平成28年6月13日
公正取引委員会事務総局
近畿中国四国事務所
はじめに
公正取引委員会は,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から,消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」という。)の未然防止のための取組と,転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組を進めてきたところである。
近畿中国四国事務所(中国支所及び四国支所を除く。以下「近畿事務所」という。)においても,転嫁拒否行為等に対して迅速かつ厳正に対処することを目的として,「消費税転嫁対策調査室」を設置し,近畿事務所管内(福井県,滋賀県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県及び和歌山県)において消費税転嫁対策に係る取組を実施してきたところ,平成27年度における管内における取組状況は以下のとおりである。
第1 転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組
1 措置件数
管内においては,平成27年度において,転嫁拒否行為に対して,1件の勧告及び35件の指導を行っている。勧告の概要は別紙1,主な指導の概要は別紙2のとおりである。
年 度 | 平成27年度 | 平成25・26年度 (注) | 合計 | ||||
全国 | 近畿地区 | 全国 | 近畿地区 | 全国 | 近畿地区 | ||
措 置 | 指 導 | 349 | 35 | 1,040 | 150 | 1,389 | 185 |
《24》 | 《1》 | 《80》 | 《13》 | 《104》 | 《14》 | ||
勧 告 | 13 | 1 | 19 | 2 | 32 | 3 | |
《3》 | 《1》 | 《4》 | 《0》 | 《7》 | 《1》 | ||
違反事実なし | 472 | 75 | 460 | 30 | 932 | 105 |
(注) 平成25・26年度の数値は,平成25年10月から平成27年3月までの合計(以下表2及び表3において同じ。)。また,全国の件数には,近畿地区の件数を含む(以下同じ。)。《 》内の件数は,大規模小売事業者に対する勧告又は指導の件数で内数である。
2 措置件数の業種別内訳
平成27年度の措置件数(勧告又は指導を行った事件の件数をいう。以下同じ。)について措置を採った特定事業者の業種別で分類すると,管内においては,製造業が7件(19.4%)と最も多く,以下,建設業が6件(16.7%)と続いている。
業種(注1) | 全国 | 近畿地区 | |
建設業 | 平成27年度 | 57(15.7) | 6(16.7) |
平成25・26年度 | 73( 6.9) | 4( 2.6) | |
合計 | 130( 9.1) | 10( 5.3) | |
製造業 | 平成27年度 | 67(18.5) | 7(19.4) |
平成25・26年度 | 337(31.8) | 62(40.8) | |
合計 | 404(28.4) | 69(36.7) | |
情報通信業 | 平成27年度 | 44(12.2) | 1( 2.8) |
平成25・26年度 | 73( 6.9) | 9( 5.9) | |
合計 | 117( 8.2) | 10( 5.3) | |
運輸業 | 平成27年度 | 15( 4.1) | 1( 2.8) |
平成25・26年度 | 89( 8.4) | 16(10.5) | |
合計 | 104( 7.3) | 17( 9.0) | |
卸売業 | 平成27年度 | 20( 5.5) | 4(11.1) |
平成25・26年度 | 89( 8.4) | 14( 9.2) | |
合計 | 109( 7.7) | 18( 9.6) | |
小売業 | 平成27年度 | 38(10.5) | 3( 8.3) |
平成25・26年度 | 138(13.0) | 23(15.1) | |
合計 | 176(12.4) | 26(13.8) | |
不動産業 | 平成27年度 | 24( 6.6) | 2( 5.6) |
平成25・26年度 | 26( 2.5) | 5( 3.3) | |
合計 | 50( 3.5) | 7( 3.7) | |
技術サービス業 | 平成27年度 | 20( 5.5) | 2( 5.6) |
平成25・26年度 | 64( 6.0) | 6( 3.9) | |
合計 | 84( 5.9) | 8( 4.3) | |
事業サービス業 | 平成27年度 | 7( 1.9) | 2( 5.6) |
平成25・26年度 | 19( 1.8) | 1( 0.7) | |
合計 | 26( 1.8) | 3( 1.6) | |
その他 | 平成27年度 | 70(19.3) | 8(22.2) |
平成25・26年度 | 151(14.3) | 12( 7.9) | |
合計 | 221(15.6) | 20(10.6) | |
全業種 | 平成27年度 | 362( 100) | 36( 100) |
平成25・26年度 | 1,059( 100) | 152( 100) | |
合計 | 1,421( 100) | 188( 100) |
(注1) 複数の業種にわたる事業者が勧告又は指導の対象となった場合は,当該事業者の主な業種を1件として計上している。「その他」は医療福祉,学校教育・教育支援業,旅行業,自動車整備業・機械等修理業等である。
(注2) ( )内の数値は,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
3 行為類型別の処理状況
平成27年度の措置件数について行為類型別で分類すると,管内においては,買いたたき(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号後段)が35件(97.2%)と最も多い。
行為類型 | 全国 | 近畿地区 | |
減額 | 平成27年度 | 18( 4.9) | 0( 0.0) |
平成25・26年度 | 36( 3.3) | 4( 2.6) | |
合計 | 54(3.7) | 4( 2.1) | |
買いたたき | 平成27年度 | 344(92.7) | 35(97.2) |
平成25・26年度 | 767(70.5) | 111(72.1) | |
合計 | 1,111(76.1) | 146(76.8) | |
役務利用,利益提供の要請 | 平成27年度 | 3( 0.8) | 0( 0.0) |
平成25・26年度 | 46( 4.2) | 9( 5.8) | |
合計 | 49(3.4) | 9( 4.7) | |
本体価格での交渉の拒否 | 平成27年度 | 6( 1.6) | 1( 2.8) |
平成25・26年度 | 239(22.0) | 30(19.5) | |
合計 | 245(16.8) | 31(16.3) | |
合計 | 平成27年度 | 371( 100) | 36( 100) |
平成25・26年度 | 1,088( 100) | 154( 100) | |
合計 | 1,459( 100) | 190( 100) |
(注1) 事業者の中には,複数の行為を行っている場合があり,表1及び表2に記載の件数とは一致しない。
(注2) ( )内の数値は,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
4 特定供給事業者が被った不利益の原状回復の状況
管内では,平成27年度において,転嫁拒否行為によって特定供給事業者が被った不利益について,特定事業者36名から,特定供給事業者1,899名に対し,総額5351万円の原状回復が行われた。
年 度 | 平成27年度 | 平成26年度 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
全国 | 近畿地区 | 全国 | 近畿地区 | 全国 | 近畿地区 | |
原状回復を行った特定事業者数 | 333名 | 36名 | 228名 | 15名 | 561名 | 51名 |
原状回復を受けた特定供給事業者数 | 25,059名 | 1,899名 | 33,094名 | 2,758名 | 58,153名 | 4,657名 |
原状回復額(注) | 6億7444万円 | 5351万円 | 4億1153万円 | 3779万円 | 10億8598万円 | 9130万円 |
(注) 各期間の原状回復額は1万円未満を切り捨てているため,合計額とは一致しない。
5 転嫁拒否行為等に関する相談件数
近畿事務所においても,転嫁拒否行為等に関する事業者からの相談や情報提供を一元的に受け付けるための相談窓口を設置しており,当該相談窓口において,平成27年度は53件の相談に対応した。
平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 合計 | |
全国 | 548 | 1,420 | 3,179 | 5,147 |
近畿地区 | 53 | 156 | 116 | 325 |
(注) 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出に関する相談を含む。
6 事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査
様々な業界における転嫁拒否行為に関する情報や取引実態を把握するため,管内において平成27年度は62名の事業者及び1の事業者団体に対してヒアリング調査を実施した。
事業者 | 事業者団体 | |||
全国 | 近畿地区 | 全国 | 近畿地区 | |
平成27年度 | 4,344 | 62 | 682 | 1 |
平成26年度 | 8,744 | 388 | 1,263 | 22 |
平成25年度 | 1,326 | 281 | 401 | 0 |
合計 | 14,414 | 731 | 2,346 | 23 |
7 移動相談会
事業者にとって,より一層相談しやすい環境を整備するため,管内においては,平成27年度は移動相談会を8回実施した。
平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 合計 | |
全国 | 52 | 47 | 75 | 174 |
近畿地区 | 8 | 8 | 9 | 25 |
第2 転嫁拒否行為の未然防止のための取組
1 公正取引委員会主催説明会
消費税転嫁対策特別措置法の内容を広く周知するため,事業者及び事業者団体を対象として,公正取引委員会主催の説明会を管内の全府県において実施した(平成27年度は8回)。
平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 合計 | |
全国 | 51 | 30 | 40 | 121 |
近畿地区 | 8 | 5 | 4 | 17 |
2 講師派遣
管内において,商工会議所,商工会及び事業者団体が開催する説明会等に,平成27年度は公正取引委員会事務総局の職員を講師として3回派遣した。
平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 合計 | |
全国 | 27 | 59 | 384 | 470 |
近畿地区 | 3 | 8 | 33 | 44 |
第3 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出
消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為(転嫁カルテル)及び消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為(表示カルテル)の届出について,平成28年3月末現在で,管内において,転嫁カルテル10件,表示カルテル11件の合計21件となっている。
平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 合計 | |
全国 | 5 | 50 | 1,235 | 1,290 |
近畿地区 | 0 | 3 | 35 | 38 |
別紙1
株式会社西松屋チェーンに対する件(平成27年6月12日) | |
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特定事業者 | 株式会社西松屋チェーン |
事業内容 |
婦人・子供服小売業 |
取引の内容 |
店舗等の賃借 |
違反行為の概要 | 【買いたたき(第3条第1号後段)】 |
原状回復額 | 特定供給事業者69名に対し,総額932万5633円 |
事件の詳細については,下記のリンク先を参照。
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h27/jun/150612_1.html
別紙2
平成27年度における主な指導事例
1 買いたたき(第3条第1号後段)
[1] 建設業を行うA社は,商業店舗等の建設工事を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後に引渡しを受けた工事代金(消費税率8パーセントが適用されるもの)に消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[2] 建設業を行うB社は,住宅の建築工事を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[3] 製造業を行うC社は,自社で製造する包装資材の検査等を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[4] 出版業を行うD社は,図書の組版や装丁デザイン等を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[5] 運輸業を行うE社は,物品の運送業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[6] 大規模小売事業者であるF社は,自社で販売する食料品等の納入業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの商品代金を据え置いていた。
[7] 不動産賃貸業を行うG社は,法律又は税務に関する顧問を委託している弁護士等(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[8] コンサルティング業を行うH社は,新商品に関する街頭調査や記事原稿の作成等を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[9] 建築設計業を行うI社は,設計業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後に納品された設計業務の成果物の代金(消費税率8パーセントが適用されるもの)に消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[10] 教育・学習支援業を行うJ社は,カルチャーセンターの講座の講師(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[11] 介護事業を行うK社は,介護サービス計画の作成業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[12] 経理等の管理業務を行うL社は,自社が使用する駐車場の賃貸人(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの賃料を据え置いていた。
2 本体価格での交渉の拒否(第3条第3号)
飲食サービス業を行うM社は,平成26年4月1日以後の学校給食用食材の納入業者(特定供給事業者)との価格交 渉において,税込価格での交渉を余儀なくさせていた。
関連ファイル
(印刷用)(平成28年6月13日)平成27年度における近畿地区の消費税転嫁対策の取組について(PDF:425KB)
問い合わせ先
問い合わせ先 公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所
消費税転嫁対策調査室
電話 06-6941-2205(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp/regional_office/kinki/index.html