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第109回ワークショップの概要

第109回ワークショップの概要

 第109回ワークショップ(中間報告)11月25日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。
(1) 「標準化・情報交換活動と競争法」の研究計画

 報告者
 (西村暢史CPRC客員研究員・中央大学法学部准教授)
 (西川康一CPRC研究員・相談指導室長)
 (西村元宏CPRC研究員・経済調査室)
 (後藤大樹CPRC研究員・相談指導室)

 平成23年度の共同研究の一つである本研究は,標準化活動(事業活動の基盤となる技術標準や規格を共同で策定する活動)の一環として,標準や規格を利用する際の条件について利用者が情報交換する行為に対し,我が国の独占禁止法ではどのように考えるべきか検討するものです。従来,このような行為については一種の購入カルテルであり,原則違法と考えられていましたが,近年,米国及びEUの競争当局では,このような競争法上の取扱いを見直す動きが見られます。そこで,本研究は,米国及びEUの競争当局の考え方について調査・考察するとともに,我が国における独占禁止法の運用に対する示唆を得ることを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,本研究の目的,研究の進捗状況及び成果,今後の検討課題並びに報告書の取りまとめイメージについて報告がありました。
 報告を受け,参加者から,標準や規格を策定する際,併せて,それらを利用する際の条件も検討することは,競争法上,合理的な行為として容認されるのではないかとのコメントがなされ,報告者から,従来は標準や規格の策定と,それらを利用する際の条件の決定とは,競争に与える影響の点で明確に区別され,競争法上,後者については競争への悪影響が大きいため原則違法と考えられている。本研究では,その考えが変化したのかどうか,また,変化したのであれば,どのような理由に基づくのかを検討していくとの回答がなされました。
 また,参加者から,情報交換活動については,カルテルに結びつくものとカルテルに結びつかないものがあるがまずそこを区別すべきとのコメントがなされ,報告者から,本研究で扱うのは標準や規格を利用する際の条件に関する利用者間(ライセンシー)の情報交換なので,購入カルテルにつながるおそれが強い情報交換であると考えている旨の回答がなされました。

(2) 「欧州の電気通信分野におけるSMP規制の分析と日本の独占禁止法への示唆」の研究計画

 報告者
 (武田邦宣CPRC主任研究官・大阪大学大学院高等司法研究科准教授)
 (松島法明CPRC客員研究員・大阪大学社会経済研究所教授)
 (柴田潤子香川大学大学院香川大学・愛媛大学連合法務研究科教授)
 (林秀弥CPRC客員研究員・名古屋大学大学院法学研究科准教授)

 平成23年度の共同研究の一つである本研究は,SMP規制や総合事業能力規制の理念や考え方について法学や経済学の視点から考察することを目的とするものです。
 今回のワークショップでは,報告者から,法学の視点として,SMP規制のパイオニアであるEUにおける歴史的な経緯の整理や我が国の電気通信事業規制に関する論点が紹介され,経済学の視点として,市場支配的事業者に重い規制を課す非対称規制について経済学の観点から検討した論文が紹介されました。
 報告を受けて,参加者から,次のとおりコメントがなされました。電気通信事業において,競争のボトルネックになっているのが市内通信網や携帯基地局などの設備であるとすれば,その設備の保有規模やシェアに基づいて重い規制を課す事業者の選定を行うほうが妥当であるように思えるが,なぜ我が国においては,携帯電話事業者に重い規制を課すかどうか選定するに当たって小売段階の市場シェアを基準にしているのか。このコメントに対して報告者から,次のとおり回答がなされました。我が国でも設備の保有規模やシェアで規制すべきか又は小売市場のシェアで規制すべきかについては重要な論点となっています。また,我が国と同様にEUでも小売市場のシェアに基づいて重い規制を課していますが,EUでは,我が国と異なるやり方で小売段階の市場画定を行っています。我が国においては小売段階の携帯電話市場における事業者のシェア(契約者数)を基準として重い規制を課す事業者の選定を行っているのに対して,EUにおいては小売段階の事業者の着信数の大小を基準として重い規制を課す事業者の選定を行っているという点で異なっています。

(3) 「競争法の観点から見た国家補助規制-EU競争法の議論を参考に(State Aidの概念整理と基本的考え方の取りまとめ)」の研究計画

 報告者
 (多田英明CPRC客員研究員・東洋大学法学部准教授)
 (大久保直樹CPRC主任研究官・学習院大学法学部教授)
 (荒井弘毅CPRC次長)

 平成23年度の共同研究の一つである本研究は,EU競争法の国家補助規制について,我が国の法体系,政策体系の中で共有すべき部分の整理・検討を行い,競争政策の観点から国家補助に対する規律を考える際の視座を得ることを目的とするものです。
 今回のワークショップにおいて,報告者から,まず,国家補助による競争の歪曲とその他の公共政策上の便益とをどのように折り合いを付けているかを探ることにより我が国の補助金規制への示唆を得るという本研究の問題意識が報告され,次に,これまでの研究の成果の概略や,米英における議論,事業再生支援についてのケーススタディ等の今後の検討課題が報告され,最後に報告書取りまとめのイメージについて報告がなされました。
 報告を受け,参加者から,検討対象をなぜ事業再生分野への補助金に絞るのかという質問がなされ,報告者から,環境や研究開発等も候補に挙がったが,議論の結果,事業再生分野に焦点を当てることとし,我が国にとって参考となる点があると思われる金融業又は航空会社を取り上げることとしたとの回答がなされました。
 また,参加者から,「補助」には単に補助金だけを出すものと,補助金を出すだけでなく経営にも参画するものがあるところ,本研究ではこうした点も検討するのかとの質問がなされ,報告者から,補助金の支払が競争に与える影響を中心にみることとしており,そこまでの検討は予定していないとの回答がなされました。
 さらに,参加者から,事業再生やリスクキャピタルについて,民間が行う部分と国が行う部分との境目がはっきりしない中で,どのような役割分担が適切なのかという点は国家補助規制を検討するに当たって内在する難しい問題であるとのコメントがなされました。

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