ホーム > CPRC >

内部向けイベント

>

ワークショップ

>

第108回ワークショップの概要

第108回ワークショップの概要

 第108回ワークショップが7月22日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

 「耐久消費財の価格サイクルに関する研究」に関する論文の報告

 (CRRC客員研究員・東京大学大学院経済学研究科教授 飯塚敏晃氏)

 今回のワークショップでは,報告者から米国の大学のテキストブックを題材に耐久消費財の価格サイクルに関する論文について報告がなされました。本論文は,一般に耐久消費財の価格については,製品サイクルの終わりに近づくと価格が低下する傾向にあるが,大学のテキストブックの場合に同様のことが言えるか,新刊本に価値を置く消費者と中古本に価値を置く消費者が存在する経済モデルを構築し,検討したものです。分析によれば,テキストブック市場において中古本の占める割合が上昇するにつれ,新刊本の価格が上昇しており,一般の耐久消費財とは異なる結果が得られました。本分析結果は,販売者が価格差別を行うことによって耐久消費財の価格が上昇し得ること,また,中古市場の成長が見込まれる財については大学のテキストブックと類似の価格サイクルがみられる可能性を示唆しています。
 報告者からの報告を受けて,参加者から,テキストブックでは版が変わると価値も変わると思われるが,中古市場に本を売らずに持ち続ける学生について,版が変わっても同じ価値を持ち続けると想定されているのかという質問がなされ,報告者から,同じ版の中で書籍の価格サイクルがどのようになっているのかを分析したもので,古い版と新しい版との関係についてこの研究では考察していないとの回答がなされました。
 次に,参加者から,経済モデルにおいては,本を売らずに持ち続ける学生について将来持ち続けることによる効用も含めたいわゆる効用の現在価値というものを評価して決定するモデルなのかという質問がなされ,報告者から,本を持ち続ける学生については効用の現在価値を評価しているが,売りたくても売れずに本を持ち続ける学生の場合には持ち続けることによる効用の現在価値は0となっているとの回答がなされました。
 加えて,参加者から,紹介されたモデルでは,テキストブックを購入した時点で,テキストブックに対する評価は本を持ち続ける学生の方が高いように設定されているが,これを逆にして,講義が終わったら売却する学生の方が高い評価をしている場合には,異なった結論が導かれるのではないかとの質問があり,報告者から,そういった場合も考えられ,本論文ではあり得る様々なパターンを分析し,その中からテキストブックの価格が上昇し得るケースを取り上げているとの回答がなされました。
 最後に,参加者から,講義が終わってもテキストブックを持ち続ける学生と講義が終わったら売却する学生に対し販売者が価格差別を行うという話があったが,独禁法上の差別対価というものではなく,オファーされる価格は一つで,その価格で買う学生及び買わない学生がいると言う意味で顧客を差別するものであり,同じ商品を顧客ごとに異なる価格で販売することとは異なるということかという質問がなされ,報告者から,指摘のとおり,同じ商品を顧客ごとに異なる価格で販売する差別対価とは異なる価格差別であるとの回答がなされました。

ページトップへ