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第106回ワークショップの概要

第106回ワークショップの概要

 第106回ワークショップが6月24日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「低価格入札に関する研究」の研究計画

 (CPRC客員研究員・早稲田大学国際教養学部講師 鈴木彩子氏)
 (CPRC主任研究官・学習院大学法学部教授 大久保直樹氏)
 (CPRC研究員・第二特別審査長 宮本信彦氏)
 (CPRC研究員・第二特別審査 廣森高志氏)
 (CPRC研究員・経済調査室長 荒井弘毅氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 工藤恭嗣氏)

 平成23年度の共同研究の一つである本研究は,公共調達等における低価格入札について経済学的な分析を行い,「不合理な低価格入札」の見極め方,低価格入札に関する「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」とはどのようなものか及び略奪的価格設定の議論を入札にどこまで応用できるかを調査し,また,日本のデータ及び事例を用いた実証分析やケーススタディーを検討するものです。
 今回のワークショップでは,報告者から,研究計画について報告が行われました。
 報告を受け,参加者から,情報システムに関する入札と公共建設工事に関する入札を分けて考えるのは適切なものと思われるとのコメントがありました。また,情報システムに関する調達では,基本設計を落札できればその後の調達でも有利になるため低価格での入札が行われていると思われ,公共建設工事についても一つの工事から派生する工事がある場合には,それらの工事全体で見れば特定の工事に低価格入札をするメリットはあると思うとのコメントがなされ,報告者から,発注側が短期的な視点で発注を行っている可能性はあるかもしれないとの回答がなされました。
 スイッチングコストや学習効果という経済学的な考え方によれば,利潤が短期的にはマイナスでも長期的にはプラスになるという視点のほかに,ある調達では低価格で落札しても実績やノウハウを蓄積することで他の調達で利益を上げるという視点もあるとのコメントが参加者からなされ,報告者から,ダイナミックな環境での入札については経済分析があまりないと思われるので,その視点を取り入れる方法も考えられるとの回答がなされました。

(2)「拘束条件付き取引の反競争性に関する経済分析」の研究計画報告

 (CPRC客員研究員・札幌学院大学経済学部准教授 北村紘氏)
 (CPRC主任研究官・学習院大学法学部教授 大久保直樹氏)
 (CPRC研究員・取引調査室長 内野雅美氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 佐藤範行氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 柳田千春氏)

 平成23年度の共同研究の一つである本研究は,近年,産業組織の分野において活発な議論が行われている拘束条件付き取引契約について,現実の取引実態を踏まえつつ,様々な角度から分析を行うことが求められており,本研究において,当該取引契約を捉える新たな経済理論(経済モデル)を構築することによって,競争政策に何かしらの提言を与えることを目的としているとの報告がなされました。具体的には,今回の研究で注目するのは占有率リベートの反競争性についてであり,占有率リベートと排他条件付取引が異なる点を整理するために,基本設計として,買手を競争事業者間の競争がない消費者であると仮定し,占有率リベートでなければ議論できない点について,契約構造に注目した分析を行いたいとの報告がなされました。更に,余力があれば買手間の競争や企業間の費用構造の非対称性についても拡張研究を行いたい旨の報告がなされました。
 次に,法学的観点からの研究としては,占有率リベートに焦点を当て,米欧で公表された資料において占有率リベートについてどのような記述がなされているか検討を行うとの報告がなされました。
 報告を受け,参加者からは,経済分析の拡張研究に関して,主となる研究の基本設定では買手を最終消費者としているのに対し,拡張研究における基本設計での買手は企業と考えて良いのかという質問がなされました。それを受け報告者からは,主となる研究では企業間の競争がないことを前提としているが,当該基本モデルを構築した上で,拡張研究として企業間の競争がある場合についても研究を進めて行きたい旨回答がなされました。また,参加者から,占有率リベートに関する具体的な事例が少ないのが残念ではあるが,例えばリベートの競争促進効果の可能性を検討するというような競争政策への示唆となる研究,つまり汎用性のある研究を行ってほしいとのコメントがなされました。それを受け報告者からは,頂いた指摘を念頭に置いて研究していきたいとの回答がなされました。

(3)「ネットワーク産業に関する競争政策」の研究計画

 (CPRC客員研究員・神戸大学大学院法学研究科教授 泉水文雄氏)
 (神戸大学大学院経済学研究科教授 柳川隆氏)(都合により欠席)
 (CPRC研究員・第四審査長 岩成博夫氏)
 (CPRC研究員・第四審査 木村智彦氏)
 (CPRC研究員・第四審査 植田真太郎氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 佐藤範行氏)

 平成23年度の共同研究の一つである本研究は,先行研究の整理や調査などにより,ネットワーク産業に関する競争政策,特にマージンスクイーズの問題について考察することを目的とするものです。
今回のワークショップにおいては,報告者から,最初に,共同研究の問題意識について説明がなされ,次に,研究項目及び研究手法についての説明がなされました。最後に,研究スケジュールについての説明がなされました。
 報告を受け,参加者から,報告資料中の「ネットワーク産業へのインプリケーションの内容」とはどのようなものなのか,公取委はネットワーク産業にはこういう方針で臨むべきだというようなことを考えているのかという質問がなされ,報告者から,インプリケーションの内容について適宜説明した上で,研究の結果から示唆されることを提案できればよいと考えているとの回答がなされました。
 加えて,参加者から,事例研究における視点はどこに置くのかという質問がなされ,報告者から,米国及びEUの間で共通点及び相違点を調べ,日本の場合に参考にできるような示唆を得たいとの回答がなされました。
 ほかには,参加者から,米国及びEUのいずれもマージンスクイーズについては費用に注目しているが,米国及びEU共に費用に関する基準を採用することによってマージンスクイーズ該当性を慎重に判断しようとしているという認識でよいかという質問がなされ,報告者から,基本的にはそのような認識で良いが,TeliaSonera事件に関しては,行為者の費用だけでなく,競争者の費用についても考慮される場合があることに言及しているという特徴があるとの回答がなされました。
 その後,参加者から,米国及びEUのテレコム産業に対するスタンスについて,米国は放任的で,EUは規制するスタンスだと思うが,EUのスタンスの背景には域内市場統一という考え方があると思うので,そういう視点も参考にしてほしいとの指摘がなされ,報告者から,参考にしたいとの回答がなされました。

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