第116回ワークショップ(最終報告)が4月6日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。
(1)「欧州の電気通信分野におけるSMP規制の分析と我が国の電気通信分野における規制への示唆」の最終報告
報告者
(武田邦宣 CPRC主任研究官・大阪大学大学院法学研究科准教授)
(柴田潤子 香川大学大学院香川大学・愛媛大学連合法務研究科教授)
(松島法明 前CPRC客員研究員・大阪大学社会経済研究所教授)
(林秀弥 前CPRC客員研究員・名古屋大学大学院法学研究科准教授)
平成23年度の共同研究の一つである本研究は,我が国の電気通信事業法による規制との比較を通じて欧州におけるSMP(Significant Market Power)規制の歴史的展開と現状について,法学及び経済学の視点から考察することを目的とするものです。
今回のワークショップにおいては,報告者から,はじめに,研究の問題意識について説明がなされ,次に,報告書案の章ごとの概要についての説明がなされました。
報告を受け,参加者から,事業法上の規制であるSMP規制と競争法による規制のどちらが望ましいかという点について,欧州では競争当局よりも事業者の情報を十分持っている規制当局によるSMP規制の方が望ましいとの考えが支配的ではないかとの質問がなされました。これに対して,報告者から,現状では,競争法のみで規制することは難しいため,規制当局によるSMP規制が必要であるとの考えが支配的であると思われるとの回答がなされました。
また,参加者から,我が国では非対称規制によって,電気通信事業分野において競争が促進されたと理解しているが,欧州ではSMP規制によって競争が促進されたという事実はどの程度あるのかという質問がなされました。これに対して,報告者から,SMP規制によって競争が促進されたかどうかは,規制対象となる事業によって,欧州の規制当局のSMP規制の運用の実態が異なるので,一律に評価するのは難しいとの回答がなされました。
(2)「企業の提携・部分的結合に関する研究2」の最終報告
報告者
(森田穂高 前CPRC客員研究員・ニューサウスウェールズ大学経済学部准教授)
(荒井弘毅 CPRC次長)
(巻寿彦 CPRC研究員・経済調査室)
平成23年度の共同研究の一つである本研究は,前年度の共同研究「企業の提携・部分的結合に関する研究1」において検討した,企業が部分的結合を行う理由(「知識移転のみが部分的結合を行う理由」)以外の要素を考慮した経済理論モデルの検討と政策インプリケーションを考察するため,部分的結合の目的・理由を公正取引委員会に届出のあった平成22年度の株式取得事例をサンプルとして分類整理し,それに基づく経済理論モデルの検討を行うものです。
今回のワークショップにおいては,報告者から,最初に,研究の問題意識について説明がなされ,次に,報告書案の章ごとの概要についての説明がなされました。報告を受け,参加者から,製品差別化がある場合,部分提携によってどのような効果が生じるのかとの質問がなされました。
それに対して,報告者から,企業数を限定した経済理論モデルであるが,製品差別化がある場合には,部分提携することで企業がコストを節減できる一方で,提携企業間の製品差別化の度合いを縮小せざるを得ないというトレードオフの関係について説明した理論があるとの回答がなされました。