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第120回ワークショップの概要

第120回ワークショップの概要

 第120回ワークショップが5月11日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「カルテル事件における立証手法の検討-状況証拠の活用について-」の研究計画

 報告者
 (武田邦宣CPRC主任研究官・大阪大学大学院法学研究科准教授)
 (泉水文雄CPRC客員研究員・神戸大学大学院法学研究科教授)
 (長谷河亜希子CPRC客員研究員・弘前大学人文学部准教授)
 (荒井弘毅CPRC次長)
 (藤井宣明CPRC研究員・審査局企画室長)
 (鈴木健太CPRC研究員・審査局企画室)
 (金浦東祐CPRC研究員・審査局企画室)
 (渡辺淳司CPRC研究員・審査局企画室)
 (岩宮啓太CPRC研究員・審査局企画室)
 (鈴木隆彦CPRC研究員・経済調査室)

 カルテルや談合への制裁が強化されているため,リーニエンシーの申請によらずに摘発されたカルテルや談合事件では,事業者の従業員等から十分な供述や直接証拠が得られない場合も予想されます。平成24年度の共同研究の一つである本研究は,過去にCPRCが行った先行研究も参考にしながら,経済学的な検討,米国法及びEU法の研究,我が国の審判決の事例分析等を通じて,状況証拠を活用したカルテル・談合の立証手法を提示し,今後の公正取引委員会の審査・審判活動に対する示唆を得ることを目的とするものです。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,研究の目的,構成,スケジュール等について説明がなされました。
 報告を受け,参加者から,研究の対象は状況証拠の活用ということであるが,米国法のところで言及していたプラスファクターの問題というのは,証拠の活用の問題ではなく,事実をどう評価するかという話であり,共謀の事実が得られていないときに状況証拠を活用して共謀を立証していくということとは違う話である。ここの認識がずれていると欧米の法運用の研究を行っても,我が国への示唆がずれてしまう可能性がある。何を研究対象とするか明確になっていないように思われるとのコメントがありました。
 これに対し,報告者から,我々の議論の中でも御指摘のような認識のずれは意識していたが,状況証拠の活用とプラスファクターの議論のどちらかに限定するということではなく,両方とも研究対象にすることを考えているとの回答がなされました。
 また,参加者から,米国法のところで言及していた「コミュニケーション」について,何をもってコミュニケーションというのか,何についてのコミュニケーションかということがあまり明確にされずに使われていると思われる。どのようなコミュニケーションが合意と捉えられるのか,どのような内容のコミュニケーションなら許容されるのか整理して議論する必要があるとのコメントがなされました。
 これに対し,報告者から,何をもってコミュニケーションというのかという問題意識については念頭にあったが,後者の何についてのコミュニケーションかという点については意識していなかったので,今後念頭に置いて研究を進めていきたいとの回答がなされました。

(2)「EU国家補助規制の考え方の我が国への当てはめについて」の研究計画

 報告者
 (大久保直樹CPRC主任研究官・学習院大学法学部教授)
 (安藤至大CPRC客員研究員・日本大学大学院総合科学研究科准教授)
 (多田英明CPRC客員研究員・東洋大学法学部准教授)
 (宮澤信二郎神戸大学大学院経済学研究科特命准教授)
 (笠原宏調整課長)

 平成24年度の共同研究の一つである本研究は,平成23年度共同研究「競争法の観点からみた国家補助規制」によって得た知見を基に,企業再生・事業再生に国家が関与することについて競争政策の観点から規律の必要性と規律の手法について検討することを目的とするものです。
 今回のワークショップにおいて,報告者から,本研究の問題意識と本研究の検討内容及び今後の予定について報告がありました。
 報告を受け,参加者から,EUの国家補助規制は事後的に個別の補助の申請を審査するものであり,適切な補助制度を検討するに当たっては必ずしも参考とならないのではないかとの質問がなされ,これに対して,報告者から,EU加盟国では個々の事案だけでなく補助制度自体の当否も判断している例があるので,そのような例を参考に検討したいとの回答がなされました。
 次に,参加者から,競争政策の観点からどの案件を企業再生・事業再生の対象として選定するのか,経済的正当性についてどのように考えるのか検討すべきではないかとの質問がなされ,これに対して,報告者から,予算・リソースの制約があるので,優先順位をどのように付けていくのが望ましいのか,また,補助の手段について,それぞれの手段がどのように競争に影響を与えるのか検討することとしたいとの回答がなされました。
 また,参加者から,補助が競争に与える影響について,ライバル企業への影響や企業経営に与えるインセンティブへの影響だけでなく,新規参入に与える影響も考慮すべきとのコメントがなされました。
 さらに,参加者から,我が国では規制の競争評価が義務付けられているとのことだが,補助金にも同様の仕組みがあるかとの質問がなされ,これに対し,報告者から,我が国における補助金制度には競争の観点からの規律は行われておらず,一部財政の観点からの規律が行われているものがあるとの回答がなされました。

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