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第113回ワークショップの概要

第113回ワークショップの概要

 第113回ワークショップが3月16日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

 「ネットワーク産業に関する競争政策」の最終報告

 報告者
 (泉水文雄 CPRC客員研究員・神戸大学大学院法学研究科教授)
 (柳川隆 神戸大学大学院経済学研究科教授)
 (品川武 CPRC研究員・第四審査長)
 (木村智彦 CPRC研究員・第四審査)
 (植田真太郎 CPRC研究員・第四審査)

 平成23年度の共同研究の一つである本研究は,先行研究の整理や調査などにより,ネットワーク産業に関する競争政策,特にマージンスクイーズの問題について考察し,我が国の競争政策の立案・執行への示唆を得ることを目的とするものです。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,最初に,研究の問題意識について説明がなされ,次に,報告書案の章ごとの概要についての説明がなされました。報告を受け,参加者から,NTT東日本事件の判決の趣旨は,判決では言及されていないものの,同等に効率的な競争者が排除されることを問題にしたというよりもむしろ競争機会の確保にあると思われるがいかがかとの質問がなされました。これに対して,報告者から,接続料金を固定費用も含む総販売価格を基に算定しているので競争者が垂直統合企業であるNTTに勝てない点をも問題としている形跡があること,つまり垂直統合企業が上流市場及び下流市場における可変費用を回収するための価格設定をすれば下流市場で同等に効率的な競争者に勝つことができるので,本件では同等に効率的な競争者の排除に加えて,一種の競争の機会の確保を問題にしているともいえるとの回答がなされました。
 次に,報告者から,アメリカではマージンスクイーズについて上流市場における投資インセンティブの確保等の点から競争法上単独の取引拒絶として規制していないとのコメントがなされ,参加者から,EUでは事業法によって垂直統合企業に対し投資インセンティブを考慮した取引義務が課されているので,競争法によってマージンスクイーズ規制を行っても投資インセンティブに与える影響は小さいとの判断が存在するのではないか,そしてそれがマージンスクイーズ規制に積極的なEU競争法の大きな特徴ではないかとのコメントがなされました。
 また,参加者から,構造規制に比例原則が求められるところ,どういう問題があれば事業分離を命ずることができるのかとの質問がなされ,報告者から,ネットワーク外部性が働いている場合に分離すると効率が大きく損なわれるので分離は難しいとの回答がなされました。
 さらに,どういう反競争効果があればどのような排除措置が正当化されるのかとの質問がなされ,報告者から,まず行動規制を考えて,次に行動規制では解決できない又は行動規制と比べて構造規制の方が事業者にとって負担が軽い場合に構造規制が正当化されるが,それをどのように評価するかという問題は残るとの回答がなされました。

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