~

(平成27年3月27日)我が国企業における外国競争法コンプライアンスに関する取組状況について~グローバル・ルールとしての取組を目指して~

平成27年3月27日
公正取引委員会

1 調査の趣旨(報告書第1)

 近年,我が国企業が外国競争法(注1)違反による摘発を受け,巨額な罰金や制裁金が課されたり,我が国企業の役員・従業員が禁錮刑を科されたりする事案が多数発生し,我が国企業における外国競争法に関するコンプライアンス(以下「外国競争法コンプライアンス」という。)態勢の脆弱性が指摘されている。
 多くの主要国の競争法と独占禁止法との間では,カルテル禁止規範を中心に法違反とされる行為自体には共通性があることから,我が国企業においては,まずは独占禁止法を遵守することが外国競争法違反に問われないための基本であると考えられる。一方で,現在,主要国の競争法と独占禁止法では違反行為に係る成立要件,法執行に係る手続,違反行為に対する制裁減免のツール等について差異が存在する。このような状況を踏まえると,グローバルに事業活動を進める我が国企業にとっては,独占禁止法に関するコンプライアンス(以下「独占禁止法コンプライアンス」という。)を推進していくと同時に外国競争法についてもコンプライアンス態勢を整備していく必要性が高まっているものと考えられる。
 このため,今般,公正取引委員会は,我が国企業における外国競争法コンプライアンス態勢の強化に資することを目的として,アンケート調査及びヒアリング調査を実施した。

(注1)我が国独占禁止法に相当する外国の法律をいう。

2 本報告書のポイント(報告書第3)

(1) 外国競争法コンプライアンス推進に当たっての基本的な視点(リスク管理・回避の視点)

 外国競争法コンプライアンスの在り方を検討するに当たっては,「リスク管理・回避」が基本的視点になると考えられる(注2)。より具体的には,まず,以下のような様々な外国競争法の特徴を踏まえてリスクを的確に把握し,それを最小化していくという考え方が重要となる。このためには,違反行為を「しない」・「させない」という取組が何よりも必要となるが,そればかりでなく,違反行為を行ってしまった場合に,各々の国・地域の競争法で用意されている制裁減免のツールを積極的に活用して外国競争法違反行為に起因するダメージを最小化していくことも求められる。
 我が国独占禁止法と比較した場合の外国競争法の特徴に関連するリスクとしては,以下のものが挙げられる。

(注2)「企業における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況について」(平成24年11月公表)においては,「独占禁止法コンプライアンスは,単なる『法令遵守ツール』にとどまらず,『リスク管理・回避ツール』として戦略的に位置付けて積極的に活用すべきものと考えられる。」と述べられている。

ア 外国競争法制及びその運用に係るリスク
(ア) 違反行為に対する厳しい制裁
 制度上予定されている反競争的行為に対する罰金や制裁金の水準が我が国に比較して高い上,実際に高額な罰金や制裁金が課されている。また,国・地域によっては,営業担当者等の個人にも執行猶予のない禁錮刑が科されるケースも少なくない。
(イ) カルテルに係る成立要件等の相違
 特に価格カルテルについては,我が国と異なり違反行為に係る実体法上の要件として複数の事業者による共同行為さえあれば足り,競争制限効果の程度の如何を問わないとされている国・地域がある。また,カルテルの立証に当たり,共同行為の存在を推認させる状況証拠が我が国に比して重要な役割を果たす場合もある。
(ウ) 調査妨害・非協力に対するペナルティ
 競争当局の調査に非協力である者の罰金や制裁金が増額される場合もある。また,資料を廃棄するなど競争当局の調査を妨害するような場合には,別途厳しい制裁が用意され,かつ,それが実際に運用されている国・地域もある。

イ 複数の国・地域の競争法の執行対象となるリスク
 特にグローバルに事業を展開する企業においては,複数の国・地域の市場をまたいで競争法違反行為が行われることが多いため,当該複数の国・地域の競争当局から調査を受け,法執行の対象となるケースが増えている。自社の支店や海外傘下グループ会社等を通じて事業活動を行っている国・地域の競争法の執行対象となるだけでなく,そのような拠点を置かずに事業活動を行っている場合も,当該国・地域の競争法の執行対象となり得る。

(2) 外国競争法コンプライアンス推進のための対応の基本(対応の3本柱)

 我が国企業が,外国競争法コンプライアンスを推進していくに当たっては,独占禁止法コンプライアンスの推進を図る必要があることを前提として,前記(1)のリスク管理・回避といった基本的視点を踏まえた以下の3つの対応の基本に立脚して,個別具体的な方策を立案・実施していく必要があると考えられる。
ア 親会社及び海外傘下グループ会社による一体的対応(一体性)
 我が国企業の外国競争法コンプライアンスを考えるに当たっては,前記(1)イの「複数の国・地域の競争法の執行対象となるリスク」を踏まえ,海外傘下グループ会社も含めて態勢の構築を図っていく必要があるが,その際には,親会社・海外傘下グループ会社が一体となった対応が望まれる。
 しかし,アンケート調査によれば,海外傘下グループ会社における外国競争法コンプライアンスの取組状況について我が国に所在している親会社が詳細を承知していないとしているケースが少なくなく,一体的対応からは程遠い状況がうかがわれる。

イ 事業活動を行っている全ての国・地域の競争法を意識した広範な対応(広範性)
 複数の競争法の執行の対象となることによる制裁金等の巨額化を防ぎ,リスク管理・回避を適切に図っていく観点からは,事業活動を行っている国・地域の競争法の適用を十分意識した対応が必要である。
 しかし,アンケート調査によれば,米国,EU,中国及び韓国に事業展開している企業においてさえ,それぞれの国・地域の競争法についてのコンプライアンス・マニュアルを作成している,又は研修の機会を設けていると回答しているものはいずれも2割以下となっており,まだまだ改善の余地が大きいといった状況がうかがわれる。

ウ 我が国法制とは異なる外国競争法制の特徴を踏まえた柔軟な対応(柔軟性)
 前記(1)のようなリスクを有する外国競争法に対して,そのリスク管理を適切に図っていくためには,まず,外国競争法違反行為を「しない」・「させない」ことが重要であるが,仮に,外国の競争当局の法執行対象となってしまった場合にも,法制の違いを踏まえた適切な対応を行っていくことが極めて重要になってくる。
 アンケート調査によれば,外国競争法に係る有事対応において独占禁止法に係る有事対応と比べて特に配慮している事項について,外国競争法違反歴のある企業(注3)の大部分が外国競争法における制裁の在り方等の違い(調査への協力度合いによって制裁の程度が変わること等)を十分踏まえた臨機応変な対応を行っていると回答している。しかし,全体に広げてその結果を見てみると,このような対応をしているのはまだ少数派である。

(注3)過去20年間のうちに外国の競争当局から外国競争法違反で行政処分,訴追等を受けたことがある企業をいう。

3 公正取引委員会としての今後の対応(報告書第4)

 公正取引委員会は,これまで独占禁止法の厳正かつ積極的な執行と独占禁止法コンプライアンスに関する企業の取組の支援・唱導活動を「車の両輪」と捉えて,企業における独占禁止法コンプライアンスの推進に取り組んできている。
 今回の調査では,外国競争法に焦点を当て,我が国企業の外国競争法コンプライアンス態勢の現状を紹介するとともに,外国競争法コンプライアンスを推進するために有効と考えられる方策や留意点を,具体的な取組例とともに紹介している。
 外国競争法コンプライアンス・プログラムを推進するための具体的な方策については,基本的には独占禁止法コンプライアンス・プログラムを推進するための方策と異なるものではないものの,外国競争法の特徴に関連するリスクも存在することから,これを踏まえた対応が必要となる。
 このため,企業においては,独占禁止法コンプライアンスに関する取組を推進するとともに,本調査結果も参考としつつ,外国競争法コンプライアンスに関する取組を推進することが望まれる。
 公正取引委員会では,引き続き,世界各国の競争法制(注4)や競争当局の最近の動き(注5)などの情報提供に努めていくとともに,本調査結果の周知等を通じて,企業における独占禁止法及び外国競争法コンプライアンスに関する取組の支援・唱導活動に積極的に取り組んでいく。

(注4)世界の競争法

(注5)海外当局の動き

問い合わせ先

公正取引委員会事務総局経済取引局総務課
電話 03-3581-5476(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp/

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