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これまでのCPRCの取組を振り返るとともに今後のCPRCの活動への期待

これまでのCPRCの取組を振り返るとともに今後のCPRCの活動への期待

齊藤主任研究官

  2017年から主任研究官として、またそれ以前にも客員研究員として、各種の研究に接する機会をいただいております。集中化市場、非ハードコアカルテル、イノベーション、プラットフォーム事業などが抱える諸問題に対しては、伝統的な考え方だけでは違法性を判断しづらい状況にあります。経済学的知見による示唆を受けつつ、競争促進効果や競争制限発生メカニズムを明確にし、他方で、個人データ保護、気候変動問題などの非経済的価値を含む行為を再評価し消費者厚生に読み替えるなど、執行指針や判例理論との整合性を検証することが重要なのかもしれません。コロナ禍を経て、2020年からはオンラインでの開催が活動形態の主流になり、国内外の識者による講演や報告がより身近なものになりました。最新かつ高度な講演・報告内容の魅力を引き出し、相互に次への一歩に繋がるような理想的な質疑応答は、対面方式でも難しいものですが、オンラインの場合には、もっと初歩的なレベルで困難に直面することがあります。コミュニケーションのあり方も工夫しながら、独占禁止法と競争政策の企画・立案・評価に繋がる情報発信基地として、CPRCがなお一層発展し続けることを期待してやみません。

宮井主任研究官

 CPRC20周年、おめでとうございます。
 私にとって、CPRCは、2つの意味で研究上重要な位置を占めています。ひとつには、独占禁止法の実務に関わる貴重な情報が得られます。ここで「貴重な情報」というのは、もちろん機密情報のことではなく、公正取引委員会の職員の方の調査報告や論文発表を通じて、実務に携わっている方々の、いわば肌感覚を垣間見ることができるということです。これは、普段、命令書や判決、調査報告書を研究室で読むだけでは得られません。もうひとつには、経済学者の方の意見や考え方に接する機会が得られます。独占禁止法の解釈・運用は、その性質上、経済学による分析によって検証され、その裏付けの下で行われなければなりません。法学の議論もまた、経済学の分析の裏付けをもって補強されることが理想です。しかし、時に法学上の議論が経済学者の方から理解不能とされたり、無意味とされたりすることもあります。その際に、何が相互理解を妨げているのかの原因を突き詰めることが、法学上の議論を深化させるために不可欠だと思っています。
 法学を専攻する私個人の希望としては、今後も、実務との接点、法学と経済学との接点として貴重な存在であり続けてほしいと思います。
  さて、今日、デジタル・プラットフォームや生成AIの台頭など、従来になかった新たな技術やビジネスモデルが、独占禁止法の解釈・運用のあり方に影響を及ぼしつつあります。今や、経済学と法学の知見だけでは対処しきれなくなっているのかもしれません。従来のCPRCは、経済学と法学を柱としてきましたが、情報科学など、他分野の知見を取り入れることも将来の方向性として一考に値するかもしれません。

若森主任研究官

 CPRC設立20周年、おめでとうございます。
 私は2022年度に着任しましたが、すぐに気が付いたことがあります。それは、「CPRCの開催するセミナーやBBLが非常に刺激的である」ということです。この1年間を振り返ってみても、新しく勃興してきているメタバース業界やドローン業界の識者をお招きするだけでなく、近年話題になっているゲームやコンテンツ産業のクリエーターの問題、企業の価格転嫁の問題、さらに環境と競争政策など、一見すると「競争政策とはどのように関連するのだろうか?」と疑問に持ってしまうくらい幅広いトピックを扱っていました。競争政策は、市場参加者のインセンティブを考え、市場競争が働くような市場環境を整えることが目的の経済政策です。過去20年の技術革新は、プラットフォーム企業を出現させ、企業に膨大な(さまざまな価格差別を可能にし得る)顧客情報を蓄積させるなど、市場環境に急激で凄まじい変化をもたらしました。現在、競争政策はその変化に対応すべく急ピッチで進化しているところですが、今後も社会経済の在り方に応じて随時アップデートが必要になってくると予想されます。それゆえに、CPRCには今後も新しく出てくるであろう問題を発見する場、そして、問題を分析し解決策を議論する場として機能・発展することを期待しつつ、私自身も経済学者として少しでも貢献したいと考えています。

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